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追放されて本当に良かった。これが私の望んだ物語

作者: 紅月リリカ

「古代魔法」という異色の設定で短編を書いてみました。主人公の底力が垣間見える展開、楽しんで書けたので、ぜひ最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

クリスティーナ・フォンブラットは、自分の運命の歯車が回り始めたことを悟っていた。


帝国魔法学院の中庭に集められた数百人の生徒たちの視線が、彼女一人に注がれている。真夏の日差しが容赦なく照りつける中、クリスティーナは凛として立っていた。


「クリスティーナ・フォンブラット、貴女を帝国魔法学院より追放する」


学院長の声が響き渡る。理由は「魔力が無い者が詐って入学した」という、あまりにも陳腐な言い掛かりだった。


「ふん」


クリスティーナは小さく鼻で笑う。前世の記憶を持つ彼女には、これが物語の定番展開だと分かっていた。むしろ、ここまで典型的な展開になるとは思っていなかったほどだ。


「クリスティーナ、お前には失望した」


婚約者—元婚約者である第二王子アレクが、憤怒の表情を浮かべながら彼女を睨みつける。その隣では、新たな婚約者となるであろうヒロイン然とした令嬢が、優越感に満ちた微笑みを浮かべていた。


「私にも考えがあってのことです」


クリスティーナは淡々と返す。彼女の態度は、追放される立場の者のそれではなかった。まるで、全てを計算済みであるかのような余裕さえ感じられた。


実のところ、クリスティーナには誰にも言えない秘密があった。彼女の魔力は確かに、学院の標準テストでは測定不能なほど微弱だった。しかし、それは彼女が特殊な魔力—古代魔法を操る力を持っているからに他ならない。


この世界の物語を前世で読んでいた彼女は知っていた。古代魔法の力を明かせば、それはより大きな迫害を招くことになる。だからこそ、全てを計画的に進める必要があった。


「これにて、クリスティーナ・フォンブラットの追放式を終える」


学院長の声が響き渡り、生徒たちがざわめく中、クリスティーナは優雅に一礼すると、学院の門へと歩み始めた。彼女の背中には、凛とした気品が漂っていた。


* * *


追放から一ヶ月が経過した頃、クリスティーナは辺境の遺跡で自身の研究に没頭していた。


「この刻印の配置...まさか」


彼女の指先が、遺跡の壁に刻まれた古代文字の上を滑るように動く。前世の知識と、この世界で培った研究が、彼女の中で完璧に噛み合っていた。


「解放」


静かな呟きと共に、クリスティーナの指から淡い光が放たれる。それは通常の魔法とは全く異なる、神秘的な輝きを放っていた。


次の瞬間、遺跡全体が眩い光に包まれた。


「やはり...この遺跡には古代文明の技術が眠っていたのね」


彼女の予想は的中していた。この発見は、帝国の魔法研究に革命的な進歩をもたらすことになる。もちろん、それは同時に彼女への評価を一変させることも意味していた。


* * *


「クリスティーナ様、どうか帝立古代魔法研究所の所長就任をお引き受けください!」


かつて彼女を追放した面々が、今や土下座して懇願している。その光景は、ある意味で滑稽ですらあった。


学院長は顔を真っ赤にして謝罪を繰り返し、アレク王子は取り繕うように友好的な態度を示そうとしている。しかし、クリスティーナの心は既に別の場所にあった。


「申し訳ありませんが、お断りいたします」


クリスティーナは穏やかな笑みを浮かべながら告げる。


「私には既に、新しい道が開かれています」


彼女の研究は、既に国境を越えて評価されていた。異世界からも招聘の声がかかり始めている。そう、彼女の物語は、ここからが本当の始まりなのだ。


「追放されて、本当に良かった」


クリスティーナは心からそう思った。これは前世で読んだどの物語とも違う、彼女だけの新しい物語の幕開けだった。


空には朝日が昇り、新たな冒険への期待に、クリスティーナの瞳が輝いていた。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。短編ではありますが、クリスティーナの新しい冒険の始まりを想像しながら読んでいただけたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
追放式で不覚にも笑ってしまった
これは小説なのでしょうか? 設定だけのように思います。 古代魔法と現代魔法?との違いも分かりません。 起承転結もないし 迫害されるとしておきながら、各国から声がかかると言うのも矛盾してますね。
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