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第六話

 次の日目が覚めたとき、俺は一瞬だけ昨日のマッチを「変な夢だったんじゃないか」と疑った。

 枕元のスマホは、いつものように安っぽいアラームを鳴らしている。

 部屋は相変わらず六畳、天井は低いし、壁は薄い。


 いつも通りの、底辺ストリートの朝。

 ──のはずたったんだけど。


『通知:Public Score Match #2211-C公式結果が確定しました』


 IDチップが、腕の内側からびりっと振動した。


「……おっと?」


 寝ぼけた目で、空中に浮かんだホログラムを見上げる。


『Public Score Match #2211-C“クロスジャッジ”

 結果:チャレンジャー側 勝利

 公式報酬:勝利プレイヤー各自 基本報酬 +100(※帯域調整あり)』


「帯域調整ってなんだよ」


 小さくツッコむ。

 その下の行に、見慣れた自分の名前が表示された。


『久城シン

 旧スコア:21

 新スコア: → 』


 数字が、一度ゼロに戻るみたいに一瞬欠け──


『新スコア:121

 ランク:グレイ層(下位)

 タグ:要監視/不正シミュレーション傾向』


「……は?」


 寝起きの脳みそが、一瞬止まった。


「ちょ、待て、三桁?」


 慌てて、手首をもう一度かざす。


『久城シン Score:121

 ランク:グレイ層

 ノーカット判定:解除済み』


 ノーカット判定、解除済み。


 昨日で、何年も俺のIDにくっついていた「ノーカット」のラベルが、綺麗さっぱり消えていた。


「おいおいおい……マジかよ」


 さすがに目が覚めた。


 スコアが3ケタになるだけで、急に世界が変わるわけじゃない。

 部屋の狭さも、財布の薄さも、今すぐ増えるわけじゃない。

 でも、「0〜99」の区画から追い出されるってことは──


(“ほぼ人権なし”から、“底辺市民”くらいには昇格、か)


 自分で言ってて、笑える。


 じわじわと実感が湧いてきたころ、ホログラムの端に、別の通知アイコンが点滅していることに気づいた。


『関連通知:他プレイヤーのスコア変動履歴(閲覧権限:限定)』


 タップしてみる。


『神崎アイリス

 旧スコア:989

 新スコア:999』


「お前、ほぼカンストじゃねぇか」


 思わず声に出てしまう。


『※高スコア帯の報酬は帯域調整により減衰します』


 小さな注釈が添えられていた。

 昨日アイリスが言ってたやつだ。


 ──上に行けば行くほど、同じ「+100」でも、実際に動く数字は小さくなる。


 ユナは──

『柏木ユナ Score:240→315』


 タクトも、

『鳴海タクト Score:196→270』


 ミレイは、

『白河ミレイ Score:838→848』


 ちゃんと上は渋い。


(なるほどな)


 底辺からは一気に引き上げる。

 上の方は「安定してるように見せたい」から、数字を固くする。

 ゲームとしては、よくできている。

 よく出来すぎてて、ちょっとムカつくけど。


「──とりあえず、顔洗うか」


 ベッドから起きて、低い天井に頭をぶつけそうになりながら立ち上がる。

 鏡代わりの割れたスマホに映ったのは、いつも通り寝癖頭で、それなりにクマのある俺。


 スコアが100を超えても、顔は変わらない。

 変わるのは、世界の方だ。



 アパートの階段を降りるとき、いつものクセで踊り場のスコアスキャナに手首をかざした。


 ピッ。


『ユーザー:久城シン

 Score:121

 ランク:グレイ層(下位)

 推奨:軽作業マッチ/低ランク事務マッチ/地域補助プログラム』


「あっ、三桁になってる」


 後ろから声がして振り向くと、洗濯カゴを抱えたユナがいた。


「おはよ、久城くん」

「おう」


 彼女もスキャナに手首をかざす。

 ピッ。


『柏木ユナ

 Score:315

 ランク:グレイ層(中位)』


「おー、三百台」

「ね。なんか一気に“まともな人間”になった気分」

「数字で自己評価すんなよ」

「この街でそんなこと言う?」


 笑いながら、ユナは洗濯カゴを持ち直した。


「でもさ、戸惑うよね。ついこの前まで、ここに“90”って出てたちとたちと同じ階段なのに」

「まあ、階段の方はランク変わっても古いままだしな」

「それな〜」


 二人でくだらない話をしながら1階に降りる。

 アパート入り口の郵便受けの前で、大家のおばちゃんに遭遇した。


「おはようございます」


 ユナが元気よく挨拶すると、大家は「あら、ユナちゃん、今日も早いねぇ」と笑顔を向け──

 そのまま、俺の方を見て一瞬だけ目を細めた。


「……おや、久城くん」

「はい」

「スコア、上がったねぇ」


 入口横の壁にも簡易スキャナがついているから、大家ぐらいになると住民の数字はだいたい把握している。


「一応、ちょっとだけ」

「ちょっとどころじゃないよ。三桁になったら、うちの“ノーカット枠”卒業だねぇ」

「どういう枠だよ」


 俺が突っ込むと、大家は楽しそうに笑った。


「いやいや、前から思ってたんだよ。久城くん、顔つきの割にスコアが低すぎだって。数字の方が追いついてきたって感じかねぇ」

「褒めてるんですかそれ」

「褒めてる褒めてる。あ、そうそう。三桁になったから、今月分から“高スコア家賃”に切り替わ──」

「それは褒めてねぇ」


 即座に抗議すると、大家は「冗談冗談」と手を振った。

 本気で言ってないあたり、まだこのアパートは人間味が残っている。


「でもまあ、ほんとおめでとう。あんたみたいな子が上がってくれると、こっちもちょっと嬉しくなるよ」

「……どうも」


 慣れてない種類の言葉に、少し返答に困る。

 ユナが横からニヤニヤ眺めていた。


「久城くん、“おめでとう”って言われ慣れてないでしょ」

「慣れたくもねぇよ」

「でも、悪くないでしょ?」


 ……悪くはない。



 外に出ると、底辺ストリートの朝はいつも通りだった。

 ディスカウントコンビニのトラックが商品を降ろしていて、路地の端にはまだ酔い覚めしていないサラリーマンが座り込んでいる。


 ただ、一つだけ違うのは──。

 通りのスコア表示板に、俺の名前が小さくだが表示されていたことだ。


『昨日のマッチ結果ハイライト

 Public Score Match #2211-C “クロスジャッジ”

 勝者:久城シン(Score:121)、神崎アイリス(Score:999)ほか』


「ちょっと、名前出てんぞ」


 近くで看板を見上げていた中学生ぐらいのガキが、指をさして笑った。


「“底辺ストリートのノーカット”って書かれてたやつじゃん」

「もうノーカットじゃねぇし」

「え、マジで?」


 ガキが興味津々で俺の手首を覗き込もうとする。


「うわ、ほんとだ三桁。チッ、夢壊れた」

「どんな夢見てたんだお前」

「“スコア13の伝説の無職”みたいな……」

「そんな伝説いらねぇよ」


 ガキはケラケラ笑いながら走り去っていった。

 看板の文字は、しばらくしたら別の広告に切り替わるだろう。

 それでも、「昨日の出来事」が街のどこかに一時的に刻まれているのは、妙な感覚だった。



 その日の昼前、スマホに一件のメッセージが入った。


『差出人:神崎アイリス

 件名:本日の要件』


 本文は、いかにもアイリスらしい簡潔さだった。


『・スコア庁本庁からの接触について共有したい

 ・今回のマッチの「データ利用」について説明あり

 ・ついでに今後のマッチ/案件の候補整理

 場所:昨日と同じカフェ

 時間:14:00』


「……ついでの量じゃねぇな」


 独り言をこぼしながら、時間を確認する。

 まだ昼まで少しある。


 コンビニで適当にパンを買って、公園のベンチで食いながら、ぼんやりと昨日の映像をアーカイブで見直した。


 自分がステージでマイクを握っている姿は、正直あまり見たくない。

 声もテンションも、どこかいつもと違って聞こえる。


(まあ、あの場の空気じゃなきゃ言わないことも言ったしな)


 スコア庁の公式アーカイブにはすでに、「クロスジャッジ」のログがアップされていた。

 再生回数のカウンターがじわじわ増えていく。


 コメント欄には、南七ブロックの住民だけじゃなく、他のブロックからも書き込みが来ている。


『底辺ブロックの割にまともなこと考えてて草』

『ノーカットのくせに読み鋭すぎだろ……』

『ルカ推しだけど、今回は負け認めるわ』

『第三問エグい。YES押した自分にドン引きしてる』


「ドン引きしてる」とか言いつつ、ちゃんと押してるあたりが、この街っぽい。


 画面を閉じて、空を見上げる。

 高層ビルの隙間から、昼の太陽が白くにじんでいた。



 例のカフェ<CoreBean>。

 昨日と同じ窓際の席に、アイリスはすでに座っていた。

 今日は、少しラフなシャツにカーディガン姿。

 それでも、どう見ても「底辺ストリートの住人」には見えない。


「お疲れ様です、シン」

「そっちこそ。カンスト手前さん」

「あと一歩が、なかなか埋まらないものなのよ」


 そう言って、アイリスは自分のスコア表示を見せてくる。


『神崎アイリス Score:999』


「……1足りないって、だいぶストレスじゃね?」

「“完璧”という言葉に縛られずに済むので、案外悪くないわよ」

「強がりに聞こえるのは気のせいか」

「気のせいです」


 言い合いながらも、アイリスの表情はどこか晴れやかだった。

 俺がコーヒーを注文して戻ってくるのを待って、彼女はタブレットをこちらに向ける。


「まずは、スコア庁からの公式連絡」


 画面には、硬い文章が並んでいた。


『件名:Public Score Match #2211-Cにおけるご協力の謝意と、今後の協力依頼について』


 要約すると──


・今回のマッチは、「底辺ブロックにおける価値観調査」の一環

・データは匿名化され、今後のスコアアルゴリズム改善に利用される

・チャレンジャー側のプレイングは「統計的にも興味深い挙動」として評価

・今後、「被評価者側代表」として意見を聞きたいので、本庁の担当セクションで話をしませんか?


 ──みたいなことが書いてある。


「“被評価者側代表”って言い方、なかなかだな」

「ええ、“家畜代表”と言い換えても意味はそんなに変わらないわね」


 アイリスが、サラっと物騒なことを言った。


「で、行くのかそれ」

「行くつもりよ」

「マジか」

「スコア庁のアルゴリズム担当と直接話せる機会なんて、滅多にないもの。私はもともと、そこの内部プロジェクトにも関わってたし」

「言ってたな、それ」


 アイリスは、少しだけ視線を落とす。


「私が巻き込まれた“理不尽な負け”も、その辺りの連中が関わっている可能性が高い。情報を引き出せるなら、引き出したい」

「危なくねぇか?」

「危ないでしょうね」


 即答。


「でも、危なくない戦場は、だいたい何も変わらないわ」

「名言っぽく言うな」


 彼女は、タブレットの別タブを開いた。


「それとは別に、スポンサーからのオファーも来てるわ」


 画面には、派手なロゴが並んでいた。


 ・マッチ専用配信プラットフォーム

 ・某エナジードリンク

 ・スコア管理アプリ企業 ……などなど。


「はや」

「“底辺ブロックからの成り上がりストーリー”は、広告屋さんが大好物だから」

「誰が成り上がりだ」

「現時点で、あなたの“ノーカット→グレイ三桁”の伸び率は、“売り文句”としては最高よ」


 確かに、ハイライト映像の横に「スコア13→121」とか書きやすいだろう。


「特に、配信プラットフォームからの提案は、半分“罠”ね」


 アイリスが一つのメールを開く。


『スコア13からの大逆転劇!あなたのストーリーを、当社独占コンテンツとして配信しませんか?編集権と演出権はこちらに一任いただきますが、報酬は高く設定します』

「編集権一任って、見る価値ゼロだな」

「同感」


 アイリスは、それらのメールに全部「保留」とマークしていた。


「とりあえず、スコア庁との面談を優先したい。それと──」


 「それと」の言い方が、少しだけ楽しそうに聞こえた。


「次のマッチの話も来ているわ」

「はやいな?」

「クロスジャッジの視聴数が、思ったより伸びそうだから」


 タブレットに、新しい招待状が表示される。


『Public Score Match特別枠

 “サイレント・オークション”

 形式:チーム戦/非公開入札対決

 参加条件:直近マッチ勝者ペア、または準優勝ペア』


「また、性格の悪そうなタイトルつけてんなぁ」

「オークション形式のマッチね。持ち点を見せずに、“何をどれだけ差し出すか”を読み合うゲーム」


 ざっとルールを眺める。


 ・ステージ上に「複数の報酬候補」が並ぶ

 ・各陣営は、報酬ごとに「どれだけ自分のスコアを投じるか」を秘密裏に決める

 ・もっとも高くスコアを投じた陣営が、その報酬を獲得

 ・ただし、入札に使ったスコアは実際に減る

 ・誰が何にいくら入札したかは、最後まで完全には公開されない


「……なるほど」


 頭の中で、いくつかのパターンが浮かぶ。


「“相手がどこを欲しがるか” “どこまで削る覚悟があるか”を読むゲームか」

「そうなるわね」


 アイリスが頷く。


「クロスジャッジは、“顧客の全体傾向”を読むゲームだったけど、サイレント・オークションは、“対戦相手の覚悟”を読むゲームと言ってもいい」

「報酬候補って?」

「一部だけ例が載ってるわ」


 タブレットには、いくつかの報酬案が並んでいた。


 ・“ブロック全体の医療費減免プログラムの試験導入権”

 ・“特定地区の監視強度緩和”

 ・“個人スコア上限解放テスト枠”

 ・“マッチ常連枠の優先権”


「……おい」


 思わず、医療費減免のところを指で突く。


「こういうの、ゲームの報酬にしていいやつじゃねぇだろ」

「だからこそ、ゲームにしているのよ」


 アイリスの声が、少しだけ冷たくなった。


「“生活に直結する権利”を直接政治で扱うと、反発が強い。だから、“ゲームの結果”と言う形で、限定的に導入して、“世論の反応”を見る」

「人の暮らしを、テストデータ扱いかよ」

「ええ。スコア庁の、よくあるやり方」


 アイリスは、そのやり方をよく知っている、と言う顔だった。


「だから、私はこのマッチには興味がある」

「……興味がある、ね」

「ブロック単位の報酬が賭けられるなら──“底辺ストリートの条件”を少しだけマシにすることはできる」


 アイリスの目が、外の通りをちらりと見た。


「医療費減免でも、監視強度緩和でもいい。どれか一つ取れれば、このブロックで“数字だけじゃ切り捨てられない人たち”が、少しだけ息をしやすくなる」


 言ってることは、キレイ事かもしれない。

 でも、完全な善人のそれでもない。

 「テーブルの上で殴り返す」って、昨日言ってた通りだ。


「参加するかどうかは、あなたにも選ぶ権利があるわ」


 アイリスが、真面目な顔で俺を見る。


「今度は、“自分のスコア”だけじゃなく、ブロック全体の条件まで賭けることになる。負ければ、あなたも、ユナさんも、タクトさんも──、このブロックのみんなも、何も変わらないまま終わる」

「変わらないだけまだマシじゃねぇの」

「そうとは限らない」


 アイリスは、別のルール欄を指で示した。


『※敗北陣営の入札スコアは、一部を“維持コスト”として徴収し、該当ブロックの「監視強度」および「指導プログラム」拡張に充当する場合があります』


「要するに、“負けたら、ここの監視がちょっとキツくなる”可能性がある」

「おい」


 眉間に皺が寄る。


「勝っても負けても、結局ブロックをいじる気満々じゃねぇか」

「そうね」


 アイリスは、肩をすくめた。


「だから、“どうせいじられるなら、せめてこちらの選択が一枚でも多い方がマシ”だと私は思う」


 静かな口調だった。


「きみ、本当にこの街のこと嫌いだよな」

「大嫌いよ」


 即答。


「でも、“嫌いなもの”に直接触れないと、いつまで経っても変わらないから」


 その感じ、なんとなく分かる。

 俺だって、スコア制度が好きなわけじゃない。

 ただ、文句言ってるだけじゃ何も動かないのも知っている。


「ユナたちには、まだ具体的な話はしていない。君とある程度方針を決めてから、きちんと説明をしたい」

「……了解」


 コーヒーを一口飲んで、口の中の苦味で頭を落ち着かせる。


「一つ確認させろ」

「どうぞ」

「このマッチ、勝ったとして──俺らのスコアは、また“美味しい感じ”にあがるんだよな?」

「その質問、意外と庶民的で好きよ」


 アイリスがクスッと笑う。


「報酬欄には、“少スア各自に対するスコアボーナス:+X(帯域調整あり)”ってちゃんと書いてあるわ。おそらく、クロスジャッジと同等か、それ以上」

「なるほど」


 俺は、タブレットの報酬欄をじっと見つめた。

 ブロックの監視強度。医療費。それと、自分のスコア。


 この街では、全部「数字」に変換される。

 だからこそ、その数字の配分を決めるテーブルには、本当は俺たちみたいな「末端」が座らなきゃいけないんだろう。


「──一個、決めた」

「早いわね。何を?」

「スコア庁との面談、俺も行く」


 アイリスが、少しだけ目を見開いた。


「いいの?」

「どうせ、どっかで俺のこと話のネタにするんだろ。だったら、直接その場にいた方がマシだ」

「そうね。向こうも“本人抜きで分析する”より、ずっと面白いデータが取れるでしょうし」


 面白いデータ扱いされるのは気に入らないが、俺の方にも“面白いデータ”はいくつか持って帰れそうだ。


「サイレント・オークションも、やる方向で考える」

「本気?」

「本気」


 俺は、店の窓越しに見える底辺ストリートを眺める。


 ボロいアパート、傾いた看板、目の下にクマを抱えた通行人。


「どうせここ、勝手にいじられるなら──せめて、一回ぐらいはこっちの意思で、テーブルの上で掴みに行ってみてもいいだろ」


 アイリスの口元に、ゆっくりと笑みが浮かぶ。


「いいわね、それ」


 彼女は、タブレット上の招待状に指をのばし──「参加申請」のボタンの手前で、一度だけこちらを見た。


「本当に?」

「押せよ、相棒」


 俺がそういうと、アイリスは満足そうに頷いて、ボタンをタップした。


『Public Score Match特別枠“サイレント・オークション”

 参加申請:完了』


 新しいゲームの招待状が、俺のIDチップにも同時に届く。


 クロスジャッジで、「この街のイラッ」と「自己責任の境界線」を除いた。

 次は──「この街が何にどれだけ“価値”をつけられるか」を除く番だ。


「じゃ、決まりね」


 アイリスが、カップの残りのコーヒーを飲み干す。


「明日、ユナさんとタクトさんを呼んで、説明会。その前に、私たちは──」

「スコア庁に顔出し」

「そう言うこと」


 カフェの外では、相変わらず安っぽいネオンと、人々の生活音が混ざっている。


 スコア13から始まったゲームは、まだ一次予選をクリアした程度。

 だけど、次のテーブルはもう、用意されてしまっていた。


 スコア社会メトリカ。

 底辺ストリート。

 ブロックごとに値札を貼られた街で、俺たちはもう一度“どこにどれだけ賭けるか”を決めなきゃいけないらしい。

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