反撃用意
感想待ってマース!
あちらこちらに大穴が開いた滑走路に戦闘機が1機ずつ降りてくる。幸い被弾機は少なく学校上空での空戦が圧倒的勝利であったことが伺える。
滑走路脇の格納庫や校舎、兵舎が半分近く破壊され、火が燻っている。新兵達が必死の消火活動を行っている。
降りてきた戦闘機は開いている場所に、臨時の駐機場とし置いている。
「飛行科爆撃隊集合!」
テネルはその言葉で我に返った。ずっと塹壕の中にいたらしい。隣にいたカリエが塹壕から這い出て、 「テネル君、行こう……」
と言って手を伸ばしてきた。無意識にその手を握り返していた。
爆撃機の格納庫は幸い被弾せず、中の機体も無傷同然だった。格納庫入口脇の黒板に新兵達が集まる。
「これより、敵艦隊攻撃に関するブリーフィングを行う」
教官が黒板に張られた海図を指して言った。
「指揮所の電探の解析によると敵艦隊はここから北方15度方向、距離600キロ付近にいることが分かった」
そう言って海図に敵艦を表す赤いマークを書き込む。
「現在ビーブリア政府から宣戦布告が無い。そのため王国政府内でも対処にどうして良いか分からない状況だ。陸軍としては直ちに反撃したいが、海軍と空軍が難色を示している」
教官は一旦言葉をここで切ると、
「よって陸軍は自衛権を行使し、敵艦隊を撃破する。陸軍単独の作戦となる!」
新兵達に動揺が走った。この様な惨劇が起き、卑怯な攻撃が行われたのだから、陸海空軍が共同一致してビーブリアと戦うものだと思ったからだ。
「現在、稼働可能な爆撃機12機のみで以って敵艦隊に攻撃を行う!」
「「え!」」
新兵達がざわついた
「教官! 直援機は!? 援護は!?」
「戦闘機は現在整備中だ。今回の作戦は時間との勝負でもある。我が国の正当性を確立する為にも、敵艦が領海を出る前に叩かなくてはならない!」
「しかし……」
「敵は先ほどの空襲で殆どの艦載機を出撃させ、現在は艦隊直上に少数の戦闘機しか残していないはずだ。叩くなら今しかない!」
「「……」」
「間もなく各機への爆装が完了する! 直ちに出撃準備!」
「「「了解!」」」
テネルとカリエは格納庫脇に掛けてある飛行帽を手に取った。
「テネル君……」
「なに?」
「大変な事になったね……」
「訓練通りやるだけだろ」
そう言うとテネルは愛機へと歩いて行く。その背中にカリエは呟いた。
「テネル君となら、地獄の一丁目まで大丈夫……」
カリエも2人の愛機へ駆けて行った。