表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀翼の空  作者: 脱色ナス
1章
18/18

被弾機、離脱。搭乗員瀕死。

だいぶ間が開いてしまって、スミマセン!

 体が重い。全てを投げ出したくなるような倦怠感に襲われる。

 しかし狭い機内ではそれは叶わない。

 「カリエ……撃たれた……?」

 「ごめん、航法しなきゃ……ね……」

 太ももからは止めどなく血が流れ出ている。止血しようにも手が震えて、止血帯代わりのマフラーを結ぶ事が出来ない。

 「帰り方くらい分かるよ……皆について行けば大丈夫だから」

 機体がガタガタと時折揺れる。エンジンが損傷したのか?機体がもう持たないのか分からなかった。

 「テネル君……ごめんね」

 「何だよ……急に……」

 「今でも私のこと憎いかな?」

 「……」

 答えられなかった。答えられるハズがないのだ。

 「私ね……テネル君のお母さんが……死んで……凄く悲しかった。だってテネル君……可哀そうで……」

 「下手な憐れみだったら……いらないっ」

 「母さまはお前等に……殺され……1人あの冷たい川に飛び込んで……」

 操縦席の床は2人のどちらとも分からない血が溜まっている。フットレバーがうまく踏めない。

 「そうだよね……ごめん、ほんとに……ごめん」

 悔しかった。本当は全て分かってるはずなのだ。彼女に罪はない。

 「私がどうしてこの学校に入ったか……しってる?」

 「え……」

 「私ね……テネル君のそばに居てあげたかったの……自己満足だっていうことは分かってる。でもそうでもしなきゃ……いけないと思った」

 「なんで……そんなに、一緒に居ようとするのさ……?」

 「……き……だか……ら」

 「えっ?……」

 それ以来声は聞こえなくなった。だが、確かに聞こえた。

 テネルはここが自分の死に場所だと思った。父が死に、母が死に、妹と離れて軍に入った。なんだか途方もない人生を生きてきた様に思えた。いつの間にか父と母を死に追いやった家の少女と一緒に同じ機に乗っている。

 「父様、母様、もうすぐそちらに逝きます」

 テネルは意識を飛ばした。

 

 

 「……生兵! 衛生兵!……く、こっちに!」

 「燃料が……てる! 気をつけろ!」

 「止血帯あるだけ持ってこい! 急げ……!」



 気づけば白い天井が見えていた。

 

 

感想お待ちしてます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ