表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

屋上。

 春。桜咲き、舞い散る季節。

 出会いの春とか、新スタートの春とかよく言うけれど、高校に入り早くも一年が経った僕に、そういった新鮮さは残念ながらなかった。あったとしてもクラス替えくらいだ。


 ここで自分について、少しだけ喋っておこうと思う。僕こと桜庭真(さくらばまこと)は、晴天ヶ丘(せいてんがおか)高校に通う、二年生である。

 「桜庭」というのだから、我が家の庭先には、桜が沢山植えられていれば最高なのだが、残念ながらそんな事は全くない。一本もない。むしろ庭先には、沢山、松が植えられている。いっそ苗字を「松庭」に改名してしまおうかと、なかなか本気で検討したくなる。それほど、あいつらは厚かましいほどに堂々と、存在している。

 趣味は、特にはない。勿論たまに音楽を聴いたり、映画やアニメを観る事はあるが、どれも趣味というには、少し弱い気がする。趣味に対するハードルを上げ過ぎなのかもしれないが。

 では、そろそろ話に戻ろう。……え、彼女?いないよ。いるわけない。なめとんか。


 と、おもわずポロッと暴言吐いちゃうそんな僕は、全身傷だらけで、授業を受けていた。何故ってあの時、坂の上から偉そうに人間観察を行っていたあの時、遅刻を免れるため死ぬ気で坂を駆け下りたあげく、派手に転んだからである。本当に死ぬかと思った。

 だからけして、遅刻をしたから先生から盛大なる体罰を受けたとか、遅刻をしたから友達から盛大なるリンチにあったとか、そんな事は全くない。だいたいそんな理不尽な方々は、この学校には存在しない。ちなみに、結局、遅刻は免れる事は出来なかった。とんだピエロである。


 午前の授業が終わり、昼休みに入った。全身の痛みに慣れつつはあったが、やはり、まだ痛い。それはそうだ、あれだけ派手に転べば無理はない。きっと三回転はしたはずだ。しかしこの程度の怪我で済んだのだから、逆に褒めてもらいたいものだ。

 そんな自分の馬鹿さ加減をフルに露呈させる発言を繰り返しながら、僕は一人、屋上へ向かった。

 目的は勿論、昼飯を食べるためだ。ここで勘違いして欲しくないのは、別に僕は、昼休みに一緒に弁当を食べる相手がいないというわけではない。けしてぼっちではない。確かに友達が多い方ではないがそんな事はない。全くない。


 僕が一人、屋上で昼飯を食べるのには、理由がある。

 ひとつは、この学校の屋上は、本来立入禁止であるため、複数人で行くには先生にバレやすいから。というか、まずこそこそと行くには、一人の方が断然楽なのだ。

 そして、もうひとつ。それは屋上から見える景色が、とても好きだからだ。これが、最大の理由。

 この学校はなかなかの高台にある。あの坂よりも、もっと高い場所だ。そこから見える、広大な空と街並みは、僕のちっぽけな頭ではとても例えようもない程に、素晴らしい景色だ。それはいままで僕が生きてきた16年だか17年だかの中で、確実に、最大にして最高の発見だろう。だから、僕は毎日欠かさず、ここで昼飯を食べているというわけだ。



 いつものように慣れた足取りで、階段を登る。僕だけが知る素晴らしき景色への扉を、僕は、勢いよく開いた。



 思わず固まった。驚き立ち尽くした。

 しかしそれは、目の前に映る僕だけが知る素晴らしき景色に、感動を覚えたわけではなかった。

 僕の目の前に映っていたのは、人だった。僕しか立ち入るはずのない、この屋上に、人が、立っていた。


 僕は、驚き、立ち尽くした。

 そして、その人物への、掛けるべき第一声を、僕は必死に探していた。


 読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ