一匹狼の心配
【ユウ視点】
────……腹が…痛い
私は朝からそれだけを考えて、リビングのソファーで毛布にくるまっていた。
いわゆる、女の子の日。
所詮、生理というやつだ。
2日目である今日、女子にしてみれば、もはや地獄にすぎない。
「薬…全く効かないじゃないか!」
生理のイライラと、薬が効かないことで思わず叫んだら、子宮に響いたのかまた痛みがやってきた。
「………。」
私はまた、無言で毛布にくるまる。
今日は大人しく寝てよ…、そう思いながら。
寝ようとしたとき、バイクの音が聴こえてきて、うちの近くで音が止んだ。
そしてそのすぐ後、玄関からガチャって音がした。
私の家は父子家庭で、父さんは朝から仕事だ。
だから、今、誰が入って来たのか嫌でも分かる。
「…なにやってンだ」
お前がな。
シズクは私を見るなりそう言った。
よりによってこんな時に…
「帰れ。私はいまそれどころじゃない。」
私は早口でそう切り捨てた。
「風邪?」 「生理。」
私は毛布から顔だけ出した状態でシズクに即答した。
シズクが無断で、家や部屋に入ってくるのはいつものことなので放っておく。
するとシズクは
「そうか。」
と言い、リビングから、家から出ていった。
───アイツは何しに来たんだ…?
さすがに悪い気がしたので、後で電話で謝ろう。
寝ようにも眠気が覚めてしまい、なにをするわけでもなく、ただソファーでごろごろしていた。
シズクが帰ってから15分くらい経った。
するとまた、玄関からガチャって音が聴こえてきた。
私は少し不審に思いながらリビングのドアを見つめた。
すると、…………
「シズク………。」
さっき帰ってしまったシズクが、入って来た。
シズクは無言で私の寝ているソファーまで来ると、床に膝をつき、
「……ん」
と袋を手渡してきた。
毛布から手を出して袋を受け取り、中身を見てみる。
「これ…」
袋のなかにはホット飲料やカイロ、生理痛の薬、冷えピタなんかが入っていた。
「何が効くのか分かんねぇから、テキトーに買ってきた………もしかして、いらなかったか?…」
シズクが少し眉を下げながら聞いてきた。
カイロに冷えピタって……私は風邪かなにかか。
────…でも、
「ありがとう…すごく助かる」
私は、今日、初めての笑顔でシズクに言った。
「そうか…」
シズクも微笑みながら、優しく返してくれた。
シズクのおかげで、今日はあまり痛くなかった気がした。いや、きっと、気のせいじゃない。
「寝てろ…粥作ってくる。」
思わず、少し笑ってしまったが、シズクは不思議そうな顔でこちらを見ている。
それがまた可笑しくて、
「すまないが、頼む」
自然にそう口にしていた。
女の子なら誰でも知ってるこの辛さ…
生理の時にでも読んで、少しでも気が紛れてくれればな、と思いながら書きました。