形勢逆転
久しぶりの投稿です!
そのとき対空監視所の女子兵が南の方角を指差し、何かを叫んでいた。ヘルムートは測距儀を覗きこんだ。そこにはよく見る陸軍機が猛スピードで突っ込んで来ていた。
「やっと……」
ヘルムートはただただそんなことしか言えなかった。
「やってくれたじゃない!」
ミナは操縦席で絶叫した。そこへ無線が入る。
「戦闘機隊へ、こちら飛行指揮所! 遅いじゃねえか! 蠅共は対空砲が叩き落しちまったぞ!」
「指揮所へ、こちら戦闘機隊、ミナ・ヴァウマン! だったら、訓練に戻ってもいいかしら?」
「それだけは勘弁だぜ。 さっさと追い払ってくれ!」
「了解!」
ミナは指揮所との通信を終わると、僚機に手信号で合図を出す。
「私の第一小隊と第二小隊はそのまま直進! 敵爆撃機を撃墜せよ!」
「「了解!」」
「第三小隊は上空援護!」
「了解!」
ミナは右手を前へと振る。すると、全機が編隊を維持したまま突っ込んで行った。
テネルは突如始まった逆転劇に目を奪われた。つい先程まで空を我が物顔で飛行していた敵機が圧倒され、墜ちていく。優位を保ったミナ率いる戦闘機隊は逃げ腰になった敵爆撃機を次々と落とし、反撃する直援の敵戦闘機を追い回していく。この劇は長く続いた様に思えたが、実際は5分間の出来事でしか無かった。
やがて敵機は形勢不利と見るや北の空へと逃亡を始めた。
ミナは操縦席で顔の汗を拭った。両翼の機銃の弾は撃ち尽くし、薄ら銃身から白い煙が出ている。
「……機隊! 戦闘機隊! 応答せよ! 指揮所より戦闘機隊! 聞こえているか!?」
無線の声でやっと我に返り、無線を繋げる。
「こちら戦闘機隊、ミナ・ヴァウマン!」
「やっと出たか……着陸を指示する。現在滑走路は各所に穴があいてる。注意して着陸せよ!」
「了解! ……。 指揮官機より全機へ! 第一小隊から順次着陸せよ! 滑走路の穴によく注意されたし!」
「「「了解!」」」
無線を切ったところでミナは学校の惨状に目を瞠った。まだ地上のあちこちで火が出ており、仲間が必死の消火活動をしていた。ミナ達が普段駐機している格納庫も原型を留めているのは少なかった。
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