断罪イベント365ー第30回 白馬に乗ってやって来た
断罪イベントで365編の短編が書けるか、実験中。
婚約破棄・ざまぁの王道テンプレから始まり、
断罪の先にどこまで広げられるか挑戦しています。
― 真の王子とは、かくあるもの ―
断罪イベント――それは、王子が最も輝く舞台。
……であるはずだった。
しかし最近では、
熱で中止になったり
経理に請求されたり
元婚約者に看病されたり
観衆が全員“元婚約者”だったり
──と、輝きどころか影が濃くなる一方だった。
今日こそは、ちゃんと決める!
そう誓って壇上に立った王子だったが──
「断罪を、始め──」
──その瞬間だった。
広場の遠くから、風を切る音とともに、地響きが鳴った。
「……あれ、音が……?」
「馬?白馬!? うそ、本当に来るの!?」
観衆がどよめく中、
王都の大通りを一直線に走り抜けてくるのは――
白馬にまたがった、見目麗しい異国の王子。
その背には、隣国の紋章をあしらったマントがはためいていた。
彼は王都広場の段差を軽やかに飛び越え、
そのまま白馬で壇上へ乗り上げた。
隣国の王子、声高らかに
「貴女の断罪など、断固として認めぬ!!」
令嬢が目を見開く。
王子(自国)は、硬直。
「私は、隣国アルヴァルディア王国、
第二王子ジークフリート・ユリウス・ヴァレンティノである!」
「……名前、長っ!」
「かつて、こちらの令嬢に舞踏会で一輪の花を差し出された夜から、
私はずっと、貴女のことを……」
観衆「恋!これは恋ですわよ!!」
王子(自国)はびっくりして叫んだ。
「お、おい……! 勝手に壇上に上がるな!外交問題になるぞ!」
「そちらこそ、女性を断罪し、
国の威信を貶める真似をして、恥ずかしくはないのか?」
「うっ……!」
「私の国では、貴女のような
知性と美を備えた淑女を“国家的財産”と呼ぶ」
「こっちは“国家的災難”って言われてるんですけど!?(泣)」
令嬢は静かにと言った。
「……あの、プロポーズでしたら、正式に……」
これは恋ですね。
「では、改めて。貴女に、私の隣に立っていただけますか?」
隣国の王子は、断罪の場で令嬢にひざまついた。
王子(自国)は完全に沈黙。
断罪イベントが、まさかのプロポーズ会場に変わった瞬間だった。
「断罪じゃなくて結婚式きた」
「本物の王子って白馬で来るんだ……」
「なんかもう、うちの王子が謝罪する番じゃない?」
「……なんで俺のイベントなのに、俺が空気になってるの……」
※このあと、断罪イベントは一時休止となり、
王宮では“隣国との婚姻交渉会議”が緊急開催されることとなった。
王子・・頑張れ!
やっぱり・・・
白馬に乗った王子は神!
読んで頂き、ありがとうございますm(_ _)m




