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異世界でもう一人の俺が暴れすぎてキチガ○と呼ばれている件について  作者: 浅き夢見む氏
第一部:異世界にキチガイが舞い降りて、物語が幕を開く<曇の奇術師編>
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第3章NPCには戻れないpart2

ちょっと、長めです。

「・・・というわけなので、このように進めていきますが、、、問題はありませんか?」


場所は生徒会会館。

明らかに、一般の高校生が座るには贅沢過ぎる椅子と机が並ぶ中、俺は机や椅子に気持ちから負けていた。

手は、黄金比生徒会長の指示や議論を聞き逃さないようにメモを取ってはいるものの、頭の中は自分の冒険についてばかり考えているせいで身になっていなかった。


「はい、そこについては、、、ああ、何か意見はあり、、、無いみたいだそうなので、次は予算配分について話しましょう・・・」


皆、俺と同じで何となくやる気が起きないのか、いいですよムードがぶわっと流れている。

おかげで早く会議が終わるというメリットがあるので、個人的にはうれしい。

嬉しすぎて、考えがどうしても異世界の方にぶっ飛んでしまう。

・・・いや、どっちが現実かも最近は分からなくなってきた。

日によっては、一日に2回門をくぐってしまうこともある。


もしかしたら、今日今必死で押さえてるタガが外れて、それ以上の数を重ねてしまうかもしれない。

アリア=レイディウスに植えられた雲の種が、腹の中でうずく。

・・・いや、これは『思いだし痛』ってやつか。


門をくぐる度に、俺はNPCとして空から見るか、主人公として、、、サクラであるかをランダムに繰り返してる。

ただ、こっちに帰ってくるたびに、その両方の記憶が、俺に帰ってくる。

どっちが俺か分からなくすらなるこの状況だが、一つだけ言えるのは。


俺のあそこでの主人公であった快感や記憶は俺のものであるという事だ。


例えば、この会議の席でいきなり手を挙げて、バリバリ素晴らしい意見を言って会議を盛り上げたり

例えば、裏から仕切る渋い役

例えば、めちゃくちゃな意見で場を揺るがすコメディ系主人公。


そう、朝日奈楓が持つ主人公だけが共感できるその感情や記憶が俺のものになるんだ。


今日は部活で外せない用事があるらしくここにいない彼女は、今日もどことなくどよんとしていたが、もうそろそろ敏感な主要キャラの男どもが彼女を慰めはじめるだろう。

そして、彼女を復活させたものは、朝日奈楓物語の一躍、レギュラー枠に加わるってわけだ。

NPCである俺には関係のない話だが。


ま、そんなこんなで、アリア=レイディウスと過ごすあの異世界では2週間。

この現実では、大体一週間と2、3日かな・・・?

どうでもいい。

この会議が早く終わりさえすれば、それだけ疲れないで済むくらいしか結局考えてない。


よく、VRMMOものの小説を読んでいると、VRMMO中毒、別名『主人公中毒』というものにかかってしまう人間の描写に出会っちまう。

現実のよわっちい自分と、ゲームの中の強い自分との落差にがっかりして、ゲームの中に何日も食事もせずに入り浸ってしまうことらしい。

小説と現実は違うとは分かってるけれども、その心情が俺にはよく理解できて・・・

同じようになってしまいそうだ。


「桜君、、、考え事かい?」


そんな声に思わずハッとなり、声の主を見てしまった。

本来、ここにいるはずがない新聞君だった。

その横には、小柄でショートカットの可愛い女の子がニコニコしている。


「あれ?新聞君、いつからそこに?」

「・・・最初からいたよ?」


新聞君は、やれやれと首を振った。


「いや、文化祭実行委員会に学級長は必要ないだろ?」


新聞君はハハハと笑いながらも、俺の肩を強い力で締め付けはじめた。

、、、痛い。

彼は、そのまま俺の口元に耳を寄せてきた。


「俺の隣の山梨(やまなし)()(はる)ちゃんがヤンデレ過ぎる件については、君に毎日相談しているじゃないか!そして、彼女のせいで毎日この議事会に参加させられていることについても散々相談してきたじゃないか!それなのに君ったら、最近妙に上の空であーそうとかおー大変だねとしか返事くれないし!」


そういえば、そんな話も聞いた気がするが、、、最近はこっちの現実にいるときは、考え事ばっかしておざなりだからな。

ちょっと、後ろを見てみれば、山梨さんがニコッと笑いかけてきた。

ぞくっ


「ああ、、、たいへんだなー。ちょう、たいへんだなー。」

「桜君、、、分かってくれたんだ、、、ひぃっ!後ろに冷たい金属的なナニかを押し付けられてるっ!」


かなしみのーむこーへとー辿り着けるならー僕はもうー要らないよーぬくもりもー明日もおぉぉぉぉ

・・・と、有名なヤンデレアニメの曲が頭の奥で流れている。

ああ、そっか、なんとなく思い出してきた。


そういや、初めての実行委員会で黄金比派の過激派の少女に命を狙われた時、助命嘆願として黄金比先輩への愛について必死に語った結果、その愛が本物か確認できるまではあなたを監視しますとかなんだかんだで、新聞君に監視が着いたとかいってたな。


そして一時でも、彼女、、、山梨心陽が怪しいと判断した場合は、彼女の一物が彼の命を狩るとかなんとか、、、まじ、巻き込まないでほしい。


「新聞君?黄金比先輩という心のアイドルがいるはずのあなたが、どうして男の人と親しげにみみうちしてるんですかー?どうしてなんですかー?」

「ひぃっ、ま、待って、落ち着いて!確かに、僕たちは、お互いの命の危機には直ぐに駆けつけるぐらいには仲いいよ!でも、黄金比様ほど、僕はこいつに価値を抱いてない!」


おい、さりげなく俺を巻き込んでじゃねえよ、眼鏡。

新聞君は必死になって、否定するが、山梨さんはいつの間にか彼の後ろに回り込んでおり、首に金属製の一物をあてがっていた。

彼女は興奮しているのか、力をギリギリと腕に込めており指先は溜まった血で真っ赤っかに、新聞君の柔肌はそれとは反対に真っ白になっていく。


「嘘です!嘘です!私の友達がこの前、『如峰月君の鬼畜眼鏡攻め×新聞君の誘い眼鏡受け』が最近の流行だって話してるの私聞いてるんですから!」

「おい、ちょっと待て!いつの間にそんなおぞましい話が広まってる⁉」

「それより、僕を助けてくろさい!頭の中でS○HOOLD○YSの曲が流れ始めてる・・・うわあああああああああああ」


カオスなその状況は、後で黄金比生徒会長にSEKKYOUされることで、終わりました。

山梨さんはその後、新聞君を連れて山奥で刈りに、新聞君は川へ流されに行きました。


「たく、、、お姉さまがせっかく最後の指揮を執っていますのに、何でこんなにやる気がでないんでしょう・・・黄金比派としては、今年は朝日奈派と全面戦争をしながらとはいえ、切磋琢磨していくことで最高のモノが作れるんじゃないかとワクワクしていたんですけど、、、リーダーがあの様子ですしね。みんな、しらけちゃったっていうか、、、とにかく、、、ちょっとがっかりしちゃったってのはありますね。じゃ、行きましょうか。新聞君」


彼女が言ったそんな言葉が耳に残って、、、そして、、、俺の心には残んなかった。

山梨小陽の望みは、朝日奈楓が復活しない限り、叶わない望みであるし、それをどうこうできる人間はいないからだ。

朝日奈楓が何を望んでああなってるか、、、どうすりゃ悩みを解決できるか、、、なんて、それがわかりゃ、そいつが主人公ってやつだ。


「たく、、、せっかく合唱コンクールがもうすぐ終わって、後は期末だけだって時なのになんで女の子にストーキングされてるんだろうね?元はといえば、君が僕を見捨てたことからだよね?あれ?なんで、僕山に連れていかれるの?え?黄金比様への忠誠心を深める為に一緒に滝行?はははは、、、朝の目覚ましから、寝る時のメールまで見張られて、、、最後は、、、ははははははははははははは。・・・嫌だあぁ!逝きたくないようぅ!」


彼のそんな嘆きが耳に残って、、、離れなかった。

、、、そして、心に超残った。

新聞佑よ、、、生きて帰れ。


彼を助けられる、、、それを勇者っていうんだ。


彼の無事を心から願いながら、俺は部室棟へと向かっていた。

なぜかというと、黄金比生徒会長に今日、部活の大会に向けた会議とかなんたらで参加できなかった彼女に、今日の議題録を渡してくれと頼まれたからだ。

ぶっちゃけ未だに仲直りできてないし、明日にでも誰かに頼んで渡してもらおうと思ったのだが、、、、山梨心陽さんが、、、、、、、、、


「黄金比様の頼みをすぐに実行しないとは、、、死にたいんですか?」


とおっしゃり始めたので、すぐに実行に移しているというわけだ。

べ、別に、滝行に連れていかれるのが怖かったんじゃない。

いのちの危険があったんだ

ド○クエでもあるだろう?命を大事に。

いのち、ちょー大事。


この学校は私立であり、とんでもない寄付金を毎年出してくれる方もいらっしゃる事もあり、文武共に充実した設備が整っている。

一番の目玉は、生徒会館であるが、この部室棟も負けてはいない。

一つ一つの部の為に、ワザワザ教室並の広さの部室を一つずつ用意されているだけでなく、バスケ部なら体育館とか、野球部ならハイテク芝生の球場一つといったトンデモ設備が備わっている。

そのせいで迷ってしまいそうな広さである一方、バスケ部の位置は分かりやすい。

ファン的な人の応援が一番うるさいところが、そこだ。

毎年設備分の結果を叩きだす強豪であることもその理由だが、今年は特に朝日奈楓を筆頭に部全体の顔面偏差値が東大並みに高いため注目度が高い。

特に、女子バスケ部。


つまり、部活動どこでやってるかは、周りの雰囲気で分かってしまうのだ。

そんなこんなで、人がたくさん集まっている体育館を見つけたので上の観客席に上ってみる。


「楓!お願い!」

「はい!」


美少女が、美少女にマーキングされていた為、美少女をかわして、美少女にパスする。

キラキラし過ぎて、直視できないわー。

俺の誰にでもできる推理によって発見された、女子バスケ部は試合中か。

試合会場を4つは用意できそうな体育館の2面を使っている女子バスケ部は美少女しかいないようで、朝日奈に声をかけずらい。

どうやら、ミニゲームをやっているようでまだしばらくかかりそうだし。


仕方ないと観客席をおり、玄関近くの自動販売機でダラダラ飲み食いをする。

てか、体育館にラーメンとか、パンとか売ってんのって俺得すぎる。

パンと牛乳を、、、いや、牛乳はもういいやと、リンゴジュースにした。

あれはもう、トラウマである。


「あれ?如峰月?」


ちょっとした夕『前』食を楽しんでいると、後ろから声をかけられた。

振り向いてみると、、、げ。

女子バスケ部の一員であり、朝日奈楓の親友的ポジションな方だ。


(しら)(なぎ)優子(ゆうこ)


ペッタンコな朝日奈・・・さんとは対照的にスタイルは良く、高い身長と強気な目つきが印象的だ。

一般的な総評をすれば、男前なスポーツ系美少女ってとこか。

そして、俺が評価するならば、、、


俺のことを超嫌ってるスタイル抜群&楓たんスキスキ美少女。


「、、、なんで、如峰月がこんなところにいるのよ?」


物凄い不機嫌な彼女の顔を見るとすんげえ申し訳ない気持ちになるのは俺がNPCだからだろうか?

彼女は、練習中に抜け出してきたのか、手にはお洒落な財布を持ってる。

飲み物でも買いに来たのか、、、まあ、どうでもいいが。


「朝日奈さんに、今日の議事録を届けて来いって生徒会長に言われたから、ここで待ってんの。」

「『言われたから』、、、ね。」


彼女はため息をつくと、自動販売機でミルクティーを買うとさっさと戻り始めた。


「って、あ、ちょっと!できたら、俺の代わりにこのプリント渡しといてほしいんだけどっ!」

「あ?」


山梨さんとは別の意味でぞくっとした。

山梨さんが死ぬ的な恐怖だとすれば、こっちはタマがキュンと縮むような怖さだ。

俺の言葉を聞くや否や、彼女はもう切れたといわんばかりに振り向いて、俺に詰め寄って来た。


「あんた、マジ勘弁してよね!」

「・・・え?」


身に覚えは、、、ない。


「今がうちの部活にとっても、楓にとっても大事な時期だってのに、アンタときたらほんとにもう!この根暗!昼行燈!だから、身にもならない文化祭実行委員への立候補はやめとけってあの子に言っておいたのに!」


ああ、もう信じらんない!とか、あんた、恥ずかしくないの!お説教が始まってしまったため、帰るに帰れない。

彼女は相当お怒りなのか、支離滅裂にしゃべっているせいで、俺には何が彼女を怒らせたのかが判別できない。


多分、朝日奈さんに自分は変わったとか言ってしまい、彼女を落ち込ませたことを怒っているのだろうが彼女が別のことを怒っているようにも感じてしまう。

俺としては、早く異世界にいければよかったんだがなあ。


彼女が汗をかいているにしては、いい匂いしてんなあ、、、とか現実逃避していると、彼女は俺の様子を真面目に聞いてないと勘違いして更に切れ始め、彼女の声はどんどん大きくなっていく。


「そもそもアンタはなんなのよ!全く目立ちたくないのかと思いきや、穂のちゃん先生と生徒会指導室でその、、、、え、、、、えっちなことし、、、してたとか!超ド級のシスコンで、近親相姦上等だったりとか!後!あ、あら、、、新聞君とも不純な関係にあるとか!実は、ハマリュウ君の子供を産んでるとか!変な噂が多すぎなのよ!」

「・・・って、なんだよその噂!?でたらめばっかじゃねえか!?」

「『ばっか』!?まさか、あんた・・・穂のちゃんせんせいとか、妹の朝顔ちゃんに手ぇ出したんじゃ・・・この変態!ロリコン!シスコン!」

「ばっかって『一つはあるよ?』って意味で使ってねえよ!バカ!てか、よく、俺のクラスメートから妹の名前まで知ってんな、おい!」

「そ、そんなのかんけえないでしょ!このし、、、し、、、、色情魔あああああぁぁぁぁぁ!」

「桜ちゃん?」

「あ?今、それどころじゃねえから!この子の誤解解かなきゃ俺、終われない!」

「ゆう?」

「うるさい!この色情魔!ここで真人間に叩き直す!私も嬉しい!楓も嬉しい!まさに、WIN‐WIN!」

「二人とも、、、ちょっとだまろうか?」


「「・・・(血の気が引く音)」」


マジ切れ朝日奈さんが頬を引くつかせながらこちらを見ていた。

なんでだろう?

何故ここに彼女がいらっしゃるの?

ヤンデレ女子よりも、マジ切れ女子よりも彼女が一番怖かった。


「か、楓?ご、ごめんね?べつに、無視したわけじゃないんだよ?」


俺の時より優しい声で、彼女は朝日奈さんへと駆け寄って行った。

なにこの、寝取られ感!?

俺の時だけ厳しいのかしらあの男前系美少女!?


朝日奈さんは、そんな彼女の首根っこを掴んでニコリとほほ笑むと、俺の首根っこをホールドしようと、目が笑ってない状態で、そろりそろりと近づいて来た。

白凪優子さんは、お前も道連れだと目で語りながら、にやあと笑った。


「あ、これ渡しといてって言われたやつだから!じゃ、また明日!朝日奈さん!白凪さん!」

「え?あ、はい」


朝日奈さんは反射的に俺が渡した嫌がらせかと思えるほどの、分厚さの議事録を俺を掴もうとした手でつかんだ。

さすが、バスケ部のエース。神がかった反射神経である。

そして、おれは、そのまま逃走した。


「さく、、、、如峰月くーーーーーーーーーーーーーん!」

「ほおづきいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!おぼえてなさいよおおおおおお!」


怒りのまま声を出す朝日奈さんと怨念を込めた白凪さんの声は、俺の恐怖を盛大に煽った。



翌日の昼休み、俺は購買に来ていた。

朝顔さんがこの一週間ほど妙に不機嫌なため、弁当を作ってくれないからだ。

まあ、そんなことよりも、どう異世界で雲を使いこなすかといったことを考えるのに一生懸命になっていた。


「「あ」」


本来なら、ダッシュで逃げ出す状況に俺がいたのはそのせいだ。


「ほ~お~づ~き~、昨日はよくも、自分だけ逃げたわねえ!ハアッ!」

「うおっつ!い、いきなり、グーパンチしてくんじゃない!?」


彼女は、俺を発見するや否や、渾身の右拳を俺に放ってきた。

どんだけ、キレてんだよ・・・

拳をひょいとかわす俺も随分異世界の荒っぽさに慣れてきてるんだろうな・・・


「くそっ、あの後、楓の誤解解くの大変だったんだからね!」

「だから一発殴らせろってか!?理由にすらなってねえよ!?」


てか、朝日奈楓関係は俺の関わるところじゃないので本気で勘弁してほしい。

この白凪優子だって、主人公の親友役を出来るぐらいには、美人で人望がある。

そんな彼女と口論していれば、当然周りの注目を集める。

NPCの俺に、そんな悪目立ちする要素を加えんな!


「あー、気に触ったことがあるんなら昨日のことは謝るから。俺、授業の予習しなきゃいけないし急いでるんだわ」


取り敢えず逃走が勝ちと、適当な言い訳をつけ、スチャッと手を挙げる。

彼女は、背中に紅蓮の炎を纏いながら、それはもう腹立たしそうに


「ええ・・・」


と答えた、、、マジコワス。

さっさと立ち去りたかったので、購買部のパンコーナーを見て回る。

ここのパンは、かなり種類も豊富でしかも昼に合わせて焼きたてを用意してくれてるから、とてもおいしい。

白凪優子に時間を取られたせいで、人気のパンはごっそりなくなり始めたが、まだ数個はあった。


一番人気の焼きそばパンを自分のトレイへ・・・シュバッ

、、、目の前からごっそりなくなったので辺りを見回すと、ふふんとドヤ顔してる白凪優子が自分のトレイに焼きそばパンを全て載せていた。


「おい、何してくれてんだ?」

「あら、ごめんなさい。私お腹が空いてるもんだから(ニヤニヤ)」

「ほう、、、そうかいそうかい。じゃあ、しかたねえなあ・・・」


また口論を始めれば、間違いなくこの女に昼休み中捕まるのは目に見えていたので、気を取り直して別のパンを探す。

二番手のメロンパン、、、シュバッ


「・・・」

「あら、ごめんなさい。女の子は甘いものがスキダカラ!」


なぜか、「アナタガ、スキダカラ!」を連想させる彼女の言い方にも俺は耐える。

また口論を始めれば、間違いなくこの女に昼休み中捕まるのは目に見えていたので、気を取り直して別のパンを探す。


「そうか、、、」


仕方がないので、彼女に取られる前に取れそうなパンを探し始める。

おっ、こんなところに、季節限定の納豆ちくわパン・・・シュバッ

仕方ねえ、3番人気のチョココルネ・・・シュバッ

ピザパン、、、シュバッ

かし、、、シュバッ


「、、、くっ、、、、ご、、、、ごめんなさいね、、、女の子はいつでも腹ペコだから!」


トレイに重ねられまくったパンのせいで、彼女の顔は全く見えなくなってしまった。


「はあ、、、仕方ない。自販機でパン買うか」


パンの山がぐらついた。動揺してやがる。

ざまあみやがれ。

彼女はパンの山を、俺はコーヒーの缶を買うためにレジへ。

一言嫌味を言ってやりたくはさすがになったので、彼女に話しかける。


「そんなに食えんのか?」

「た、食べれなかったら、周りに配るわよ!」

「・・・さいですか」


ボッチ気味の俺にはない答えだったよ。

彼女はグラグラしながら、なんとこさレジに辿り着き、会計をしてもらう。

レジのおばちゃんがすごいしかめっ面で会計をする。

だよな、、、ぜってえ、めんどくさいよな。


「お会計は、2700円になります。」

「あ」

「「「・・・」」」


こいつ、、、財布忘れてきやがった!?



自販機近くの休憩スペースで俺と彼女は大量の戦利品を机にばらまきながら、向かい合わせで座っていた。

焼きそばパンをかじりながら、彼女に話しかける。


「お前、女捨てすぎだろ」

「今っ!はっきりとケンカ売ったでしょ!?買うわ!その喧嘩買うわ!」

「うるさい、なんでそのメロンパンは潰れてるんだろうなー、なんでこんなのに定価と同じ額の金をおれが出すことになるんだろうなー。」


一番下の方に積まれていたメロンパンは正直残念な形で潰れていた。


「ぐっ・・・」


彼女は恨めし気に、自分の手にするメロンパンをギリギリと握力で更につぶしながら嚙みついた。

ちなみに彼女、財布どころか、弁当も忘れたようで、今回は俺のおごりというわけである。

・・・なんて、俺は優しいのか。

・・・そして白凪たん、アンタ、本当に何してんの?


「ああ、この季節限定の納豆ちくわパン、俺は好きじゃないから持って帰っていいよ。」

「じゃあ、なんで選んだし!?これなかったら、小銭入れに入ってるお金で足りたし!!」

「まあ、、、ご愁傷様だ。」

「むきいいいいいいいいいいいい!」


こんな素直な性格だから、周りに人気なんだろうな・・・

近くでころころ変わる彼女の表情は見ててとても面白い。

たとえ俺を嫌っているとしても、俺は彼女を嫌いになりはしないだろう。

話してるとすんげえ楽しいし。


「じゃ、俺はもうそろそろ行くわ。今日のことは貸しだかんな。」


内心、「貸し」とか、超テンプレなセリフを言ってしまったことにオオッと打ち震えながら、俺は立ち上がった。

それを見て、彼女は声をかけてきた。


「ねえ、そのふざけた感じいつまで続けるつもり?」


余りにも、真面目な彼女の表情に俺は動けなくなってしまった。


「ふざけたって・・・どういうふうに?」


彼女は机をバンと強くたたき、立ち上がりざまに俺を罵った。


「その、分かんないふりしてる感じよ!楓はあんたのその無責任な言い方に傷ついてんのよ!・・・いいわ、あんたが望むならあんたが望む言い方で言ってあげる!」


彼女は俺を見下すように睨みつけた。


「あんたみたいな地味男がいつまでも楓の脳内に残ってんじゃないわよ!釣り合ってるとでも思ってんの!?さっさと楓に謝って、楓の脳内に残らないように、、、楓に気を使わせないように、、、、私たちの話題に二度と上がらないようにどこかで薄く影になって暮らしてなさいよ!このバカ如峰月!二度と顔を見せないで!」


言葉は胸に確かに、、、突き刺さり、耳に脳に、言葉は響き渡った。

まずいな、、、ここに長くいると、『作ってきた』自分が、壊れちゃいそうだ。

自分の欲を抑えてきた反動を全部彼女にぶちまけてしまう。

女の子に八つ当たりとか、、、それこそ最低だ。


「オッケー、分かった、分かった。気を付けるよ。」


作り上げたNPC顔が、、、きちんと自然に笑えているかは俺にすら分からない。

少なくとも、白凪には、、、火に油を注ぐ結果になってしまった。

彼女は席を離れ教室へと立ち去ろうとする俺の袖を廊下でガシッと掴んできた。


「まって!話はまだ終わってない!」


「・・・二度と顔みせんなって言ったじゃねえの。」


彼女自身も混乱してるのか、顔は涙目だし、血流が頭に昇りりすぎで真っ赤だし、超パニックを起こしてヒステリックだった。


「なんで、なんで、アンタはそうなのよ!このバカ!バカ!バカーーーーーーーーーー!」


パニックが限界に達したのか、彼女はパニックの原因を削除しようと拳を振るってきた!?


「アブな!、、、って、うわっ!?」


躱そうと体をよじろうとしたら、白凪が掴む袖の力があまりにも強かったため二人そろってバランスを崩してしまった。

柔らかい感触を何とか抱き留めながら、彼女の頭部を守った。

そしたら、目の前には彼女の顔がドアップだった。

・・・綺麗な顔だ、、、ってそうじゃなくて!!


「つつ、、、大丈夫か?」

「あ、、、あ、、、あ、、、、、」


彼女は口をパクパクさせながらパニックを完全に引き起こしてる。

傍からみれば、俺が彼女を押し倒してる描写にも見えかねん体位になってるしな。

周りに人がいないことが有り難い。

NPCの癖で人がいないところで飯食うのが習性になってたからな。


「どか、、、どかせ、、、どけ、、、この、、、へん、、、、たい、、、!!!」


彼女はジタバタ暴れはじめる。

よっぽど恥ずかしかったのか、開いてる手を俺の顔に当てぐいぐい押してきやがった。

ねじ、、、首がねじ切れる!?


「って、そんなに暴れんなよ!落ち着けって!どくから!どくから!」


取り敢えず、命の危機なので彼女の肩を抑えようと袖を掴まれていない方の手で肩を抑えようと腕を伸ばした。


むにゅっ


「「「あ」」」


一般的に、ブラの堅さのせいで実際はそんなに柔らかくは感じないという話を聞いたことがあるが。

間違いない。

この感触はおぱーいであった。


「ごめん!マジごめん!どく!すぐにどくから!」「・・・・・・・・・・・(声に出せない悲鳴)」「桜ちゃん・・・何してんの?」


ヤバいやばいと、急いで立ち上がって、後ずさる。

俺と白凪さんは同じように後ずさったせいか、かなりの距離が開いてしまった。

白凪さんは本気のパニックを引き起こし始めガタガタ震える手で必死に豊満な胸を隠している。

・・・そっか、、、彼女の胸を揉んだのか、、、俺。

ブラの表面状の堅さに関わらず、沈み込んでゆく感触はハッキリと指に残ってる。

真っ赤な顔して二人で見つめあってしまい、、、お互いに逸らした。


「・・・ふたりとも、SEKKYOUが必要かな?」

「「朝日奈!?(楓!?)」」


そんなカオスな状況をバッサリ切る声があったため、ばっと振り向いてみると、般若の形相をした朝日奈楓がその場に仁王立ちしていた。


「朝日奈さん、、、なんで、、、ここに、、、?」

「そんなことどうでもいい、、、それよりこれはどういう状況?」


俺たちを鬼はじろりと睥睨した。


「あ、その、、、な、、、」

「パンをだまされて買わされて、口論になったら押し倒されて、胸揉まれた!」「ちょ!?」


興奮しきってるのか、自分の被害だけをばっと言い出しやがったこの女!?

それじゃあ、俺が人気のないところまでお前を誘い出した変態になるだろうが!?

朝日奈さんは苦々しげに頭を振ると俺を物凄く血走った目で睨んできた。


「はい!ちょっと考える時間が私に必要!・・・桜ちゃん?」


考えろ!考えるんだ俺ええぇぇぇ!?

、、、とはいえ、ろくな考えは浮かんでこなかった。


「え、、、?ああ、、、?自分でも何とも言えないが、、、、確かに指には感触が残ってはいる・・・大きいおっぱいは沈み込む感触がすごいね。」


なんで、感想答えたし、俺!?

ゆらりゆらりと、こちらに向かってくる二人は見るからに怒っていた。

逃げようにも後ろは壁。

オワタ


「「忘れろおおおおおおおおおおおおお!!」」


白凪さんは分かるが、朝日奈さんにまでぶん殴られたのは釈然としなかった。



「いってえ、、、、マジヤバいよ、、、、放課後まで気絶するとか、、、」


気付いた時には折檻は終わっており、俺は保健室で寝かされていた。

まあ、折檻自体は気絶した俺に追い打ちの追い打ちの追い打ちの追い打ちの追い打ちの追い打ちをかける程度だったため、この程度で済んだが。

朝日奈さんの高笑いと白凪さんの悲鳴が耳にまだ残ってて、ぞくっと恐怖する。


時間的に文化祭実行委員会も終わっている時間なので、教室に向かう。

そして、扉を開けようとしたところ声がするのに気付いた。

扉を開けられるはずがない。

俺に対しての加害者と被害者が二人そろってなぜかうちの教室でだべっているのだから。


「ねえ、楓。部活いかない?待っててもしょうがないよ?」

「ゆう、、、昨日はワザワザ持ってきてくれたんだし。今日だって元々はゆうのせいだったんでしょ?だったら、きちんと渡してあげなきゃ」


どうやら、俺を待っててくれたようで、、、議事録か?んなもん、明日でもよかろうに・・・

待たせるのも悪いので扉を開こうとした。


「ていうかさ、あいつマジ酷いよね」

「うん、正直あれは無いよね。肩押さえようとして、何で胸を、、、その、、、もむ、、、ことに、、、なるんだろうね。」


ここで教室に入る勇気は俺にはない!

それからというもの、俺の噂話や悪口に花を咲かせ始めたせいで、俺は30分以上、教室の扉の前でorzして悶える羽目になった。

穂のちゃん先生と仲いいからロリコンって何ですか!?

確かに、二次元のロリには心惹かれてますが!

朝顔との仲はあくまで仲良い兄妹です!

シスコンとか噂されてるのばれたら、本気で滅されるからヤメテ!

あと、新聞君には同情はするが、俺が鬼畜メガネ攻めになる要素は一切ないからな!

そもそも、ハマリュウ氏と俺は同性なので子供は産めません!

てか、おい白凪!

だれが、エロゲ主人公だ、コラ!?


そんな感じの話が一段落したようで、ようやく入れると扉を開けた。


「てか、なんであんなめんどくさい感じになっちゃったの?昔から?楓と如峰月って幼馴染みだったよね?」


ちょうどその時のことだった。

彼女は俺もあまり見たことのないような複雑な表情をしていた。

彼女はそんな表情をしながら、口を開いた。


「桜ちゃんをあんな風にしちゃったのはわたしだから」


俺の身る世界がぼやけてしまった。

そっか、、、殴られたときに眼鏡ぶっ壊れちまったからか。

目を閉じ、ぼやけた視界を覆い隠す。

暗闇の中で、俺は中学生の頃の忘れたい思い出を回想してしまった。


「「如峰月(桜ちゃん)!?」

「あー、議事録もらえねえかな?」

「殴っちゃってごめんね?」

「あ、これ議事録な。じゃ、俺の荷物がこれ、、、じゃ。気にしてねえよ。じゃ。」

「あ、ちょ!ちょっと話したいことがあるんだけど!」

「わりい、時間ねえんだわ。胸触っちゃってごめんな。また、埋め合わせするし。」


顔を見ることが出来なかった。

俺の足がもつれてないかとか、いつも通りに振舞えているかの方に気が散っていて・・・

いつからだろうか、、、自分の感情や本音やしたいことをいう事を恥ずかしいと思ってしまったのは。

自分の感情を隠すことを普通にしてしまったのは。

ああ、、、まさに、あの時なんだろうな。




俺の歩みはあの時からずっと止まったままだったんだ。

現実話は次回で終了します。

第4章は異世界で始まり異世界で終わる形ですので、現実編嫌いな人は、もうワンパートだけ辛抱を・・・

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