表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

第2話「朝食 一組目」

ようこそ。

「ふぁぁ……」


 目を覚ました俺は、

 窓から見えるほんの少し顔を覗かせた朝日を確認すると

 ベッドから降り、しっかりと歯を磨いた後、

 顔を洗う。


 鏡にみえる自分の顔をみつめると、

 残った頬の傷も少しずつ薄くなっていた。


(いい加減、諦めろってことなのか、爺さん)


 俺は一回に降りると

 泊り客2組の朝食の準備を始める。


 今日の朝食はコカトリスの目玉焼き{体力+30%添え)

 ミノタウロスの肉を挟んだステーキサンド(攻撃力+40%)

 毒キノコとしびれ草の簡単スープ(毒、しびれ耐性+50%)


 目玉焼きは挟んでもいいように

 焼き加減を聞いてから焼く。


 ステーキは肉の熱を冷ましてから、

 アルミゴレームの石を叩いて作ったアルミホルムで軽く蒸し焼き。


余った分は昼飯の弁当に詰めて渡す。


(まあ、こんなもんだろ)


 下処理を終えた俺は食堂のテーブルで宿泊客が出てくるのを

 ハーブコーヒー(リラックス+30%)を飲みながら待つ。


 ドアの開く音と少し甲高い声。

「あんたが早く起きないから」

「あのベッドで寝て、早く起きれるなんて無理よ」

 一組目の新人冒険者パーティ、蒼き閃光のソードフィッシュ(Eランク}

 の二人だろう。


 台帳には二人の名前がこう書かれている。

 閃光にして疾風 ロザミア・コシタン(Eランク)。

 その魔法は光すら撃ち抜く サキ・ヨミキ(Eランク)。


 ズブ濡れで一泊と入ってきて、

 風呂(リラックス+60%)の用意をしてやった時も

 風呂からあがってきたときに同じようなことを言っていた。


「おっ、起きたか」


 俺はコーヒーを飲み終えると

 用意しておいたスープボウルに毒キノコとしびれ草のスープを注ぐ。


 二人は顔を輝かせながら、

 席に着いた。


「「これ、私達の分ですか?」」


 まじまじと見つめる二人に俺は少しだけ微笑んだ。


「ああ、あんた達の分だ。お代わりもあるからゆっくり飲めよ」


 この世界の朝食の大半はパンと水。

 それに一品とデザートついたら上級階級。


 俺みたいにスープをつけるやつはまずいない。

 スープは下ごしらえまで時間もかかるし、

 何より調味料がいる。

 こいつが高い。

 王族でもスープは夜食に飲むのが限界だろう。


 ス-プボウルを恐る恐る手にとった二人はゆっくりと口につける。


 正直、寸胴にしこたま作ってあるから、

 いくらでも飲んで構わない。


 こういう料理は大鍋で大量に作るから意味がある。

 さらにいうならコクもでる。


「「おいしい!!」」(二人に毒、しびれ耐性+50%の効果発動)


 がっつくように二人は飲み干すと口を揃えてこう言った


「「おかわり!」」


 俺はからになったスープボウルにスープを注いで

 次の料理をどうするか聞く。


「目玉焼きは半熟派、両面しっかり焼く派か?」


 二人は苦虫を噛み潰したような顔で俺をみつめている。

(ああ、こいつらよくわかってねえな)


「俺のオススメで出してもいいか?」

 二人は顔を見合わせ、頷きあう。

「「お願いします!」」

 合唱した。


 俺のオススメは半熟。それをステーキサンドに挟み

 ステーキソースを少しかけて思いっきりかぶりつく。


 肉の舌触りと黄身のとろみが口のなかで

 ダンスを繰り広げる。


 ワインを使ったステーキソースは若干の甘みを残し、

 下味をつけて焼いた肉の塩味とよい反応を起こすだろう。


 二人に説明してやると涎をテーブルまで

 垂らしそうな雰囲気で頷き合っていた。


 正直、照り焼きソース案もあったが

 それは弁当用に回した。


 二人の前にステーキサンドを置く。


 間に野菜を挟むのを好むやつもいるが

 しばらく置いた肉と黄身の柔らかさとコクが負けてしまうと思い、

 肉と目玉焼きだけにさせてもらった。


 肉はほんのりあずき色の赤身肉を選んでいる。

 サシの入った肉も悪くはないが、

 サンドウィッチや厚みを求めるならこっちのほうが美味いと思う。

 食べてみれば、

 噛んだ瞬間の肉のスッと噛みきれる歯ごたえと

 喉を滑る快楽は納得するはずだ。


 二人は宝物でもみるような目で俺をみている。


 ここで冗談でも待てと言おうものなら

 こいつらは泣くだろう。


 俺もそこまで鬼ではない。


 俺は頷きこう言った。


 「ミノタウロスのステーキサンドコカトリスの目玉焼き添え、食ってくれ」


 刹那、かぶりつき絶頂したような目で虚空をみる二人を確認した俺は

 おかわりの準備をしに食堂へ戻った。


 それから数分後、

 土下座せんばかりの勢いで俺に跪き、皿を上に掲げた二人はこう叫んだ。


「「おかわりをお願いします、ご主人さま!!」


 二人の主人になった覚えはないが

 焼き終えたステーキを外面だけカリッと焼いた食パンに載せる。


「あんまり食いすぎるなよ」


 二人は皿に載った重みを目で確認すると

 大急ぎでテーブルに帰っていった。


 彼女たちが食いきることはないと思うが、

もう二、三枚ステーキの準備をしておいたほうが良さそうだ。


また会える日をたのしみにしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ