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血塗られた大地  作者: 佐藤三行
第1章 地上襲撃大隊発進!
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第2話 地上襲撃大隊発進!

キエフ要塞西方約50km ドイツ空軍ジトームィル飛行場




 「第18装甲師団から爆撃要請が出た」


司令官は言った。彼の目の前にはルイスたち地上襲撃大隊員たちが整列している。


「敵装甲車両120両と交戦中、Tー34及びKVー1なども確認、至急航空支援を要するとのことだ」


司令官はルイスたちを見渡すと、続けてこういった。


「第18装甲車師団は50両のⅢ号戦車を有するものの、Tー34に対抗可能なIV号戦車はわずか10両ほどだ。キエフ要塞攻略に不可欠な装甲師団が打撃を受けると今後の作戦にも支障が出る。」






Tー34中戦車。そしてKVー1重戦車は、独ソ戦初期において無敵を誇った。特にKV−1の重装甲を前にして、ドイツ軍ははいかなる戦車砲・対戦車砲も無力であった。フライパンをスプーンで叩いたような音とともに、弾き返される。


ドイツ軍がこの化け物を倒すことのできる方法は、105mm以上の野砲以外は地雷ぐらいであった。


砲兵支援を受けられなかったドイツ軍は、機銃弾が飛び交うなか、10kg以上もある対戦車地雷を抱え、車体の中に投げ込む。


市街戦ならまだしも、平地での戦車への肉弾攻撃は、成功できる確率は極めて低く、攻撃をかけた歩兵が無傷で隊のもとに帰れる確率は無きに等しいものであった。


15kgに達するかという地雷はもつ歩兵は、戦車に搭載されている重機関銃の格好の餌食であった。数名の勇敢な歩兵が塹壕を飛び出し、前進中の戦車に攻撃をかけようとしても、十歩も歩かないうちにその場に折り重なって倒れてしまうのだ。






 司令官は地図の貼っている石版に歩み寄り、この飛行場とキエフ要塞の中間地点を指揮棒で指し示す。


「貴様ら45機は即時発進、戦闘機30機の護衛の下、ソ連戦車大隊を襲撃、撃破せよ。地点要塞より西方5〜10km。以上である。武勲を祈る」


ザッっと一糸の乱れもない敬礼のあと、隊員たちは早くも出撃準備の完了した『シュトゥーカ』の整列する滑走路に向けて駆け出す。それぞれの機体に取り付き、そしてコクピットに飛び込む。


 黄色と黒の格子縞の旗が振り下ろされた。


ルイスがコクピットの風防ガラスを閉め、ブレーキを外すと、機体はスルリと滑らかに動き出し、滑走を開始した。そして操縦桿を手前にゆっくりと引くと、機体はふわりと浮き上がり、視界がぐるりと下にさがり、続いて抜けるような青空が下がってくる。




 現在、『バルバロッサ作戦』の優劣は、大きくドイツ側に傾いていた。


 開戦初頭、ソビエト国境に集結していた300万のドイツ国防軍は、独ソ不可侵条約を破棄し、ロシア領内になだれ込んだ。ドイツ国防軍は、レーニングラード攻略を目的とする北方軍団、白ロシア地域を占拠すべく進撃する中央軍団、そしてウクライナの奪取を目標とする南方軍団の3つに分け、


南方方面──キエフ・セヴァストーポリ両要塞の陥落を目標とし、


「少佐、敵装甲車大隊を発見、我軍と交戦中であります」


地上を白い尾を引きながらアリのように戦車が走り回る様子が上空からも視認できる。ルイス少佐は、護衛のメッサーシュミットに撃墜され、火を吹くYak-1戦闘機を横目で見ながら後部座席に座る偵察員兼機銃手のアクセルに命じた。


「全機に通達、攻撃開始」




そして、『シュトゥーカ−』45機はソ連戦車列にむけて一斉に急降下を開始した。

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