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街を散策します

「こいつはまた……増えたのが全て転移者か」


 私が今居る場所は最初の街、輝白竜の街と呼ばれる街の北門をくぐって直ぐの所、紆余曲折を経てようやく到着した。

 本当…………にっ! 長かった。


 おそらく最も遠い開始地点に現れて、恐る恐る街へ向かい移動を開始したら戦闘中のドラコンに出会し、そのドラコンの家に行き、貰っても困るグレードの装備を貰い、お昼をご馳走になり、徒歩で街までやって来た。

 

 ログイン初日から盛り沢山で面白いと言えば面白いけども、濃過ぎだよ。


 あーでも、お昼にご馳走になったうどんは美味しかったな。

 茹でたうどんに塩漬けの乾燥肉を削ったものを振り掛けて、った生姜と刻んだネギを乗せてから混ぜて食べたんだけど。

 乾燥肉の塩気と旨味が良い味をしていたんだよ。


 ビーフジャーキーとかで代用したらリアルでも似た物に 仕上がったりするのかな?

 今度やってみようっと。


 それで、お昼を食べた後は街へ行く事にしたんだけど、貰った装備は使わないで初期装備で行く事にしたんだ。

 そしたら不知火さんが自分も街へ行くと言い出したんだよ。


 食材が減ったから補充するのと、転移者の状況を確かめると言っていたけど、本音は全く違っていた。


 私が歩いて行くのを頑として譲らなかったの、そしたら不知火さんも歩いて行くと言い出したんだよ。


 これって送り狼……じゃないや。

 私が頼り無いから心配で安心できないからだよね?

 私自身は初戦闘で負けて死に戻りも仕方無しと思っていたから、心配は的中していた可能性が高いね。


 あ……そうか。

 不知火さんが居たから陽が暮れてすぐ位の時間に街に着いたんだ。

 私1人だったら、もっと時間が掛かっていたはずだよ。


 不知火さんが一緒だと動物一匹遭遇しないんだよ。

 魔力を不断に放ちつつ歩いていたから逃げちゃっていたんだろう。


 お蔭で安全だったけど……本音を言えば1回位は戦闘をしてみたかった。

 しかしなんでそんなに私に対して過保護なんだろう?

 なんで気に入られたのか見当も付かないんだよ、マジでなんでなのかな?

 分からぬよ。


 分からぬけども、ここいらで不知火さんとは暫しのお別れ。

 私は街の中を見て回ろうと思う。

 陽が暮れて間もないから閉店していないNPCのお店も、まだまだ沢山あるだろうし。


 どんな施設が何処にあるのかを知っておかないと後々の苦労になってしまうだろから。


「それじゃ、私は街を見て歩くね」

「まぁそうくな。中心地までは共に行く」


 それが良いのかな?

 不知火さんは何度も此処へは来ているみたいだし、冒険者ギルドみたいな場所と図書館の場所、それからお勧めのご飯屋さんを聞いておくのが良いかな。


「ねえねえ、冒険者ギルドって何処にあるの?」

「冒険者ギルド? なんだそれは?」


 冒険者ギルドは無い?

 いや、もしかしたら違う言い方をしているのかも。


「なんでも屋みたいなのかな、雑用から採集の代行とか危険排除の依頼をこなしたりとか、そんな感じの仕事を斡旋してくれる所」

「それならば斡旋所か商業ギルドだな」


 不知火さん曰く。

 日雇い、もしくは巡回探職労働者と呼ぶらしい。

 巡回探職労働者って……と、取り敢えずは横に置いておこう。

 兎に角、各種下働き・採集・討伐・護衛・警備・調査等々の金銭もしくは高額な品が報酬の短期の仕事は商業ギルドが管轄との事。


 そして、やはりランクが存在するそうだ。

 貢献度・ステータス値・人柄等でランク分けをされている。

 ランクは大まかに分けると金銀銅の3つ、そしてそれぞれが1~5の等級に分かれている。

 だから全部で15段階ある。

 

 ランクアップの仕方は公表されている。

 銅ランクは誰でもなれる。

 等級を上げるには貢献度、依頼の数をこなせばいい。

 

 銀ランクになるには銅1等である事と、3つ以上のステータス数値が装備上昇分込みで100以上である事。

 等級を上げるにはステータス値を上げて行くと共に貢献度も更に上げる。


 金ランクになるには銀1等である事と、その人の人物評価によって決まる。

 等級を上げるには、貢献度・ステータス値・人物評価を上げる。


 このシステムだと銀1等までなら誰でも辿り着く仕様だね。

 でも金ランクは明暗がハッキリと別れそう。

 精査基準が性格・人格・素行な訳だから、常識の無い言動をする人は除外対象だから。

 個人的には良いシステムだと思う。


「貴様は日雇いになる気なのか?」

「それもやってみるよ。他にも色々とやってみるけどね」

「そうか」

「うん♪ 後、図書館ってあるのかな? 本がいっぱい置いてあって自由に読んで良い場所」

「書籍院ならばあれだ」


 不知火さんの指差す方には木造二階建ての周りの建物と比べて窓の少ない建物があった。

 パッと見、陰気な感じがする。

 建物が古く地味な色の外壁しているから?

 軒先が異様に長く建物に陽が当たってないから?


 なんなしても陰気で不健康な印象だね。


「古い建物なんだね」

「元々は母上の昼寝屋敷だからな」

「はい? 昼寝屋敷?」

「そうだ、雨風を気にせず眠る為に作ったらしい」


 ……何も言いません。

 何を言っても最後には呆れそうだから。


「そ、そうなんだ……そうだ、不知火さんはこの街でご飯を食べた事はある? お勧めの美味しいお店とかある?」

「む?……今は南東区画の『火掌ベアリ』と言う店が美味いな」

「かしょう?」

「火にてのひらと北方文字で書く」

「燃えてるの!? 手が?」

「いや、高温になるだけだ。立ち上る陽炎が燃えている様に見えるだけだ」

「へぇ、その手で調理するの?」

「うむ、技術も素晴らしいのだろう。納得の行く物を出して来る」

「べた褒めだね! 近いうちに行ってみるね! あっ!………お金無いや………」


 戦闘を一切してないからドロップ品も剥ぎ取り品も何も無い、売る物すら持って無い正真正銘の無一文……

 クエストこなして稼がないとね。


「……金はやらん。が、これをやる」


 そう言って渡して来たのは、朝顔の葉っぱみたいな形をした真っ赤なフリスビー位の大きさお盆みたいな物だった。

 あれ?

 お盆からちょっとだけ魔力が出てるみたい。


「これは俺様の古くなり生え変わった時に抜けた鱗だ。これを売れば多少の足しになるはずだ」

「え? いや……」

「俺様の縄張りでは落ちている物だ、目を付けられる事はないはずだ」


 飛行中にも抜け落ちる事も多々あるそうなんだ。

 それを探しに森へ入る人も居るそうだから、極端に希少品って訳では無いそうだ。

 だからと言って、ほいほい見付かる物でもないから、それなりの値段で売れるそうなんだ。


 これは抜けた鱗だし、偶然拾う事も十分有り得る物だから遠慮無く貰っても良いね。


「うん、ありがとう♪」

「うむ! これでストレージが整理出来る」

「ふぇ?」


 ザザザザザザ


 って待てコラ!

 何枚寄越す気だ!

 

「ちょっ! 多過ぎ!」

「遠慮するな貰っとけ」

「いや、だから多過ぎだって!」

「ふん! ストレージ1区画分999枚だけだ、全部やらんだけましだと思っとけ」

「なんぼ有るってのっ!?」

「8000枚程だな」


 途方もないな……まぁあの巨体で、このサイズの鱗なら生えてる枚数も途方もないだろうし、どれ位の期間を経て生え変わるのかは知らないけども、相当な数が抜けてるはずだから妥当な枚数だったりするのかな?


 にしてもだ!

 999枚は多過ぎだって!

 と、反論した所で聞く耳を持たないドラコンだからな。

 言うだけ無駄だね。

 1枚売ったらストレージの肥やしに決定。


 ・・・

 ・・

 ・

 その後、中心地に着いて不知火さんは馴染みの店に食材を買いに行くと言って別行動になった。

 私は中心地を隅々まで眺めている。


 街の中心地は真ん中にあるオベリスクを中心に広場になっている、広さは……西新宿の駅前くらいはあるのかな?

 兎に角、無茶苦茶広い訳じゃない。


 そして広場には沢山の人が行き交っていたりたむろしていたりしている。

 ここに居る人達の何割位がプレイヤーなんだろうか?

 一様に同じ格好をしているので見分けが付かないんだ。

 

 皆始めたばかりで4等級の初期装備だから仕方無いのだけど……あっ!

 オベリスクの付近で人が光ながら現れた。

 その人も初期装備だな。

 初期装備のその人は光が治まると辺りをキョロキョロと確認し始めた。

 と、言う事は死に戻りしたんだね。


 成る程、あの辺りが死に戻りの場所なのか……凄い目立つ場所なんだね。

 あ、死に戻りした人に近付く人達が?


 あぁ、そうゆう事か。

 同じく死に戻りをした御一行さんみたいだね。

 肩を叩いて慰めたり、話を聞いて頻りに頷いて同意したりしている様に見える。

 ああいったフレの作り方もあるんだね。

 参考になるなぁ。


 さてと、他の場所も見に行ってみようかな。

 広場には商業ギルドと斡旋所があるのが分かったし、他にも店舗は有るけど高級感が漂っているから、私には無縁の店と断定しちゃおう。


 私には南東区画に多くあると言っていた庶民的な店とか露店がお似合いなのさ。

 それに朝市みたいなマーケットも南東区画にあると言っていたし面白そうだしね。


 ・・・

 ・・

 ・

 南東区画を十字に横切る中規模の通りを曲がって少し行くとマーケット場になっていると言っていたけども……

 おぉっ! 凄い!

 南東区画の広場まではまだ有るのに、通りの両サイドは露店で埋め尽くされている。

 勿論、露店の後ろにある店舗の出入口には露店は無いよ。

 

 本当に凄い数だよ……あれ?

 露店は沢山あるんだけど、料理を扱っている店はないね。

 何でだろう?

 分かんないけど、お腹はまだ空いてないからいいか。

 それじゃあキョロキョロ物色しながら進もうかな。


 ・・・

 ・・

 ・

 あっちから~

 こっちから~

 あそこから~

 そこからも~

 美味しそうな匂いが漂って来る~♪

 南東区画の広場は調理品と食材の露店の坩堝るつぼだった。

 串焼き・串揚げ・タコス・キッシュ・揚げパン・砂糖菓子・ジュース等を売る店が沢山ある。

 

 各店舗でオリジナリティを出している様で同種のお店なのに漂って来る匂い違う。

 全部食べてみたいよ!

 お金無いけどね!


「そこの黒髪の転移者のお嬢ちゃん。1つどうだい?」


 私の事?

 辺りに黒髪の女性は見当たらないし、店主さんは私の方をにこやかに見ているし、私かな。

 その呼び掛けに応じてフラフラ~と近寄って売っている物を見ると……


「フルーツポンチだぁ♪ とっても綺麗だね♪」


 赤・白・黄色・ピンク・青?・緑?・黒?……リアルじゃ見た事も聞いた事も無い色のフルーツも混じっているけど、甘い香りが今食べなきゃ損とばかりに食欲を刺激する。


「はっはっはっ、そいかい? ありがとよ。で、1つどうだい?」

「あ、うん……お金無いんだよね……でも、でもね、売れる物は持ってるんだよ?」

「何を持ってるんだ? 物によっちゃそれと交換でも良いぜ」

「本当♪ えっとね、これ!」


 ストレージから例のぶつを1枚取り出して店主さんに見せた。

 そしたら店主さんは渋い表情をした。

 なんで?


「これとは交換出来ねえな……いったい何万貫するんだ?」


 通貨単位は貫なのかな?

 貫の下には銭があったりするのかな?

 なんにせよ日本の古い通貨単位をチョイスしたんだね。


 それよりも。


「えっ! やっぱり拾った物じゃ駄目だった? 安過ぎる?」

「違う違う逆だ逆、高過ぎるんだ? これ1枚で何杯食える事か……少なくても1000や2000は食えるな」

「ええーっ! そんなには食べれないよ!?」

「いやいやいや、そんなに残ってねえよ。満タンでもそこまでねえし」


 むぅ……こうなってくると食べたい欲求は増すね。

 何か良い方法はないかね?

 

「なんにせよだ、どっかで換金してきてくれや」

「商業ギルド?」

「商業ギルドなら確実だな」

「むぅ……戻って来るまでに売り切れたりしない?」

「残っている! と言いたいけど保証はできねえな」

「むぅ……私はどうしても今日食べたい! 今食べたい! そうだ! 採算度外視で鱗1枚と交換で良いよ!」

「いやいやいや、それは俺が困る。ぼったくったと噂が立っちまうだろう」

「むぅ……」


 別にお腹が減っている訳じゃないけども、カラフルで甘い香りとフルーツの爽やかな香りが目と食欲を多大に刺激してしまっていて、諦めると言う選択肢を無くしてしまっている。

 そんな私は、お店の迷惑も考えずに大鍋に入っているフルーツポンチとにらめっこを始めてしまった。

 

 あぁいかん、よだれが……


「よし! 分かった!」

「ふぇ?」

「そこまで気に入ってくれたんなら、今日のところは1杯タダでやろう!」

「ふぇぇぇ! い、いいの?」

「ああ、だが!」

「だが?」

「味も気に入ってくれたなら、また買いに来てくれ。その時に2杯分の代金を貰う。それでどうだ?」


 マジか!

 それは嬉しい!

 つか、おじさん格好良いじゃないか!

 惚れちゃったらどうするんだ!?

 え? なに?

 もしかしてナンパされてる?

 新手の口説き方なの?

 

「お嬢ちゃんどうした?」

「ふぇ? あ! いや、うん、何でもないよ」

「そうか? で、どうすんだ?」

「勿論有り難く貰うよ♪ そんで、また絶対買いに来る! それと、いろんな人にお勧めしちゃう♪」

「はっはっはっ、お嬢ちゃんの分が無くならない程度にしとけな」

「勿論!」


 

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