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異世界でもう一人の俺が暴れすぎてキチガ○と呼ばれている件について  作者: 浅き夢見む氏
第五部:かつて交わした約束は曖昧なままで心に残る<王国編>
100/183

第2.5章焔の追憶、誓いの鎖part3

百話達成。

記念に今度短編投稿するのでそっちもよろしくお願いします。

・・・・・・異世界キチとは全く無関係ですが。

すたすたすたすた・・・・・・よたっよたよたっ!

すたすたすたすた・・・・・・よたあっよたよ・・・ぐらっ


「危ない!?」

「あい!」


まだハイハイをしていてもおかしくないぐらい幼い少女が転びそうになるのを前を歩いていた少年が瞬時に受け止める。

女の子は少年の必死さが面白かったのかきゃっきゃっと大興奮している。

少年にしてはたまったものじゃないだろうが・・・・


「シノン・・・・セシ・・・じゃなかった。お母さんの所に戻らなきゃ駄目だよ?」

「あい!にーしゃん!」

「いやいや、返事だけ立派でも・・・ね?」

「うあ?」

「だから分かってシノン・・・今から訓練に行かなきゃいけないんだ」

「あい!」

「分かってないな、これは・・・」


白髪の小さな少女が背に大人用の剣を担いだどこか不格好な少年の後をずっとよたよたとついていっている。

振り切るのは簡単だろうがそうするのは彼女が心配だからと結局はシノンのペースで歩くことになる。

七歳になったゼノンは最近はシノンにずっと遊んで!と付きまとわれている。

まんざらでもないようだが、訓練の時間がかなり削られるのが悩みの種だとか。

それでもたった二年で聖十剣十位になってるんだから才能というものは恐ろしい。


「あ、し

「ゼノン」

「お・・・おとうさん」


優しい声音でだけれどもすこし制を含んだ彼女の声でゼノンは少しくすぐったげな顔で言い直す。

セシルはどうしてもゼノンを家族にしたいらしい。

母となり少し性格が落ち着いた彼女は拳を使わない分、言葉に有無を言わせない雰囲気を出すようになった。

それはゼノンにとっても私にとってもいいことであり、頭が上がらないという点では悪いことなのかもしれない。


「お久しぶりです、お父さん」

「ああ、久しぶりだな。順調に聖十剣になれてるみたいで嬉しいぞ。」

「ははは、、、、六代目ミルさんや光の勇者さんにも鍛えてもらえてますから」

「そういえば・・・二人とも私の代わりを見つけてイキイキしてたな。」

「まあ、、、、、お父さんは忙しいですから」


シノンを抱きかかえたゼノンはそう言って私に一礼した。

相変わらず子供とは思えない・・・でも大事な息子だ。

ゼノンの頭を撫でていると彼が腕に抱えた少女がどこか怯えた様子なのに気づいた。


「・・・・・もしかして忘れられているのか?」

「そなのか~シノン?」


門まで迎えに来てくれたセシルがうりうりとシノンの頬をいじるがシノンの視線は私に固定され表情は固いままだった。

・・・・・・・・セシルとゼノンが可哀想な目で私を見てくる。

やめろ、やめてくれ。


「あう~~~~~」

「・・・・・まあ、お父さんは滅多に帰って来れませんもんね」

「・・・・・私たちはガルが大事な仕事をしているのは知ってるからな?」

「・・・・・・・・・・(そおっ)」

「やっ!」

「「「・・・・・・」」」


泣いていいだろうか?

触れようとした手は小さな手によってぺチンとはたかれた。

セシルが慌てた様子でシノンを抱き上げ、必死に彼女に語りかけ始める。


「シノン!?お前が住んでるこの立派な屋敷はお父さんのガルが建てたんだぞ!?」

「あい!」


ああ、、、、そういえばシノンが生まれるからと私の貯金だけでは足りなくて、結局王家から借金してまで建てたこの屋敷のことか。

最近やっと借金返済したからこれからは四人でずっと暮らせるなと明るい気持ちになっていたこの家のことか・・・・もう三人で暮らせばいいんじゃないかな?

目に入れても痛くないぐらいに可愛がってきたはずの娘に忘れられてるどころか嫌われちゃってるお父さんなんて地下街の安宿にでも止まっていればいいと思うんだ・・・


「お母さん!お父さんが遠い目になってますよぉ!」

「分かってるの?本当に分かったの?」

「あい!あーしゃん!」

「そうか・・・・なら・・・・

「う゛ぃええ゛ええええん゛!」


セシルが私にシノンを抱かせようとしたら大泣きなんですけど?

もう立ち直れそうにないんですけど・・・・


「シノン!確かに滅多に帰って来れないかもしれないがこんな立派な所に家を建ててくれたんだぞ!感謝の気持ちはないのか!?」

「セシルさん、、、、もっと他に言い方ありませんか?」

「・・・・・・・・・ゼノン!」

「うわっ!?ちょっと!?シノンを物みたいに放らないでください!」

「だって!ガルが可哀想じゃないか!一か月ぶりに帰って来たのにこんな仕打ちなんて!私たち家族の為に毎日頑張ってくれてるのに!」

「あい!あーしゃん!」

「シノンのせいだよ?分かってる?」


・・・・・・・三人とも非常に仲が良いみたいだ。

家族の暖かさがそこにあるということを、シノンの明るい笑顔からそれがうかがえる。

シノンには嫌われてしまったがセシルのお蔭で明るい家族でいられてることに本当に安堵できる。

自分は家族の暖かさを知らないからこれが家族だと断言できるほど経験はないが帰って来たい場所が家族だとするならば間違いなくここは家族だ。


「とーしゃん?」

「「「!?」」」


今、、、シノンはなんて言った?

セシルが私と私に向かってあ~あ~と急に手を伸ばし始めたシノンを見比べてハッと気づく。


「ああ!ガルが笑ったからか!それで思い出したのか!」

「・・・・そうなのか、ゼノン?」

「いやあ、、、、いつも無表情だし、、、今も正直無表情・・・・」

「私とシノンは似ているからな!やっぱりわかるんだよ、、、な!シノン!」

「あい!あーしゃん!」

「・・・・・・・やっぱり女性は理不尽だ」


ゼノンがまだ七歳のくせに悟り切った顔で生意気なことを言っている。

それを私は十二歳で知ったからやはり彼は早熟の気がある。

・・・・シノンもそうだが彼がどう成長していくのか?

正直楽しみだ。


「おう!とーちゃ!」

「・・・・・・・いたい」

「おう!おう!おう!」


なんかハッスルしてるんですけど・・・・

凄く髪を引っ張ってくるんですけど・・・・・

ゼノンがそんな私たちを感心した様子で眺めてて止めてくれないんですけど・・・・・


「そういえば顔はお母さん似ですけど髪の色はお父さんのですよね・・・今更ですけどお父さんの白髪遺伝子ってすごく強いんですね」

「エルリングスの家は・・・王国でも珍しい白髪ばかりだったからな・・・いだっ!・・・だからだろう・・・いだだだっ!・・・・セシル助けて!」


セシルがぐいぐいとシノンを近づけてくるとシノンは私の白い髪をぐいぐいと引っ張り始めた。

かなりガッツリと引っ掴まれ全身の力で引っ張られれば流石に痛い。

セシルはそんなシノンの様子を笑いながら見ていて助けてくれない。


「自分と同じ髪の色はガルしかいないもんな~『珍しい』よな~!『普段見れない』から今のうちに一杯触っておこうな~!」

「いだっ!もしかして滅多に帰って来れないこと怒ってる!?」

「さあな~?シノン~はっきりしない男は凍らせてしまえばいいんだぞ~?」

「あい!」

「やっぱり怒ってる!ごめんなさい!」

「うん、許す!」


セシルはにっこりと笑うとシノンの手から丁寧に私の髪を解いてくれ、彼女を私の腕の中に納めた。

幼児特有の生温い体温とふわっと香る乳の香り。

私の白髪を引っ張ろうと、うんうん!と必死で髪へと手を伸ばす小さな小さな手。

とても可愛かった。


「抱いてやれ、、、、お父さん」

「あ~あ~!」

「シノン、、、そんなに髪を引っ張りたいの?」

「・・・・・・・・ただいま」

「「おかえりなさい」」


ただいまと言う言葉を言った瞬間、パズルのピースをはめた時のようにしっくりと来た。

セシルの笑顔、ゼノンの笑顔、シノンの笑顔。

今日もこの笑顔を見ることが出来る。

それだけで、、、、、、家族に会えない日が多いことも耐えられる気がした。







「久しぶりの家はどうだった?セシルは元気か?」

「ヒナねえ・・・気になるなら来ればよかったのに」

「私が私用で王宮を出るのは何かとまずいだろ?」

「まあ、、、、王国の最高戦力二人が出払うのは確かにまずいですね・・・」


ゆっくりと久しぶりの家族との団欒を愉しんだ次の日のこと。

私は王宮の戦略会議室でヒナねえと会話していた。

まだ聖剣達は集まっておらず彼女と砕けた会話をするのも久しぶりな気がする。


「ところで・・・今日の議題聞いているか?」

「まあ、、、、、一応将軍補佐なんで」

「父上が勇者としての仕事をガルに任せて、その分将軍職に専念したのを見計らってかは知らないが帝国がここまでしつこいとは・・・・・」

「戦線を撤退どころか何年も維持してますからね・・・国力の差を思い知らされます」


国の面積比約五倍

人口比約四倍

兵力比約三倍


国風もあるだろうしそもそもこの国は帝国から独立して出来た国。

分かってはいるものの地の差を埋めるのは難しい。

魔術という個人の力を百に等しい者に変えるものがなければどうなっていたことか・・・・


「皆来たようだ・・・」

「はい、また・・・」

「ああ」


ヒナねえが将軍席の隣に座り私が相対する隣の席に。

女王陛下が参加しないため一番の上席は将軍であり王国武官の最高責任者であるロイさんが座ることになる。

ぞろぞろと人が集まるにつれ騒がしくなる会議室。

ロイさんがいつの間にか座ってはいるものの何時までたっても会議を始めようとしないせいもある。

そのせいかヒナねえが不機嫌だ。


「ふう・・・」

「部下にうまく仕事を割り振らないから疲れるんだよ」

「ロイさん、、、そっちの疲れじゃなくてですね?」

「分かってる・・・全く・・・ゼノン君はそこらへん上手くやってるよ?」

「・・・・・・・そうですね」


相変わらず自分のペースを崩さない人だ・・・言っていることは正しいのだが。

部下に仕事を割り振る能力は上官に必須の能力。

ただしロイさんは本来自分でする分まで部下に押し付けている。

ゼノンも私やロイさんの仕事を見て勉強しているようだが、どうやらロイさん寄りらしい。

・・・・・・・不安を感じるのは何故だろうか。

将来的に部下をいびる嫌な上司にならなければいいが。


「ま、今は『お客さん』のお出迎えを考えていこうか」

「静まれ」


ロイさんがそう纏めた瞬間、ヒナねえが一声出す。

その瞬間空気はピシリと引き締まり一斉にロイさんへと体を向ける動作が完全に一致しざっと大きな音が響く。

よく訓練された兵ほどこの気持ちいい音が鳴るのだが、流石上級兵たち・・・背中を任せるのにこれだけ安心できる人たちはいない。


「よし、、、帝国軍が再び帝都から物資を集め始めてると連絡が入った。皆、、、もう飽き飽きしているだろうが再びの戦だ。」

「・・・軍勢の予想は?」


ヒナねえがそう尋ねた瞬間さっきまで笑っていたロイさんは少しだけ声の音程を落としそして告げた。


「・・・・・・・先遣隊で三万、、、本隊十万。場合によってはさらに増える可能性がある。」

「「「「「「「「「「「「「!?????」」」」」」」」」」」」」」


ざわめきが起きる・・・・それもそのはずだ。

今までどうやっても帝国軍の軍勢は五万が限度だったはず・・・・それをどうやれば十三万なんて軍勢に発展できるのか・・・・・

皆が難しい顔で考え込む。


「王国の軍はどうかき集めても三万・・・・とてもじゃないが対抗するのは・・・」

「ロイ将軍、、、一体帝国で何が・・・・」

「・・・・・人でなしが軍を仕切るようになっただけさ」

「人でなし・・・・?」


ロイさんは密使からの報告書らしきものを押し広げしかめっ面で読みはじめる。


「最近どうもおとなしいと思ったら帝国の三十五代目皇帝が崩御し子息たちが後継争いをしていたらしい・・・そして全ての対抗馬の首を斬って玉座に着いたのは雷の勇者を味方につけた第三皇女『首狩りコルネリア』。」

「雷の勇者を味方につけた!?」


思わず大きな声で反応してしまい立ち上がってしまった・・・周囲の視線を集めてしまう。

謝りつつ席に座るとロイさんは咳払い一つつきながら再び密書を読み始めた。


「ガルが驚くのも分かる・・・・本来雷の勇者は戦争に参加はするものの意思なく動き、帝国もどこか扱いに困っているようだった・・・・だがもし、、、雷の勇者が自らの意思で第三皇女『首狩りコルネリア』についたとすれば・・・・・・・・」


今度は確実に誰かが死ぬ


聖十剣全員及び光の勇者ロイの頭に同じ言葉が浮かぶ。

歴戦の戦士であるジョージさんやボボルノさんは眉をしかめるぐらいで済んだが、中堅勢のコリンさん達は流石に顔から血の気が引いている。

まだ幼いからと・・・・・ゼノンを参加させなくて良かった。

今の先輩たちの相貌を見れば幾ら早熟している彼でもおそらく涙目になるだろうから。


「皆、腹をくくって欲しい。今回の戦い・・・・絶対に負けてはいけない戦だ。」

「・・・・・・どういう意味ですか?」


今までの戦は皆負けてはいけない戦だった。

何故今更それを強調するのか・・・・

皆の視線が注ぐ中ロイさんは説明したくないと首を振った。


「おぞましい・・・・同じ生物とは思えない・・・同じ上に立つ者として・・・何故あんなおぞましいことが出来るのか・・・・・僕には分からない」


ロイさんは何を知ったんだ・・・・・

何十年も帝国と戦い続け様々な地獄を見てきたはずの勇者は今まで必死で続けてきた『から元気』を遂にかなぐり捨て・・・・・震える手を抑えながら口を開いた。






轟音

目を焼く稲光

濃密な魔力が空気を一瞬で熱気に変え王国兵士の喉を灼く

雷で灼かれれば一瞬で死ねたろうに・・・・そんな考えを強引に振り切る。

目の前には大勢のエルフ、魔族、海民族、獣族、、、、中には天使まで。

同胞を・・・・そして・・・敵でない者達を殺して先に進む。


「うああああああああああああああっ!」


雷がまた戦陣を駆け抜ける。

一刻も早くあいつを止めねばならないのにまさしく肉の壁がそれを許してくれない。

そして精神をすり減らしてようやく抜けきったとしても鉄と融合した人間たちの群れ。

非道な策によりロイさんと聖十剣達が分断されて何分たった!?

幾ら魔術を使っても・・・・いくら力を振り絞っても・・・・彼の姿は見えない。


「『私は炎』!『爆発する焔』!『意志を持つ灼塵』!『鎖に宿るは火怨』!」


王国兵たちが私の詠唱を聞き、各自全力で逃走を図る。

それでいい・・・・・そうしてくれてありがとう。

ロンさんのお蔭で仕込みは出来ていた・・・・・一発限りだが・・・・・使うなら今しかない。


「『私の世界は赤の景色』!『融解し血を焦がす』!『加速し増幅する烈火』!」


気づく者は気付く・・・・地面がドロドロに溶けていることを。

熱でドロドロに溶けてしまっていることを。

そしてドロドロに溶けた地面が一つの『魔法陣になっていることを』


「『死を喚べ』!『死を叫べ』!『死を請え』!『不可視の硝燃≪インビジブル・ヒート≫』!」


空気が歪む。

そして強烈な風を巻き起こし、周囲にドロドロに沸騰する『液体』を撒き散らす。

それを被った者達まで更にドロドロに溶けていき更にそれが風で巻き起こる。

鎖で降りかかる『液体』を弾き飛ばしながら周囲を確認する・・・・

魔力枯渇でふらふらの体を必死で奮い立たせ前へ前へ進む。


「ガル!」

「ひ、、、、ひなねえ?」


倒れそうになった体を支えてくれたのは後陣から援軍に来てくれたヒナねえだった。

返り血を浴びてはいるが彼女自身は怪我はないみたいだ。

流石と同時に安心した・・・・彼女の白磁の肌が傷つかなくて。


「あいつの雷を喰らったのか!?」

「いや、、、、大丈夫、、、、魔法陣級魔術を使ったせいで、、、魔力が切れただけ、、、、」

「・・・・・これ・・・・お前が?」

「・・・・・・・・それより・・・・ロイさん・・・・・一人で・・・・・戦ってる・・・・」

「何!?」


ヒナねえが強引に自分をおぶさり奔り出す。

恥ずかしいと普段なら思うだろうがそんなことを言えるほどの余裕はなかった。

風の鎧を纏っているのか物凄い速さで駆ける彼女の背の上で自分のしてしまったことの結果を確認する。


沸騰した紅い沼

千、二千の命で出来る景色ではなかった。

この沸騰する沼は・・・・・一週間はこのままだろう。

・・・・・ロイさんと合流するために私はいくつの命を殺したのだろう?

・・・・結局殺すことしか出来ない自分は・・・こうすることしか人を守れないのだろう。


「・・・・・・・・ヒナねえ、俺・・・・・」

「何も言うな・・・・・・お前は間違ってない・・・・間違ってるのは・・・・この世界だッ!」

「・・・・・・ごめん・・・・・」

「・・・・・しゃんとしろ!お前はセシルの勇者だろうが!」

「・・・・・・・ああ、分かってる」


分かってはいても、、、、姉のように思っていた彼女の背中では、、、つい十二歳の少年のままでいたくなってしまっていた。

二人で戦陣を越えていく。

私の魔術で大幅な軍勢を削り切ってしまったこと・・・・そして恐れをなして逃げ出し始めた者達がいたこと・・・・・

それが功を奏してかロイさんの光と雷の勇者の膨大な雷がぶつかり合う場所は・・・・既に近かった。


「・・・・父上・・・・はあはあ・・・・あと少しです・・・・辛抱を・・・・」

「ヒナねえ・・・・おろして・・・・私を担いだままでは間に合わない」

「バカを言うな・・・・戦陣にお前を残していけるか!」

「でも・・・・・・」

「もし父上が倒れたら、、、、王国にはもう私たちしかいないんだぞ!優先順位をはき違えるな!お前は死んで良い人間じゃないんだ!」

「・・・・・・・・・ごめん・・・・・」


息を荒げながらもヒナねえは更に速さを上げていく。

この速さを出せるのは風系統に優れる者が多いエルフィリアでも彼女だけだろう。

音が既に大きすぎて実際の音量を測れない。

光が強すぎて者の遠近を掴めず、モノの形がぼやけて見える。


「・・・・・・・・・はあ、、、、はあ、、、、はあ」

「・・・・・・・・・・・・・・ああ」


だからだろう。

光の勇者ロイの首が刎ねられた瞬間をはっきりと目にすることが出来なかったのは。

後のことは・・・・・何も考えたくないし思い出したくもない。






「ふざけるな!」

「ふざけてなんか・・・・・いません」


ヒナねえの怒号が・・・・いやヒナねえという呼び方はもう不敬だろう。

二代目女王陛下がロイさんが斃れたということを聞いたその日に自殺した。

だから公式の発表はまだだが、彼女が三代目女王陛下だ。

それと時を同じくして将軍職に私もついた・・・・武官の次席が私だったのだから仕方がない。


二人だけの会合。

内容は当然勇者についてのもの・・・・ただし主張は真っ向から対立していた。

王国を守ることを第一とする女王陛下・・・そしてセシルを第一とする私。

魔力枯渇でふらふらの二人・・・・しかし二人とも譲らないという意志だけで体を動かしていた。

心が既に限界なのだろう・・・・・肌は荒れ、、、髪はぼさぼさ、、、それでもあと一歩で踏みとどまっている強い彼女は涙をボロボロと流して私を責める。


「王国の兵は半数を切っている・・・・対して向こう側は馬鹿みたいな国力を活かして更に援軍を送ってくる・・・・・なのにお前はどうして・・・・・」

「セシルを守るために・・・・私は勇者になりました。王国も守る、セシルも守る・・・・それは絶対です。」

「バカを言うな!勇者としての力もなく、何をどうすれば雷の勇者に勝てるんだ!奥の手の魔法陣級魔術も使ってしまったんだろう!?」

「大丈夫・・・・です・・・」

「お前は分かってるのか!」


女王陛下が心の叫びを全て張り上げる。


「私だって・・・・セシルに死んで欲しくない!・・・・だけど・・・・だけど・・・・もし帝国に王国が負けたら・・・・・私たちが殺してしまった同胞たち・・・・そして・・・・鉄の兵達・・・・次にああいう目に合うのは・・・・お前が護りたかった・・・・そして私が護りたかった・・・・セシルが護りたかった・・・・・この国の・・・・民なんだぞ・・・・・」

「・・・・・信じてくれ・・・・・私は・・・・・この国の勇者だ。」

「どういう、、、、ことだ?」

「炎属性の『儀式級魔術』・・・・・『天炎ノ雫、灰燼二落ツ』・・・・最後のとっておきだ。」

「・・・・・使えたのか?」


張り上げる声ももうないのか・・・・女王陛下は涙が枯れた目を僅かに開いた。

私は頷く。

女王陛下は・・・・・・・・二度、三度頭の中で計算を繰り返しそして気づいてしまう。


「何を・・・・犠牲にするつもりだ」

「・・・・・・・」


答えを言えば・・・・・彼女は否定する。

否定の先にあるのは・・・・・・聞かずとも分かる。

だから返事を聞く前に・・・・・彼女の立ち尽くす部屋から出た。


「待て!待つんだ!」

「・・・・・・・俺に生きる価値があると言ってくれてありがとう・・・・・ヒナねえ」

「待て・・・・・ガル!」

「・・・・・・・・・・じゃあね」


扉を必死で叩く音がする。

しかし、、、いくら彼女でも、、、、この扉は開けない。

魔力枯渇の彼女では、、、、、聖十剣達により固定されたこの扉は開けない。


「ボボルノさん、、、、ジョージさん、、、、ありがとうございます。」

「・・・・・・ぐずっ・・・・はやくいげ・・・」

「・・・・う゛まぐ・・・・・言い訳゛して゛おく゛・・・・」

「・・・・・今までありがとうございました」


私の顔を見ようともしない彼らに一度だけ頭を下げ・・・・・二度と振り向かなかった。







「・・・・・・・最後に会っていかないんですか?」

「・・・・・・・・・・・・決心が鈍る」

「・・・・・・・・・・・・・・そうですか」


野営地から人目を避けて出たはずなのに・・・・・ゼノンが馬を連れて待っていた。

そもそも戦場に連れてきていないはずなのに・・・・

ゼノンはいつも通り・・・・・の顔が出来ていなかった。

子供相応に涙でぐちゃぐちゃの顔をしていた。


「ごめんなざい・・・・やぐに・・・だでなぐで・・・・ごめんなざい・・・」

「・・・・・・やめろ・・・・・息子のお前に・・・・そんなことで謝られたくない」


ぐいっと一度だけ顔を袖で拭った。

それだけで威厳を保てた。

・・・・・・・・彼を抱きしめることが出来た・・・・・父として。


「お父さん、、、、、僕の家族をたずけてくれてありがとう、、、、僕を家族にいれてくれてありがとう、、、可愛い妹と優しいお母さんを、、、つくってくれてありがどう、、、、本当に、、、、ありがどう」

「強くなれ、、、、そして私の代わりに、、、、、セシルとシノンを、、、、頼む」

「はい゛、、、、、、おとうさん」


七歳の生意気で誰よりも賢くて才能あふれる・・・・自慢の息子だ。

・・・・・・・本当に自慢の息子だ。







魔力の消耗を少しでも抑えるため馬に乗って移動・・・・最後の最後に馬に乗れてよかった。

本当に・・・・・・良かった。

昔から馬が好きで・・・・乗ることに憧れていた。

セシルに拾われてから・・・・・何度も馬から振り落とされながら・・・・夢中で馬に乗りまくった。

馬にしか興味がないんじゃないかと・・・・・バカにされるほどに。

戦乱の世だし、、、、自分の魔術は乗っている馬まで巻き込むから・・・・・残念ながら最近は乗れなかったけど・・・・・・最後に乗れる機会があるとは思ってなかった。


「とーしゃん!」

「・・・・・・・・・・・ああ、、、シノンの声が聞こえるなんて」

「おう!おう!おう!」

「・・・・・・・・・・・相変わらず元気な声だ」


幻聴か?

例えそうでも、、、、聞けて良かった。

かつて聞いた通りの元気な声。

明るく、、、、暗いこの場所を、、、、吹き飛ばしてしまう明るい彼女の声。


唯一の後悔は・・・・・シノンの成長する姿を見れなかったことか。

セシルと一緒に彼女の嫁入り姿を見たら、、、、泣いてしまうだろうな。

二人揃っておいおいと・・・・・・抱き合いながら号泣することだろう。

そんなもしを思い浮かべて、、、、、、涙がにじむ。


「少し速度を落としてくれないか・・・・・馬はあまり好きじゃない」

「おう!おう!おう!」

「シノンは嬉しそうだぞ」

「ガルの血だろう・・・・私はゆっくり走って欲しいんだ」

「・・・・・見解の相違があるな」


そしてセシル。

私に暖かさを教えてくれてありがとう。

家族の暖かさを

信頼されることの暖かさを

誰かを守ることの暖かさを

笑いかけられることの暖かさを

皆が笑顔である世界の暖かさを


貴女の暖かさを教えてくれてありがとう・・・・・・・・・・ん?

馬を止め・・・・・・振り向く。


「ようやく止まった・・・・・」

「ぶうううううううう!とーしゃ!おうおう!」

「・・・・・・・・・何故・・・・・・だ?」


何故か馬には私しか乗っていないはずだったのに、、、、セシルとシノンが後ろにいた。

逢いた過ぎて見る幻覚かと目を瞬かせていると・・・・セシルが仏頂面でシノンをぐいっと眼前に突き出してきた。

シノンは我が意を得たりとばかりに私の前髪をぐいぐいと引っ張りだし、、、、痛みで目の前の二人が本物だと気付く・・・・・・・えぇ!?


「何を・・・・・しているんだ?」

「夫の最後を・・・・見送らない妻がいるか・・・・・ばか」

「おう!おう!」

「シノンも言ってるぞ、ばかって!」

「いっだっ!いだ!いだい!、、、、いやあ、、、、戦場に二歳にも満たない娘を連れてくる、、、、、セシルに言われたくないなあ」

「いあえあくないああ!」

「・・・・・・・二人ともバカか」

「・・・・・・・そうだな」

「おおだな!」


・・・・・・・・・セシルには本当に頭が上がらない。

最後の最後まで・・・・本当に。

後、シノン・・・・・・・真似するんじゃありません。







雷の勇者のいる本営に奇襲をかけるつもりだったのにどうやったのかセシルたちがついて来てしまった。

カモフラージュ魔道具による即席のテントの中・・・・取り敢えずそこで家族会議をすることにした。

と言うのは建前で、、、、最後に一度二人の顔を目に焼き付け、、、、声を忘れないようにする為だった。

・・・・・・・何で来たと怒る気にはとてもとてもなれなかった・・・・・それぐらい二人に会えて嬉しかったから。



シノンはさっきまで私の髪をぶちぶち抜いて遊んでいたのに飽きたらしく今はすやすやセシルの胸の中で眠ってしまっている。

手を差し出せば、、、赤ん坊のころと同じようにきゅっと握り返す小さな手。

・・・・・・・何で・・・・・彼女に・・・・・・こんな未来しか残せなかったのか。

幾ら自問自答しても・・・・・・・答えは出なかった。


「可愛いなあ・・・・本当に」

「ガル・・・・・泣き虫め」

「仕方ないだろ・・・・・最後なんだ」

「私はお前の笑顔を見るために来たんだぞ?」

「セシル・・・・・・・ごめん・・・・・」

「仕方ない弟分・・・・・愛してるけど」


彼女はそう言って私の顔をかつてのあの時のように胸に掻き抱く。

・・・・・夫婦となり・・・・・時が経ち・・・・彼女の香りと温もりは・・・・シノンのものになった。

それでも、、、、、、セシルはやっぱりセシルだった。


「ありがとう、、、、ありがとう」

「素直になったお前は・・・・意外と可愛いんだな」

「からかわないでよ・・・・・」

「・・・・・・本当だ」


心臓の音が聞こえる。

彼女が生きている証、、、、私がまだこの世にいる証。

鼓動の数だけ、、、、、それを実感できた。

・・・・・・・千を超えた頃体を離した。


「もう、、、大丈夫か?」

「ああ、、、、心配かけた。」


心が落ち着いていた。

・・・・・・視界がはっきりし、心身共に気に満ち溢れていた。

本当に今なら世界を変えられるとまで豪語できそうなくらいに。

魔力も万全とまではいかずとも雷の勇者を殺し切るには十分な量が。


「・・・・・・・ありがとう。悔いはもうない。」

「・・・・・・私はある」

「え?」


シノンを抱えたまま彼女はすっと唇を尖らせた。

流石にそれで分からないほど馬鹿じゃない。


数瞬の触れ合い

ただ触れるだけの

温度を共有するだけの


「・・・・・・愛してる。」

「・・・・・・私を貴方の勇者にしてくれてありがとう。」

「・・・・・・私こそ・・・・ありがとう。」

「・・・・・・ゼノンとシノンを・・・・任せていいか?」

「・・・・・・不安なら・・・・・生きて帰って来てくれ・・・・待ってるから。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・行ってくる。」










魔法陣級を越える威力を生み出すには生贄が必要だ。

術師にとって最もかけがえのないモノを捧げなければ世界は応えてくれない。

私にとって最も大事なモノはセシルだ。

だけどそれは捧げられない。


だから私の命を・・・・・生贄にする。


魔法陣を書き殴っていく。

本当は丁寧に書かなくてはいけないのだが・・・・今日は失敗する気がしなかった。

第一儀式級は魔法陣級ほど魔法陣の精密さに気をつけなくてもいい。

少量のミス程度で威力が削減されたとしても、、、、、そんなことが分からないほどの威力を持つのだから。


「ロイさん、、、、、貴方が私を勇者に推してくれたお蔭で・・・・あの時背中を押してくれたお蔭で・・・・ずっと強くしてくれたお蔭で・・・・セシルを失うという最悪の未来は・・・・避けられそうです・・・・・」


魔力を高めていく・・・・・・爆発するほどに。

帝国軍が私の動きに気付き始めた。

雷撃による狙撃が耳を掠める・・・・・不思議なことにそれでも不安を感じなかった。


「見えますか・・・・・・・黄泉の世界では・・・・・・王国の未来が見えますか?」


詠唱にもなっていない詠唱を口ずさみながら魔法陣の真ん中に立ち尽くす。

既に準備は済んでいる、、、、後は発動言語を叫ぶだけ。

世界に願いを叫ぶだけ。


「シノンは元気ですか?ゼノンは良い戦士になってますか?ヒナねえは良い人と幸せになれましたか?王国は一つになれましたか?エルフも人も魔族も獣人も関係ない王国民になれましたか?世界は優しくなれましたか?・・・・・そしてそこでセシルは笑ってますか?」

「どうでしょうね?」

「・・・・・・・・・・・・雷の勇者」


黒髪、、、、、年齢は十五程の少年。

しかし彼の体の奥には恐ろしい程の膨大な魔力と底知れないナニカが眠っていることだけは分かる。

にっこりと・・・・まるで友人に笑いかけているその顔で何万人の人を殺してきたのか・・・・

一つ言えるのは・・・・・・コイツがいる限り王国は・・・・・セシルは・・・・幸せになれない。


「面白いですね・・・・儀式級魔術は初めて見ます。私の良い糧になりそうだ。」

「・・・・・・糧?」

「ええ!ほらさっさと見せてください!せっかく待っていることにしたんですから!」


人間の身で・・・何百年の時を生きる魑魅魍魎・・・・

その身で尚・・・強さを求める正真正銘の化け物・・・・・

私一人の命で消し切れるか・・・・と今更になって浮かんだ考えを必死に打消し・・・・願った。

この災厄を・・・・・・世界から消し去ってくれと


「『天炎ノ雫、灰燼二落ツ』」





ソレハ古キ神ガ零スコノ世ノ惨酷サ二対スル絶望ノ涙。

落トシテハイケナイ、パンドラノ涙。

天カラ降リ注グ涙ハ、、、、、毒ヲ持ツ。

人ヲ呪ウ毒ヲ持ツ。

人ガ死ンデモ、、、、魂ヲ善二スルマデ、、、、例エ、、、スリキレテモ焦ガス毒ガ






「・・・・・・・・カハッ・・・・・」


魑魅魍魎が吐血していた。

油断していた為だ。

・・・・・・・それもそのはず彼も自分も上を見上げていた。

なのに『ソレ』はやって来なかった。

その代わりに私の腕から突き破るように出現した禍々しく巨大な鎖が周囲の魔力をこれでもかと取り込み・・・・雷の勇者の胸を突き破った。


「・・・・・・・お前も・・・・『種の魔術師』だったか・・・・」

「知らない・・・・・私は・・・・知らない」

「?・・・・まあ・・・・いい・・・・かは゛っ・・・・まだ使いこなせていないようだし今回殺すのは・・・・私に傷を与えたことに対するボーナスで・・・・見送ろう」


心臓を・・・・・貫かれても・・・・魑魅魍魎は・・・・吐血のみ。

彼は強引に胸から鎖を引き抜くと姿を一瞬で光に変え、、、、帝都の方向へと飛び去った。

・・・・・・・・・帝国軍はその様子を・・・・・・・口をあんぐり開けて見送り・・・・・・


「「「「「「「「「「うわああああああああああああああっ!」」」」」」」」」


何万もの兵士たちが武器も野営装備も何もかもを置いて一目散に逃げ始めた。

・・・・・・雷の勇者を退かせた私を怖がって

・・・・・・・・・・・私の力じゃない力を怖がって

・・・・・・・・・・・・・・・・なんなんだ?

・・・・・・・・・・・・・・・・・この鎖はなんなんだ?


周囲の魔力を集めて・・・・雷の勇者に大怪我を与える程の威力?

種の・・・・・魔術?

知らない・・・・・・要らない。


震える手

揺れる視界

崩れ落ちる足

掠れる声で必死に音を出した。


「・・・・・・ステータス」


ステータスは嘘をつかない。


名前:ガルブレイク・エルリングス

種族:ホモ・サピエンス

年齢:17

職業:獄炎の勇者

本属性:獄炎 補助属性:火

本質能力:『獄炎の種』

スキル:本属性が変わったため詳細把握できず

称号:『優しき心』『親殺し』『大量殺人』『窃盗』『恐喝』『幼き義賊』『聖女に救われた者』『姫の寵愛』『勇者の舎弟』『馬好き』『聖十剣一位』『魔道具嫌い』『パパ』『聖女の○○を頂いた者』『愛妻家』『愛娘家』

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『獄炎の始祖』―聖女により引きずり出された今までの彼の一段階上の力。この力は聖女の犠牲なしに生まれることはなかったと言える。

『獄炎将軍』―貴方の実績は誰もが畏れ敬うでしょう。

『聖女の献身を受けた者』―二度とあなたは命を無駄に出来ない。

『守れなかった者』―・・・・これは王国勇者に引き継がれる惨酷な運命

兵装:ボロボロの鎧


『守れなかった者』

『守れなかった者』『守れなかった者』

『守れなかった者』『守れなかった者』『守れなかった者』

『守れなかった者』『守れなかった者』『守れなかった者』『守れなかった者』

『守れなかった者』『守れなかった者』『守れなかった者』『守れなかった者』『守れなかった者』

『守れなかった者』『守れなかった者』『守れなかった者』『守れなかった者』『守れなかった者』『守れなかった者』


何度目をこすっても

何度嘘だと叫んでも

何度頭を地面に打ち付けても

その文字は視界に映し出されていた。


「かあしゃああああああああああああ!」

「・・・・・・・シノン」


どこかで小さな少女が泣いている声がした。

戦場の中をよたよたとよたよたと・・・・・・小さな少女が歩いていた。

彼女の周囲は魔力が昂ぶっていた。

それが氷と・・・・・禍々しい鎖に。


「・・・・・・セシル・・・・・・・もう君はいないのか?」


彼女がもし生きていれば・・・・シノンを腕から離すわけがない。

シノンを泣かせるはずがない。

そのことを私は誰よりも知っているから・・・・・・・涙が・・・・・溢れた。


走って走って走って走って

シノンを抱き寄せた。


「とーしゃあああああ!かあしゃうおあないいいいいい!」

「ごめん、、、、、ごめん、、、、、情けない父さんで・・・・・ごめん!」

「あああああああああああああああああああああああん!」

「ううううっ、、、、、ごめん、、、、、ごめん、、、、、」


泣いている幼児の体はとても熱い。

まるで心が壊れないように体温でそれを発散しているかのように。

シノンはずっと熱を辺りに撒き続けた・・・・・ずっとずっと・・・・・

私も泣き続けた・・・・・自分のふがいなさによる悔しさと・・・・シノンに結局辛い未来を与えてしまったことへの悔しさと

・・・・・・そして二度とセシルの笑顔が見れないことを受け入れられなくて。

2.5章は四パートで。

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