ダメ鈴木
さらに倍!2015年8月25日、ピクシブ公開。
「すいません、マッサージを頼みたいんですが」
いつものようにだめな客、予約なしでサロン・ドゥムンに飛び込んだのは、鈴木正直。
「いらっしゃいませ」
入り口で出迎えたのは、いつもの人ではなく、元気いっぱいの娘さんだった。もちろん、見たことない人だ。
「ええっと」
「受付しますよ」
「あっ、あのいつもの」
「お姉様のお客様ですね」
…お姉様
内線をかける。
「お客様です、はい、わかりました」
やりとりの後。
「どうぞ、こちらが着替えになります」
マッサージを受けるために、着替えを渡されるのは普通なのだが、スタッフなのだが、まだ慣れないので、ちょっと心に距離が出来てる。
着替えをして、マッサージを行う部屋に案内される。いつものオーナーの顔を見たとき、凄くほっとした自分がいた。
「いらっしゃいませ」
「マッサージをお願いします」
「はい」
さっき受付にいた彼女が、足湯のお湯を置いていって、そのまま受付に戻ったのか、足音が遠ざかった。
足を湯の中に入れる。
チャポン
音とともに、足の血流が良くなっていくような気がした。
「水を差しますと、足湯をしたからって、何とかなるというものではないようです」
「そうなんですか」
「血流は脳とか、そちらの方から来ているようですが、足湯はリラックス出来ますからね」
「それはそうですね」
「はい、このような仕事をしてますと、回転率を考えるように言われますが、それだと、あまり意味がないような気もするのですよ」
ここで俺はリクライニングをガタンと倒して、目をつぶりながら。
「この気持ちよさがなかったら、やはりここには来ないかもしれません」
「そういっていただけると、嬉しいです」
足を湯の中から引き上げて、きちんと指の間まで拭かれて、タオルでぐるぐると巻く。
「色々な考えの方がいてもいいと思いますが、腕がいいということが大事ですね」
「ここみたいにですか?」
「私なんてまだまだですよ」
「ドゥムンより、上があるんですか?」
「ありますね」
そこを知りたかった。
いや、ドゥムンの常連ですよ、常連ではありますけど、やっぱり気になるじゃありませんか、そんなに上手だったら!
「マッサージというのは、何万の人を揉みほぐすと、腕がつきますからね」
「何万ですか」
何年かかるんだろう。
「私が知っている人だと、十万人という人がいましたね、その方より年は上の方はいますが、正確な数がわからないのか、数字で話をしている人はいないですね」
「すごいですね、そんなに揉めるんだ」
「才能もあるとは思いますが、才能があるからといって、それを商売にしているかまでは」
「限らないと…?」
「そうですね」
グリグリ
「はっ!」
「痛いですか」
「ハイ!」
「いつもと同じ調子なのですが…」
今日の鈴木はダメ度がさらにアップ、そんな鈴木の癒やし、サロン・ドゥムン。場所?場所は教えんよ、電話?電話はないよ。
俺が癒されなくなるじゃないか!