お泊まり会その2、海鷺家編
昨日は初めて学校に泊まりになったが、
色々ありすぎてヘトヘトだ…。
それもこれも全部大雨のせい。
雨は一向に止まず、アスファルトを叩きつけるかのように強かった。
昨日から休みだが、大雨の影響で土砂崩れが発生し、一週間は休校とのこと。
各自、自宅自習と外出禁止命令の連絡が回ってきた。
そう、こんな大雨の時に、翔の父と母は
外出中でいないのだ。
父は仕事の都合にて出張中、母は、田舎に住む祖母がぎっくり腰とのことで、
翔は一人きり。
兄は都会に住んでいるが、この雨の影響では帰って来れないだろう。
雨が少しだけ弱くなったかと思うと、
一本の電話が。
電話の相手は、健だった。
内容は、「お前の家、今おばさんもおじさんもいないだろ?だから、母ちゃんも心配しててさ…翔くんの家に泊まってあげたらどうかしら?だってよ。俺は構わねーけど、俺が行かなかったら、母ちゃんが来るだろうから…めんどくさいことになりそうだからさ、俺が行くから、」とのことだった。
電話から、数分後
チャイムが鳴る。
こんな雨の中来るやつはそういない。
幼馴染であり、家が近い俺らくらいだ。
健「いや〜家近いのに飛ばされるかと思ったぜ…。あ、これ母ちゃんからの差し入れな!」
翔「ありがとう。今バスタオル持ってくるから、あ…良かったらお風呂入る?
風邪ひいたら大変だし…」
ただいま夕方の18:30
ちょうどいい時間だ。
健「おー!サンキュー(^ ^)
じゃあお言葉に甘えて!」
健がお風呂に入ってる間に、バスタオルや
必要なものを諸々用意していた。
そして、健がお風呂からあがると、
お前も入らないのか?と翔はきょとんとした。どういう意味合いを持つのか、漫画やアニメの見過ぎで頭がどうかしたのか…
健「ん?俺なんか変なこと言ったか…?
いや…ほら、大雨だしさ万が一停電とかなったら入れねーじゃん?俺先入ったし…
俺だけわりーじゃん。」
翔「あぁ…そうか。そういう意味か…
俺の考えすぎか。」
健「そういう意味って?」
翔「な!なんでもないよ。
俺も入ってくる」
翔もお風呂に入って、二人で夕食に。
未だかつてこんな景色は漫画の世界以外ありえない…
幼馴染二人で、どちらかの家に泊まって
まるで、ずっと一緒に暮らしてるみたいな空間。
翔は考えるのをやめて、食器や箸、
手際良く準備を終える。
健「お前相変わらずはえーな?
店のウェイターみてー!」
翔「そうかな?…いつも家の手伝いしてるから慣れただけだと思うけど…」
健「偉いじゃん!俺なんか帰ったら手伝いしねーで、部屋でゲームしてっからな!
んで、ご飯の時間なのに降りて行かねーから、母ちゃんがきて、「あんた!勉強しないでゲームしてたの!まったく、高校生なんだから、将来ろくな大人になれないわよ!」って言われて、すぐ勉強しようとしたら、まずはご飯食べてからでしょ!って
家の中で大騒ぎ。」
翔「健も相変わらずだね…。
おばさんも心配なんだろうね。」
健「そりゃあさ、もぐもぐ…
俺だって、わかってるよ。母ちゃんが心配してる事。けどさ、学生なんて一回きりじゃん?だからさ、今を楽しみたいっつーか学生にしかできない事をして、お前とか周りのダチとかとバカやったりさ、たくさん笑ってさ、やりたいことやりてーじゃん。
母ちゃんの心配もわかるけど、俺もやるときはやるよ。あーむ…もぐもぐ」
翔「学生にしかできないこと…か。
そうだよな…学生は終わったらそれきりだもんな。」
健「だろ?^_^だから、母ちゃんになるべく心配かけねーように勉強も頑張るからさ!もちろん、わかんねーところはお前に聞くけどな!な!先生!」
翔「俺頼りかよ!てか、先生じゃない!」
笑って、怒って、
夕食を食べて、話して、
おかずは、おばさんが心配してくれたものだけど、かけがえのない時間をくれる。
それだけじゃない、包み込まれるような温かさ。
健が心配して、懐中電灯や水など
色々持ってきてくれたこと、心配して
ずぶ濡れになりながら俺の家に駆けつけてくれたこと…
自分を犠牲にしてでも、誰かのためならまっすぐなんだよな。
俺の幼馴染は本当に頼りになる。
ただいまの時刻は、
PM 21:15分。
片付けも終えた二人は、やることがなくなってしまい、寝る場所は翔の部屋に決まったが…することがなくなった。
テレビを見ても、大雨のニュースばかりで
新しい情報もまだのようだ。
健「雨すげーな…
これ止むのかな?学校の近くが土砂崩れで通行止めらしいし…一週間か…すぐ終わりそうで長そう?…」
翔「止むといいけど…。
あ、そうだ。健、勉強する?」
健「え?…マジで?この状況で?
マジで言ってる?」
翔「マジで言ってるけど。
だって、こういう時しかできないことって言ったら…寝るか、ボードゲームとかで遊ぶか?勉強?しかないじゃん?」
1分間の沈黙の末、
じゃんけんで決めることに。
翔は、勉強。
健は、ボードゲーム。
勝った方の項目をやる。
じゃんけん!
翔「ぐー!」
健「チョキ!」
健「だぁ〜〜〜〜!!まーげーた〜」
勝ったのは、翔、
腹を決めた健は大人しく翔に勉強を教わりながら頑張ることに。
健「この範囲まだ終わってねー…
翔は半分行ってんの?
やっぱ努力か〜」
翔「健だって、勉強できないわけじゃないでしょ?最近、点数上がって来てるし。」
健「そりゃあ、お前に教えてもらったから
わかりやすく覚えられたんだよ!
あの担任の教え方が下手なんだよ!
はい!あとわかるなーがんばれー
だぞ?わかるかー口で説明しろよ」
翔「たしかにあの先生は、説明より
範囲教えて終わりだからね。情報少なすぎて…
健、これ終わったらこの後ボードゲームしよう!」
健「え…?(´・ω・`)いいのか?
俺負けたのに…」
翔「俺もボードゲームしたいし、健と遊べるのってこういう時しかでしょ?
まあ、サボりのときも遊んでるけど…」
健「お前、本当にいいやつだな〜(>Д<)」
翔「おい!抱きつくなよ…!」
わちゃわちゃな時間、青春。
小さい頃から変わらない俺たちの距離と空間、時間、
あたたかくて、ちょっぴり変で、
笑ってしまうくらい楽しくて、
大切な幼馴染であり、親友。
雨がこのまま止まなければなんて、
変なことを言ってしまいそう。
時刻は、PM 23:50分
健「もう寝たか?」
翔「いや、まだ。」
二人はまだ眠れそうになく、
静寂漂う部屋に響く雨音。
健「そういやぁさ、こうして二人で長い時間過ごすってなんか懐かしいよな。
たしか…保育園だったけ?今日みたいに
大雨でさ、何人か泊まりになって」
翔「そう言えばそんなことあったね。
あれって、保育園のバスが通る道が川になったんだよね?一本道だったから帰れなくて。」
健「そうそう!んでさ、帰れないってわかった時のお前がさ、泣きそうな顔しててさ。繊細な翔にとって家に帰れないとか不安しかなかっただろうからな。」
翔「うん。不安で、今にも泣きそうで
でも、人前では泣かない!って変なプライド持ってて…小さい体だから歩いても帰れないし、そしたら健がずっとそばにいてくれたんだよね。ずっと、俺の手を握ってくれて、」
二人の昔の話をしながら、
懐かしい気持ちに浸り、雨の音が音楽を奏でて聞こえてくるように
思い出話はつづく。
健「あんときは、みんな子供だからさ
紙芝居みたりして、一部の子は泣いて。
俺らは大人しく折り紙してたもんな…
あん時って何折ったんだっけ?」
翔「折り紙やったね^_^保育園だから…
簡単なやつだと思うけど…
チューリップだったと思う」
健「あー!チューリップか。」
翔「ほんと、懐かしいね。
雨が上がってやっと帰れて、」
二人は、懐かしいねと話している間に
ウトウトと眠気に襲われ、そのまま眠ってしまった。