敵直掩機襲来
遅れました!スミマセン
「参謀殿……。一体いつからそれを……」
今は初夏。そして昼ごろである。気温もその日の最高気温が出るか出ないかの境目である。
着ているのは、飛行服。 これは高い空で凍えない為の飛行機乗りたる者の必需服である。地上が仮に25度だとすれば高度6000メートルではマイナス11度である。
それを着込みさらにその上から陸軍正装を着れば、並みの人間では汗が止まらないだろう。しかし参謀は今の今まで汗をかいてはいなかった。
「ふん、先の大戦ではここよりずっと暑い、西方諸島の前線基地で一日中この格好で警戒態勢を維持した時もあったからな」
(((それは理由になってない!!)))
ヘルムートとトマ以外の全員がそう思った。
「だがヘルムートよ、どうする? 俺達2人だけで直掩にいくか?」
(((へっ!?)))
「もちろんだ。 2機ぐらい出せるだろ?」
新兵と学校長を置いてきぼりにして話はドンドン進んでいく。
「新兵!」
「はっ、はい!」
「直ちに戦闘機2機の発進準備! 早く! 早くだ!」
指揮所が驚愕の事実で揺れている頃北方海域では。
爆撃隊は一路敵艦隊を目指し、北へ邁進中である。編隊に目立つ様な乱れは無く、新兵達は来るであろう敵迎撃機に備えていた。
編隊を密にし、後部旋回機銃に実弾を装填した。カリエも座席を回転させ、後部風防を開ける。冷たい風が機内に切り込んでくる。そして、旋回機銃を斜めに突き出した。
「しっかり見張れよ」
テネルが後ろを振り向き声を掛ける。
「うん」
発動機の音と風切り音が機内を満たす。
気を引き締めようと顔を上げた時、後方中空に2,3何かが光った。
「後方敵機!」
考える前に体が動く。機銃がその方に指向する。
テネルは速度をあげ、編隊の先頭に踊り出た。バンクを振り、僚機に襲来を伝えた。
「カリエ! 敵が射撃をして機首をあげ、腹を見せたときに撃って!」
「うん!」
編隊長の指示で編隊が密になる。全ての旋回機銃が接近する敵機に向く。
遠くで光っていたそれは、どんどん近づいてきた。
そしてそれは一瞬だった。
編隊直上についた敵機は、背面逆落としで突っ込んできた。
旋回機銃の蜘蛛の巣型の照準機いっぱいに敵機が見えた。異邦のエンジンが唸りをあげ、プロペラがバリバリと鳴いた。
カリエは引き金を引いた。7.7ミリ曳光弾が青白い尾を引きながら飛び出していく。敵機の両翼に仕込まれた大口径機銃も火を噴く。
敵機はそのまま編隊の真ん中を通過して行った。
「6番機! 翼端より炎上!」
横を飛んでいた僚機は翼からオレンジ色の火を吹きながら、墜ちていく。途中で機体から搭乗員が飛び出て、白い落下傘の花を咲かせる。
「第二波来る!」
テネルの声にカリエは反応し、視線を下に巡らす。先ほどの敵機らは見事な編隊を維持しつつ、上昇してくる。この爆撃機には自衛用の旋回機銃は後部上方に向けてのものしかない。つまり下方は死角となっおり、腹に潜られれば視認することすら不可能となる。
敵機は再び編隊の真ん中を行き過ぎた。
「2番機炎上! 13番機も!」
さらに僚機が煙を吹きながら、墜ちて行った。
『編隊長機より各機へ! 各機雲を利用し回避せよ!』
このままでは全滅すると判断した編隊長は編隊を放棄することを判断した。
「テネル君! あの雲へ!」
カリエは付近の逃げられるような雲を探して指差した。
「わかった!」
テネルはフルスロットルで雲を目指した。
感想お待ちしてます!