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光の冒険者〜セカンドライフはなにをする?〜  作者: 樋原けい
プロローグ
2/4

第二話 ちょっとついてない

ピピピピ!ピピピピ!

俺はスマホのアラームで目を覚ます。


「…う〜ん、まだ寝たい…。」

アラームを止めて、もう一度夢の世界へ。


普段ならこんなこと滅多にしない。今日は特別だ。



「なつのひ〜!早く起きないと遅刻するわよ〜!」


一階から大きな声で俺を呼ぶ母の声がする。


「…はっ!しまった!寝過ぎた!」


俺はベットから飛び起き、急いで身支度を整える。


外では鳥の囀りが聞こえる。

カーテンを開くと朝日が眩い。


「ちっ!この俺が寝坊だと?!まぁ落ち着け、まだ時間は…」


そう言って俺は手元のスマホで時間を確認する。


「ふぁ!!!!やばい残り7分でホームルームが始まる!

ふぅ、落ち着け、今から飯を食わずに家を出て、その後、信号に引っかからずに学校へ直行。学校について時間があったら靴を履き替える、無理だったら靴下のまま教室へ。よしっ、なんとかなる!」


頭の中で学校までのプランを立て早速実行。

ホームルームは開始は8時半。

急いで階段を降り玄関へ!


「母さん!行ってくる!」


「ちょっと〜そんなに慌てて事故らないでねぇ!いってらっしゃ〜い!」


「はいはーい!」

そう返事をする。

俺は靴の踵を潰したまま勢いよく外へ出る。道すがら靴の踵を直し全身全霊で学校へ向かう。


「まったく、大丈夫かしらね〜。滅多に寝坊なんてしないのに。あら、今日の占いあの子が最下位だわ〜。不吉ねぇ」


母がそう口にする。


全速力で通学ルートを走る。


「はぁ、はぁ、!おれは、おれは、遅刻だけは絶対にしない!」


夏飛がこれほどまで頑張る理由。

彼が唯一にして学校生活最大の楽しみ。それは皆勤賞。


毎学期、通知表の欠席数が0と書かれているのを見るのが楽しみなんだ!


家ならゲームに漫画、テレビに食べ物、なんでもある。

ただ学校生活はと言うと?

友達もいるにはいる。勉強も中の上くらい。困ってることなんてない。

それ故に目標もない。

元々努力するのが苦手だった。と言うよりは努力しなくてもそれなりにできてしまうから、努力することに慣れていなかった。


部活は皆んな目標に向かって精進している。

俺にはちょっと眩しすぎるかな。ってことで入らなかった。


俺ができる最大限の努力とは毎日遅刻しないことなんだ!

しょうもない?なんとでも言え!


「くっ!まずい、青が点滅し始めている!こうなったら少し距離は遠くなるが回り道していくしかないか、大丈夫だ、まだ4分ある!自分を信じろ!」


そう言って俺は路地裏を通り、反対側の横断歩道を渡り学校へ向かう。

道中、鳥のフンがバックに落ちてしまったが今はそんなこと気にしていられない。


「くぅっそぉー!」

大通りで大声で叫ぶ高校生は嘸かし不気味に映るだろう。


「はぁはぁ…なんとか着いた。あと1分。上履きを履いてる時間はねぇ」

そう言って急いで階段を登る。

俺の教室は二階。


ガラッ。俺は教室の扉を開ける。

まだホームルーム前、仲の良い友達同士が複数人でまとまって談笑している。


あっぶねぇー!


キーンコーンカーンコーン。

俺が着席すると同時にチャイムが鳴る。


「夏飛、今日はやけに来るのが遅かったな、なんかあったのか?」

そう尋ねてくるのは俺の数少ない友人の一人、神津陣。

彼はとんでもなくいいやつで陰陽誰とでも分け隔てなく接する。

その為彼の周りにはいつも人がいる。


「あぁ、ちょっと寝坊しちゃって…」


「なんだ、寝坊かよ…まぁ何もなくてよかったぜ。そんで、急いでたから靴も履けなかったってことか」


「そういうこと」


少し雑談していると担任の山野さんが教室に入って来た。


「おい!結城!どういうわけか知らんがお前の父親が倒れたらしい!今、病院に向かっているらしい。お前もすぐに向かえ!」


とんでもないことを口にする。


マジかよ。朝っぱらからついてねぇ。どういうわけかわからんって、それ一番まずいやつだろ。連絡入れたのが母さんなら納得だが。


「えぇ…えぇ、じゃあ失礼します!」


「急いで行って事故んなよ!」


「あぁ、はい!」


まだ頭の中で整理できてないが、取り敢えず病院に向かう。

ここから病院までは距離にして10キロ。

俺は体力がないから走って一時間弱。情けねぇ。


「はぁはぁ。さっき走ったばっかだからもう疲れた。」


プルルルルル。プルルルルル。

母さんから電話がかかって来た。


「あっ。なつのひ〜。父さん倒れたって言ったけど、大したこと無そうなのよぉ、だから学校が終わってからでいいからねぇ、最悪来なくてもいいわよぉ。それでねぇ。父さん最近飲みに行ったでしょ?その時飲めないお酒を目一杯飲んじゃったみたいなのぉ。それで肝臓やられちゃったみたいねぇ。今日一日様子見で入院してればいいみたいだから私も夕方には帰るわねぇ。来るなら連絡ちょうだいねぇ。じゃあね〜」


そう言って電話を切られた。

俺が何か応える前に。


「ははっ…もう結構走っちゃったよ…」


何はともあれ親父に関しては心配無用のようだ。

なんだろう、ちょっと釈然としないけど無事ならいいか。

俺はこのまま学校に戻らないといけないと思うと憂鬱になる。


「また学校まで走んないといけないのかぁ。…あ〜もう!このままサボっちまうか!?あぁ?!」



結局、学校に戻って来た。俺の信念を舐めないでいただきたい。

この程度のことで俺の皆勤賞を奪えると思うなよ?


「はぁ、疲れたわ。」


時刻は10時半過ぎ。

先生に親父の体調が心配ないことを伝え、授業に向かった。


(おい、大丈夫だったのか?)

神津が俺に聞いてきた。


(あぁ、なんか心配して損した気分だったよ)


(お、おぅ、ならよかった。…そうだ、帰りカラオケいかねぇか?今なんか行きたい気分なんだよな)


(カラオケか?あぁ、いいよ。…行くしかねぇなぁ!)


俺もちょうどこの気持ちを歌にしたいところだった。

NICEだ神津!

こいつは誰とでも仲良くなれるって言ったけど、こういうさり気なく気を使えるところが大きいんだろうな。


今日の授業も終わり放課後。


「ゆーちゃん!かーえーろ!」


楓が声をかけて来た。


「すまん、今日神津とカラオケ行くっていっちまったから悪いけど一人で帰ってくれ」


俺は断った。


「えぇ〜この私を置いてくの〜?」


「なんだ?一緒に行くか?」


「ふーん。いいよーだ、私も寄り道して帰るもーん」


「気をつけてけよ」


「うーい」


なんだよ「うーい」って。

まぁ一人じゃないだろう、心配なし。


俺は神津とカラオケで二時間ほど歌い続けた結果、喉を壊した。

声出ない。悲しい。


「ぞれじゃぁかぇるか」


「お前、声枯れすぎだろ。大丈夫か?」


「しんぱぃむょぅ。こんなの、ねれ、ばぁなぉる」


「それならいいんだけどな。夏飛、お前俺より点数低かったから奢りな」


「!?…あだりまえだ!もぢろんはだゎぜていだだく。おどこににごんは、なぃ!」


(ちっ、混乱に乗じて勝負のことなんて忘れてると思っていたがしっかり覚えてやがった)


ちなみに俺が89点。


神津が100点。


いや、無理じゃん。


ーーじゃあ俺からな!


って言って100点だもんな。あの時単純にこいつのこと殴りそうになったもん。こいつとか言っちゃいけないけどこいつめ、って思ったもん。


「しゃあ!ラーメン食いいこうぜ!」

夕飯奢り。あまりにも高校生すぎる勝負に負け、俺はラーメン奢りという結果に。


「らーべんね。はぃぁい」


ラーメンを食って家に帰った。

味噌ラーメン美味かったな。


声枯れて〜飯を奢って〜家帰る〜懐寂しと〜想い寝る夜〜




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