空襲 -2-
続話です。今回はちょっと短いです。スミマセン……
カナコはとっさに防弾盾に体を隠した。瞬間、”鉛の嵐”が襲った。
銃座ごと揺さぶられた。あちこちで金属を引っ掻いた様な音がして、酷い頭痛がした。
「!」
周りの様子は一変していた。すぐ傍に立っていたはずの指揮官が、装填手が、観測手が、忽然と姿を消したのだ。カナコの銃座は赤い湿地と化していた。
「あ……! ああ……」
よく見ると自分も真っ赤に染まっていた。慌てて体中を触ってみるが、怪我はしていない。浴び血だ。
恐怖は、憎しみへと変わる。カナコはハンドルを操作し、目の前を通過した敵機を追う。照準機の中に敵機を捉える。そして、引き金を渾身の力を込めて蹴った。
銃弾が敵機を追う。発射された曳光弾は敵機に食いつき、突き破り、炸裂した。一瞬だった。
敵機はそのままの勢いで、地面に浅い角度で突っ込んだ。そして、火の玉と化した。
飛行指揮所は被害報告などにてんてこ舞いになっていた。
「電探に感! 本校上空に敵機約10を確認! 戦闘機とみられる!」
「敵爆撃機による断続的な空襲で第2格納庫、第1機銃群、炎上!」
「警察より報告! 墜落した敵機により市街地で火災が発生している模様!」
ヘルムートは苦虫を噛み潰したような顔をして、
「先ほどから高射砲の発射音が聞こえないぞ! 何やってる! 機銃に損害が集中してしまうじゃないか!」
そして苛立ったように机の上の鉄帽を取って被ると屋上へ駆けだした。飛行指揮所の屋上は高射砲の測距儀が設置されているのだ。
屋上にあがると測距儀を数人の新兵が操作していた。
「測距始めー!」
3年兵の合図で高高度を飛行する、敵戦闘機に測距儀を向ける。しかし、敵機はそそくさと雲の中へ入ってしまう。
「くそ! 目標無し! 測距やめ!」
「何をしている!」
ヘルムートは3年兵に詰め寄った。
「お前達、まさかこんなことばかり繰り返しているんじゃないだろうな!」
「しかし、正確な測距でなければ高射砲は撃っても当たりませんよ!」
「照準は各砲に任せろ! とにかく高射砲に撃つよう指示をだせ! 機銃座に被害が集中している!」
「了解!」
3年兵は電話で指示を出した。すると高射砲が火を噴き始めた。その狙いは正確なものではなかったが、威嚇にはなっていた。
「早く帰ってきてくれ……!」
ヘルムートの呟きは砲声にかき消された。
感想、ご指摘お待ちしております!