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異世界でもう一人の俺が暴れすぎてキチガ○と呼ばれている件について  作者: 浅き夢見む氏
第五部:かつて交わした約束は曖昧なままで心に残る<王国編>
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第3章我儘少年part2

「すぐに戻るし・・・上手くやっといて・・・相棒(シノン)


調子のいい言葉を言い残しサクラは眠りについた。

彼の治療をしてくれた外科医によると生きていることが正直驚きだと言っていた。


右目および周囲の骨格の欠損

手足の重度の凍傷

ふくらはぎに大きな裂傷

体力の低下に魔力枯渇

更には血液が不足


治癒魔術なら命をつなぎとめるのも簡単だ。

けど彼の場合・・・一つの怪我が命取りになる。


「・・・・ばかやろう」


一時期は彼がいきなり死んだように眠り始めたから凄く怖くなって泣いてしまった。

そのことに関しては・・・本当にサクラが眠っていて良かったが。

彼は眠りから覚めると魔力が完全回復する特殊体質。

その体質のせいか『完全な』魔力枯渇まで魔力を使うと魔力の回復が急に何日もかかる程遅くなったり、長い期間眠りにつくことがあった。

今回もそういうことだろう・・・・裏を返せば魔力枯渇になるほどの無茶をしたということだろうが。


そもそも魔力枯渇が起きると体の機能が普段の半分以下に落ちる・・・つまり余計に死にやすくなる。

だから無茶をして欲しくなかったんだとぽかりと胸を殴るが彼は返事をしてくれなかった。

そんな彼の容体も一週ほどかかってようやく安定してきた。


病室では常に誰かが付きっきりになっている。

トツカは修復が完了した『葉擦れ・変染態』を抱え常に壁際にいるし、私も同じような感じだ。

サニア、ツバキにミルにミミアンもそれぞれの時間を過ごしつつもここに毎日様子を見に来ている。

・・・そして当然のように『彼女達』も


扉が少しだけ開かれ、ひょこりと美少女が顔を出した。

王国では珍しい縦ロールの長い金髪をふわりふわりと揺らして特殊な香料をブレンドした華の香りが漂ってくる。

優雅で御淑やかと女性の理想を体現したようなエルフィリアだが彼女はこれでも聖十剣四位。

コリンさんが聖十剣を抜けてからは彼女が聖十剣の女勢を纏めている。

もちろん実力もかなり高い。


「シノン、今大丈夫ですの?」

「・・・はい。」


彼女に返事をすると、彼女は外で待機していた二人を手招きした。

まるで自室のようにふわっと入って来た彼女に対して、招かれた二人は遠慮がちに入ってくる。

私を見た瞬間何か思い出したのか唇を抑え顔をそむける、、、止めろ、思い出すじゃないか・・・

そんな彼女に縋り付く桃色の髪のおさげの少女は私たちを見て顔を背けた。


聖十剣四位ブリジット・カトリアの監視下に置かれているアリア=レイディウスとティアラ=レイディウスも許可された時間帯に必ず訪れる。

彼女達はそれぞれサクラの枕元に座り、彼の顔を眺めはじめた。

アリアはどこか憂を込めた表情で、ティアラは少し不満げに。


トツカはその二人の様子を少し腰を浮かし気味に見ていた。

ブリジットさんもいつの間にか自然に移動し終わっていて、いつでも『止められる』距離に立つ。

・・・・加害者である彼女達に対してはまだ、わだかまりがある。


サクラの『上手くやっといて』の範囲に含まれていると思ったので、女王陛下にお願いして彼女達の扱いをサクラが目覚めるまで保留にしてもらった。

公表としては彼女達と手柄について争いがあって抗争になり、その途中で雪崩が起き彼女達を庇った彼が重傷・・・取り敢えずそういうことにしてもらった。

裏事情として私が国外追放されずに済んだ時と同じ理由でサクラが怒ると何すっか分かんないし保留!というのがある・・・王国中枢部が彼をどれだけキチガイと考えているのかがよく分かる。


「・・・どうですか、彼の調子は?」

「眠ったままだ。」

「あの時と同じですか。なら・・・あと数日で目覚めるかもしれませんね。」


アリアはそういうと少しだけ表情を緩めた。

どんな『あの時』なのか?

聞きたくなったが語ってくれそうにもないし、聞きたくもなかった。

・・・それぐらいにはサクラに執着しているようだ、私は。


アリアと顔を会わせる度に強い劣等感を刺激される。

輝かんばかりの銀色の髪に透き通るような白い肌。

少しダボつきがちな白いローブを着ているはずなのに、彼女の体は出るところが出て締まるところはきちんと締まっているから彼女の全体像を損なわず寧ろ天使の羽衣にすら見える。

長い睫毛、綺麗で傷一つない手、一つ一つが神の造形のようだ。


今まで戦士として育てられてきたし、自分もそれに納得していた。

サニアが口やかましくもっと女性らしくしろというのもうるさいとすら思っていた。

けど、、、彼女と顔を会わせる度に女として劣等感を刺激される。


女性らしさも

魔術師としての技量も

私の知らないサクラを知っているという点でも


「ブリジットさん、後はお任せします。」

「せっかくだしアリアさんとお話したらいかがですの?」

「・・・いえ、少し休みたいので」

「そう・・・」


アリアたちに礼をして足早に病室を出た。

・・・・考えなくても分かる。

逃げてしまったことを。


「・・・アリアがいれば私なんていらないじゃないか」


サクラをあそこまで追いつめる程強くて

女性ですら見惚れさせるほどの美貌

何より私の知らないサクラを知ってる


今まで私だけがそこにいた。

でもその場所にもっとふさわしい人が現れた。

譲るべきなのに譲りたくない自分の醜さに嫌になるし、結局そんな状況を招いた自分の弱さが腹立たしい。

もっと強ければと、、、そしていくら強くなろうとしても弱いままの自分が凄く嫌だった。










シノンが出てすぐの病室。

俺、トツカ・ドラガンは寝たふりをしていた。

サクラにすぐにこの剣を渡そうと頑固に今日まで枕元に座り込んではいる。

そろそろ腰痛いし、シノンが常にいるから『家族』と触れ合えないし正直心がそろそろ折れる。


しかも今日は特に心が折れそうだ。

嫁同士の激しい正妻争いを目撃してしまった。

それもかなりどぎついの!

シノンは私の方が彼と長いと言わんばかりにサクラにずっと付きっきりだし

アリアはアリアでシノンの知らないサクラを知ってると言わんばかりの態度!


シノンが休みに外に出たからいいものの、もしこのまま二人とも熱が上がったら・・・掴み合い引っかきあいの修羅場じゃあないか!

前に本で見たよ!


少しの居づらさと空気の悪さも、いずれサクラが目覚めた時の修羅場展開の伏線だと考えれば悪くない。

いやあ、早くサクラ起きないかな♪

都会の女はやっぱり怖いが、こうやって外からおっかなびっくり眺めるだけなら大歓迎だ!


「・・・(じいっ)」

「!?・・・ぐう・・・ぐう」


とか考えてたら、目の前にいきなり少女の顔が

確かアリアの弟子で、サクラの妹弟子のティアラちゃんだ。

トーリと同じくらいの年齢だと思うが、、、トーリよりもしっかりしてそうだ。

・・・・狸寝入りしている俺をじいっと見つめてくる。


「ティアラ、どうしたんです?」

「こノ人起きてるヨ」

「そうですか?寝てるように見えますけど」

「師匠は魔術以外に関しテはアンテナがポンコツなンだよ」

「・・・否定できない自分がいます」


ばれている・・・居づらくなって狸寝入りしてるのばれてる!?

よく考えてみれば居づらいのは自分だけじゃなかったはずだ。

妹弟子の彼女も・・・・そして自分だけ逃げ出そうとする者を腹立たしく思うも摂理・・・

でも大人は普通見逃す・・・それをしない辺りまだ彼女は幼稚なんだろう。


「ティアラ、彼はずっと病室にいるんですから急に眠ることもあるでしょう。」

「それにシテは急すぎルよ!」


・・・・・その通りですね!

・・・・・・・・そろそろおきるかなあ(棒読み)

と思ったら意外なところから助け舟が来た。


「ほら、トツカさん。起きなさって?」


それまで会話に入ろうとせず俺達を外から見守って来たブリジットさんが俺の体をゆすって来た。

・・・・まさか。

彼女に体を揺すられたからという名目で身じろぎしてゆっくりと薄目からまぶたを開いていく。

そしてそれっぽく欠伸のふりをして、アリアにでも話しかける。


「う~ん、、、あれ、寝ちゃってました?」

「ええ、ぐっすりと」

「・・・・・(じいいいいいい)」

「ほらティアラ、トツカさんは寝てたみたいですよ?」

「・・・・・(じいいいいいい)」


アリアは流石サクラの師匠らしく、かなり残念なようだ。

知っていたが。

だがこんな三文芝居で誤魔化されるティアラちゃんではないようで、寧ろ『より』疑いの目を向けてくる。

さて、、、どう誤魔化すか?


「寝てる間にサクラになんかありました?」

「いえ、、、相変わらずです。」

「そっか・・・てか、ティアラちゃんどうしたの?俺の顔じっと眺めて」

「別二・・・・(じいいいいいい)」


駄目だ!

サクラ並のめんどくささだこの娘!

もう少し仲良くなれたら違うかもしれないが、、、、彼女とはまだ優しくしてくれるほど仲良くない。

そもそも敵同士だったもんな!

サクラとアリアがおかしいんだ!

なんで加害者と被害者が普通にキスしたり仲良くできるの、、、意味ワカンナイ!


「目が覚めたなら私のエスコートをしてくれませんの?」

「・・・え?」


いよいよ限界を迎えそうになっていたら再びブリジットさんに助けられた。

どう返せばいいか分からなくなっていると彼女はほらと提案を続ける。


「トツカさんもシノンと同じで少し外の空気を吸った方がいいですわ。」

「・・・まあ、そっすね」

「じゃあ決定ですの?」

「えと、、、アリアとティアラの監視は?」

「乙女の勘ですけど大丈夫ですわ!」

「「「・・・・・・はあ」」」


輝かんばかりの笑顔だが言ってることは彼女の雰囲気に合っていなかった。

主人の目覚めぬ『葉擦れ・変染態』を腰に備え立ち上がる。

アリアの今の様子なら監視が少しつかなくても大丈夫だと何となくは分かっていたからってのもある。

・・・だが今だに疑いの眼で見てくるティアラから逃げたかったってのもある。


「じゃあ外に行きますの」

「はーい」


彼女達を残し病室を出る。

王宮の医療部を抜け、彼女の後ろをただただついていく。

本当に外を歩きたかったのか彼女は楽しそうに肩を揺らしてすたすた歩いていく。


「良かったんですか?」

「何がですの?」

「簡単に監視を解いて」

「あの娘たちは信頼を裏切る娘達じゃありませんわ」

「へえ・・・それも乙女の勘ってやつですか?」

「ええ」


自信に満ち溢れた彼女からは少しも不安も気負いも感じさせない。

今まで会った女性は龍巫様ですら悩んでいたりする表情を見せるのに彼女はそういった様子が無かった。

あまり会ったことのないタイプの女性だった。


「王宮はどれくらい出歩きましたの?」

「いやあ、、、いろいろと忙しかったしサクラが勇者と認められるまでは色々あったしであまり・・・」

「そうですの?勿体ない!王宮は立派な庭園師たちのお蔭でいつも素晴らしい景色なのに」


確かに王宮の中のどこを見ても木々花々が整然と整えられ一種の芸術になっている。

彼女が言う通りいつ来ても見る価値があるだろう。

少し肌寒いのが難点だが。

正直今は龍の力を借りれるから当然のように内在型身体強化も使えるが、昔の魔力量じゃブリジットさんの前でブルブル震える羽目になっていただろう・・・


「せっかくですし王宮を少し回りませんこと?聖十剣の権限でどこにでも案内出来ますわ」

「じゃあエ・・・・・・・・・・お任せします。」


あぶねえ、、、公序良俗の観点から禁書として蒐集されたエロ本とか王宮で保管してる場所に案内してくれと思わず言ってしまいそうになった・・・・・

病室に普段籠る羽目になってるからどうしてもすぐにそっち方面に脳が直結してしまう。

何とか誤魔化せたみたいで彼女はでしたらと微笑むのだった。


「甘いものはお好き?」

「妹が好きだったので良く付き合わされてました。」

「それはよろしいですこと、、、王宮に甘味を中心に利用できる場所がありますの」

「甘味・・・王宮で・・・?」

「他国と比べて女性官吏が多いから通ったんですの」

「へ、へえ・・・」


通ったというよりは・・・『通した』んじゃないだろうか?

龍人の郷では考えられないなと思いつつ彼女の後をついていく。

元々ここに来るつもりだったのだろうか、王宮の中を歩くとすぐにそこに着いた。


「いつものを二つ」

「はい、かしこまりました。」


王宮の中にあるだけはあって、王宮の雰囲気を崩さないようにしている。

けどもやはり飲食店であることは変わらず、王宮の中でも賑やかな場所に入るだろう。

お客は流石に女性中心だが。


「さ、行きますの」

「はい」


ブリジット様と声をかけられる度に笑顔で手を振り返す彼女の後をついていく。

聖十剣ともなると扱いが違うのかわざわざ個室に通された。

暖炉が設置してあり数人がゆっくりするのにはピッタリな場所だった。

部屋の調度やらをつい好奇心に負けて『鑑定』していくが、王宮に店を出しているだけあってVIPルームの調度はそれなりのお値段だった。


「座りませんの?」

「・・・・ええ」


貧乏性と笑われたくないので座るが、、、座る椅子一つが中級冒険者一人の年収だ。

郷の外に出たからこそこういう経験も得れたと喜ぶべきなのだが、、、落ち着かない!

ブリジットさんは肘をテーブルにつけ組み合わせた手の上に顎を乗せながらそんな俺をおかしそうに笑う。


「ふふふふ、勇者召喚の儀の時は堂々としてたのに変な人。」

「・・・あれは俺より目立つ奴がいたから気にならなかっただけで俺の普段はこんなんですよ?」

「じゃあ、その『こんなん』に足を止めさせられた私は『こんなん』以下ですの?」

「田舎育ちのガキを苛めないでくださいよ・・・」

「ふふっ!それもそうですわね!」


・・・どうも調子が狂う。

まあ、、、、それもいいかと思ってしまう自分がいるのも否定できなかった。






「ティアラ・・・トツカさん逃げちゃったでしょ」

「あれぐらいで逃げルナんて軟弱だよッ!」


いくら私でもトツカさんの様子やブリジットさんがフォローをいれる様子からティアラがトツカさんに意地悪をしていたのは分かる。

とはいえティアラはフンと顔を背けるだけだった。

彼女はサクラ同様強情だからこういう時に融通が利かない・・・・まあ、今回に関しては私に非があるが。


「第一敵の監シ下にあるの、師匠忘れテない?師匠も皆甘スギだよ!」

「・・・そうですね」


別れのつもりでした口づけは・・・私の心を少しも揺らがせなかった。

そのはずなのに、、、彼から口づけを返されてからはどこか狂っている。

復讐の火は消えてないのに、、、少しだけ心が穏やかなのだ。


本当はすぐにでも海民連合に戻らなきゃいけないのに・・・サクラが起きるまでは待ってもいいかなと思ってしまえるぐらいに。


「第一、『弱い』コイツが役に立つノ?」

「あなたの『曇突くばかりの大男≪a towering giant≫』を一瞬で崩壊させたサクラを弱い・・・ですか?」

「っ・・・でも暴走シテタじゃん!第一、雷の勇者には届かナいよ!」

「・・・そうですね、彼は雷の勇者には勝てないでしょう。」


ティアラがムキになって抗弁するがその通りだ。

サクラは前にあった時よりも凄く成長している。

たとえそれが暴走魔力というズルによってだとしても・・・彼が強くなっていることは否定されない。

でも、、、、それでも勇者には届かない。


彼は私たちと雷の勇者への勇者の復讐を手伝うと言ってはいたが、、、彼はまだ弱い。

それを知っていたからこそ、、、一時は別れを選んだ。

そして今も彼の強さに期待はしていない。


「でショ!師匠は私がいレば良イんだよ!」

「そうですね、、、ティアラは私たち三人の中でも『特別』ですから。」

「エヘヘ・・・」


ティアラは嬉しそうに笑う。

彼女の言う通り、、、もうこの国に用はない。

・・・聖女を殺せばもうこの国に用はない。

そう・・・そのはずだった。


「ごめんなさい、ティアラ」

「・・・・?」

「もうすこしだけ、、、サクラを見届けさせてください。」

「・・・・なんで?」


ティアラがまるで私が嫌いだと跳ね除けたかのように悲しそうな顔をする。

・・・・・・私をしたってくれる彼女には本当に申し訳ないが今はサクラを待ちたかった。

自分が力を与えた人が・・・・・ここでどうするかを見届けなくてはいけないと思ってしまった。


しなくちゃいけないことがあるのに

それを後回しにしてでも見届けなくちゃいけない

・・・・と思ってしまった。


「師匠のバカっ!」

「・・・そうですね、私はティアラがいなくちゃ何もできません。」


ティアラが癇癪を起こして、顔を紅潮させて怒る。

・・・・それをきちんと受け止める。

彼女の言っていることは一つも間違っていないから。


私は間違っているんだ。

でも、、、、そんな自分に、、、、ほだされてしまった自分に怒りを感じない。

間違いなく私はサクラに惚れてしまっているのだろう。

それが悪いことなのは、、、、、間違いない。


サクラに嫌われたくないと思っている自分が

黙って去ることを

彼の眠る間に卑怯にも聖女を暗殺することを

拒んでいる。


彼と話したいと思っている自分が

彼の眼ざめを待つことを

要求している。


「・・・もう知らナい!」

「ティアラ!・・・・もう」


ティアラが遂に怒って病室を飛び出してしまった。

自分はやはり間違っているのだろう。

誰もいないからと・・・ティアラを怒らせてしまい気分が落ち込んで・・・思わず彼の胸を枕にしてしまった。

・・・・・・甘えたくなった。


僅かに上下し暖かい。

鍛えられた彼の胸筋は服の上からでもそのたくましさと人間特有の柔らかさが併存していて心地いい。

彼の匂いがふわりと鼻孔に入る。

すこし顔を上げると眠る彼の顔が見える。

すやすやと寝息を立てている。


「・・・・もうすこしだけ」


そうもう少しだけ

せめてあと少しだけ

彼を好きな自分でいたい・・・・せめてサクラが目覚めるまでは。


・・・そういえばサクラにいつも付きっきりの青い髪の綺麗な少女。

サクラの相棒らしい・・・・・口づけを交わすくらい親密な。

彼女が羨ましい。

サクラの側に何の迷いもなく何のわだかまりもなく立てている。

私がもし彼女だったら・・・・・有り得もしない考えが頭をよぎり、必死で打ち消した。








「あれ、シノン?」

「・・・・忙しかったか?」

「ううん、寧ろ暇!」


サクラのいる病室を出たはいいものの・・・・私は元とはいえ国賊。

落ち着ける場所はあまりなく、ついサニアの部屋を訪れてしまった。

彼女にしては珍しく書物を熱心に読んでいたようだが、私が訪れるとすぐに笑顔になって本を閉じた。


「何を読んでたんだ?」

「『出してはいけないところ』の魔力を使った人達の話をまとめた本」

「そんな本を?」


サニアは本の内容を思い出したのか少し眉を寄せる。


「教国から輸入された本らしいんだけどさ・・・正直使えるところは少なかったよ。天使が『出してはいけないところ』の魔力を認めてないから作者も基本的にその魔力を使う者は邪悪で怠惰とか書いてるし、偏見と中傷ばっかでメインもそういう魔力を使った人たちの悲惨な末路ばっか・・・少し気持ち悪くなってたんだよ。」

「わざわざそんなもの読まなくても・・・」

「ん~?暇だからねぇ~」


サニアはそう言いながら私の後ろに回り込む。

本来ならここからは胸やら尻を気が済むまで揉まれるのだが彼女の関心はそこにはないようだ・・・助かった。

首筋から私の髪を一房掴むと手櫛でするすると撫でつけはじめた。


「う~ん、、、戻らないね髪色。」

「結構強い魔術で染めてるからな、もとの白に戻るのは時間が掛かるって」


サクラは銀よりさらに濃い色で塗りつぶせばいいのに対して私の白色は自然に抜けるのを待つしかないらしい。

私としてはそれでいいのだが、サニアは納得いかないらしい。


「髪は強い染色で荒れちゃってるし、折角お揃いだったのに・・・」

「・・・・それは本当に悪かったと思ってるよ。」


仕方なかったとはいえサニアと同じ髪色を変えなきゃいけないとなった時は迷ったものだ。

サクラは青い髪の方がエロさが増すからいいんじゃねとかふっ、ふざけたことを言ってはいたが・・・せっかくのお揃いを変えたのはやっぱり今になると損だったと思う。


「・・・何かあった~?」

「・・・・・何もないよ~」


何故か伸ばした調子で聞いてくるから同じように答えるとサニアはのんびりと私をベッドの上に転がした。

そして自分もベッドの上にダイブしてくる。

しかしそれは私にセクハラをするためじゃなく、寝っ転がって私と話すため。


「いろいろ予定が崩れて暇なんだから聖女サニアちゃんに話してみなよ?」

「ちゃん・・・・」

「も、もう!おにいさんの口調を真似しただけなのにそんな目で見ないでよっ!」

「・・・あ、ああ。」


自分でも少し恥ずかしかったのかサニアは少し頬を染めている。

・・・可愛い。

そしてそんな彼女を見ていると・・・自分の中で溜め込んでいるのが馬鹿らしくなってしまった。


「実は・・・最近アリアと顔をよく会わせるんだけどな?」

「ああ、、、正妻対決ね。噂になってるよ?」

「正妻?」

「あ、知らないの・・・・じゃあいいか。続けて?」

「いや待ってくれ・・・・何故サニアを差し置いて私やアリアが正妻なんだ?」


サニアが苦笑いで察してくれという顔をする。

・・・・というよりそもそも


「私はあいつの嫁じゃない!」

「もう、、、諦めちゃえば?」

「バカ言え・・・・あんな強引な・・・・しかも公衆の面前で何人も手を出す変態に・・・」

「その変態を相棒にしてる素直になれない女の子はお仕置きだ~」

「いやっ、サニアやめ////」

「ひひひ、、、ここがええのか~ここがええのか~」


シノンを長年知り尽くした指が跳ね、伝い、撫で、揉む。

指が動くたびに走る電流、走る快感。

シノンがブチ切れて逃げ出すのはそう長い時間が経たなかった。


「はあ、、、はあ、、、、はあ、、、、」

「シノンを未来の旦那さんの為にある程度開発してたけど、まさかおにいさんがシノンの旦那さんとは思ってなかったな~」

「はあ、、、はあ、、、、はあ、、、、」

「しかも私の旦那さんを兼ねるとは・・・・長生きしてみるもんだね~」

「はあ、、、はあ、、、、はあ、、、」

「・・・・もうしないから警戒しないで?」


サニアがベッドに腰掛けちょいちょいと手招きしてくるので剣の柄に手をかけながらゆっくりと近づく。

これ以上弱点増やされてたまるか。

サニアの口から遂に恐ろしい自供が出た以上これからは最大限の注意を払わなければならない。

・・・・・・というか自分の反応がいくらサクラにされたからとはいえ普通とは違うとは思っていたがまさかサニアのせいだったとは。

お蔭で私は・・・・・・・・・・もう!


「サニア・・・・サクラが目覚めたら裸で縛って差し出してやる。」

「ねえ、、、、謝るからヤメテ?ネ?」


サニアが血相を変えて首を振るがもう許さない!

しばらく押し問答を繰り返していたがサニアは諦めたのか急に抗弁を止めた。

諦めた表情を見せても絶対にやめないからなと思っていたがサニアはにっこりと急に笑顔になるのでそんな考え吹き飛んだ。


「大丈夫だよ、シノン」

「・・・?」

「シノンは可愛いもん!」

「・・・サニアほど可愛くないしアリアほど女性らしくない。」

「ううん、違うよ」


サニアはそういうとトコトコ私の前にまで足を進めてきた。

そしてうーんと背伸びをして私をいいこいいこしてきた。


「シノンは確かに戦士かもしれない・・・だけど本当は可愛い女の子だってことをおにいさんも私も知ってるよ」

「・・・でも・・・アリアの方が強いし」

「シノンの方が胸大きいし、抱き心地もバツグンなんだよ?」

「・・・・そういうことを言ってるんじゃないんだが?」


酔っ払いのオヤジみたいなことを言いだしたサニアはチロッと舌を出す。


「シノンにしかない良い所、シノンだけがアリアに勝てる所・・・いっぱいあるんだよ?シノンが分かってないだけでいっぱいあるの!」

「サニア・・・・」


ずっとそばにいてくれた彼女が自信満々でそう言ってくれるだけで、自分には本当に何かあるんだと思えてくるんだから不思議だ。

・・・・・そして今更ながら彼女にこんなことを相談してしまったことが恥ずかしくなってきた。

顔が熱くなってくる・・・・・


「サニア、、、悪いが・・・」

「やだなあ、、、内緒にしておくに決まってるでしょ?・・・私だってちょっと恥ずかしいし(ぼそ)」

「ん?」

「な、何でもないよ!・・・・ま、取り敢えず私とシノンが仲良くできるんだし、同じ人を好きならアリアとシノンもお互い仲良くできるよ・・・・お互いの良い所を認め合ってね?」


サニアがそう言い終えると共に扉を規則正しく叩く音。


「どなたですか?」

「私だ・・・・後、『獄炎将軍』も」

「シノンがいますけど」

「・・・・・・構わない」


頭からつま先まで一瞬で冷え切った。

かつて同じ状況で女王陛下から聖女の秘密を伝えられた日のことを思い出して

そして今まで避けてきた父様と顔を合わせなければならないことを実感して

サニアがきゅっと手を握ってくる・・・・彼女もそうだったようだ。


扉が開かれ入ってくるのは黒髪の美女と白髪の巨漢。

二人とも堂々と言わんばかりの様子だったが、、、、表情は暗かった。

父様と目が合いそうになりすぐに目を伏せたから・・・あまりよくは分からなかったが用件は聞かずとも分かった。

サニアは彼女を知らない者が聞けば明るい声で・・・だけど彼女を良く知るものが聞けば間違いなく無理をした声で話を切り出す。


「・・・・やっぱりおにいさんが瀕死で帰って来たのはまずかった?」

「よくはやったと思う。だが、、、、少女に殺されかけて瀕死は幾らなんでも、、、、まずかった。一部では不正を疑われてる。」

「そんな!サクラもゼノン兄様も不正なんてしません!」

「シノン」

「っ!?」


女王陛下の言葉に抗言しようとした私に対して父様から濃密な殺気が突き刺さる。

言葉を発することが出来なくなった・・・・本能的な恐怖で。

恐怖を擦りこむかのように父様は言葉を続ける。


「お前にもうこの件に関わる権利はない。聖十剣の地位を失い、王国から一度とはいえ逃げた者に。」

「・・・・はい」


その通りだ・・・・私は逃げた。

そしてサクラに全部任せた。

・・・・・自分は弱さをいいわけにずっと逃げてきた。

言われるまでも本当は分かってる。

今更何か言う権利があるはずがない。

黙りこくった私を見て女王陛下は一瞬黙るが、言葉を続けることを選んだ。


「まあ、そういう諸々を含めると同時にゼノンが負けた事実も考慮しなければならない・・・」

「・・・おにいさんもゼノンも勇者としての適格がないってこと?」


サニアが聞くと女王陛下は頷いた。

そして答えた。


「よって、、、三代目勇者は今回『なし』になった。」

「「!????」」

「・・・・・・・・・・・」


今、、、、なんて言った?

三代目勇者を、、、、『白紙』にすると言ったか?

この状況で?


「・・・待ってください!今の状況を分かってるんですか!?」

「そうだな、、、、レイディウスもゼノンもダメ。それなのに王国は三国から侵略されようとしている。」

「だったら何で三代目勇者がナシになるの!?お母さん頭打ったの!?」

「落ち着け・・・・勇者ならまだいるだろう。」


女王陛下は驚きで不敬にも詰め寄った私たちを抑えつつ、まだいると父様を顎で示した。

・・・・・何を言ってる?

父様は当然勇者だろう?

そして彼がいても王国の存亡の危機だからこそ・・・・・・三代目勇者を・・・・・!?


「ま、、、、まさか、、、、、」

「察しがいいな・・・・」


私が先に理解した。

女王陛下がそれが正解だと答えを言う前から肯定した。

次にサニアが気づき、、、、やっぱりそうなるかと言わんばかりにため息をついた。

『納得したからこそ』ついた溜息だった。


「そっか、、、、私の勇者様はガルブレイク将軍ってこと?」

「そうだ・・・・『獄炎将軍』の力を・・・・聖女の力でさらに引き上げる。」

「そんなことできるわけがない!」

「出来ないと決めつけるには早い・・・過去には人間から聖女が出た時は聖女の役目を果たせるはずがないともう反対が出た。しかし聖女になった彼女は立派に大義を成し遂げた・・・今までなかったからと出来ないと決めつけるのは間違っている。」

「でも、、、、、」

「それに私を除く王国最強の者に聖女の力を与えなければならない・・・・そのルールに則ると王国で私の次に強いのはゼノンでもなくレイディウスでもなく『獄炎の勇者』ガルブレイク・エルリングスだ。」


・・・・確かにそうかもしれない。

だが、、、、、父様!

気づけば恐れていたはずの父親の胸ぐらを掴んでいた。

そして感情のままに叫んでしまっていた。


「あなたは、、、、母様の犠牲を受けながら、、、、また人の犠牲で強くなろうとしているのかっ!」

「女王陛下と・・・王国の為なら」

「・・・・・・あなたって人は!」

「私に言わせれば弱い方が罪だ。」

「っ!?」


そう、、、弱いは罪だ。

いくら理想を語っても、、、、守りたいものを守れなければそれはただ周囲の人を傷つけるだけの苛立たせるだけの詭弁。

地下街に転がっている酔っ払いの妄言と同じ。

唾棄されるべきものだ。


そしてサクラは弱かった

私も弱かった

その結果、、、、、受け入れなければいけない。

それが世の中の摂理なのだから。

王国を空っぽの理想の犠牲にするわけにはいけないのだから。


父様が私の腕を軽く振り払う。

振り払われた腕は力なく私の腕なのに揺れていた。

そう・・・私は王国に何か理想を語れるほど強くない。

弱くてちっぽけなまんまだった。


「そっか、、、、そっか。」


サニアの声が耳に響いた。


「もう少しだけ長生きできると思ったんだけどなあ?」

「・・・・すまん」

「お母さんのせいじゃないよ」

「・・・・・すまん」

「あとどれくらい猶予があるの?」

「帝国が進軍を始めたと連絡が入った・・・・多少の猶予はあるかもしれない・・・しかしガルが力を使いこなすまでの時間を考えれば一刻も時間が惜しい・・・」

「分かったよ・・・・うん」


・・・・・・・母娘の会話。

暖かいのに・・・・寂しい会話。

どこかで聞いた気がする。

どこだったっけ?

思い出せない。



ああ、、、、けっきょくこうなるのか。

私じゃサニアを守れない。

私は・・・・・・弱い。


父様に連れられ女王陛下とサニアが私を置いて部屋を出ていこうとする。

声をかける・・・・何を?

剣を振るう・・・・勝てるか?

氷を使う・・・・意味は?

鎖を使う・・・・不完全なままで?






扉が閉じられていく

サニアの後ろ姿が・・・・見えなくなっていく

視界が・・・・・またぼやけていく

何で・・・・何で・・・・こんな時まで泣きたくなる・・・・・何で私はこんなに弱い



サクラ・・・・・ごめん

サクラ・・・・あんなにやってくれたのに・・・・

結局・・・・無駄にしちゃって・・・・ごめん






―あと少しだけ・・・・何だっていい。時間を稼いでくれ。-





!?

周囲を見渡した。

だが、、、、私以外そこにはいなかった。

けれども確かに・・・・サクラの声がした。


「そうだ、、、、、私は、、、、、」


扉を押し開く。

まだ、、、彼女達はいた。


「待って!!!」

「「「!?」」」


三人が何事かと振り返る。

私は足をもつれさせながらも必死でくらいついた。

そして追いついた。


「どうした、、、別れの挨拶か?」

「シノン?」

「・・・・・・・・・」


三人がそれぞれ私を見つめる。

私は・・・・・息を整え・・・・・本当にそれでいいか自問自答する。

これしかないのは分かってる・・・・けれど・・・・

今から言う言葉を理想を・・・考えるだけで心臓が痛くなる、脳が熱くなる、口が渇く、手汗が出る。

それぐらい不安になる。


根拠のない理想、無駄な期待、無意味な信頼。


くだらないと唾棄され

本当に守りたいものを天秤にかけるには不十分

・・・・そう不十分


「勇者召喚の儀を・・・・するべきです。」

「何を・・・・言っている!!!!」


父様が大きな声で・・・身体がきゅっと縮み上がるほどの怒りの声で私を叱責しようとする。

足が震える・・・涙が溢れる・・・・声はすぼみ・・・・呼吸が苦しい。

もうヤケクソになってると自分でも分かってる。

けれどもこんな弱い自分でも・・・・・出来ることがあることも分かってる。


「分かってないのはあなただ、ガルブレイク!」

「!?」

「女王陛下!これは前代未聞のこと!よって慎重に進めなければならない!少なくとも正規の手順を踏まずにするべきではない!」

「・・・・・正規の手順?」


女王陛下が眉をしかめる。

そう、、、、正規の手順だ。


「女王陛下を除く王国最強の者が勇者・・・間違いありませんね?」

「ああ」

「シノンだめだよ」

「!?」


サニアが私の裾を引いていた。

その顔は一切の冗談も含まずに本気の顔だった。

本当にダメだと思っている顔だった。


「・・・・サニア、最後まであがかせてくれ」

「駄目、、、絶対に、、、、駄目」

「大丈夫だ」

「大丈夫じゃない」

「何を、、、言っているんだ二人は?」


サニアが何か続ける前に先に話してしまう。


「まだ、、、、王国最強は決まってません。」

「・・・・・ゼノンもレイディウスもガルブレイクには勝てん。他にいると?」

「います・・・・・ここにいます!」

「シノン!」


サニアの一喝が響く前に・・・・言ってしまった。

女王陛下はすぐさま鼻で笑い飛ばそうとして・・・・そして気づく。


「お前ら一味は・・・・・」

「私も、、、、『種の魔術師』です。ガルブレイク・エルリングス同様、、、、『獄炎』の」

「・・・・・・認めぬ」

「陛下!」

「お前程度が・・・ガルにかなうはずなかろう」


その通りだ・・・・例え同じ『種の魔術師』だろうがサクラがアリアに負けたように・・・・・優劣は当然ある。

私は間違いなくガルブレイクに・・・・父様に負ける。

そしてサニアは失われる。


・・・・・・『私』では


サクラの理想は・・・・嘘っぱちでむちゃくちゃで実現出来そうにないもので

何で今まで信じてこれたんだろう

今こうして彼の理想が崩れかけてる今だからこそそれを思う。


でも一方でまだ信じてる自分がいる。

サクラ・レイディウスを・・・・彼を信じてる自分がいる。


『種の魔術師』だからじゃない

『暴走魔力適合者』だからじゃない

『私より強い』からじゃない


彼が優しくて私の為にサニアの為に・・・そしてアリアの為に今まで頑張って来たのを隣で見てこれたから

相棒として隣で見てこれたから

なのに相棒の私が彼を・・・・・相棒を信じてやれなくて・・・・根拠のない唾棄すべき空虚な理想とはねつけてはいけない。

そんなことはしてはいけないんだ。


モルロンド伯爵直轄領で・・・・かつて自分と交わした今では曖昧な約束が

形を明確にし、私を奮い立たせてくれる。


『サクラの隣で戦い続ける』


戦いだけじゃない

理想の中で

言葉の中で

心の中で


辛いときに

根拠がないときこそに

一番彼を信じてあげられる『相棒』になりたい

いや、、、、もうならなくちゃいけないんだ。


私が今すべきことは・・・・・


「あなたは、、、、、どう思いますか?父様」

「・・・・・・・・・・・」


私の問いにガルブレイクは無言のままだった。

目を閉じ、、、、怒りでも沈めているのか、、、、全身を振るわせ歯を食い縛っているのかギシッとすり合わされる音が聞こえる。


「やめろ、、、、受けるな。それはセシルが望まない!」

「『獄炎将軍』!シノン!嫌だよ、二人が傷付け合う所なんて見たくないよ!」


・・・・・二人とも分かっているんだ。

父様に縋り付くかのように体を揺すって叫んでいる。

私にも分かっている・・・・父様の答えが。


父様は目を開く。

その目は・・・見なければよかった。

濃密な怒気と殺気で紅く充血していた。


「・・・死の覚悟は?」

「当然。」

「よかろう・・・・女王陛下よろしいか?」

「・・・・・いいわけない!」

「では、、、、またあの時のように部屋に籠っていただきますが?」

「・・・・・・・お前は!」


女王陛下はそれだけ言い残すと足早に立ち去ってしまった。

・・・・・あれだけ感情を露出させた彼女は初めて見る。


「いやだ、、、、ぃゃだょぉ・・・・皆が傷つけあうなんて・・・」


サニアが崩れ落ちて遂に涙をあふれさせる。

本当なら・・・・すぐにその体を支えたかった。

だがここで父様から目を逸らせば、、、、負ける気がした。


「決闘の日時は?」

「明日の早朝」

「よかろう、、、首を洗っていろ」

「あなたこそ」


示したわけでもないのにお互いに背を向け歩き出す。

父様が何故決闘を受けてくれたのか、、、理由は分からない。

だが、、、、何故か必ず受けると分かっていた。


そして・・・・私の命をかけた一世一代の一か八かの大一番が始まる。

サクラが私が父様に殺される前に目覚めれば、、、、薄い蜘蛛の糸でも希望は繋がれる。

しかし逆の場合は、、、、、まず間違いなく私は殺される。

サニアも命を失う。


・・・・・ここが瀬戸際なんだろう。

王国に帰ってきてから様々な戦いがあったが本当の意味でここが最後の勝負なんだろう。

サニアを救う最後で一番の山場!

それが分かっているからこそ、、、、、身体は震えが止まらない。

魔力の波が少しも安定しない。

心臓が高まり、吐き気がする。


父様に対して積み上げられてきた恐怖は消えない

それどころか今の邂逅で更にとらうまになっている

強がって自分をだまさなければ前に立つことすら出来ないほどに

こんな状態で・・・・まともに戦えるのか?

自分でも分からない。


「・・・・・・それでも、、、、サクラを信じると決めたんだ。」


相棒として、、、、、私として

~次回~

種の『親』と『子』

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