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新作です!
初日はドキドキですね~
どれくらいの人が読んでくれるのか・・・
20人位居たら御の字かな?
ピチャピチャと足音を立てて一昨日から降り続く雨の中を急ぎ足で歩いていた。
授業が終わり、進学し新しく出会い仲が良くなった友人にされた『期末試験前だし最後にはっちゃけよう』と言う誘いを断り家路を急いでいた。
ただ断るんじゃなく理由をちゃんと言って断ったよ。
1年位前に注文した物が今日届く、遊びに行っても気になって仕方無いだろうからと言って納得してもらった。
実際、今日は授業中は気も漫ろだったからノートをとっていないんだ。
まあ今日は期末試験前の復習みたいな授業だったって言っていたから大丈夫だったはず……大丈夫だよね?
あっ!
今日も雨の中道路工事してるんだ……ご苦労様です、風邪引かないように頑張って下さい。
と思いつつ角を曲がる。
さぁ、後少しで到着だ。
・・・
・・
・
「ただいまーっ! お母さんっ! 宅配便届いてる!?」
「何ですか! 帰って早々に騒々しい!」
「ご、ごめんなさい・・・」
なにさ、お母さんだってじゅうぶん大声じゃない。
「宅配便はないわよ」
「えっ!?」
「宅配物はあるけどね♪」
くっ!
揚げ足取りを・・・
確かに宅配便は運ぶ人達の事だから間違ってはいないけどさ、態々揚げ足を取るのは意味は通じているからだよね?
からかいたいから、意地悪言いたいからだよね。
いつもみたいにここでムキャーとなると、売り言葉に買い言葉が連発し始めて長くなるから我慢だ私。
「あら、今日は大人しいのね。宅配物はリビングに置いてあるわよ」
「分かったー♪ありがとー♪」
「こら! 走るんじゃありません! 荷物は逃げないから」
逃げないのは知ってる。
でも、今この瞬間に空き巣が入り込んでいて盗もうとしているかも知れない。
約1年も待って、ようやく手元に来た最新鋭のゲーム機を盗まれでもしたら数週間は廃人同様になる自信がある。
それくらい待ちに待った待望の品なんだよ。
そのゲーム機はラノベやアニメなどでお馴染みのフルダイブタイプのVR機器なんだ。
メーカーの方はじゅうぶんな数を確保してから販売をしたかったと言っていたみたいだけど、1台に掛かる生産時間が従来型と比べて異様に掛かるらしく、数の確保を諦めて確実に販売出来る台数を1万台と定めて去年の初秋に予約を開始したんだ。
数量限定で予約受付開始となると起こりうる事は1つだよ。
未成年の私ですら予想の付く事だもの。
予約上限の1万台は10分と掛からず達成したそうだよ。
メーカーの方も1万じゃ少な過ぎる事は分かっていた、だから予約の期間を1週間と決め応募者の中からランダムに選定すると告知していたんだ。
それでも選定は大変だったんじゃないかな。
応募者総数は500万件を越えていたそうだから。
1台20万円を越える値段なのに500万件の予約申請があったのには、初のフルダイブ機器と言うのもあったけど、もう1つ理由があったの。
VRのゲームって、そのリアルさを体験するゲーム、只のフィールドを移動する物が最初に発売されるもんじゃない?
このメーカーはそれをしなかったの。
最初から大作RPGを開発していて。
『広大なフィールドを自由に動き回り、蔓延る魔物の退治、数多有るクエスト、未踏破地帯の冒険、地球には無い地形絶景、他にもクラフト専門、採集専門、行商、店舗を買い開店、村・街造り、建国、国の乗っ取り等々を楽しんで下さい』
と言ったキャッチコピーで宣伝していたのが拍車をかけたみたいだよ。
かく言う私も、そのキャッチコピーの冒険と絶景に釣られて購入を決めた1人なんだけどね。
それでも500倍以上の倍率の中で当選するなんて思ってもいなかったんだ。
気分的には何年も先までの運を使った感じだよ。
未来の私に幸あれ!
そうこうしてリビングに入って見た物はデデーンと鎮座する巨大な段ボール箱、体育座りをした私がスッポリ入っても余裕が有りそうな箱・・・
こんなでかいの?
1人で持てるかな?
「それ、あんまり重くないわよ。私も持てた位だからね」
「そ、そうなんだ・・・」
と言われても俄には信じられないけども・・・取り敢えず持ち上げてみよう。
んを!
本当だ軽い!
10キロのお米とあんまり変わらない重さだ。
でも、これを持ち上げて2階まで行くのは気を付けないとな。
重くはないけどサイズがサイズだから、どこかにぶつけて階段から転げ落ちましたは洒落にならないよ。
「そうそう、約束は覚えてるわよね?」
「うん、成績を呆れる程落とさない。だよね」
「分かってるなら良いのよ」
私の両親は学生の本分は勉強と遊ぶ事と普段から言っているの。
勉強なんてものは生きている限り、し続けて行かなきゃならない事だから、今のうちから習慣付けないと駄目だけど遊ぶ事も大事。
遊びでしか体験出来ない事や身に付かない事もある。
そして何より遊ぶ事で柔軟な思考を身に付ける事が出来る。
そう言っていたんだよ。
そう言えば『男遊びは止めといた方が良いぞ』と発言して、台所から物凄い勢いと速度でやって来たお母さんに振り抜くグーパンチされて、リビングのテーブルに顔面をぶつけて『前と後ろが痛い………』と言っていたお父さんが印象的だったから忘れる事はないと思うよ。
とまぁ、そのお陰でテストで70点、10段階評価の成績表で7以上を取れていれば細々(こまごま)とした事を言われないから楽で良いんだよね。
さて、何とか転ばずに部屋まで持って来たから、早速開封だ!
・・・
・・
・
中身は本体・ヘッドフォンとゴーグルを合体させたような物・マットレス・・・はい?
本体とゴーグルは分かる。
ラノベなんかでも良く出て来るからね。
マットレスはなんで?
取説に書いてあるかな?
・・・成る程。
ゲーム中は寝ている訳じゃないから寝返りを打たないので床擦れ防止の為と、最初に私の体型を読み取る為に使用するのか。
そりゃそうだよね。
ゴーグルだけで体型を読み取るのは不可思議でしかないからね。
身長やスリーサイズを入力したとしても座高や腕の長さまでは入力しないじゃない。
なのに再現できるのは平均から算出しているのだろうけど、個体差は考慮に入れてないよね。
現に私は腕が平均よりずっと長い、私より身長が10センチ位は高い人より長い事も有るくらいなんだから。
それを平均値で自動作成されたら違和感マックスだったろうな。
良し!
マットレスについては理解した。
次は本体だ。
本体は長方体の箱、飾り気も無い、色も黒一色、上面と思われる面には、中央にデカデカとしたボタンがある。
側面には主電源とUSBが3つとインターネット回線を繋ぐあれがある。
この上面のボタンは何だろう?
ヘルプミー取説さん。
・・・ふむふむ、緊急呼び出しボタン。
成る程、これを押してログイン中の私に用が有ると伝える為のボタンなんだ。
うんうん、これは良い物だ!
コンセントを抜かれたり、ゴーグルを外されて訳も分からない状態で現実に戻されるのは怖いからね。
不慮の事故なんて事が絶対に起きないとは言えないんだしさ。
こうして見ると、ユーザーの事を第一に考えて作られている様にみえて良いね。
それじゃセットアップしてみますか。
・・・
・・
・
ゴーグル部分に充電を少ししないと起動しないみたいだ。
なら、お母さんに呼び出しボタンの事を伝えてこよう。
おっと、ついでにトイレも行ってこようっと。
・・・
・・
・
私の方は準備完了!
充電の方は・・・フルじゃないけど使用可能状態のランプが点灯している。
ではゴーグルを装着!
ん?
これは着けてみたらわかったけど、縁の部分はおでこしか密着しないんだな。
側面や下の方は隙間が出来ていて全く圧迫されていない。
遮光の為だけに付いているみたいだ。
中央のガード部分は目のある辺りがメッシュ状になっていて向こう側が見える使用になっている。
耳も完全に覆うんだけど、うっすらと外の音が聞こえる。
家の近所でやっている道路工事の音が聞こえるから間違い無い。
完全に外界とシャットアウトする訳じゃなくて多少は繋がりが有る状態なんだね。
どうしてその使用にしたのかは分かんないけどね。
それじゃマットレスに横になってゴーグルの電源をオン。
お、ガード部分の内側が少しずつ光だした。
光量が最大になるとメーカーのシンボルマークの交差する双葉が表れてシステムチェックが始まった。
それが終わると。
『システムチェック完了。マットレスの密閉を解除します………解除完了。脳波・身体の計測開始、計測中は皮膚と皮膚を出来うる限り接着させないで下さい………計測完了。ログインを開始しますか? YES/NO』
ふおぉ!
密閉解除されたマットレス凄い!
解除される前も厚さが5センチ位はあって、低反発素材に寝転がっている様な感じで体にフィットしていたんだけども。
解除されたらフィット感が消えて水に浮いている様な浮遊感がある。
だけど体の何処かが不自然に曲がっている感じは無くて旋毛から足裏まで真っ直ぐ伸びている感じ。
これを毎晩使っていたら姿勢が良くなりそうな予感がする。
次の計測は、ほんの一瞬体がピリッとしたけど別段なにかがあった様な感じはしなかった。
多分、ピリッとした時に微弱な電流を流して膨大なデータを収集したんじゃないかな?
密着させないでと言うのが理由かな。
電流を体全体に満遍なく行き渡らせ
、尚且つ皮膚を伝い電流を他の部位に流させない様にして1度で計測を済ませたかったんじゃないかと思うのだ。
YESを選択してしたログイン………これはちょっと口では言い表す事が難しい。
私のボキャブラリーが足りない訳じゃないと思う。
最初はゴーグルの内側の光量が増えた様な気がしたんだけど、意識が途切れるのと同じ感覚があったの。
だけど意識が途切れる事は無くて、マットレス効果であった体の浮遊感が増して、何かに横たわっている感じがしなくなったの。
そして光量が増えた感じがしなくなると辺りは真っ黒な空間の白い床に立っていた。
白い床は直径が2メートル程の円形をしていて黒い空間に浮いている様に見える。
それを確かめる為に膝を着き黒い部分にも床が有るのかを確かめてみた。
すると、黒い部分には床が無く端から覗きこんで見ると床の下も真っ黒だった。
しかも白い床には厚みが無く真横から見ると床が消えて見えると言う不思議な現象を目撃した。
これがVRならではの事象なのか………なんでも有りなんだね。
『ユーザー様、お気を付け下さい。落下による死亡はありませんが、落下感や落下による恐怖感などは再現されています』
「え? あ、はい」
メインで書いているのが別作品になるので、この話は基本的に不定期になります。
ですが、きりの良いところまで書いてありますので、週一で投稿していきます。