被弾機、離脱。搭乗員瀕死。
だいぶ間が開いてしまって、スミマセン!
体が重い。全てを投げ出したくなるような倦怠感に襲われる。
しかし狭い機内ではそれは叶わない。
「カリエ……撃たれた……?」
「ごめん、航法しなきゃ……ね……」
太ももからは止めどなく血が流れ出ている。止血しようにも手が震えて、止血帯代わりのマフラーを結ぶ事が出来ない。
「帰り方くらい分かるよ……皆について行けば大丈夫だから」
機体がガタガタと時折揺れる。エンジンが損傷したのか?機体がもう持たないのか分からなかった。
「テネル君……ごめんね」
「何だよ……急に……」
「今でも私のこと憎いかな?」
「……」
答えられなかった。答えられるハズがないのだ。
「私ね……テネル君のお母さんが……死んで……凄く悲しかった。だってテネル君……可哀そうで……」
「下手な憐れみだったら……いらないっ」
「母さまはお前等に……殺され……1人あの冷たい川に飛び込んで……」
操縦席の床は2人のどちらとも分からない血が溜まっている。フットレバーがうまく踏めない。
「そうだよね……ごめん、ほんとに……ごめん」
悔しかった。本当は全て分かってるはずなのだ。彼女に罪はない。
「私がどうしてこの学校に入ったか……しってる?」
「え……」
「私ね……テネル君のそばに居てあげたかったの……自己満足だっていうことは分かってる。でもそうでもしなきゃ……いけないと思った」
「なんで……そんなに、一緒に居ようとするのさ……?」
「……き……だか……ら」
「えっ?……」
それ以来声は聞こえなくなった。だが、確かに聞こえた。
テネルはここが自分の死に場所だと思った。父が死に、母が死に、妹と離れて軍に入った。なんだか途方もない人生を生きてきた様に思えた。いつの間にか父と母を死に追いやった家の少女と一緒に同じ機に乗っている。
「父様、母様、もうすぐそちらに逝きます」
テネルは意識を飛ばした。
「……生兵! 衛生兵!……く、こっちに!」
「燃料が……てる! 気をつけろ!」
「止血帯あるだけ持ってこい! 急げ……!」
気づけば白い天井が見えていた。
感想お待ちしてます