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異世界でもう一人の俺が暴れすぎてキチガ○と呼ばれている件について  作者: 浅き夢見む氏
第五部:かつて交わした約束は曖昧なままで心に残る<王国編>
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閑話:トツカ・ドラガン外出する!前編

二話にまたぐ!

王宮の鍛冶場。

ここから魔道具の為の優秀な素体が生み出されていく。

当然その鍛冶場にいるのは選定された優秀な鍛冶師ばかり。

汗と熱気が籠るその場所で、鍛冶師達は一本一本魂を込めて鋼を成型するのであった。


優秀な鍛冶師達と共に剣を打つ少年が一人。

紅き瞳に上半身裸、その肌は金色の龍鱗が輝く。

眼で正確に鋼の様子を測る、、、慎重に。

そして見極めた場所へ龍の力を借り渾身の力で槌を振り降ろす。


槌が鋼を見事な剣へと形成させていく。

周囲の鍛冶師たちはその様子を若きその身でと感嘆の表情で見つめていたが、少年は満足いかないのか成型間近の剣をもう一度溶鉱炉に投げ込んだ。


そこで集中が解けたのか、『鑑定』も『義力行使』も解けてしまう。

少年、トツカ・ドラガンはフラフラと椅子に座りこむと、近くのタオルで汗を拭いた。

そして水を飲もうとして、空になっているのに気付く。

そういえばさっき飲んだ時に気付いてたなと・・・ため息をついた。


「くそ、、、熱い。冬は良いんだけどな・・・あったかいし・・・」


鍛冶場の熱に肌を舐められながら、ほぼ籠りきりで槌を振るっていた。

新たな剣の制作が難航していたせいで、いつもは気にならない熱さが気になり余計に集中が続かない。

春で気温が上がりやすくなったせいもあり、蒸し暑くなってきたこともあるが。


構想だけは出来ていたサクラの細剣術も斬龍様の斬技も扱え、共鳴鋼と曇の種を用いた完全なサクラ=レイディウス専用の一振り。


構想を言葉にすれば簡単だが実際はサクラの細剣術も斬龍様の斬技も扱える剣となるとなかなか難しい。

共鳴鋼と曇の種の配合分配も非常に精密な作業が必要で未だに試行錯誤だ。

原材料はどちらも貴重で限りがあるので、まずは鉄でどのような剣にするのか試行錯誤から始めているのだが・・・・


「やっぱ細剣と刀じゃあ折り合いつかないな・・・」


細くしなることを活かし隙間を突く細剣術。

反りのついた刀身を活かし流れるように斬り裂く刀術。

どちらの利点も剣独自の形状を活かしたものであり、必然的に両方は成り立たない。

最近のサクラは威力の高い刀術を使用しがちだが、所詮は他人のコピー。

いずれは限界が来るはずであり、彼本来の剣術は使えた方がいい。


「オオラさんなら、、、、」


龍人の郷一の鍛冶師オオラ。

彼ならばいい案を出してくれただろうが、彼はすでに敵方。

それでも、、、思うのだ。

あの人なら出来るはずだと。


「・・・・だめだ、だめだ!」


頭を振ってその考えを否定する。

サクラに任されたのは俺なんだ。

いくらオオラさんと比べると鍛冶技術がないからって・・・出来ないじゃ俺が俺を許せない。


自分の考えが暗くなりがちだったことに気付く。

かなりの時間こもりがちだったことにも。

疲れると人間やっぱり碌なこと考えないな・・・


「よし!気分転換にエロ本読むか!」


鍛冶師達は同時に思う・・・あの悪癖さえなければなあと。

周りの鍛冶師達の冷たい視線なんて気にもせずに彼は棚からお気に入りの秘蔵本を取り出す。

何度も読み返したがそれでも飽き足らない珠玉の一冊である。


「うひょひょひょひょ!」

「「「「「「「「・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」


肌色、肌色、はだいろおおおおおおおおおおおっ!

くびれ、目線、谷間、容姿!

全てが素晴らしいものばかりが載せられた一冊を舐めるように眺めていく。

ふう、、、、色々な悩みを忘れてしまえる。


「トツカさん、いらっしゃいますの?」

「うわああっと!?」


ふわっとした声が鍛冶場に響く。

流石に知り合いの女性の前でエロ本読む勇気はなく、急いで隠そうとしたがこんな時に限って手汗で滑る。

そしてつるっと浮いた『家族』は溶鉱炉の中へ・・・・


「ぎゃああああああああああっ!?」


トツカ・ドラガンはこの日、『家族』を一人失った。





「ぐずっ、、、、ぐず、、、、」

「と、トツカさん、、、いい加減泣き止みませんの?」

「・・・ぐずっ・・・ぐずっ・・・そうですの」

「な、何故真似をするのですの?」

「そんな気分なんですの・・・」

「うっ、、、、無性に腹が立ちますの・・・・・」


まあ、、、、すねてばっかってのもな。

涙は枯れる程流れたので、もう笑うことしかできない。

いやこれでいいんだ・・・あいつだってそれを望んでるはずだし。


「なんですの、、、一人の世界に入って帰って来ませんの・・・」


鍛冶場にわざわざ聖十剣四位ブリジット・カトリアさんが来たので作業は一旦打ち止めになった。

鍛冶場では汗臭いし、俺も涼みたかったから場所を変えることにした。

軽く水を浴びてから待ち合わせたのは、王宮に何故かある謎の甘味屋そのVIPルーム。


冷やし飴というのをがぶ飲みして、一息つく。

すっごく甘かったが疲れてる体には染み込んだ。

ブリジットさんはその飲みっぷりを楽しそうに眺め、俺が飲み干すやいなや自分の冷やし飴をすいっと寄せてきてくれた。


「ブリジットさんは?」

「またもう一度頼みますの、、、喉が渇いてるんでしょう?」

「じゃあ・・・ありがとうございます」

「どうもいたしまして」


御言葉に甘えることにした。

グッと冷たいものを一気に飲んだことで体が落ち着いたので、もらった一杯は大事に飲むことにする。

さっきは味わうというよりは体の渇きを取るために飲み干したので、よくよく味わってみる。

流石は王宮の中に店を構えるだけはある・・・

ただ甘いだけじゃなくちゃんと不思議な味がついていた。


「・・・・そういえば、今日はどうしたんです?」

「鍛冶師のトツカさんにお願いがありますの」

「お願い?」

「そろそろ痛んできて、、、新しい武器をお願いしたいのですわ」

「・・・『鑑定』」


彼女はそう言うと腰に装備していた鞭と硬棒を机の上に置いた。

鑑定してみて・・・その傷み具合に驚かされた。


「何したんです・・・まるで溶かされたかのような切り傷が一杯・・・」

「最近獄炎将・・・じゃなくて獄炎の勇者様が聖十剣全員と組み手をしてくださるの。」

「全員と!?元気ですね、ガルブレイクさん・・・」


そう言えばこの前シノンと会ったが妙にボロボロだったのを覚えている。

そうか、、、全体の錬度を上げる為にガルブレイクさん中心に訓練の量を上げたのか・・・ん?

てか、皆それなりに忙しいはずなんだがよく集まれるな?


「訓練自体はいいんですけど、公務の方は大丈夫なんですか?」

「黒の勇者さんのお蔭ですわ」

「・・・サクラの?」

「あの人が上級冒険者として下級、中級、上級問わず魔物をお狩りになりまくられたお蔭で、王国兵士末端ですら仕事がいつもの半分になるくらい治安が良いんですの」

「ああ、、、1675件のクエストか。」


意味が分からな過ぎて逆に覚えてた。

王国へ来たばっかりの頃、協力への感謝費と経費だとポンと渡された額が家一軒建てられる額で驚いたのは記憶に新しい。

全部エロ本に使ったがな!

まあ、取り敢えずサクラが王国に残したものは王国の今の平和だけではなかったってことか・・・

やっぱすげえな、あいつ。


「で、、、俺でいいんですか?」

「ええ、龍人の郷の鍛冶師さんなら頑丈な物を作って下さると思って。今のままじゃ訓練に支障が出てて。」

「・・・・属性は『嵐』ですか」

「ええ」


本属性に揃えた武器にするのが鉄則なのだが、派生属性の場合揃えるのが途端に難しくなる。

鉱石も魔獣素材もなかなか簡単には見つからない。

実際、ブリジットさんの使ってる硬棒も鞭も自然属性の風と水でそれぞれ揃えてるみたいだし。

それに硬棒と鞭、、、これって王国でしか使われない硬鞭と柔鞭ってやつか・・・

造ったことないしニ、三回は作ってみないとな・・・・

それに獄炎将軍の獄炎魔術を数度防いだだけでこれだろう・・・強度は特にこだわらないとな。


「・・・・・・・・」

「た、大変ですし、本属性は気にしなくても大丈夫ですの!強度もある程度あれば・・・」


思わず考えに長々と沈み込んでしまっているとブリジットさんが慌てたように手を振った。

気を遣ってくれるのか・・・・・・その気持ちは有り難いが。


「武器を渡す以上、半端なものは渡しません。」

「・・・・え?」

「俺に鍛冶を教えてくれたオオラさんが言ってました。武器は持ち主の命を守る最後の剣で盾だから絶対に不十分であってはいけないんだって。」

「・・・・・・」

「それにブリジットさんが俺のつくった武器の不十分さで怪我とかしたら悲しいし・・・」

「・・・・・・・・」

「ブリジットさん?」

「ふぇっ!?」


いつも大人なイメージの彼女にしてはポカンと口を開けていた。

大丈夫かと確認したら珍しく変な声を出していた。

・・・・どうしたんだ、訓練で疲れでもしてるんだろうか?

だとしたら長話もなんだし早めに切り上げてしまおう。


・・・にしてもサクラの剣もいきずまってたし、ちょうどいいタイミングだったな。

硬鞭と柔鞭・・・もしかしたらサクラの剣にも応用できる技術があるかもしれない。


「じゃ、取り敢えずはその武器は修繕しておきますね。それから素材集めに英雄連邦に行ってみます。」

「え、英雄連邦まで?」

「王国では『嵐』の派生属性は珍しいけど、英雄連邦なら『嵐』の派生属性の素材が少しはあるだろうし」

「でも、、、あそこまでは遠いし、王国の支配下にあるとはいえ治安的にはまだ危険ですわ」

「まあ、、、腕には自信があるので」

「・・・・・・・・なら、武器がなければ仕事も訓練も満足にできませんし、休暇を取って私も行きますの!」

「いや、、、修繕だけなら今日中に終わ

「私も行きますの!」

「・・・了解です。」


こういうわけで久しぶりに外に出ることになった。



あのバカみたいな本当にバカみたいなクソみたいにバカみたいな速さの『動く曇道≪オート・ステップ≫』程ではないが、ブリジットさんの嵐の魔術も移動に関してはなかなか素晴らしいスピードだった。

ブリジットさんの起こす竜巻の上で休憩を挟みつつ半日。

徒歩でも馬でも何日もかかるその場所まではそれほどかからなかった。


目につくばかり全てが大樹、大樹、大樹。

空から見れば所々集落が見える場所もあるが、その集落も魔物に襲われない為か大樹に溶け込むように設立されている。

ただ最近は王国の支配下に置かれている為、監視の為の王国兵士達が住むための家屋が大森林に添う形で街となって設立されていた。


「そろそろつきますの」

「本当に森ばかりですね・・・聞いてはいたけどすげえなあ。」

「エルフは森から生まれましたから」

「森から?」

「正確に言うと起源は今は絶滅した樹木人と人間の混じりですの」

「へえ、、、」

「そのせいかエルフは全体的に水、風、土属性の魔術が得意ですの」

「・・・そいえば『爆炎』属性使ってた人いませんでしたっけ?」

「あいつはエルフではありませんわ。」

「え?」

「あいつはエルフではありませんわ。」

「あ、そうですか・・・」


どうやらあのド派手好きなエルフの聖十剣三位とは反りが合わないらしい。

話題を変えようと話を変えることにする。


「そういえば王国では白エルフしか見ませんけど、他に種族があるんですか?」

「ええ、黒に赤ですの。」

「黒、、、赤?」

「似非エルフみたいに例外がありますけど、肌が小麦色のエルフは黒エルフ、肌が真っ赤に染まったエルフは赤エルフと言いますの。黒エルフは『内在型身体強化』に優れ、赤エルフは精霊属性の魔術を得意としてますの」


精霊魔法、、、名前だけは聞いた事がある。

自然属性を司る精霊に魔力を提供し魔術の操作を委ね、より強力な魔術を使えるようにするとか・・・

連結魔術・・・どちらかというとサクラの『曇脈展開≪クラウド・アクセス≫』みたいなものか。


「へえ、、、、精霊魔法は見てみたいかも」

「難しいと思いますの。」

「え、どうして?」

「大森林から出ることを拒んだエルフたちは基本的に排他的なのですの。王国に敗北してから更に悪化してると聞きますし。」

「・・・・・・・同じ種族なのに。」

「百年続いても変わりませんでしたし、しょうがないのですの!」


ブリジットさんはしょうがない子供の事を話すかのように肩をすくめる。

・・・外に出ないってことなら龍人の郷の龍人達も似たようなモノだがなあ。

でも俺達は外に出ようが龍人である限り仲間と見なすがなあ。

ま、、、他種族の話だしあまり首を突っ込むつもりはないが。


「そろそろ降りますの!」

「はーい」

「そういえばですけど、普通の人なら十分もすれば酔ってしまうのに平気なのですの?」

「・・・・・まあ慣れたももももも、ものなので(ガクガクブルブル)」

「トツカさん!??」


当社比二倍・・・悲しみの・・・ローテンションサクラ・・・うっ、頭が・・・




大森林に接する王国領に加わった新たな街、アリーア。

今はまだ英雄連邦の監視が目的の為に兵士の方が多いが、後々には英雄連邦との貿易の最前線となるらしい。

まだアリーアが出来てから一、二か月も経っていないというのに既に金の匂いを嗅ぎつけた商人たちが多く訪れるようになっていた。


「もう立派に街になってますね。」

「私も一度しか視察に訪れてませんけど、発展が意外と早いですの・・・」


二人揃って街の景気の良さに驚いていた。

土魔術で家屋を設立していったのだろうか?

装飾などは流石に王都と比べると貧弱ではあるが、人の出入りは王都に負けず劣らず。


「王国支配になって今までは貴重だった素材が流通しやすくなったせいもありますわね。」

「なるほど・・・取り敢えずギルドがあればそこに行きたいですね」

「ギルド?」


公務員であるブリジットさんは首を傾げる。

そっか、、、あまり利用する必要がないよな。


「ギルドだと、ある程度の魔物やら素材について依頼出てるんですよ。」

「ああ、、、それで『嵐』属性の素材についてある程度のあたりをつけるのですのね!」

「仮設でもギルドがあればですけどね」


まあ、流石にまだ街としては小さいのでギルドで必要な情報は得られなかったのだが・・・

流石に主要な街や都市じゃなければ派生属性の貴重な素材や魔物を取り扱えるほどの規模のギルドは設置されないからなあ・・・

こうなると大森林の中に入っていかなきゃいけないな・・・手がかりもなく。


「ブリジットさん、やっぱり長い作業になりそうです。公務につかえるし先に王都へ

「帰りませんの」

「そうですか・・・」


意外と頑固だな・・・

ブリジットさんに華麗に拒否られたので、取り敢えず滞在の支度をしないとな・・・

男一人なら大部屋・雑魚寝で構わないんだけどブリジットさんがいるとなあ。

個人部屋、、、しかも女性が安心して泊まれる場所となると、、、流石に今のこの街にあるだろうか?

商人がこれだけ行き来している以上、大部屋ですら怪しいかも・・・


「あら、まさか私を心配してますの?」

「・・・一応。」

「聖十剣四位ですのよ、私。」

「・・・・それは分かってますけど。」


寧ろ大部屋で俺が襲われる確率の方が高いだろう。

てか、持久力のない俺よりも何倍もこの人の方が強いだろう。

けども・・・


「いくら自分より強いからって女性を女性扱いしないわけにはいかないんで」

「あら、意外と強情ですの?」

「類は友を呼ぶ、、、親友同様俺も我儘なんです。」

「ふふ、、、やっぱりトツカさん面白い人。」


正直に気持ちを伝えたのが良かったのだろうか?

あまり気を悪くはしてない、、、寧ろご機嫌な様子だった。

そしてブリジットさんは名案を思いついたとばかりに手を叩いた。


「少し時間がかかりますけど、里帰りしますの!」

「え、王国出身じゃ?」

「父母は王国ですけど、父方の祖母の家は大森林ですの!」

「なるほど、じゃあブリジットさんはそちらでお世話になってください。僕は大部屋で今日は雑魚寝するんで」

「・・・何を言ってるんですの?」

「へ?」

「あなたもお世話になるに決まってますの」

「いや、大森林のエルフは排他的なんじゃ?」

「祖母はそんなこと気にしませんの」

「・・・・じゃあ、お言葉に甘えて」


大森林の中を進んでいく。

エルフの彼女にとっては慣れた道なのかもしれないが、木の根が人の背丈ほどに地中から飛び出ていたり隠されたかのようにぬかるみがあったりと開拓された道のありがたみを思い知らされる。

飛んでは跳ねるかのように道なき道を歩いていく彼女の後を必死で追いかけていく。

森を歩くのは慣れないせいか四苦八苦だ。


「コツは木々を上手く使うことですの!」

「木々を?」

「森の中で一番しっかりした足場ですの。」

「なるほど・・・『義力行使』」


身体が壊れない程度に義龍様からお力を借りる。

なるほど・・・木の根、木の幹、木の枝、、、蹴り跳ね、掴まり、時にはバランスを整える。

こうすると普通に地面を走るよりかはぬかるみや根につまづかないので効率が良い。

何より大森林の木々は指くらいの細さでも人一人の体重を支えられるくらい頑丈だった。


「お上手ですわ!」

「よっと、、、予想以上に樹木が頑丈なので安心して進めるおかげです」

「大森林は木々の種類が豊富ですの・・・だから英雄連邦では木々をつかって魔道具を作りますの!」

「木々で?」

「あら?鉄よりも固い木なんてこの大森林ならいくらでも生息していますのよ?」

「へえ、、、」


石と鉄の街で育ったせいか、木には弱いイメージがあったが・・・

実際自分が掴まってる樹木はこんなに細いのに俺の体重支えられてるし、、、少し考えを変えなきゃいけないか。


「トツカさん、ストップ」

「え?いきなり・・・」

「それ以上進むと

「うわあ!???」

「いわんこっちゃないですの・・・」


スパパパパパンと掴もうとした枝に大量の矢が突き刺さる。

掴もうとした枝を掴めなくなってしまったせいで、バランスを崩してしまう。

結局地面へと着地することに・・・・・『義力行使』してなかったら大怪我もんだぞ。


地面へと着地した途端感じるのは多くの殺気。

『鑑定』をこっそりと周囲を確認するために使う。

どうやら木草藪の影に隠れるようにエルフたちが隠れていたようだ。

弓矢をこちらに向け、ギリギリと引き絞っている。


「「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」」

「落ち着きなさい」

「ブリジットさん」


ブリジットさんはふわりと魔術を併用して俺の前に着地すると、周囲のエルフたちに聞こえるように大声を上げた。


「ここはミレイナス村でよろしいですの?老巫女の孫娘、ブリジット・カトリアが遊びに来たと伝えて欲しいですの!」

「ブリジット様?・・・弓をさげて!」


指揮をとっていたリーダー格らしい黒エルフの女性が弓を手慣れた手つきで背中に背負うと、タタンと木々を跳ぶ移ってあっという間に俺達の前へと跳んできた。

本当に肌が日に焼けたかのように浅黒い、、、他のエルフも同様だが王国のエルフたちと比べると着物が少し先時代的だ。


「お久しぶりです、ブリジット様!」

「久しぶり、マイペル!でも、様は止めて欲しいですの、もう王国に所属する身ですし。」

「いえいえ、老巫女様のご血縁を呼び捨てなど・・・ところでそこの龍人(?)は」

「客人ですわ」


うっわ、急に話を振って来た・・・

しかもブリジットさんに話しかける時は緩み切った頬だったくせに、俺に話しかける時だけはちょっと怖い・・・


「そうですか、、、、ご客人」

「は、はい!」

「ブリジット様が説明し忘れていたのだろうが、警戒線を許可無く越えられるとこちらも攻撃せざるを得なくなる・・・・今度からは気をつけてくれ」

「・・・すいません」


移動に集中し過ぎて、『鑑定』発動してなかったな・・・『義力行使』と併用すると疲れるからあまり使わないんだよなあ。

少し気をつけよう。

俺が謝罪したので少し気を良くしたのか、彼女は立ち上がり周囲のエルフたちに元の位置に戻るよう伝えた。


「では、ご案内します。」

「あら?二人で大丈夫ですの。」

「いえ、そう言うわけには・・・・」

「じゃあ、お願いしますの」


明らかにブリジットさんより年上だろうマイペルさんがぺこぺこしている。

警戒線から村まではそれほど距離がないのかマイペルさんの案内で整備された道を歩くことになった。

ゆっくりと歩くだけなら、体に負担のかかる『義力行使』を使う必要もないので解除した。


龍人と人間の違いは基本的には龍応石が左肩にあるかないかなので、外から見れば人間に見えるはずだ。

村に近づくに連れ白エルフや黒エルフの狩人がチラチラと見え始める。

彼らは俺の様子をチラチラと見はするものの、外の者しかもエルフでないものがいるというのに嫌悪や怒りといった感情を持つ者は見られなかった。


「・・・?」

「不思議ですの?」

「ええ、、、排他的だと聞いていたので」

「英雄連邦の主流はエルフ以外の排他主義だが、ミレイナス村のように大森林の外に出る選択はせずとも、王国に友好的な村落もあるということだ。」

「へえ・・・・」


そういえば、ここ数か月戦争があったというのにここら辺はあまり戦争の傷跡がないな・・・

電撃作戦でその主流派の住む地域が戦場だったのだろう。

そして元から王国に友好的だった村落は戦場にならないよう手厚く保護されたと・・・


ミレイナス村は龍人の郷火山支部を少し思い出させた。

村と言うよりは大きいが街ほどの大きさはない村。

木の壁で周囲を覆い、木々や藁を用いた家屋が立ち並ぶ。

どうやら目指すべきはその村の奥らしい。


「さ、、、老巫女様はいつもの場所です。行きましょう。」

「ええ、そうですの」

「俺はどこかで待ってた方がいいすか?」

「いや、客人は一度老巫女様に面通しするのが慣例だ。ついて来てほしい。」

「あ、了解です」


気を遣ったつもりだが、そういう事ならいかなきゃな。

村の中をマイペルさんの形の良い尻を追っかけながら進む。

ブリジットさんの言う通り本当に木々を素材とした魔道具を作っているらしい。

あちらこちらに木製魔道具の反応が見える。

サクラの剣やブリジットさんの武器に応用できるかもしれないし少し学んでいきたいな・・・


「老巫女様って村長的な役割なんですか?」

「どちらかというと目付ですの」

「へえ」

「・・・・・・・・」


わざわざ門番エルフ二人が立つ屋敷の門。

マイペルさんは彼らに挨拶を簡単に済ませると要件を述べる。


「先に連絡が言っていると思うが、ブリジット様と客人が老巫女様へのお目通りを願っている。」

「ご苦労、既に老巫女様はお出迎えの準備をされている」

「では、引き続きよろしく頼む。」


お出迎えって、、、馳走でも用意してくれているのだろうか?

・・・てか、孫娘一人が会いに来るだけでめんどくせ。


「えらく大層な方なんですね・・・」

「ふふふ、、、老巫女様はもっと人付き合いに明るい方ですの!」

「そうなんすか?」

「ええ」


ブリジットさんのそれはフォローか?

全くどんな人か想像がつかない。

マイペルさんの案内で屋敷を奥へ奥へと進んでいく。


木々を中心に作られた屋敷であるが木々の所々に彫刻が施され、今まで見たこともない不思議な雰囲気を感じた。

うん、、、、これだから外に出るのは楽しいんだ。


「ほら、見て下さいましトツカさん」

「え?」


ブリジットさんに促された方向を見る。

恰幅の良い中年のおばちゃんがツボの中に手を突っ込んで一心不乱にかき混ぜていた。

意外と作業は大変なのか汗をだらだら流している。

使用人の人か?


「なんか壺の中で珍しいもの造ってるんですか?」

「?・・・いえ、作っているのはこの村では普通の保存食ですの。」

「・・・・・・・へ?」


使用人らしき辛うじて耳の形からエルフと分かるおばちゃんは俺達がいるのに気付くと満面の笑みでブンブン手を振り始める。

そして手の腕の動きに合わせて二の腕の肉もぶるぶる揺れる。


「ブリジットちゃあ、よう来ただね!」

「お久しぶりです!」


・・・・偉く仲が良いんだな。

ブリジットさんはおばちゃんに飛びつくように抱き付く。

大熊と少女くらいの背丈の差があるな・・・・ブリジットさん潰されやしないだろうか・・・

呆れるくらいの体格差に苦笑いを思わず浮かべていると、俺の隣に立っていたマイペルさんがゴホンゴホンと咳きをした。


「おほん、、、、客人。」

「なんですか?」

「一応言っておくが、、、あのお方が老巫女様(・・・・)だ。」

「・・・・・へ?」


あの、、、おばちゃんが、、、老巫女?

そう目で尋ねるが、マイペルさんは真面目な顔で首肯した。


「えええええええええええええええええ!??????」


・・・・・・外の世界はまだまだ驚くことばかりだ。

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