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異世界でもう一人の俺が暴れすぎてキチガ○と呼ばれている件について  作者: 浅き夢見む氏
第五部:かつて交わした約束は曖昧なままで心に残る<王国編>
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第6章本当は誰にでも出来ることpart1

俺は主人公になりたかった。

けどもなれなかった。

それでも少しでも少しでも彼女のためにできることを・・・



彼女を守るためだけのものだったはずのその剣はあの娘に希望を与えてしまった。

希望を与えた責任、それは俺にとっては無視できないものだ。

だから・・・・



君と口づけを交わした以上、もう元の関係には戻れない。

そして戻る気もない。

これはひっどい俺が唯一抱え込んだ『醜くて厄介でちっぽけな』覚悟でプライドだ・・・・










クリスマスが過ぎ、正月をなあなあに過ごして気づけば二月になっていた。

俺、如峰月桜にできたことは『入れ替わらない』という選択肢だけだった。

空木は俺のその答えを聞いてそうかと短く答えただけだった。

それ以来連絡はない。


でも、俺は納得していた。

アイツと話した後は見ようとしてなかったものが見えているせいか、寧ろすっきりしていた。

けどもその分、、、自己嫌悪が増していた。

見ないようにしていただけで見えていたんだ。

伊月も優子も多分・・・俺を・・・

なのに俺は・・・わかってた・・・はずなんだ・・・


俺のなけなしの『ナニカ』は、、、朝比奈楓一人だけに向けられていた。

俺のなけなしの『ナニカ』を、、、少しも伊月にも優子にも向けてあげられなかった。

俺のなけなしの『ナニカ』へ、、、ただただ怒りを感じる。

泣き叫んで、自分を傷つけたくなるほどに、怒りを感じる。

それでも俺は・・・・・・



気づけば16になっていた。

学力は上がった、去年よりもいろいろ物事はわかるようになってるし、体力とか根性も去年よりついている。

けども根本的な、、、俺を形作る魂はむしろ劣化していた。

嫌な人間になりつつあることを自覚していた。


もう一人の俺がキチガイと呼ばれながらも、自分の魂に従って輝いているのに・・・

その彼と約束したことを少しも現実(ココ)で果たせていない。

寧ろ遠ざかっている・・・・・俺の本物の望みから遠ざかってる。


なのに、、、、なのに、、、、

なんで、、、、、なんで、、、、

朝比奈楓だけを見ていなければいけないはずなのに・・・・・そうであるべきなのに・・・・

俺は、、、、何故今までの俺は、、、、こんな状況で、、、、満足していた、、、?








「バレンタインだ、受け取れ童貞共!」

「「・・・FUCK(うわあ!ありがとうございます!手作りですか、すごい凝ってますね!)」」

「素直じゃないなあ、童貞共!」


生徒会室で古畑さんがチョコを放ってきたので頂戴した。

今日は2月14日、バレンタイン。

童貞共という罵りさえなければ歓喜してチョコをいただいただろう。


「お返しは三倍返しでいいよ~」

「「あざまーす」」


早速おやつも兼ねて開けさせていただく。

古畑さんのくれたトリュフチョコを口で溶かしながら生徒会の資料を片付けていく。

古畑さんは基本なんでも出来るのか美味かった。


「美味いっすよ、古畑さん」

「うん、美味しいね」

「でしょう?ふふーん♪」


古畑さんは大きくのけぞるようにドヤ顔すると、ところで・・・と二ヤアと笑った。


「そういえば今年はいくつもらったの?」

「「・・・・・・・」」


時が停まった。

新聞君はガタガタと震えだし、俺は冷や汗が止まらなくなる。

古畑さんは聞いてはいけないことを聞いたとガタガタ震えだす。

気のせいか、部屋の温度が下がった気がする。


「ぼ、ぼくはですね、、、」

「「言わなくていいから!」」

「聞いてくれよぉ!このチョコをもらった経緯を!」

「「そんな必死の形相になるような話なんて、、、き、聞きたくない・・・」」

「酷いや!」


どうせ小陽ちゃん絡みだろ?

すごおおおおおく!優しくされながら甘ったるいホワイトチョコでも渡されたんだろう。

可哀想に。

てか、小陽ちゃんはバレンタインとして渡したのか嫌がらせとして渡したのか判別つかんな・・・・


「本命?」

「特別だって・・・・僕のは・・・・」

「・・・・あ、俺のもあるんすね。」

「そりゃあそうでしょ」


新聞君は資料片手にもう片方の手は既にホワイトデイのパンフレットを抱えている。

小陽ちゃんに何を渡すかによっては命に関わるからか、必死の形相だ。

俺の方は市販だったが、新聞君の方は手作りらしい。

これはもう・・・・確定でいいんじゃないだろうか?


「古畑さんはどう思います?」

「ふぇっ!?」

「・・・・」


夢見がちな純情処女め・・・・

そっかあ、小陽ちゃん渡したんだぁって真っ赤な顔になっていた。

新聞君と小陽ちゃんの問題なんだし当人で気付かせたいのにこの人は・・・・

幸運なことに新聞君は古畑さんの顔を『そう』は捉えなかったらしい。


「・・・・絶対小陽ちゃんは僕が慌てふためく姿を愉しんでるよぉ」

「取り敢えず顔洗ってきな?」

「うん・・・・」


新聞君はホワイトデイのパンフレットを握りしめ、もう片方の手には小陽ちゃんのチョコを抱えゆらゆらと外に出ていった。

・・・・・・・何も知らない人が見たらものすごい変人に見えるだろうなあ。

古畑さんはようやく復活したのか、今度は矛先を俺に変える。


「如峰月君は?」

「椿から一個、、、後は郵送で冴突師恩から来てましたよ・・・古畑さんそっち方面弱いくせに、よく突っ込んでこれますね?」

「高校生なら誰でも好きだろ、こういう話?」

「・・・・まあ、そうっすね」


新聞君と小陽ちゃんの話は正直楽しんでしまってる節はある。

ほほえましく、応援したくなる・・・つい手を出し過ぎて邪魔してしまってるが。

なにより彼、彼女の関係はまっすぐで分かりやすい。

だから明るい気持ちのまま見ることが出来る。


「・・・・・・・・君は?」

「・・・・・お見通しですか。」


彼女と彼女と彼女は今日生徒会に来ていない。

恐らく・・・・渡すかどうか葛藤しているか、トラブルがあったか、今日に限って忙しいかだろう。

こういう日に限って彼女達の運はしつらえたかのように悪い。


「君は正月頃から何か達観したかのような顔をしてるね。」

「・・・・・・・そっすか?」

「あまりよくないよ、、、、そういうの」


古畑さんが珍しく渋い顔をしている。

・・・・・笑顔で人を酷使する彼女がだ。

それほど・・・・俺は変だったろうか?

頬を手で撫でてみても汗で湿った頬は少し冷たいだけだった。


「俺も顔を洗ってきます」

「・・・・・ん」



雪はまだまだ止まない。

電車が遅延する時だってある程だ。

最後の追い込みをかける為に自学室にでもいけば沢山の三年生たちがいるだろう。


後二年もすれば受験を俺もしているのだろう。

・・・とはいえ進学する気はあるが未だにどこに行きたいか自分でも分かっていない。

てか、今でさえどうすればいいか分かってない。


冴突師恩はいつの間にか俺の名前を知っているわ

なのに如峰月水仙は卒業後は『戻ってこい』だとか連絡を寄越してくる。

何がどうなってるかも分からない。

しかも大切な人が多すぎて何からすればいいかもわからなくなってしまった。


なのに何もしなくても惰性のように時は進む。

刻一刻と『何もしなかった結果』が迫ってきている。

ジリジリと背中は焼かれ、なのに目標を向いて走り出せない・・・一体俺は何なんだ。




「如峰月・・・今大丈夫か?」

「伊月・・・どうした?」


洗面台で顔を洗い、外に出る。

トイレに行ったはずの新聞君はいなかった。

どこに行ったのやらと思いつつ生徒会室に戻ろうとしたら、伊月が胸に包みを抱えて待っていた。


「これ・・・いつもお世話になってるから」

「お、本命?」

「な、なわけあるかっ!」

「んだよ~ま、ありがとう。」


真っ赤になってぎゃんぎゃん吠える彼女から、包みを受け取る。

袋を開けて中を確認する。

さまざな種類のチョコが積めあわされていた。

一つ取り出して口に含む、、、市販のチョコだ。


「ほっ・・・」

「如峰月・・・手作りじゃなくて良かったとか思ってないか?」

「ははは・・・・」

「まあ、いいが・・・・」


伊月は少し頬を膨らませる。

長い黒髪の左側だけ編み込みを入れた髪を弄るその姿は立派に女の子だった。

伊月はそこで何か思いついたのか非常に俺に嫌な予感をさせる笑みを浮かべる。


「なあ、、、ホワイトデイはいいから一本やらないか?」

「・・・・・・」


そして相変わらずの剣バカだった。


「ま、、、一本だけな。今のお前とは体力勝負したら絶対負ける」

「そうか、、、、え?いいの?」

「第三体育館なら人もいねえだろ・・・剣は?」

「・・・・・すぐに持ってくる!」


彼女はそう言うと嬉しそうな顔で走っていった。

・・・てか、生徒会会館に凶器を持ちこんでんのかお前は。






「久しぶりだな!」

「そうだな、、、夏以来か?」

「そんなに前だったか?つい最近やった気がする。」

「スーザ先生と毎日やってるからだろ?俺の剣術はあの人から教えてもらったし」

「そっか、なるほどな!」


第三ともなると流石に人がいなかった。

まあ、、、見世物にする気もなかったからこれで良かった。

人が出入りしてないせいか暖房も電灯もついてない。

二人とも手にするのは少し太めの木刀。


素人が使うなら危険だが、俺と伊月の場合真剣でちょうどいいくらいなのでこれでいい。

軽く体を温め、伸ばし各自で体を馴らしていく。

・・・・剣がどれくらいの大きさか、そしてどれくらい稼働させられるかを入念に見ていく。


「如峰月、今日は優しいな」

「バカ言え、俺はいつも優しいだろ?」

「・・・・・・・」

「おい、なんだその無言の優しさは」

「バカなこと言ってないでそろそろヤろう!」


女の子がヤろうとか言うんじゃありません・・・

しょうもなくとてつもないバカなことを考えながら、木刀の感触を何度も確かめる。

うん、、、、これなら『思いっきり』使えそう。


伊月が凄くご機嫌で剣を構えてくる。

枠も何もなく、体育館全体を場にするらしい。

冷たい息を吸って、熱くして吐き出す。

そろそろ・・・・・いけるか。


「うし、来い」

「ああ、、、、行くぞ」


伊月が床を体育館中に響くほど強く蹴る。

長い黒髪がふわっと視界を埋め、そして黒髪を掻き分けるように木刀が現れる。

持ち上げた剣が間に合わず、上手く受けられない。

てか速っ!?


変な受け方したせいと、伊月の剣力に押し負けたせいで剣が押し下げられる。

そして俺の剣を地に叩きつけた伊月の剣はまだ俺に向けられたまま。


「もらった!」

「!?」


首筋へとせまる木刃を振るう右拳を包んで強くグリップ・・・そして腕をぐっと張る。

ミシッと嫌な音をたて、あちこちの腕の関節部が外れそうになるが・・・・物理的に剣は届かない

たたらを踏むがそれは伊月も同様なようで、、、どちらもふらつきながら後退する。

強引に剣を処理した右腕はともかく、利き腕は無事だったので今度はこっちから・・・と思ったら伊月が顔を真っ赤にして右手を抑えていた。


「どうした?」

「・・・・・手を握るのは反則だろっ!!」

「そうでもしなけりゃ首チョンパされたよね!?」

「でも、、、でも、、、!」

「わーった、わーった!もうあの技は使わないから!」

「当たり前だ!」


・・・・気が抜ける。

スーザ先生もたまに使う技じゃ・・・・・・いや、俺が悪かった。


「うし、、、落ち着くまで待つから、、、」

「う、うん・・・」


伊月がするすると腰を下ろしてしまい、剣を地につける。

俺も剣を地に置き、どかっと座ることにした。

伊月は相変わらず立ち直れないようで俺も所在無げになってしまう・・・

スマホとかは邪魔になるから置いてきちまったし。


「ふう・・・」

「如峰月」

「ん?」

「夏の頃より・・・・剣術の幅が増してないか?」

「・・・・・素人みが増したからだろ?」

「そうかな?」


斬龍の刀術やら天使メルキセデクの戦い方をサクラと共に学んできた。

魔術をあまり使用しない俺ではあまり活かせないことも多かったが、体の中に確実に蓄積していたらしい。

正直『斬技』も劣化版の『龍の剣術』も出来るとは思えんしな・・・


「そろそろやりなおそーぜ」

「うん」


構えた剣二つ。

このまま磨かれることなく腐る剣とこれから輝き育つ剣。

場所も恵まれず、観客にも恵まれず。

時も何もかもが満ち足りず恵まれず・・・・・それでも伊月は楽しそうに剣を振るっていた。





熱いシャワーを浴びながら思いに耽ける。

汗が溶け、熱が体に溜まっていく。

冷たくなった肌に少しずつ心地良さが取り戻されていく。


私は勝った。

・・・・勝った。

その満足感は正直あまりなかった。


如峰月は確かに強かったけど・・・・私が強くなったせいかそこまで手強くなかった。

この満足感は多分・・・・・勝ったことにじゃなく

おそらく・・・アイツと剣を交えられたこと

そのことに対しての満足感だ。


じゃあ、、、、私の、、、望みは、、、あいつと戦うこと?

いや、、、、本気の本気の殺し合いをしたあの時はこんなに満足しなかった。

あの時はただただ謝罪の気持ちしかなかった。

今日みたいにこんなに楽しいだなんて初めてだ。


なんでだろう、、、、なんでだろう?

すごく、、、たのしかった。

彼が私だけを見てくれて、、、、私だけを気遣ってくれた。

私にだけ言葉をかけてくれていた、、、あの瞬間。

天にも昇るくらいの満足感があった。

多分、、、この気持ちは・・・・・・








「ふう、、、、」


シャワーを浴びてすっきりはしたものの、身体はガタガタだった。

コーヒー牛乳をチビチビ呑みながら、後悔していた。

何で一本だけとはいえ決闘をすることを認めてしまったのだろうか?

感覚鋭敏化が体に残ってしまったし、久しぶりの全力運動で体はとても痛い。

伊月もこんな時に限って一斬り、一突きが冴えわたってたし。

なにより負けちまうし・・・・・・


だが、、、あんな嬉しそうな顔されたらな。

もう少しだけ頑張ってみようと思わされてしまった。

・・・・・・・それは本物の俺の気持ちだった。


「あの~」

「藤堂勝海、、、、どしたん?」

「今度やるイベントの許可を頂きに来たんです。」

「イベント、、、俺から渡しとくよ。」


藤堂勝海から琴部のイベント告知を受け取る。

そっか、、、部員もっと増やすなら今からイベントバンバンやって知名度上げてかないとか・・・

新聞部もなんかでっかいことしないと来年の部員集めにくいし見習わないとな。

でも新聞部でデカいことっつうとテロや犯罪しか思い浮かばない・・・・・しかもうちの部はそれが本当に出来るから恐ろしい。


とりあえず古畑さんに任せてしまおうと考えを打ち消す。

生徒会室にその広告を持ってこうとしたら、藤堂勝海は何故かまだそこにいた。


「・・・何でまだいるんだ?」

「いや、、、さっきの試合を見てしまって・・・」

「・・・・何か頭に引っかかったか?」

「いえ、、、あなた方がいう昔の私については何も思い出せなかったんですけど、、、一つだけ忠告しておいた方がいいかと思いまして」

「忠告?」


記憶もなくなり人格も変わったような奴が何を言いだすつもりかと思ったが藤堂勝海は思ったよりかは真面目な顔をしていた。


「あなたとあの娘の関係はよく分かりませんが、、、もう少しだけあの娘のこと見てあげてください。大事にしてあげてください。」

「・・・・・・・・アンタがそれをいうな」

「・・・・・・・・・私には今『侍従』としての僕の記憶しかありません。ですがもしあなた方の言う『兄』としての僕が本当ならば、僕はとても彼女を傷付けているはずです。」

「・・・・・・・・・・・」


頭を抱えてしまいそうになる。

それでも藤堂勝海の言葉は止まらない。


「あなたなら、、、あの娘を助けてくれるんじゃないかって、、、あの戦いを見て、、、そう思えました。今の私には美織お嬢様がいるのであなたが代わりに、、、、私のいたはずの立ち位置に立ってくださいませんか?」

「・・・・・・・よ」

「え?」

「あんたの元の立ち位置は泣いてる妹放ったらかして、引きこもってるだけだったって言ってんだよ!!!」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・すまん。」


唖然とした表情でポカンとしている藤堂勝海を置いて立ち去った。

今の俺はあまりにもアンフェアだった。

記憶もない奴を一方的に怒鳴りつけて責めて・・・・・最低だ。


何でキレた・・・・何で怒った?

何であんな小さなことで怒ってしまった?

分からない・・・・・分からない。







生徒会室に戻るとどんよりと重い空気が入る前から漂って来ていた。

・・・・・・・何があった。


「ちわーす、戻りま

「ほほほっほほおづきくううううんn!!!」

「まそっぷ!!」


なんか正方形っぽいものが顔にブチ当てられる。

硬い、、、そして痛い!

仰け反りながら後退して改めて押し付けられた物を見る。

って、、、プレゼントの包装紙、、、そして包まれたものは当然、、、、チョコだな。

・・・・・・押し付けられてぐっしゃぐしゃになってるが。


「またやっちゃった・・・・相手はあってたんだけどな・・・・」


俺の顔の形が刻み付けられプレゼントの様相をなしていないチョコ・・・

こんな凶行をするのは俺の知り合いの中には朝日奈さんしかいない。

予想通り朝日奈さんが顔に頬をあてて恥ずかしそうに、なのに少し嬉しそうにしていた。


「ごめんね、如峰月君!チョコ渡そうと思ったんだけど、ついね!」

「つい、、、、、か」


顔に包装紙ごとチョコを叩きこまれたうちの生徒会メンバーが力なく椅子にもたれかかってる。

・・・どんな力で押し付けられたんだ。

朝日奈さんはとことこと楽しそうに鞄に駆け寄ると、しっかりと包装がされた特別なソレを取り出した。


「はい、如峰月君!いつもありがとう!」

「・・・・え、本当に何個持ってきたの?」

「たくさん!でも特別なのは一個だけだよ!確実に間違ってもいいチョコ(義理チョコ)一個叩きつけて、誰か確認してから間違っちゃいけない方を渡そうと思って!」

「「「「「・・・・・・・・・・・(間違われた人たちの亡骸)」」」」」

「・・・・・・・・・そっすか!」


朝日奈さんからチョコもらえたし、もうどうでもいいわ!

なんか亡骸たちが・・・ふざけるなよと目で訴えかけてきてはいるが早速一個いただくことにしよう。

包装を開けようとして・・・俺は敢えてそれを止めた。


「朝日奈さん、本当にありがとう」

「うん!」


すっごくキラキラした笑顔を向けられ、体の奥から何かが湧き上がる。

心と体が一致するような、、、、歯車がかみ合うような錯覚。

凄くうれしかった。

だから頑張れる気がした。


「朝日奈さん、、、義理チョコの残弾は?」

「まだまだたくさんあるけど?」

「それも含めて三倍返しするしもらっていい?」

「うん、いいよ!」


朝日奈さんがドガンと机の上に90リットルの紙袋、、、そしてその中には大量の義理チョコ。

・・・・・どれだけ間違うつもりだったんだ?

取り敢えず彼女は少しでも落ち着きがあれば願う。

まあ、、、、ただ単純な話、俺が補えばいいんだが。

それで完璧になるほど彼女の器は満ち足りている。


「ありがとう、朝日奈さん」

「何度も言わなくていいよ~!」


彼女の声援を受け、俺は生徒会室の外に出る。

胸ポケットには彼女から渡された『特別なチョコ』

そして俺の右手にはずっしりと重い袋詰め。


「シュコー、シュコー」

「キヒヒひひひひっ!」

「水と食料とその、、、チョコを置いていきナァ!」

「ぶるるるんふぁっ!!!」

「・・・・・・・・・“ピッー(汚い言葉)”“ピッー(汚い言葉)”“ピッー(汚い言葉)”“ピッー(汚い言葉)”!!!!」


不可侵領域(生徒会会館)のギリギリのラインで、最近会員限定の特設ウェブサイトを開いたらしい、朝日奈親衛隊が全員集合していた。

そしてその最前列に立つのは・・・・一番の朝日奈楓キチガイ、『朝日奈冬夜』。


「姉さんのチョコは・・・いただく。」

「・・・・何故鷺ノ宮高校に入学してもいないお前が先陣切ってんだよ」

「心配せずとも来年度には鷺ノ宮生だ。」

「そう言う問題っすかね・・・?」


ざわざわと朝日奈親衛隊が武器を構え始める中、俺は折角なので聞きたいことを聞いてみることにした。


「なあ、、、朝日奈さんのこと好きか?」

「当たり前だ。」


朝日奈冬夜はそう言って首を縦に振った。

それならと、、、俺はさらに言葉を選ぶ。


「朝日奈さんだけをずっと見て、、、彼女の為だけに尽くせるか?骨も、身も、魂も」

「・・・何を言いたいか分からないが、お前が新聞部の力を借り生徒会を作る傍らで、、、お前に対抗するためにずっと朝日奈親衛隊で上に立とうと努力してきたんだ、、、尽くした実績に関してはお前には負けない・・・」


そっか、、、、俺みたいにふらつかないんだな。

朝日奈冬夜の胸には朝日奈親衛隊隊長のバッジが彩られていた。

バカっぽい名前なのに美少年がつけるとどうしてこうもお洒落に見えるのか・・・

ま、頑張った奴にはそれなりの褒美が必要か


「・・・・・ほらよ」

「!?」

「云十人の義理チョコだ・・・・・全部集めれば本命に匹敵するだろうよ。」

「!!?」


冬夜がギョッとした顔でずっしりと重い紙袋を受け取る。

ポカンとしている朝日奈親衛隊を掻き分けて外へと出た。


「な、なんのつもりだ!」

「・・・・・・別に」


冬夜が遠くから問いただすように叫ぶ。

返事は特にしなかった、、、敢えていうなら朝日奈冬夜が少しだけ報われないかなと思っただけだったし。

それに一番大事な『特別』は俺の胸ポケットの中。


「お前は、、、、お前は、、、、、やっぱり気に入らない!!」

「へいへい、、、せいぜい頑張ってくれ」

「・・・・・は?」

「義理とはいえそんなに朝日奈さんのチョコを抱えたお前を、、、血に飢えた親衛隊が見逃すはずないだろ?」

「・・・・・・・・・・・・・」

「「「「「「「「「「「「「「「「ウェヒヒヒヒヒ!!!」」」」」」」」」」」」」

「如峰月、貴様アアアアアアアアアアアアアッ!」


アディオス☆


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