友軍機、飛来
「敵三機こちらに来る!」
カリエの叫びと共にテネルはフットバーを蹴り、機体を横滑りさせる。追い越してしていく敵機にカリエは旋回機銃を叩きこむが、青白い光の尾を放ち飛翔する曳光弾はなかなか中らない。
「もうすぐ雲だ!」
そうこう言ってるうちに、雲の中へ飛び込んだ。機体のすぐ外は真っ白でなにも見えない。空間識失調症にならない様に、計器を頼りに飛行する。
「雲の切れ目が見える……」
外が少しずつ明るくなる。
「テネル君! 雲から出たら、左40度変針! 敵機動部隊への針路をとって!」
「わかった!」
雲の切れ間から出ると、外には他に雲が無かった。
「敵二! 6時方向接近!」
「もう隠れる場所が!」
敵機は後ろ上方30度の最悪の位置につく。
「くそ!」
テネルはフットバーを蹴り、操縦桿を押し込む。機体は急降下していき、海面ギリギリを飛ぶ。敵機の機銃弾が機体の周囲に着弾し、水柱を上げる。
カリエも果敢に機銃を撃ちこむ。
テネルは突然、爆弾の投下レバーを引いた。350キロ爆弾が投下され後方で水柱を上がる。
「テネル君!? 何してるの!?」
「まだ両翼に爆弾がある! これで十分だよ!」
機体は一番重い爆弾を失くしたことにより、軽くなり、速度が上がった。とはいえ、機体の性能的にはよちよち歩きの子供を大人が追いかけるようなもの。すぐに差をつめられる。
「来たよ!」
再びフットバーを蹴る。水柱が機体の周囲に立ち起こる。
(もう、だめかもしれない!)
その時、一番手前で追尾してきた敵機が火を噴き、そのまま海面に鼻づらを叩きつけた。
「! 追尾敵機1。墜落確認!」
「どうして!?」
上方から戦闘機が1機降りてきて、併行して飛行する。
「あれは!?」
それは間違えるはずもない、友軍機。
「どうした新兵ども! もうへばったのか!?」
「「トマ教官!?」」
2人の教官であるトマ・グロース教官であった。
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