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亀に転生しました  作者: よっけ
33/50

第33話 試験

「あのときは流石に死んだと思ったな。敵の懐に解毒剤が無ければそのときの仲間もろともアタシは土の下だ。あの頃はヤンチャし過ぎた。若気の至りだ」

「バーバラさんはまだ若いですし、なんなら今でもヤンチャして死に掛けてません?」

「バーバラさんとは今回の依頼で初めて知り合ったけど、無茶してる光景が見えるようだ」


 バーバラ、メリー、レイがそれぞれ頼んだものを食べ終え、何かの話に花を咲かせていると先程受付をしてもらった人が席まで近付いてきた。


「大変お待たせしました。準備ができましたので、バーバラさんはこちらへどうぞ」


 どうやら準備ができたらしい。受付の人がらお呼びの声がかかった。


「すみません。少し疲れてしまったので私はこの辺で失礼します。バーバラさん、クインスさん頑張って〜。明日どうなったか教えて下さいね」


 メリーは先に帰るようだ。お金らしき硬貨を机に置き、席を立った。確かにそろそろ日も落ちて暗くなる。夜道で変な輩に絡まれないよう早めに帰った方がいいだろう。


「では、僕もお(いとま)させてもらいますね。今日はお疲れ様でした。話したいことがあるので明日も同じ場所で集まりましょう」


 レイも帰るようだ。同じようにメリーより少し多くの硬貨を置くと席を立つ。


「わかった。2人ともお疲れ様だ。今日は助かった」


 きっと2人とも連日俺を探すために動き回っていただろうので疲れていたのだ。レイは疲れを見せなかったが、メリーは少し眠そうだった。

 バーバラは2人を見送った後、俺の入った檻を持ち上げ、受付の人に続いて運んでいく。そろそろ《念話》を繋いでおいた方がいいだろう。意思疎通が遅れて余計なことをしたくない。


『指示は具体的に言ってくれよ? 俺はお前らが言ってることが何一つわからないんだから』

(そんな心配しなくても普通の魔物に対して行う試験なんだからすぐ理解できるような簡単なやつしか出ないだろ)


 そう言われれば確かに意思疎通の取れない魔物ですらクリアできるように設定されているのだ。人間の頭脳を持った俺が苦戦するはずがない。試験という言葉に敏感になっていた。


「着きました。ここで試験を取り行います。冒険者ギルドの職員とお抱えの冒険者が念のため周りを固めていますが、あくまで保険です。その魔物が暴れたときは、バーバラさんがなんとかして下さいね」

「ああ、わかった」


 俺は武装した人が周りを取り囲んでいる場所で檻から解放された。圧迫感で一瞬、檻から出るのに尻込みしたが、よく見れば何人かは怯えている。急に試験を行うこととなり無理矢理召集されたのだろう。少し申し訳なく感じる。今回に限って危険は無いので安心して欲しい。


「バーバラさんこれが試験の内容です。読みながらパートナーに指示を出して下さい。私は指示にちゃんと従っているかどうかを離れた所から評価します」


 受付の人からバーバラに紙が渡される。受付の人はそれを渡すとそのまま離れていってしまった。バーバラは渡された紙を読むと俺の前にしゃがみ、右手を出してきた。


「お手(右手をアタシの左手に置け)」

『はいよ』

「おかわり(左手をアタシの右手に置け)」

『はいよ』


 なにか見覚えのあるポーズである。しかし、疑問を覚えてもきちんとやり遂げなければ俺に自由はやってこない。


「ちんちん(二足になって腹を見せろ)」

『そ、そんな無茶な! いきなり難易度高過ぎるだろ! 尻尾を使ってバランスを取ればいけるか?』


 俺は右手で勢いよく地面を押して上体を浮かび上がらせる。このままだと甲羅を下にしてしてひっくり返ってしまうので尻尾を支えにして辛うじてバランスを取る。俺の骨格はこんなことができるようにできていないので今にも後ろに転びそうだ。この体制は数秒間だけでいいだろう。こんな体制を続けられる気がしない。

 尻尾で体を支えていたが、身じろぎしたことでバランスを崩し、ついに後ろに倒れた。この動きは周りから見れば相当間抜けに見えるだろうので流石に恥ずかしかった。すぐに左右に体を揺らして勢いをつけることで起き上がる。そして何事もなかったような顔をした。幸いにも笑いは起こっていない。それどころか感心したような様子さえ感じた。


「魔物にあのような弱点を晒すような動きをさせるとは相当な信頼関係を結んでいるのだろう。出会って間もないと聞いていたが、バーバラさんはどうやって……」

「あの様子ならもう大丈夫なんじゃないか? 怪我をしていて周りを武装した人が囲んでいるのにも関わらず暴れる気配を見せない。大した信頼だ」


 周りがこそこそとなにかを話している。話の内容が良いものであることを祈る。笑っている奴がいたら後日、隠れておちょくりに行っていたかもしれないが、どうやらいないようで助かった。問題を起こさないで済む。

 

 そしてそれからも俺は試験とは名ばかりの芸のようなものをいくつかこなした。正直どれも二足になるほどは難しくはなかった。試験の内容は魔物の種によって変えた方がいいと思う。もしかすると指示を完全には守れなくても、守ろうという意思が感じられれば評価には繋がるのかもしれない。


(次で最後だ。そこを動くなよ)

『えっなんだよ急に?』


 バーバラからの言葉から不穏な気配を感じ取る。何故かこれから何をしようとしているのか具体的なことを言ってくれない。そして訳も分からぬうちにバーバラが剣を振り上げる。


「ふっ」

『おいおいおい。ちょっと待って!』


 バーバラが剣を振り下ろす。俺の鍛えられた目には迫る剣がくっきりと映る。バーバラは明らかに本気を出していない。それでも剣はしっかりと速いし無防備に頭で受ければ余裕で致命傷だ。


『寸止めしてくれるんだよな! そうなんだよな!』


 俺は急いで頭に魔力を集中させる。ここで完全にバーバラを信用できていれば格好良かったが、生憎俺は小心者だ。これで何かの間違いでバーバラの手が滑っても、俺は無傷で済む。見た目には何の変化もないので問題ないだろう。

 バーバラの剣がしっかりと目の前で止まった。心臓に悪過ぎる。全く動じていない振りをするのはしんどかった。


(よくやった。これで試験は終わりだ。自由に町を歩けるぞ)

『何でよりによって肝心な最後だけ口足らずなんだよ! 怖いだろうが!』

(お前ならアタシが本気でないことぐらい分かると思ってな。それなのにお前ときたら本気で守りにきやがって。それでもアタシの好敵手か)


 恥ずかしながら俺が保身全開でいたのはバーバラにバレていたようだ。一番心構えがいるような内容のものに限って何も言わなかったのは俺を信用してのことか。それは流石に買い被りすぎだった。勝手に好敵手にされても困る。小細工無しに真正面から戦えばボコボコにされるのは俺なんだから。

誤字とか見つけたら誤字報告機能で教えて下さると助かります。

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