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亀に転生しました  作者: よっけ
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第18話 気のせい

(今日も平和だなぁ)


 俺の住んでいる高い木のてっぺん近くから地上を見下ろしながらそんなことを考える。心地いい日差しを全身に受け、楽な態勢でのんびりまったりと過ごす。これに勝る贅沢な時間の使い方は他に思い付かない。

 おっかない人の襲来から数日、平穏というものの尊さを再確認させられた俺は巣からほとんど移動せず安穏とした生活を送っている。《アイテムボックス》や家に溜め込んでいた食料と水魔法で大体が済ませられるため多少の期間なら外出せずとも問題なく過ごすことができていた。

 見つかって居場所が出回ってしまわないように引きこもり生活を続けていたが、もうそろそろ出掛けてもいい頃合いかも知れない。

 ポリポリと腕を掻き、大きな欠伸をしながら思いっきり体を伸ばして固まっていた体をほぐす。そして葉と葉の隙間から辺りをキョロキョロと眺めた。下りてすぐゴブリン等の厄介な魔物に出くわすと心臓に悪いので木から下りる前の安全確認は怠れない。


(えっと、ゴブリンに鹿にデカいウサギにゴブリンに猫耳、ゴブリンが相変わらず多いけど大体普段どお……あれ? 今流しちゃいけないもの見えたような……)


 前足で目を擦り、再び目を凝らす。すると全身ははっきりと見えないが周りより明らかに速い猫耳が動き回っているのが見えた。気のせいだと思いたかったが見間違いではなかったようだ。時折木や葉の隙間から見える体の一部や強さから見てあれは先日襲いかかってきた猫耳の女でおそらく間違いないだろう。姿形はこの目にしっかりと焼き付いている。

 猫耳の女は進路の邪魔となるゴブリンたちを返り血で血みどろになりながら殺戮していた。

 俺は急いで木の洞に潜り込み、身を隠す。どうやらまだ近くの町から離れていなかったみたいだ。少しばかり食料が心許なくなってきていたので家から出られなくなるのは非常に困る。そもそも家から出ようと思い至ったのも食料が尽きてきたのが原因であった。


(まだこの近くでの用事は済んでいなかったのか。もしかしてゴブリン大量発生の対処に助っ人として呼ばれたとか? でもそれにしては……)


 ギアを上げるように少しずつ動きが良くなっていく猫耳の女。しかし、仲間を殺されたことで続々と集まるおびただしい数のゴブリンたちを相手にどこか本気を出していないように見えた。

 それはまるでこれから控えている本命との戦いのために準備運動をしているような……。そう考えたところで何故か体がぶるっと震えた。


(……なんで俺が震えてるんだ? 手を抜いてるのは長期戦に備えてのスタミナ配分かも知れないし、そもそも俺は戦いの素人だぞ。そう見えるのだってなにかの錯覚かも知れないじゃないか)


 その道何十年の大ベテランでもあるまいし戦い方を見るだけで考えを読み取ろうなんて無理がある。俺の考え過ぎだろう。


(あー馬鹿らし。この前矢で射られたのだってたまたま目に付いたからってだけだろ? なら見つかりさえしなければどうってことは無いはず。周りに気を付けてさえいれば外に出ても大丈夫さ)


 必死に外に出ても大丈夫なのだと自分に言い聞かせているうちに猫耳の女の姿が見えなくなったので取り敢えず木から下りることにした。

 遠目から見ていても酷かった光景だが近くまで来ると余計にそう感じる。そこには多数のゴブリンの死体が一点に集められ燃えていた。早々に埋めるか燃やすかしないと病原となってしまうからだろう。そうして作り出された光景は控えめに言って地獄絵図だが。

 少々グロい光景に戦慄しているとふと燃えているゴブリンの胸に目が入った。全てのゴブリンの死体の胸に穴が開いており、そこをよく見ると魔石が取られて無くなっているのに気付く。


(人間も魔石が必要なのか。魔物みたいに魔石を食べると強くなれるとか? それとも魔石を集めるのは討伐証明のためとかか?)


 考えてみればゴブリン退治と言っても誰がどれだけ倒したかなんて分かるものではないはず。どの魔石がどの魔物から取られたものなのかが判断できるのならばその魔石の数がそのまま討伐数としてカウントすることができるだろう。


(どちらにせよ、俺も人に殺されればああなるんだよな……)


 魔石をえぐり取られそれ以外の部位も素材として重用されるのならば剥ぎ取られる。自分だってそうして生きてきたのだ。どうしてそれが自分の身に起こらないと思える。最近危機に瀕していなかったせいで自分も狩られる側になり得るのだということをすっかり忘れてしまっていたようだ。


(久々に本腰を入れて鍛えるか)


 魔力操作の練習は定期的に行っていたが片手間というか冬籠りのときほど頑張っていなかった。天敵がすぐ隣に居るのだ。ある程度の精神的余裕は必要だとは思うが、どうおちょくってやるかを考えるなど無駄な余裕を見せている場合ではなかった。

 幸い上手く使えばパワーアップが見込める食材も近場にある。味が良く、含まれている魔力も豊富。それでいて、それを狙うライバルも存在しない。食べると精神的にかなり疲れるので今までは少しずつしか食べていなかったが、これからは積極的に食べていこうと思う。

 もしかすると食べ続けることでその欠点ですら克服して無くなるかも知れない。そしてそうなるときには俺の魔力制御力は更に磨きかかっていることだろう。魔力制御力を鍛えられ、魔力の蓄えられる上限を増やし、美味しいものをノーリスクで食べることができるようになる。一石三鳥の修行方法だ。

 思い立ったが吉日。再び脅威に脅かされてしまう前にたらふく食べて強くなってやろうじゃないか。

誤字とか見つけたら誤字報告機能で教えて下さると助かります。

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