表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/20

別れ②

すみません、昨日の投稿予告間違えてました、、(-_-;)

 次に訪ねたのはナオトの家だ。

 ナオトの家は狩りに従事している。家の屋根からは冬備えのためか、大量に干し肉がつるされている。

 狩人であるナオトの父は念話の能力者だ。ナオトの察知能力と合わせることで、狩りの成功率が格段に上がった。この親子の貢献は多大なものだ。

 玄関の前に立つと、中から乱れた寝巻姿の格好でナオトが出てきた。何もしていないのに出てきたということは、能力で気配に気づいたのだろう。

「ふあぁ~…おう~どうした~。」

 気だるそうに戸を開けたナオトに

「もう昼だぞ。まだ寝てた?」

 つい小言が口をついてしまった。

「昨日は守り人の夜番だったんだ…朝帰ってきたんだぞ~」

 ふあぁとあくびをして嚙み潰すナオト。

 それはすまないことをした、とかずさは心の中で謝る。

「それより、どうした」

「…あぁ」

 いつもと違う深刻そうな表情に、ナオトは怪訝そうに首を傾げる。


 正午の昼下がり。空は雲一つないきれいな秋晴れだ。暖かな陽の日差しに時折吹く少し冷たい風が心地よい。

 家の前の長椅子に二人で座る。ナオトが入れてきた茶を差し出し、かずさは礼を言い受け取った。何だかさっきと同じ状況だな、と受け取った茶を見て、内心可笑しくなる。

 ナオトが茶を飲みながら座ると、かずさは話を切り出す。

「私…村を出ようと思う」

 ブハッと飲んでいた茶を吹き出したナオトは、慌てて問う。

「ど、どうしてだよ!お前外界に出ないって言ってただろっ。なんでそうなるんだよ!」

 ばつの悪そうな顔をしてかずさは答える。

「ごめん、このまま村にいたらきっと皆に迷惑かけると思うんだ。それに私のせいで悲しむ皆の顔を見たくない…。一年後、私は死んだりしないけど、でも、皆とは私のままので別れたい。外界は危険が多いかもしれないけど今は、それでもこの村から離れたいんだ」

 ナオトはかずさの決断に納得がいかない。

「お前は良くても、ノエルさんとか大丈夫なのかよ。ユズハも寂しがるだろ。めぐみ子だってお前と離れたら絶対悲しむに決まってんだろ」

 そうだね、とかずさは湯呑みの茶を見つめる。

 風が吹き、茶に波紋が広がる。

「親父様には寂しい思いをさせてしまうかもしれない」

 かずさは茶を横に置いて身体をナオトの方に向ける。

 右手は無意識に胸のネックレスを服の上から掴んでいた。

「だけど…私は親父様を自分のせいで苦しめる事の方が嫌だ…。側にいたら、今までの楽しかった思い出全部、苦しい思い出に変わっちゃうんだと思う…。だから…だからっ、私は村を離れて、皆と別れるんだ」

 かずさは泣いてしまいそうなのをぐっと堪えてナオトの目を見る。かずさの決意はその蒼い瞳を通して真っ直ぐにナオトに刺さる。

「それに、この村には親父様の武力指導は不可欠だよ。めぐみ子には……君がいるだろう?」

 ナオトは一瞬驚いた顔をしたがフンッとそっぽを向いた。

「こんな時だけ調子いいこと言いやがって…。……いつ経つんだ?」

「明朝」

「ハァッ?!もうちょっと後とか考えなかったのかよ」

 またも突拍子のない回答にすぐに向き直り声を荒げるナオト。

「冬が始まる前に山を登りたいし、それに決心が揺らぐ前に発ちたいから…」

 泣きかけた目をこすりながらかずさは答える。

 ナオトは顔に手を当て空を仰ぐ。

「わーったよ…ったくもう…お前はいつも突拍子もないことを…」

 愚痴りながら家の中に入った。

 しばらくして、ナオトは何やら白い巾着を持ってきて、その巾着をかずさに突き出す。

「ん。非常食必要だろ。うちで作った干し肉だ。大量にあるから持ってけ」

 茶といい、この干し肉といい、ナオトから何かもらったのは今日が初めてかもしれない。

 かずさは立って受け取る。

「ありがとう、ナオト」

 向かい合ったかずさは少し驚く。腕で隠しているが、ナオトの目が赤く腫れている。

 最後まで素直じゃない幼馴染の優しさに感謝し、かずさはナオトの背中をバチンッと叩く。

「いってーー!!」

「めぐみ子のこと、頼むよ」

 かずさはしっかりとナオトの夕日色の瞳を見て言う。

 ナオトは背中をさすりながら答える。

「わーってるよ。こっちはずっと前からそのつもりだっての」

 目をそらさず、真剣に答えてくれた生意気で心優しい幼馴染を頼もしく思い、かずさはニカッとした笑顔を返す。

「じゃーね、ナオト」

「おう、元気でやれよ」

 かずさは、貰った巾着を片手に次の目的地、めぐみ子のいる社へと向かう。


残り2話。次回は明日の17:00頃に挙げます。間違えません(^◇^;)

完結まであと少し。ここまで読んでくれて、本当に、本当に、ありがとうございます!

最後まで見ていただけるととっても嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ