1.朝の出来事
朝は静かに迎えるべきだと思わないか?
ライアはベッドから飛び上がった。ライアの呼吸は荒げ、シーツはライアの汗で濡れ、クチャクチャになっていた。ライアは悪夢を見たのだろう。ライアの頭はまだヒリヒリとしていた。
日が昇るといつのまにか寝ていたライアは風でこすれる葉の音で目が覚めた。まだ空は橙色に見える。ライアは目をこすり、ベッドから起き上がるとコーヒーをコップに淹れた。ライアはコップを持つと窓の前に立ち、自然を味わおうとした。しかし、窓から見える光景にライアはコップを手から落としてしまった。窓の先には沢山の村人の屍が落ちていた。ライアは急いでハルクを起こし、宿から出る時だった。宿の受付嬢が死んでいた。土下座の体制のまま笑顔で。頭には悪夢に出てきた男の子を殺した刀が刺さっていた。ライアは尻餅をついた。しかしハルクは聖書を出そうともしない。ライアはハルクのローブを掴むと、裏返った怒鳴り声でハルクを急かした。するとハルクは
「…聖書は、死んだ人間を生き返らせることは出来ない。」
と言った。ライアはただただやるせない気分になった。それはハルクも同じことが言えた。
勇者一行が近くにいたのに罪なき人が殺された。
これがどれだけ重いことなのか、それはライア自身が一番分かっていた。ハルクは他の二人を起こすために一歩一歩離れて行った。ハルクはそれをとても残酷で無慈悲な様に感じた。取り残されたライアは理由も考えずに宿から出た。やがて「助けを求める」という理由が追い付いた時、ライアの目の前には沢山の屍が折り重なっていた。全て村人のものだった。全ての屍が受付嬢と同じ死に方をしていた。ライアの後ろから仲間達の声が聞こえる。しかしライアは立ち止まったまま、何もしようとはしなかった。するとライアに膨大な量の孤独感が押し寄せた。まるで小さな子供の様な、置いていかれる気分。仲間に存在を否定される気分。世界が"勇者"を必要としない気分。それがライアの心の中をグルグルと駆け回っていた。
「どうしたの?ライア。」
ライアを現実に引き戻したのはリーシャの声だ。「何でもない…多分。」ライアは氷の様に冷たい声でそう言った。途端にライアは膝から崩れ落ちてしまった。勇者の涙が大地に垂れた。
ー裏話ー
この作品、元々は典型的なファンタジーにホラーとドロドロを入れたかったのに、結構宗教色強くなっちった