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異世界でもう一人の俺が暴れすぎてキチガ○と呼ばれている件について  作者: 浅き夢見む氏
第五部:かつて交わした約束は曖昧なままで心に残る<王国編>
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EPILOGUE-FIVE教暦880年、異世界

―帝国の国境線―

紫髪の美少女と露出の派手な美女。

二人に共通する特徴は魔族ということと、、、


「情報を聞いたときにある程度は覚悟してました・・・けども想像以上ですね。」

「あの時感じた違和感は見逃してはいけなかった、、、イレギュラーはやはり見逃してはいけないものでした。」

「「・・・・・・・・・」」


二人ともそれから言葉はなかった。

二人の前には広く深く広がる崖。

そしてその底には轟々と荒れ狂う黒い大渦。

濃密な魔力が満ち溢れており、身体に人間の数倍の濃密な魔力を抱えているはずの魔族の彼女らでも鳥肌が立っていた。


「ソーラ、、、大丈夫ですか?」

「すいません、、、つい。もう大丈夫です。」


王国と帝国の国境近く。

本来人が寄り付かないはずのその場所に何故か木造りの二階建ての一軒家。

その建物からよろよろと美少女が一人出てきた。

異世界では珍しい黒髪黒目の少女。

しかしその美貌は空気中に華を蒔くほどだった。

魔力によって弱った姿ですら寧ろ可憐さを引き立てる。

・・・・・同性ながら何故ここまで差がつくのだろうかと魔族二人がため息をこぼす。


「?・・・どうかしました?」

「「いいえ、、、なんでも」」

「?」


狙ったわけでは無かろうが、少しだけ空気が弛緩した。

ソーラはなんだろうと疑問に思いつつも、再び死の崖を覗き込んだ。

そしてうっと再び気持ち悪くなったのか眉をしかめた。

インモラルは彼女が死の崖へと気を失って落ちていかないようにしっかりと彼女の肩を掴んだ。


「ありがとうございます・・・・」

「魔族でも気分が悪くなるんです、、、あまり無茶してはいけませんよ?」

「いえ、、、そっちは大丈夫なんです」

「「?」」

「これを、、、、あの男の人がしたんだって考えると、、、、気持ち悪くなっちゃって」

「・・・・・・どういうことですか?」


アンナは少し身を乗り出し気味に尋ねた。

人心掌握こそが最大の武器である彼女にとっては敵の心を知ることは必須のことであった。

ソーラは少し迷いながらも言葉を紡ぐ。


「辺境伯直轄領にいた頃のあの人は、、、確かに、、、同じ黒雲を使っていたし、、、周囲に迷惑をかけてばかりでした。けどもこの魔術からは、、、あの時とは違い気持ち悪くなるくらいの強い感情が読み取れます。」

「感情・・・・・」


インモラルはかつて彼女の涙に誘発されて自分も涙を流したことを思い出した。

ソーラ自身も知らない彼女自身の秘められた力が感情を読み取ることを可能にしているのかと思った。


「強い、、、覚悟です。濃密で、、、呑みこまれてしまいそうなほどの強い覚悟。それで獣の本能と誰かを守りたいっていう強い理性が奇跡的な矛盾がここまで上手く混ざってる・・・」

「・・・・・その表現ではよく分かりませんね。ソーラ、もう少し簡潔に。」

「・・・・はい。」

「インモラル、、、ソーラ自身も混乱してるんです。ソーラは先に魔国に戻っていてください。続きは魔国で」

「は、、、、はい」

「「・・・・・・・・・・・」」


ソーラはフラフラと逃げ込むように小屋の中へと入っていった。

インモラルは小屋に彼女が入り込むのを確認すると少し責めるような目でアンナを見た。


「折角イレギュラーを探るチャンスだったのに・・・・」

「そうでもありません、寧ろようやく黒の勇者の全容がはっきりしました。」

「本当ですか・・・?」


アンナは敵のことを語るはずなのに少し楽しそうに語り出す。


「黒の勇者は一度二度会ったソーラでも分かるくらいに優しい人物なんです。おそらくですが人を殺すことも躊躇うくらいに。」

「ですがこの魔術によって、、、帝国でどれだけの数の人が今後犠牲になるか・・・」

「王国との戦いで自分の弱さを乗り越えたのでしょう・・・」

「龍人の郷であのイレギュラーの人間性は私も確認してましたが・・・あのクソ甘さが変わるなんてそこまで厳しい戦いが?」

「イレギュラーが引き起こした動乱でしたから詳しくは分かりませんが。でも、それならソーラのあの動揺も説明がつきます。」

「・・・・・『あの優しいはずだった人がどうしてこんなことを』と?」

「そんなところでしょう。」


帝国から水を可能な限り搾取し、、、そして人々を内乱へと駆り立てた。

そして他国への介入自体まで封じるこの策は、、、逆に言えば力なき帝国民が外へ避難することも許さない。

それだけのことを分かってなかったはずがない。

つまりサクラ=レイディウスという黒の勇者は遂に守りたい者の為なら、残酷な魔術を使うことを躊躇わない覚悟を持ったのだろう。

より厄介なイレギュラーになったものだと、、、インモラルはため息をつくのだった。

しかしそれよりも、、、とアンナは二冊の日記帳を取り出し二冊を見比べはじめた。


「大幅に歴史が変わりますね・・・帝国から始まる『パンデミックアウト』は国境がこうなってしまった以上帝国の中だけで済みますし、『曇雷戦争』も黒の勇者の出方次第では起こるかどうかも・・・」

「まあ、『パンデミックアウト』が魔国に及ばないと分かっただけでも良かったと言えるでしょうか?」

「そうですね、、、どうやって対策を練っても同志たちを全て守り切れることは出来ませんでしたし」


アンナは修正ラインを『二巡目』の方に記しながら歩き出す。

インモラルはそんな主人の後ろ姿を見てやはり神に選ばれた人だと確信を持った。

・・・・っと、小屋に入ろうとするアンナの足は『二巡目』に修正を入れながらパラパラと『先』を確認している時に気付いたことがあったようで急に立ち止まった。


「そろそろソーラを共和国へ連れていってください。一、二か月後には『あの人』が出てきます。」

「・・・・ついにですか!!!」


インモラルは溢れる唾液を一度呑み込んだ。

ずっと興味を抱いていたのだった。

アンナがこれだけの被害を既に引き起こしているサクラ=レイディウスや帝国雷の勇者を優先度S(・・・・)にしている中で、、、、『あの人』とやらだけは優先度SSS(・・・・・・)にしていることから。

そしてその人物がソーラを気に入りこちらにつくと断言しているということから。


「インモラル、、、行きますよ?」

「は、はい!」


インモラルの興味は既に『あの人』に移っていた為に、アンナの顔を見ることは出来なかった。

見ていたら、、、、幻想は打ち砕かれただろう。


「・・・・・・・・・・・」


カリカリカリカリカリ

カリカリカリカリカリ

カリカリカリカリカリ

カリカリカリカリカリ


泣きそうな顔で、、、必死で『二巡目』のノートを修正しているアンナの姿を見てしまえば、、、必ず幻想は打ち砕かれていただろう。

しかし、アンナにとっては『まだ』これくらいの絶望は絶望ではなかった。

インモラルが我を考え事から取り戻すまでの一瞬で、、、いつも通りの笑顔になっていた。


「うん!黒の勇者の強さは少し想定を超えてましたが、今までノーマークだったため把握出来なかった彼の人間性は理解できました!それだけでも収穫でしょう。」

「はい、アンナ様!」


笑いながら彼女達は小屋の中へと入っていく。

そして数瞬の後、、、小屋は静かに、、、周囲の生物にすら気づかせることなく忽然と掻き消えた。


―大陸上空―

特殊な迷彩と最高レベルの幻惑魔法で隠された高度教育機関があった。

共和国に教暦795年に設立され、、、そして『政治的圧力からの独立』を謳い空へと飛んだ魔術学院。

名をミリュシオン魔術学院、基本的に『暗黙』の中立地帯とも呼ばれる。


ドワーフの建築技術にエルフの魔道具技術。

魔族の魂術に公国の商業術。

帝国の軍人学に教国の神理学。


各国が興味を持ちつつも容易には手に入れられない技術をその学園の存在を許容することで学び取る。

正式な所属は共和国でありながら知識を得る為に各国の空を飛び、各国に自由に降り立つことを許容された大陸唯一の学院だ。


各国からのそれなりの援助と研究の成果の売渡しを主な収入として、ミリュシオン魔術学院は非常に豊かな設備が整っている。

常は雲の上を飛んでいるにも関わらず、環境は快適。

空気の薄さも上空に存在する高圧気流も強い日射も周囲に展開される風の結界が中和している。


「ミリュシオン学院長。」

「・・・・どうした?」


学院の施設でも一際豪華な屋敷。

学院長の本邸。

学院の中でも大きな権力を持つ教授の一人であるシレア・レイオスは目の前の男性が一体何をしているのかを不思議そうに見つめた。

三代目学院長ライカ・ミリュシオンの研究室の中は普段は秘書に整理整頓されているはずなのにたっくさんのガラクタが集められていた。

彼女の視線がガラクタに向けられてるのに気付いたのか、学院長はそのうちの一つを放った。


「食ってみろ」

「・・・・え?」

「食糧研究の一環だ。」


・・・・・鉱石のようにごつごつした見た目のそれをどうやって食えばいいのか?

シレアは探求を主な命題とする学院に所属する身であるが故、自身も好奇心が人並み以上であることを自覚してはいたが流石にこれが食べられるとは思えなかった。


「・・・・・・本当に?」

「ああ、本当だ。」

「・・・・・あむ」


先っぽをペロペロと舐めてみる・・・しょっぱい。

少し磯のような変な臭いまでする・・・・・

しばらくそうしてみたが、やはり齧って咀嚼しないと分からない。

覚悟を決めてかぶり付いた。

塩っ気のある表面がぬるぬるっと口の中で剥がれて、、、シャリっと甘い感触に変わった。


「・・・・・果実?」

「ああ、、、見た目はともかく鉱石から果実の錬成の方向性が固まったよ。」

「はあ、、、、」


そういえば最近はそんな研究をするとか言ってたなとシレアは思い出した。

それと同時にもっと別の研究をすればいいのにと才能の無駄遣いを嘆いた。

ライカ・ミリュシオンは高名な魔術師で優秀な研究家であると同時に相当な気分屋でもあった。


「・・・で、何でそんな研究を始めることに?」

「そろそろアリアが帰ってくる」

「・・・・そうなんですか、道理で。」

「あまり嬉しそうじゃないな?」

「あの娘が帰ってくることは嬉しいんですけど、学院長が自分の授業を放りっぱなしであの娘に構うから・・・」

「・・・・・・・き、気をつけよう」

「そう言いながら彼女が前回帰って来た時は、殆どの授業を結局私が引き継ぐ羽目になりましたけど?」

「・・・・・・・・・・・・」


学院長はシレアからそっと目線を外した。

シレアはいつものことかとため息をつく。


「そ、そういえば何の要件だ?」

「・・・・・ああ、そうでした。これを学院長にと。」

「・・・・・・・・?」


シレアは学院長宛ての手紙を手渡す。

念入りに封がされていた。


「共和国から・・・?」

「魔道具経由による速達でした。」

「・・・わざわざ?」

「わざわざです。」


学院長はめんどくさそうに手紙の封を切り始める。


「・・・本人確認の魔術まで・・・めんどくさい・・・共和国は相変わらずミリュシオンとの関係が密接であることをアピールしたがっているようだな・・・・たく。」

「まあ、、、起源は共和国ですし、支援金も出していただいてます。ある程度はリップサービスをお忘れなく」

「分かっている・・・・・とはいえこの手紙も恩を売るためか御大層なラブコールかのどちらかだろう、どうせ・・・」

「緊急の要件かもしれませんよ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「学院長?」

「・・・・・・・・・・・アリアが帰ってくるわけだ。」

「?」


今まで穏やかな表情だった学院長は手紙を読み終ると真剣な顔に。

彼はニ三語呟くと手紙をさっと燃やしてしまった。

シレアが目を見張る。


「シレア」

「はい」

「先月と今月の入学者のリストを集めなさい。」

「・・・・分かりました。」


学院長が真剣な顔で言うものだからすぐにシレアは学院長室を飛び出していった。

彼女が部屋を出た後、彼は疲れた様子で研究途中の鉱石へと齧りついた。

甘いものを咀嚼する音が響く、、、なのに彼の表情は苦々しげだった。


「・・・・・最悪だ。」


そう呟く声は酷く重々しかった。



―海民連合―

「ふああああああああっ」

「寝すぎだよ、アニデシっ!」

「ふぁい、ふぁい・・・・」


くっそ眠い・・・・・

昨日はほぼ完徹で帝国を探ってたからな・・・・

アリア、ティアラと共に雷の勇者を探しに帝国の隣国である海民連合に来て、毎日『曇感知≪サーチ≫』で雷の勇者が帝国のどこにいるかを探っていた。

結果は・・・今の俺の体調を見れば分かるだろ?


ティアラに叩き起こされることにも慣れてきてしまった。

てか、懐かしい感覚を味わっていた。

昔、朝顔に叩き起こされた感覚を・・・・・うん、懐かしい。

そう言えばさ、桜・・・朝顔は元気か?


感覚が通じてなかった。

確かにラインは通じてる。

なのに、、、、投げかけたものはどこか遠くに投げ捨てられたかのように届いた感覚がなかった。


「・・・?」


桜、、、お~い反抗期か?

いくら呼びかけても反応がない。

・・・・・・・・・・ツバキを王国に置いていったことが悔やまれるな。

多分門を通じて異世界に来ていた時から、寝て起きてで異世界に来れるようになったように『何かが』変化したんだ。

そのせいで桜とのバイパスが不調になってるんだろう。

・・・・下手にこちらから王国へ移動するよりもツバキから連絡が来るのを待った方が早いか。


「兄デシ、、、ご飯だってさっきから言ってるヨネ!」

「んああ、、、、分かった。」


何故か寂しい感覚がした。

けども、考えないようにしていたのだろう。

俺が如峰月桜が死んだことを知るのはまだ先の話・・・・・・・・

種族:ホモ・サピエンス

年齢:16

職業:曇の奇術師

冒険者クラス:上級冒険者

本属性:曇(黒) 補助属性:

本質能力:『補助する鬼才≪サポート・ギーニアス≫』


スキル:【発動級】『曇の壁≪ウォール≫』『黒曇衣≪コート≫』『曇の雨雨≪スコール≫』『曇の沼≪プール≫』『曇の一撃≪ショット≫』『曇の増成≪パンプアップ≫』『黒雲の蓑≪ミノムシ≫』『曇の支配権奪取≪ハッキング≫』『内在型身体強化』『動く曇道≪オート・ステップ≫』『曇の陶器≪クラフトワークス≫』『曇の小雨≪ウォーター≫』『曇感知≪サーチ≫』『曇靭紐≪クラウド・ワイヤー≫』『曇震伝波≪ドンシン・クロッシング≫』『浸みこむ曇≪ソーク≫』

【詠唱級】『曇神の審判≪クラウド・ジャッジ≫』『曇神宮の柱≪クラウド・ポール≫』『壊れるまで叩きつけられる曇神の破城槌≪エンドレス・ハマー≫』

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【発動級】

『二重混合型強化≪ミックス・アップ≫』

『曇震双撃≪ツイン・インパクト≫』

『曇の洪雨≪メガ・スコォォォォル≫』

【詠唱級】

『積乱曇≪ミキサー≫』

称号:なんちゃって異世界人 災害指定生物 ロリコン疑惑 変態 キチガイ パーティー結成おめ 失い人 エロい人 自己犠牲の塊 疑心暗鬼 世界からあいらぶゆー!疑似暴走魔力適合者 外見悪役 奇妙な友情 指名手配 窃盗未遂 ミルの舎弟 連続強姦未遂 痴態公開 主人公を志す者

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我儘少年「主人公で我儘でキチガイでって・・・つめこみすぎでしょ」

覚悟を決めた者「その覚悟が貴方に何を課すのかは、、、あなた次第」

黒の勇者「王国三代目勇者」

兵装:『大魔法玉』-白玉の強化バージョン。強化・巨大の関係上あまり多くの数は持てない。 

   『斬篭手』―自由に形状変化可能、斬龍の刀術をなぞれる。

装備:軽剣士用の軽めの衣服

特記:魔術の失敗で右目を欠損。現在は視力と見た目を復元する特殊な義眼を仕込んでいる。


第五部終了!

ここまで読んでいただき本当にありがとうございました!

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