お泊まり会その3、海鷺家編
大雨の影響で、土砂崩れや通行止めなど
通学できない状態になり、一週間の休校。
外出禁止の学生たちは、それぞれ自宅待機となった。
そして…翔の家に誰もいないという、翔一人きりを心配した、幼馴染であり親友の健、健の家族が心配した結果、
なぜか、翔の家に泊まって過ごすことになった。
翔は、別に一人でも大丈夫だったのだが、
高校だろうと停電や万が一を考えて、
健のお母さんが翔の母に電話し、母も心配性なので、すぐに承諾したそう。
健と二人で、一週間は過ごすのか?
いくら親友でも、翔は一人の時間が必須である。
翔を思って健は、一階のリビングを借りて
ゲームをすることに。
もちろん、時間を決めて勉強もするつもりだとか。
翔はというと、自分部屋で音楽を聴きながら作業をしていた。
もちろん勉強。
朝が苦手な翔も、早起きして洗濯や掃除、
家事などもこなす。
まるで主婦のようだと自分でも思う翔でした。
翔「まだ朝の10:30なのに、外暗いな…
いつまで雨降るんだろう?
道が川になってるし…」
ノートを閉じると、一階に降りる。
健の様子を見に行くと、ゲームではなく
勉強をしていた。
真剣に悩みながら勉強に向かう健を見て、
微笑みを浮かべる翔。
台所へいき、飲み物を出す。
翔「おつかれさま。頑張ってるね」
健「おー!サンキュー!
ここの問題が最後なんだよ、課題がもう少しで終わるのによ…なんか意味不明なんだよこの問題…」
翔「どれ?あぁ…俺も結構悩んだやつだ…
でも、気づいたんだけど…この問題あんまり悩まなくていいみたい。」
健「ん〜…あ!なるほどな!
わかったぜ!サンキューな翔!」
やっと二人とも課題を終えた。
でも…休校から、まだ2日目だ…いや、3日目か。まだ火曜日だ。
やることがなくなった二人は、
リビングの床に寝そべり
普段なら親に怒られそうなくらいダラダラとしていた。
健「なんかいいな…こういうのも。
うちはさ、だらだらしてるとさ
母ちゃんがすぐ、ほら!怠けてると
頭がバカになるよ?ってさ。
うちの家族は明るいけど、ちゃんと厳しいから俺は気が休まんねーわ( ̄▽ ̄)」
翔「そっか…俺はリビングでは一人の時以外は家族の前でだらだらしたことあんまりないかも。兄ちゃんがたまーにだらだらしてたことはあったかも…」
健「あはは!お前の兄ちゃん優しいしケンカ強かったからな〜あんまりそんなイメージなかったけど!てか、そんなでお前の親怒らねーのか?」
翔「うちは、母が優しいし、父は無口だから特に何も言われなかったかな。」
健「確かに…お前ん家静かだもんな( ̄▽ ̄)
俺さ、ずっと気になってたんだけど…
お前の実家ってここじゃねーの?」
翔「え?…あぁ、お店のこと?
実家はここだけど、店と合体してた頃は
家が若干狭いから、別々にして本店は東京の渋谷にあるんだ。だからここは普通の家。父さんも母さんも、子供たちが窮屈なのはかわいそうだからって立て直したって。
後から兄ちゃんに聞いた。」
健「そうだったのか…まあ、ここは東京なのに都会じゃねーしな。ってそこはかんけーねーよ!お前の兄ちゃんいま、店注いでるんだよな!?俺、まだ行ったことねー」
翔「うん。後継ぎと言っても、父は経営をたまに手伝ってるくらいだし、元々は祖父のお店だから。んで、祖父に兄ちゃんから店注ぎたいって言ったんだ。それに…
見つけるのは大変かもだけどね…うちはラーメン屋だけど、都会に何店舗もあるからね。一応、こだわり醤油ラーメン店だから、名前は「ラーメン海鷺」で出してるよ。赤と黄色の模様だから」
健「聞いただけですげー歴史だなお前のうち。今度行くわ!」
勉強に雑談とあっという間に時間は流れ、
本当にすることもなくなった。
翔「健、家にいてくれるのは本当に助かるし頼りになるから嬉しいんだけど、
家の方大丈夫?帰らなくて平気?」
健「そりゃあ、母ちゃんが行ってやれって言ったんだから、心配いらねーと思うけど…さすがに…俺の部屋放置だから埃被るとか嫌だな…ちょっと片付けだけしてくるわ!」
翔もわかったとお互い納得したうえで
そういうと、翔の家を出て自分の家に帰った。
翔の家は静まり返り、静かになってしまった。俺も手伝おうか?というも、自分のことだからとカッコつけてで言われてしまったので、翔はしばらく一人で待つことに。
翔「あ、これって…」
翔が見つけた広告に、前話した
全国の不良学生が集まってボランティア活動をする合宿広告のお知らせだった。
翔「絶対いかない…」
一人になった翔は、しばらく音楽を聴きながら歌を口ずさんでいた。
もちろん小さな声で…
漫画を読みながら、歌を歌う
いつもそうして来た。
やっぱりリビングより、自分の部屋が落ち着く。
健が戻ってきたら、なんて言うだろうか…
でも、ここは自分の家だから何言われても文句を言われる権利はない。
ま、健は優しいからそんなことは言わないだろう。
なんて、そんな事を考えながら
漫画を1ページ、また1ページとめくっていた。
PM 14:30
健はおそらくまだ片付け中だろうか?
漫画を読み終えて、音楽を止めると
台所へ降りて行き、頑張ってる健に何か作ろうと決めた。
ミックス粉があるから、ケーキかドーナツ
どちらにしようか…
焼いた方が手間はかからない。けど…
翔「どうしようかな…
シロップもあるし、チョコは…少しだけか…よし、ふわふわのパンケーキ作ろうかな」
ミックスや卵、牛乳、すべて混ぜる。
油を塗って…
フライパンで焼く。
カチカチ…カチッ!
ジュワー…
時間を測って…
ピピピ
翔「できた。バターは…健が来てからの方がいいか…溶けちゃうもんね。」
PM 15:20分
ガチャッ
健「終わったぜ!翔!
ん?…てかめっちゃいい匂いすんだけど!」
翔「あ、健 おかえり。
おやつ作ったんだけど食べる?」
健「食べるー!!!」
バターやお好みでかけるシロップを添えて
健「いただきまーす!!!」
翔「どうぞ。」
健「んーーーぅまーー!
動いた後だから(もぐもぐ)しみるぜ〜」
翔「それは良かった^_^
おつかれさま。」
健「ンま お前、いい奥さんになれるぞ!」
翔「何言ってんの?…俺、男だから。」
二人で、3時のおやつを食べて
まるで、子供の頃に戻ったみたいに
懐かしい空間と健の変わらない、美味しそうに食べる顔は、あの頃と同じ。
そして…片付けの話に。
健「部屋は、そこまで汚れてなかったんだけどさ…なんか…前に見た広告があった。
全国の不良が集まってやる合宿の。
今見ても、ぜってー行かねーもん」
翔「それ、俺も見つけた。
健が家を出てから、この辺のもの片してたんだけど…また広告入ってて。
もしかして、うちの街不良多いから?」
健「いや、多分…全国の不良だから
多分、俺たちみたいに学校サボって遊んだり、夜にバイクで走ったり、コンビニの前で屯してたりしてる奴らの、ストレスとか不安?とか人のために何かすることで発散するとか…そういうんじゃねー?
」
翔「そういうもんなのかな?…
俺らはサボって遊んだりしてるけど、
ストレスか…あるっちゃあるけど
他の不良とケンカになったりするの嫌だな…」
健「だよな…実際ケンカとかあんのかな?
主催してる人の名前と写真記載されて
あったけど。
普通に優しそうなおっさんだったぜ?」
食べたものを片付けながら、
合宿の話をする。
ずっと入ってくる広告と、なぜか
自分たちも呼ばれているかのように感じてしまったのだ。
健「でも、参加費は無しで強制じゃないから別に関係ねーけどさ。
俺も面倒ごとは嫌だし、翔は繊細で敏感だからそんなとこ行ったら、お前ストレスと不安半端ないだろ?」
翔「うん。」
健「よし!この話はおしまい!!
ゲームしようぜ!夕食まで時間あるし、
片付けしてたら懐かしいゲーム見つけたんだよ!テレビに繋ぐタイプのやつ!」
翔「うわ、ずいぶん古そうだけど、
いつのだろう?
?これ、小学生の頃に健の家で遊んだやつ?」
健「んー…お!そうだな!
これ、翔が苦手な操作があって苦戦してたやつ^_^」
翔「いいよ。今はできるようになってるかな?」
二人仲良く懐かしいテレビゲームをして、
なぜか途中で翔の操作ミスによりゲームオーバーになり、拗ねる翔
健が笑って、子供か!ってツッコむ。
また楽しい思い出が増えていく。
夕食の時間になるので、ゲームを片付けて
二人で作ることにした。
お互い家の手伝いを少々してるぶん、料理もまあまあできる。
今晩は、「肉じゃが」「ほうれん草のおひたし」「野菜炒め」+ご飯と味噌汁×2人分
翔「 いただきます。」
健「いただきまーす!」
翔「うま!健の作った肉じゃが美味しい」
健「そうか!そりゃあよかったぜ!
んー!うま!翔の作った野菜炒めもうまいぞ!」
夫婦じゃあるまいし、なんて平和で
2人なのにこんなにほっこりするんだろうか。
健「俺さ、将来嫁にするなら翔みたいな奴と結婚してーな。」
翔「何言ってんの!だから、俺は男だって!」
健「そういう意味じゃねー!w
お前みたいに、人のために何かできるとか
家事ができるとか、いいなって思ったんだよ!」
翔「なにムキになってんの?
ったく…そうだね。俺も、繊細だから優しい人でわかってくれる人と結婚したい。
健みたいな」
健「褒めんなよ〜!って俺は男だーー!!」
翔「そっくりそのまま返す!」
変な言い合いをしながら、夕食を食べ終え
片付けま済ませ、お風呂に入り
また、くだらない話をしながら眠りにつくのだった。