ゼラニウム
「俺が美肌で悪いのか」2012年11月16日、ピクシブ公開。
「鈴木さん、肌綺麗!」
「どうしたんですか?」
「くださいよ、その美肌」
いじられキャラで職場では有名な、鈴木正直がサロン・ドゥムンに通い始めたら、美肌になっていたらしく、本人よりも同僚さん達が先に気がついた。
サロン・ドゥムンは古い住宅街の昔は歯医者さんだった建物をリフォームしている、オーナーの名前は諏藤かやさん。大きな看板はない。敷地内にサロン・ドゥムンの要項が書かれたボードが、イーゼルに乗せられている。
鈴木の営業先に向かう途中にあるので、ドゥムンをたまたま知っていたが、もうくたくたで、もの凄く疲れたと、そんな時に思い切ってドゥムンを訪れた、それは最良の選択、本人はここ最近の運をそこに使ったとさえ言う。
カラン
何しろ、予約とかしなくても、ふらりと行けば、そのまま施術してくれるのである。
腕がいいのに、予約がいらないと、予約しないのは、結構駄目な客であるが、疲れた、限界だ!というのは、前もって察知出来るものではない。
「いらっしゃいませ」
元気のいい娘が受付にいる、この元気さが若さなのかなと思うと、少し悲しくはなるが、彼女はこのサロンの受付係。
「鈴木様、これをお使いください」
施術用の着替えとロッカールームの鍵を渡してくれる。部屋着のようなリラックスした格好をしたら、施術を行う部屋に向かう。
詳しくは知らないが、たまにオーナー以外のマッサージなどもあるらしく、そのための部屋らしい。
(腕がいいなら、試してはみたい)
コッ
珍しく他の人が、この建物で初めて会う男の人が向こうから来た。
「こんにちは」
男の方から挨拶してきたので。
「こんにちは」
と返事を返す。
ニコ
男は微笑んだが、男は男に微笑えまれてもなと、正直は正直思った。
「私もここのスタッフでして、いつもはいませんが」
「あっ、そうなんですか?」
「修業しているので、いつもはいないのですが、よろしければいつでもどうぞ」
名刺をいただきました。
「それでは」
一礼して、名刺を見ながら歩くが、名刺には名前と住所とメルアドレスしか書いてなくて。
(営業としては落第点だな)
と思った。
さあ、今日はどんな天国だろうと、いつもの部屋に入ると。
「しばらく鈴木様には通っていただきましたので、スペシャルといいますか、おそらく今日からちょっとびっくりする違いがわかると思います」
「えっ、そうなんですか?」
「最終的には生活の改善することが、健康には一番なので、鈴木様はちょっとした改善をアドバイスしましたら、ほとんど行ってくれましたので」
「いや、そんな」
「こういう方は、私の宝だと思います」
そう言われると、とても照れた。
寝転がると、恐ろしいほど睡魔に教われるベットに寝ると、後はオーナーにされるがままである。
温かいタオルを顔に当てられて、毛穴を開くために蒸され、それが終わると、ペタペタと毛穴の汚れを吸着する泥パックが始まる。それを洗い流し、保湿しながらマッサージ。
このマッサージで小顔になったらしい、四月の自分の写真と、この間免許更新した写真が、指一本分顔の大きさが違うのだ。
フットバスに移動し、ぽちゃんと足を入れる、アロマの事は知らないけども、前に俺が必要としている香を探してくれて、その精油が入っている、俺の香りはゼラニウム、気落ちしている時に効くらしい。
実際、ここ店に始めてきたとき、営業先で叱られたりと、身も心も参っているときであった。
優しい、いい香りがして、右足をタオルで巻かれ、左足からフットマッサージをされる。
多少痛みを伴った方がすっきりはするそうなのだが、せめてマッサージぐらいは気持ちよくなりたいので、痛みは無しの方向で伝えている。
そのせいか、痛みはない。
あれだ、耳かきとかで寝てしまうっていうのがあるが、あれだ。
全てを任せられる、それがサロン・ドゥムンのクオリティ。
「鈴木さんの美肌は無駄だよね」
「私にその肌くれっていうの!」
そうお弁当の最中に話していた同僚を見たら、もちろんサロン・ドゥムンの事は教えない、絶対に!




