帰還と変動
第6話です。投稿が毎度遅れて申し訳ありません。
感想、ご指摘は何時でもお待ちしております!
滑走路上では整備科の学生が降り立ってくる軽爆撃機を誘導したり、整備場に押し込んだりしていた。シンもまた滑走路上で向かってくる軽爆に赤と緑の誘導灯を両手に持ち、着陸のサインを送る。今まさに着陸するのは、テネルとカリエの乗った3番機である。
着陸した機体は1回バウンドしてから降り立った。操縦席を見ればテネルとカリエがやや疲れた表情しているのが、目に見えた。機はそのままゆっくり減速して止まった。プロペラも徐々にその動きを止めていった。完全に止まると整備科の学生達が出て行って機を駐機場へ押して行った。
「あと1機か……」
そう言いながら空を見上げればドス黒い雲が広がり始めていた。ひと雨来そうである。
「お帰り! なんともない様だね!」
帰ってきたテネルとカリエを迎えたのはそんな言葉だった。見ればミナが嬉しそうに顔をほころばせている。
「なんともなさ過ぎて困ったけどね……」
テネルはなんとも残念そうな顔とオーラをまといながら、駐機場で機体から降りていた。
「でも、無事でよかったです」
カリエも飛行帽を取りながら後席から降りた。
「そうそう! 安全第一なんだから!」
やけにテンションの高いミナを訝しくも思いながらテネルは整備科の学生に機体を渡した。
「カナコは? どこに?」
「カナコなら滑走路脇の対空砲陣地の中よ。交代で対空監視をするんだって」
「ふーん。大変なんだね、防空科って」
「まあ、空を飛ぶ私達もだけどやっぱり防空科ってすごいよね。30キログラムもある砲弾を運んで、装填してを繰り返すんだって」
「30キロ? カナコが!?」
「あっいや! カナコは射手だよ。さすがに30キロは……」
「そうだよね……ビックリした」
「まあ、テネルとカリエもご飯食べに行こ。シンも今日は徹夜で整備だから、3人で寂しいけど」
「そっかじゃあ行こう」
3人は食堂へと歩を進めた。
飛行指揮所ではヘルムートが参謀本部へ電話連絡を入れていた。
「本日の偵察飛行は異常ありません。今後も引き続き警戒をおこないます。では失礼します」
受話器を置くとヘルムートは眉間をマッサージをしながら、椅子にすわり主計兵が持ってきた食事を食べ始めた。周りでも通信学生が交代で食事をとっていた。
外はすでに雨が降り始め、防空科の学生以外の者は屋内へ入って行った。
「おい、ヘルムートよ。何もなかったな」
トマがドカドカとふてぶてしい態度で入ってきた。
「まあ、あと数日あるからな。のんびり待つとしよう」
トマはヘルムートの向かい側の椅子に腰かけると、語りかける様に言った。
「ヘルムート。お前も分かってるはずだ。万が一、学生機がビーブリア軍機と出会ったら、まず生きて戻ることが出来ないだろうよ」
「今は非常時だ。多少の犠牲はやむを得ない」
「だが、犠牲を出すのが正規軍じゃなくて学生でなければならないのは、どうしてだ?」
ヘルムートは伸びをひとつすると、
「その心配は明日には解消するだろうな」
「本当か!?」
「ああ、もちろんだ」
その時トマはヘルムートの口辺が吊りあがったのを知らない。
次の日の早朝に全校生徒が営庭に集合した。
ミナが前に立っているテネルの背中を叩いて言った。
「こんな朝早くからなんなの? まだお肌の手入れが終わってなかったのに~」
「なんかね。シンから聞いた話なんだけど、王都の陸軍参謀本部から参謀が来てるらしいからその参謀の話があるらしいよ」
「ふーん」
すると朝礼台に参謀徽章をつけ、軍服を隙なく着こなした男が上がった。年はトマ教官と同じくらいの様に感じられた。
「生徒諸君! 私は陸軍参謀本部から来た、ヘルムート・ハンマン参謀である。昨日の偵察飛行は御苦労であった」
ヘルムートは生徒全員を見回した。
「昨日参謀本部より連絡があり、それを伝える!」
一呼吸おいてヘルムートは言った。
「本日より諸君は学生から脱皮し、正規軍北部防衛隊に編入される! つまり君達は学生でなく、一人前の王国陸軍軍人となったのである!」
どうでしたか?
感想などお待ちしてます。