別れ②
すみません、昨日の投稿予告間違えてました、、(-_-;)
次に訪ねたのはナオトの家だ。
ナオトの家は狩りに従事している。家の屋根からは冬備えのためか、大量に干し肉がつるされている。
狩人であるナオトの父は念話の能力者だ。ナオトの察知能力と合わせることで、狩りの成功率が格段に上がった。この親子の貢献は多大なものだ。
玄関の前に立つと、中から乱れた寝巻姿の格好でナオトが出てきた。何もしていないのに出てきたということは、能力で気配に気づいたのだろう。
「ふあぁ~…おう~どうした~。」
気だるそうに戸を開けたナオトに
「もう昼だぞ。まだ寝てた?」
つい小言が口をついてしまった。
「昨日は守り人の夜番だったんだ…朝帰ってきたんだぞ~」
ふあぁとあくびをして嚙み潰すナオト。
それはすまないことをした、とかずさは心の中で謝る。
「それより、どうした」
「…あぁ」
いつもと違う深刻そうな表情に、ナオトは怪訝そうに首を傾げる。
正午の昼下がり。空は雲一つないきれいな秋晴れだ。暖かな陽の日差しに時折吹く少し冷たい風が心地よい。
家の前の長椅子に二人で座る。ナオトが入れてきた茶を差し出し、かずさは礼を言い受け取った。何だかさっきと同じ状況だな、と受け取った茶を見て、内心可笑しくなる。
ナオトが茶を飲みながら座ると、かずさは話を切り出す。
「私…村を出ようと思う」
ブハッと飲んでいた茶を吹き出したナオトは、慌てて問う。
「ど、どうしてだよ!お前外界に出ないって言ってただろっ。なんでそうなるんだよ!」
ばつの悪そうな顔をしてかずさは答える。
「ごめん、このまま村にいたらきっと皆に迷惑かけると思うんだ。それに私のせいで悲しむ皆の顔を見たくない…。一年後、私は死んだりしないけど、でも、皆とは私のままので別れたい。外界は危険が多いかもしれないけど今は、それでもこの村から離れたいんだ」
ナオトはかずさの決断に納得がいかない。
「お前は良くても、ノエルさんとか大丈夫なのかよ。ユズハも寂しがるだろ。めぐみ子だってお前と離れたら絶対悲しむに決まってんだろ」
そうだね、とかずさは湯呑みの茶を見つめる。
風が吹き、茶に波紋が広がる。
「親父様には寂しい思いをさせてしまうかもしれない」
かずさは茶を横に置いて身体をナオトの方に向ける。
右手は無意識に胸のネックレスを服の上から掴んでいた。
「だけど…私は親父様を自分のせいで苦しめる事の方が嫌だ…。側にいたら、今までの楽しかった思い出全部、苦しい思い出に変わっちゃうんだと思う…。だから…だからっ、私は村を離れて、皆と別れるんだ」
かずさは泣いてしまいそうなのをぐっと堪えてナオトの目を見る。かずさの決意はその蒼い瞳を通して真っ直ぐにナオトに刺さる。
「それに、この村には親父様の武力指導は不可欠だよ。めぐみ子には……君がいるだろう?」
ナオトは一瞬驚いた顔をしたがフンッとそっぽを向いた。
「こんな時だけ調子いいこと言いやがって…。……いつ経つんだ?」
「明朝」
「ハァッ?!もうちょっと後とか考えなかったのかよ」
またも突拍子のない回答にすぐに向き直り声を荒げるナオト。
「冬が始まる前に山を登りたいし、それに決心が揺らぐ前に発ちたいから…」
泣きかけた目をこすりながらかずさは答える。
ナオトは顔に手を当て空を仰ぐ。
「わーったよ…ったくもう…お前はいつも突拍子もないことを…」
愚痴りながら家の中に入った。
しばらくして、ナオトは何やら白い巾着を持ってきて、その巾着をかずさに突き出す。
「ん。非常食必要だろ。うちで作った干し肉だ。大量にあるから持ってけ」
茶といい、この干し肉といい、ナオトから何かもらったのは今日が初めてかもしれない。
かずさは立って受け取る。
「ありがとう、ナオト」
向かい合ったかずさは少し驚く。腕で隠しているが、ナオトの目が赤く腫れている。
最後まで素直じゃない幼馴染の優しさに感謝し、かずさはナオトの背中をバチンッと叩く。
「いってーー!!」
「めぐみ子のこと、頼むよ」
かずさはしっかりとナオトの夕日色の瞳を見て言う。
ナオトは背中をさすりながら答える。
「わーってるよ。こっちはずっと前からそのつもりだっての」
目をそらさず、真剣に答えてくれた生意気で心優しい幼馴染を頼もしく思い、かずさはニカッとした笑顔を返す。
「じゃーね、ナオト」
「おう、元気でやれよ」
かずさは、貰った巾着を片手に次の目的地、めぐみ子のいる社へと向かう。
残り2話。次回は明日の17:00頃に挙げます。間違えません(^◇^;)
完結まであと少し。ここまで読んでくれて、本当に、本当に、ありがとうございます!
最後まで見ていただけるととっても嬉しいです!




