第5話 新スキルは使えるの?!
井戸で水を汲むのってこんなに大変なのか。
すぐに使う分だけ持って行ったが、オレが他に手伝えることはないので水をもっと汲んでおく事になった。
飲み水はもちろん、特に洗濯は川が近くにないので井戸を使わなければならない。
井戸の桶はちょっと大きめのバケツくらいで1回5〜6L汲めるとしても、子供が多いから洗濯だけで20Lは使うだろう。
洗剤が無い世界だから、すすぎはいらないとはいえ大変だよな。
『そりゃあ風呂なんて絶対ムリだ。薪もたくさん必要だろうし……』
異世界でポンプとか作るのを見るが、一体どうして構造を知ってるんだろう。
マンガの主人公って凄いなといつも感心しちゃうよ。
『オレにはムリだけど、ここにスマホがあればなぁ……』
スマホがあればインターネットのグー◯ル検索でポンプの構造を調べられる。
『実はヤ◯ーの方がよく使ってるけどね。ネット検索出来たら便利なのになぁ』
グー◯ルが有名になってからは、ヤ◯ーを使う人は少なくなったようだが、パソコンで検索する時は、未だにオレより上の世代には愛用者が多いんだよね。
『ブァン』
目の前にパソコンと同じ画面で、ヤ◯ーのトップニュースが現れた。
『マジかよ……』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夜が明けてから1時間以上は経っただろうか。
ガヤガヤと子供たちのはしゃぐ声が聞こえる。
子供たちはよそって貰うスープに釘付けで、中には指を突っ込もうとして年上の子供に叱られてる子もいる。
その年上の子もヨダレがスゴいけど……
「今日は美鈴さんと和馬さんが来て、朝食を作ってくれました。お祈りをするまではガマンですよ〜」
ニャミーさん『ガマン』の言葉に手を引っ込めて、膝の上でグーを作りながら顔だけ器に近づけている。
匂いだけでも楽しみたいんだろうなぁ。
「あれじゃあ、鼻からベロが出ちゃいそうだね」
「ちょっと薄味だけど、美味しく出来たと思うよ♡」
尻尾をブンブン振っている子供たちを見ながら、オレも奥さんもお預けをされている姿を見て微笑んで見ていた。
「お行儀が良くなくてすみません……」
そういうニャミーさんの尻尾もブンブン振ってる。
オレと奥さんは、お互いに顔を向けるとクスっと笑い合った。
「……神様、今日も食事を頂ける事に感謝します。それでは食事をいただきましょう。」
一斉に13本のスプーンがスープシチューに飛び込んだ。
「「「「「おっいし〜〜〜♡♡♡」」」」」
子供たちはガムシャラにスープシチューを頬張って、硬くて美味しくない黒パンも今日は美味しく食べてくれてるようだ。
「お代わりはたくさんあるからね〜」
奥さんの声と同時に空の器が13個現れた。
「お行儀がが良くなくてすみません」
そう言うニャミーさんだったが、嬉しそうに涙ぐんでいた。
「ニャミーちゃんも食べて食べて!」
頷いてスープを口に運ぶと
「ん〜〜〜♡♡♡」
声にならない声を上げていた。
「お口に合ったようで良かった〜」
「ちょっと薄味だけど、元の世界で食べても美味しいよ!流石美鈴ちゃん!!」
高齢のシスターも嬉しそうに食べていて、ニャミーさんは驚きながらそれを眺めていた。
「本当に美味しいです! こんなに深い味わいのスープは初めて食べました!シスターイザベラがお代わりするなんて初めて見ました」
高齢のシスターは人族で、イザベラさんというらしい。そういえば子供たちも猫獣人や犬獣人、人族とバラバラだ。
「そんなに大した事してないよ。やっぱりコンソメかなぁ。あと、胡椒も結構入れちゃったし」
「ちょっとだけピリッとしてて美味しいね。子供でもこれくらいなら大丈夫だね」
ニャミーさんは目の中を縦長にして驚きながらこちらを見ているけどやっぱり猫獣人なんだなぁ。
「胡椒!! そんな高価なものがはいってるんですか?!」
「うん。量が多かったから結構使ったけど、でも小さな子供もいるから、そんなに驚くほどは入れて無いよ」
「でもそんなに高価な物を……」
「やっぱり胡椒は高いんですか?」
この世界では胡椒は貴族か余程の金持ちしか使わないらしいから、庶民で使うのは大きな祝い事があった時だけみたいだ。
『胡椒売ればお金になるかもな』
オレがそう思っていると、ニャミーさんは隣で食べている奥さんに質問していた。
「あとコンソメってなんですか?胡椒はムリですが、また子供たちに作ってあげたいんです」
「コンソメはお肉と野菜を煮詰めれば、近いものが出来るよ!」
フンスと聞こえるように、ニャミーさんは両腕を曲げてガッツポーズをしていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
片付けが終わると、奥さんに近づいて新しいスキル?の話をする。
「美鈴ちゃん、どうやらヤ◯ー検索が使えるみたい」
「スゴいじゃん! 何でも調べられるの?」
「とりあえずいくつか調べてみたけど、元の世界で使ってたのと同じだね」
「でも何を調べるの?」
とりあえずポンプを作ってあげたいことと、この教会の為に何かしてあげたいことを伝えた。
「そっかー、和馬も色々考えてくれてたんだね」
「美鈴ちゃんが頑張ってるのに、オレはあんまり役に立ててないからさ……それにニャミーさん達がかわいそうで……」
「和馬は優しいね!」
「美鈴ちゃんほどでは無いよ……」
問題はロンド商会の嫌がらせと食料の事だけど、ニャミーさんに残った胡椒が売れる所はないか聞いてみたら、小さいがもう一つ商店があることがわかった。
このホフマン商店の主人は、人が良すぎる為お店を大きく出来なくてあまり高くは買い取ってくれないみたい。
そのため町民は仕方なくロンド商会を利用しているらしい。
奥さんはロンド商会はムカつくから行きたくないと言っている。
『とりあえずホフマン商店に行ってみよう』
やっぱり異世界では胡椒が高価なようです。
和馬のスキルはどう活躍するのか、奥さんはどうなるのか?
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