第4章昇って来た階段が崩れていく音がするpart3
第4章終了!
「皆、、、お疲れ様・・・・」
古畑さんがふらふらの体で完成稿を提出してきたと言った瞬間、俺達全員机の上になだれ込むように倒れた。
ああ、、、、皆『最低』二、三日は徹夜だからな・・・・
元気なのは一人もいない。
人に弱みを見せない古畑さんですらフラフラを隠しきれてないし、声にも覇気がない。
「仕事納めとして、、、打ち上げするかい?」
「・・・年始でいいんじゃないすか?」
「そうだよ、、、もう正月まで睡眠以外したくないよ・・・」
「新聞君ずっと頑張ってましたからね、お疲れ様です。」
「ヒイッ!?小陽ちゃんが優しい!?」
新聞君の頭をさりげなく小陽ちゃんが優しく撫でるものだから新聞君が悲鳴を上げて飛びずさった。
何だ、まだまだ元気そうじゃないか。
脳のだるみをとるためにキンキンに冷えたコーヒー牛乳を一気飲みして、凝った肩をほぐす。
うん、、、終わったってだけで体が楽になるんだから不思議だ。
「じゃ、夕食作んなきゃいけねえしお先に。」
「あ、用事があるから先に帰ってくれ。」
「・・・今日もか?最近毎日じゃねえか。」
「兄様の様子が良くなってるかもしれないからな。」
「・・・・・了解。皆お疲れ。」
「「「「「「お疲れ」」」」」」
なら仕方ないか・・・・
鞄を担いでホールに出る。
空調が効いてない場所に出たせいか外との遮蔽が少ないズボンから全身にかけてヒヤッとした感触が流れた。
クリスマスまであと四日、明日から冬休みだ。
「今年は良いクリスマスになりそうだな・・・」
去年は・・・・朝顔さん絶賛反抗期+桔梗さんもスーザ先生もいないわで、取り敢えず用意したケーキとターキーを二人とも無言のまま食ったものだった。
しかし今年は椿もスーザ先生も伊月もいるしで、桔梗さんは分からないが賑やかなクリスマスが出来そうだ。
数日前から雪が降り積もり、手袋にネックウォーマーが必須になった。
外気に体の内側から出る熱い息が溶けあって白く染まる。
風物詩だな、うん。
つい意識的に白い息を多く吐きながら表門を出る。
「子供みたい」
「・・・おお」
朝顔が表門に寄り掛かる形で立っていた。
コートで厚着をしてはいるが頬は真っ赤に染まっており、長い時間そこにいたんだろう。
「何してんの、こんなとこで?」
「兄貴待ち・・・もっと早く来てよ。」
「え、、、なら連絡くれよ」
「うっさい、ついて来い。」
朝顔さんェ・・・・理不尽すぎだろ。
俺に二の句を告げる暇さえ与えず彼女は駅への道を歩きだす。
背中がついて来いと語っていたのでついていくことにする。
「なあ、朝顔」
「何?」
「今年のクリスマス何が食いたい?」
「・・・・・・苺の乗ったケーキ」
「・・・ぷっ!」
「・・・・・・」
つい噴き出してしまう。
朝顔が低カロリーとか言わないとは・・・・スーザさんやら伊月とか椿がいるから気を使ったからかもしれないが朝顔自身もそれなりに楽しみなのな。
朝顔が無言で睨んでくるのを目線を合わせないようにしてスルーする。
特に言うべきことも見つからなかったのか朝顔は何も言わずに道を進むことを選んだ。
我が妹ながら可愛くない奴・・・
「どこに行くんだよ?」
「黄海」
「黄海ィ?今から?」
「椿姉さんへのプレゼント選ぶの手伝って欲しくて」
「・・・ああ、そういうことなら最初から言ってくれよ」
なんだかんだで姉妹らしくなったじゃん?
完璧に俺のせいなので何とも言い難い所だが、彼女達はつい最近までは険悪だった。
お互い元は他人だったし、椿が自分はお父さんの隠し子だと嘘をつくわで改善しようのないものだった。
生徒会の皆のお蔭で改善されたようでわだかまりはあるものの少しずつ歩み寄ってるみたいだ。
・・・照れくさくて二の足を踏んでいたのが容易に想像できるが。
「ま、、、貧血に優しくない季節だから体に優しくな?」
「・・・・なに兄貴っぽいこといってんの?」
「兄貴ですけど!?」
クリスマスはまだ始まってなくてもイルミネはもうそれだ。
兄妹で歩くには少し嫌すぎる道のりにげっそりしながらもアウトレットの小物売り場。
朝顔的には可愛い小物を送りたいのか、かなり真剣に悩んでいる。
「そいえば何故小物?」
「部屋、、、新しくできたんだから可愛いもの置きたいでしょ?」
「そうなん?」
「そういえばあの時の兄貴の部屋は殺風景だったね」
「少しは物あったよ!?」
全部残骸にされたけどね。
もう黒歴史だわ、アレは・・・・忘れよう。
「美術用具はかぶりそうだし、小物で決定なんだけど・・・・どういうのが好きかよく分かんない」
「なるほど、、、多分黒多めのとかがいいと思うが・・・」
「それは兄貴の好きなやつでしょ」
「・・・・・・・あながち外れてないんだけどな」
元は俺だし、あいつ。
とはいえ朝顔は納得してないのか、再び商品たちに視線を戻した。
どうやら置物時計に的を絞ったらしい。
電池がと切れない限り偽りの雪を降らせ続けるドーム型
雪だるまの腹が時計になったもの
クリスマス=雪って感じになってるのな・・・クリスマスの度に物を送ってたら部屋中白く染まりそうだ。
「これは?」
「論外」
「・・・これは?」
「だっさい」
朝顔さんに自分的に良さそうなのを見せていくが、彼女の許しはなかなか下りない。
・・・俺イラナクネ?
朝顔も同じことをいまさら思ったのか彼女にしては珍しく申し訳なさそうな顔で俺の方を向く。
「悪いんだけどさ・・・どっかで時間潰しててくれる?」
「!?」
朝顔はやっぱり可愛くない!
心を早速折られても私負けない、、、男の子だもん!
せっかく黄海に来たんだから皆のプレゼント買ってしまうか・・・
予算編成なんて仕事が転がり込んできたせいで買いに行く時間無かったしちょうど良かったな。
朝顔さんは理不尽だが今日に限ってはグッジョブだったぜ。
「さて・・・と」
スーザ先生と伊月と朝顔と椿と桔梗さん・・・・生徒会メンバーにもサプライズで送りつけとくか、世話になってるし。
軍資金はそれなりに用意してある、しっかり選んでおこう。
椿には絵筆、新聞君には眼鏡ケース、小陽ちゃんには包帯。
古畑さんは万年筆、桔梗さんには髪留め、椿にはいくらあっても困らんだろうしスケッチブック。
迷わず買い込んだそれらを抱えて俺はさて・・・と足を止めた。
「・・・・い、伊月は・・・・・・ぷ、プロテインとかかな?」
伊月、優子、朝日奈さん、朝顔。
ヘタなものを渡して嫌われたくない人や怒らせそうな人たち。
自分のセンスが酷いことは妹及び異世界で実証済みなので・・・・うん。
朝日奈さんはなんとなくこれにしようってのがあるけど、優子や伊月についてはあまり彼女達を知らないからなあ・・・
変なものを送って引かれたくないし・・・・
出来れば持ってなさそうなものとかを送りたいが、高いものとかはなんか違うし・・・・
「うし、朝顔からか」
悩んでいても仕方ない。
店回ってりゃいいの見つけられるだろ。
高校生になるんだし、それにちなんだものをあげたい。
陸上は推薦の関係もあって続けるみたいだし、それ関係にしよう。
スポーツブランドショップの女性エリアに行ってみれば、色とりどりのタオルたち。
クリスマスカラーの物もあれば、一色のみの無地タオルまで。
共通点は女の子が使いそうなデザ。
縁がないです・・・・・
「・・・・・朝顔はどういうの使うんだろうか?」
一緒に暮らしてるのに知らなかったのかと言われればそうかもしれないが
兄貴が妹の選択物をじろじろ眺めてたらただの変態だ。
特に最近は我が家の女性割合が過剰なため、椿が洗濯係りだし。
「・・・・これかな?」
朝顔の俺が抱くイメージを大体表しているが・・・・・真っ赤だ。
すごおおおおおく、真っ赤だ。
・・・・・・やべえ怒られる未来しか浮かばない。
「おいおい、、、お前それを女に送る気か?」
「・・・・はあ?」
バカにしたような声がして思わず、声の方を見る。
この辺では見ない制服だった。
私立の鷺ノ宮もそこらの公立よりも私立感が強いんだが、そんな俺の感覚でも更に私立感が強かった。
そんな制服着ていてもその少年に違和感がないのは、彼の気迫や顔立ちによるものがあるだろう。
自信に満ち溢れ、美形・・・まるで自分の理想図のようなその立ち振る舞い。
・・・・・・ってか俺の上位互換かと思ったら如峰月空木!?
「な、何でここにいる!?」
「お前に会いに来たからに決まってるだろう?」
やれやれと言いながら彼は俺からタオルを取り上げて、元に戻すと別のタオルを取り出した。
「もっと柔らかい色の方が嬉しいだろうが、、、それでいて他の娘と被らないのだ。」
「・・・・えぇ?」
「そもそもタオル選んでる時点でセンスを疑うが、妹にならまあいいだろう・・・」
いきなり出てきたかと思えば、俺を可哀想な人を見る目で見てきやがりアドバイスまで垂れてくる。
しかも彼のいうことが間違っているとも思えないのである。
女子が持ってそうで、持ってなさそうな・・・・かなり絶妙なセンスだ。
「これが駄目だと言われたらさっきの酷いのを贈ればいい・・・結果は知らんが」
「うぐっ・・・・」
そこまで言うなら試してやる・・・・
空木のニヤニヤ笑いの前で空木タオルと桜タオルの両方をレジに持っていく。
「やめておいた方がいいと思うがな」
「るっせ、、、てか何で俺に会いに来たんだ?見合い逃げ出した日も生徒会にまでわざわざ来たみてえだけど」
「元々お前には会いに行くつもりだったんだ・・・まさかその日に見合いをセッティングさせられてたとは思ってなかった。」
「・・・当事者に知らされないお見合いなんてあんの?」
「ジジイの考えることだ、、、俺達には分からん理屈があるんだろうさ。」
『ジジイ』・・・・如峰月の人間からそんな言葉を聞かされるとは・・・
勿論、如峰月空木という人間が上下を気にしないってのもあるだろうが・・・・
空木は俺のそんな様子を見抜いたのか、少し楽しそうだ。
「ジジイをジジイと呼んで何が悪い?お前だってそう毒づいていると思ったんだが?」
「・・・・・まあ、そうだが」
どこかついていけない・・・彼のペースがあまり好きではなかった。
何がそうかと言われればよく分からないが、、、、何かが。
駄目だ、、、日を改めれば少しはマシになるかもしれないが今のままでは良くない気がする。
「そうだ、何で会いに来たかだったな?」
「・・・・ああ」
「一度は見ておきたかったんだ、、、今まで会ったことがない如峰月の名を持ちながら、その名にに縛られてない従弟という奴に。理由はそれだけだ。」
「・・・・・・・・」
俺もその気持ちはわかる。
血がつながってるのなら尚更、一度は会って話してみたいという気持ちが分かる。
けども、、、、何だこの腹にずぶずぶと溜まるものは?
凄い不快感が溜まっていた。
「プレゼント選びはまだかかるのか?」
「いや、これで終わりだ。」
「そうか、、、妹さんはまだかかるのか?」
「・・・・朝顔に会うつもりか?」
「いや、お前と少し場所を変えて話したいと思っただけだ。その様子じゃどちらにしても会わせてもらえなさそうだがな。」
「・・・・・・・」
空木は一切不快そうな表情を見せず、寧ろ楽しそうに勝手に歩き出す。
朝顔にちょっと用事が出来たからもう少しだけ別行動にさせてくれとメッセージを送り、彼の後をついていく。
腹が減ってるらしい彼と近くのカフェに入ることになった。
「家出してたんだろ、金あるのか?」
「心配しなくてももう家に戻った。」
「戻るくらいなら家出すんなよ、迷惑かけまくられたの俺なんだぞ?」
「まあ、それについては悪かったな。俺はコーヒー、、、後ハンバーグセット。」
「・・・・・牛乳と同じのを」
店員に手早く注文を済ませる。
空木は何しに俺に会いに来たのか、核心をぶらされまくって話のペースが掴めない。
王様のペース・・・・朝日奈さんや桔梗さんに近いな。
・・・が、空木も空木で話す機会をうかがっていたのだろうかあっさりと話を切り出した。
「家を黙って飛び出した理由は、たまたまその日にお前に会いに行こうと思ってたからだ。」
「そんな理由で?」
「俺の予定は俺が決める。いきなり聞かされた見合い話なんかで俺の予定を覆せるわけがないだろ」
「・・・・いきなり?」
「ああ、ニ~三日前から見合いしろだの急にジジイが言いだしたんだ。」
・・・・桔梗さんは前から伝えられてたって言ってたのに当の本人はいきなりか?
そういうこともあるのだろうか?
そもそも十五のガキにいきなり見合いしろっつうのが非常識だしな、無い話じゃないか・・・
「てか、そんなこと勝手にやって怒られなかったのか?」
「家にいれば行きたくないとかとてもじゃないがほざけないからな・・・家を出ることを選択した。ちなみにだが、俺と背格好が似ているお前がいてくれたお蔭であまり怒られなかったよ。」
「・・・・自由だな。」
「そうでもないさ・・・家を継ぐ前にこの自由さを味わっておくんだよ、許される範囲内で出来る限りな。」
と、ここまで言うと彼はいきなり俺の方へぐいっと体を乗り出してきた。
机越しとはいえ距離を詰められ、後退する。
背もたれが背中に当たった。
俺のよく似た、、、、だが俺より美形な彼は楽しそうに笑う。
「さっきも言ったがだからこそ俺はお前に会いに来たんだ。」
「・・・どういうことだ?」
「如峰月でありながら、血の義務から外れた者がどれだけ自由か・・・それが今の俺とどれだけ違うかを見たかった。」
「・・・・・血の義務」
たとえ選挙に出ても、家出しても構わない。
ただし必ず『如峰月』らしくあること。
考えたこともないそんな原則が、俺から見ても自由に見える如峰月空木の中で根を張っていた。
「ま、血の義務なんて格好付け過ぎたがな・・・・このコーヒー薄いな。」
「・・・・(こいつブラックで飲みやがった!?)」
店員がコーヒーと牛乳を運んできたのをきっかけに一度距離が離れた。
冬は乾燥する、、、お互い口を湿らせる為に一度飲み物を含んだ。
どうでもいいが飲み物を持ってきた女性の店員が、俺たちを一目見て『デュホお!そっくり双子カプ!』とか凄い笑い声をあげてきた。
・・・・・・その目は腐っていたとだけ言っておく。
・・・・・一息ついてから話を続ける。
腐った目をした女性店員が時を挟まずにハンバーグセットも持ってきた。
・・・・・熱通ってんだろうなと心配するぐらい早かった。
空木は早速ナイフとフォークを手に取りながら、続ける。
「ま、、、ふたを開けてみれば俺とお前もあまり変わらなかったがな。」
「・・・え?」
「お前はお前で苦労があると思ったんだ。」
・・・・苦労?
どう考えても空木の方が苦労してると思ったんだが、違うのか?
その言葉を頭で反芻しているうちに自然と次の言葉が出ていた。
「何を見てそう判断した?」
「・・・むぐむぐ・・・二、三日陰ながらお前の人付き合いを見てきた。お前の優しさと周囲の優しさが食い違って、結局皆傷つく。そんなことになっているように見えたが間違ってるか?」
「優しさが、、、食い違ってる?」
「本当に大事なものは一つしかないはずなのに、多くのものを大事にするお前と、お前の大事なものは一つしかないのに気づいてるのに、期待し続ける周り・・・そう言えば少しは分かるか?」
「ああ、、、そういうことか」
空木が言いたいことがようやく分かる。
てか、言われるまでも分かってることを丸々言葉に言い表された状況だ。
余計なお世話と切り捨てれば簡単だけど、それは結局向き合わないのと同じ。
・・・結局話を切っても、話を続けてもムキになってることにはかわりはないが。
「謝らなくちゃな、、、俺のせいでさらにお前らは傷つくことになる。」
「・・・冴突師恩か」
何となくだが今以上に状況をややこしくしそうなことはほぼ確信している。
・・・・そして今信頼してくれている彼女達をまた傷つけることになる。
約束も、責任も、誓いもまた有耶無耶になる。
そんなことがまた起こる・・・・・・
「今は安定を保ってるけど、『歪なお前の人間関係』はほんの少しのきっかけで崩れる。」
「・・・うん」
「けどもその理由が俺となると話は別だ。」
「・・・・・何が言いたい?」
空木は俺がそう聞くと、意を得たりとばかりに笑みを深める。
そして簡単な話さとばかりに口を開く。
「実はもうしばらくだけ俺になり替わって欲しいんだ」
「・・・・はあ?」
「その代りに俺がその歪さ・・・直してやる。お前が本当に大切にしてる者だけを大切に出来るように場を作ってやる。」
「実を言うとな、俺の方も女性関係がややこしくてな・・・俺の如峰月に纏わりついて来てる。」
「・・・・・」
「その一方でお前の周りに集まるのはお前の人間らしさに集まってきてる。」
「・・・・・・・」
「見合いで分かったことなんだが俺達は入れ替われるギリギリのラインにいるんだ。しかも意味のある入れ替わりが出来る分、余程効率的な・・・・な」
「・・・・・!」
「周囲にばれないながら、違和感を与える。お前に入れ替わった俺は少しだけ隙が無くて、俺に入れ替わったお前は少しだけ人間らしい。」
「・・・・・・・・それって・・・・」
「その差を感じ取って、、、、、周囲は変わる。」
・・・・・・・・・論外だ。
自分の事情から逃げる為にろくでもないことを提案してきている。
そう言いきるべきだと頭では分かっていた。
何よりこの今胸の中で腹の奥底で渦巻く何かが、俺の人間関係に馴れ馴れしく関わってくるコイツを信頼するなと語っている。
その一方で
楽になれる、楽になりたいと思っている自分がいた。
そしてその考えを否定できない自分がいた。
いくら安定してるからって崩れていく階段を昇りたい人がいるか?
そんな中明らかに自分よりうまくできる人間がいて、自分の分まで頑張ってくれるっていわれて・・・迷わない人がいるか?
ただでさえ限界なのに、更に抱えるモノが増えると知って・・・・尚?
「・・・・誰も傷つけないか?」
「当たり前だ。」
「・・・・本当か?」
「ああ。」
「・・・・まさか朝日奈さん目当てじゃないだろうな?」
「俺は賢い女がタイプなんだ、ああいうギャアギャアするのは好みじゃない。」
「・・・嘘じゃないみたいだな・・・・」
暖房の音が耳に響く。
ハンバーグを温める鉄板が今だに肉汁を飛ばしている。
牛乳のカップの水滴が机に水たまりを作る。
カフェに流れる音楽がメロウなものになっている。
如峰月空木が俺の眼の前で笑っている。
「・・・・・・・・・ま、考えてくれるだけでいい。駄目元だったしな。」
「・・・・・・・・・・・・・」
「どちらにしろ謝っておく・・・・・皐江月詩音の件は完全に俺の責任だ。」
「・・・・・・・・・・・・・」
空木は『謝った』。
彼は傲慢で馴れ馴れしい・・・・がそれを覆い尽くすほどの俺を納得させる力があった。
言葉の裏に誠実さがあった。
元々は冴突師恩に関しては俺にも責任があるのに、、、責任の大元だからと謝るくらいには、、、自分の行動に責任を持っていた。
「じゃあ、今日は失礼する・・・返事は気長に待つ。」
「・・・・・・・・・・」
俺は・・・・俺のままじゃ皆を傷付ける。
このまま・・・・・のほほんと過ごすことはもう出来ない。
・・・・・・俺のままじゃあ、傷つけてしまう。
・・・・・・・なら、、、、、答えは一つしかない。
でも・・・・それは・・・・逃げだ。
逃げることは駄目なことなんだ。
それはやっちゃあいけないことなんだ。
自分で招いておきながら、自分で言っておきながら、今更逃げて人任せ?
そんな自分の男を下げること認めていいわけない。
でも、、、、そんな自分の我儘で、、、傷つけることになっている。
そして俺は主人公じゃないから、、、、そんな自分を許せない。
優子
伊月
冴突師恩
朝日奈さん
彼女達の泣く姿を平然と受け入れられるほど
・・・・・俺は強くない。
いや、だめだ、それは逃げだ。
いや、それでも、彼女達を泣かせないなら。
いや、そんなの、おかしい。
いや、泣く顔、見れない。
いや、いや、いや、いや、いや、いや、いや・・・・・・・・・
「どこいってたのよ・・・・・」
「俺だってお前らへのプレゼント買いに行きたかったんだよ。」
集まるはずの時刻になっても遅れてくるものだから電車に乗る時刻が遅くなってしまった。
そう文句をつけるが、言いかえされてしまった。
兄貴がそういって腕の上に抱えた大量の荷物を見せてくる。
そうはいっても私を急に何十分も待たせるとは兄貴のくせに生意気。
意趣返しに先を歩く兄貴に一発蹴りを入れてやろうと、脛に狙いをつけて足を引く。
「そういえば、朝顔にも選んだんだけどな?」
「!?」
そんな時に限って兄貴は振り向くものだから、足を慌ててひっこめた。
・・・・今日の兄貴は妙に勘が良い。
そんなことを思いながら舌打ちしてしまう。
兄貴は荷物を一度椅子に置き、二つの包みを手渡してきた。
「・・・二つ?」
「家用と陸上用だ。」
「・・・・・ありがと。」
「少し早いがな。」
開けていいかと聞くといいと答えたので開封してみた。
一つは柔らかい色ながらもセンスが良いカラフルなブランドタオル。
そしてもう一つは喧嘩を売ってるのかとキレたくなるほどの真っ赤すぎるブランドタオル。
・・・・・・同じブランドのはずなのに何でこう差が出るのか。
「なんでこんなに差が出るのよ・・・」
「店員と相談して決めたんだよ、良い色してるだろ?」
そう言って兄貴はカラフルなタオルの方を指さす。
・・・どうやらもったいないから渡しただけで赤い方は『なかった』ことにされてるらしい。
「・・・・・・・兄貴なんか変わった?」
「・・・・・・・・・ん?」
何を言ってるのかと兄貴は首を傾げる。
外見は兄貴のままなのに、内側から強い自信を感じ取れてしまう。
そして溢れんばかりの強さ。
・・・・・・・・勘違いかと言ってしまえばそれだけなのに。
「・・・・何でもない」
「そうか?・・・そうだ、帰りにクリスマス用のケーキを買いに行こうか。」
「・・・・うん。」
「正直チョコと苺・・・・どっちも捨てがたいな・・・・・両方買っていいか?」
「好きにすれば・・・・」
「心配しなくても苺のショートの方は良いのを買うって」
兄貴はそう言って笑う。
その顔は兄貴の笑い方だった。
・・・・・・・心配し過ぎかな。
そうこうしてるうちに電車は鷺ノ宮市に着いた。
次回から第5章『鎖を砕け、運命を変えろ』
試験期間中なんで八月中旬まで更新ペース鈍化です・・・・




