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亀に転生しました  作者: よっけ
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第11話 おはよう

 疲れた体を引きずりながら切り分けた大熊を何往復もして入り口付近にまで運ぶ。洞穴で鍛えたことにより広がった《アイテムボックス》でさえこんなに往復しなければ入りきらない巨体には改めて驚かされる。


(やっと運び終えた……)


 ドサッと最後の塊を雪の上に降ろす。まさか冬の間に肉が得られるとは思っていなかったので乾燥した薪など何も用意していなかったので応急措置として雪を集めてそこに埋めておくことにする。入り用になったら必要な分だけそこから肉を取り出し、熱魔法で加熱する。そうすれば一回にかかる負担が減るだろう。

 普段大きな肉を焼くときなどは木の粉や乾燥した草などを瞬間的に高熱に晒すことで発火させそれを薪に移し、焼いていたので直接熱魔法を当て続け長時間加熱するなんてどれぐらいしんどいか想像も付かない。


 早速俺は足の速そうな内臓を取り出す。その際に魔石も取り出し、《アイテムボックス》に入れておいた。強かった魔物だけあってすごく美味そうだったが、冬眠明けのシールドのために取っておくことにする。内臓の見分けはあまりつかず、心臓とか肝臓などのメジャーなものしか分からなかった。判断はつかなくとも、狼で大体の食べられなさそうな内臓は学んでいるつもりなので大丈夫だ……多分。


(まあ野生の亀は腐った肉を食べてもお腹を壊さない。野生の俺が新鮮な肉を加熱して食べるんだからなんの問題ないはずだ!)


 そう必死にそれっぽい根拠で理論武装した俺はそれらを出来るだけ細かく切り分け大きくて平らな石に乗せる。満遍なく火が通るように色々な方向から熱を加えていくと美味しそうな匂いがしてきた。朝から何も食べていなかった俺はその食欲をそそる匂いに思わず手を伸ばしそうになる。


(が、我慢するんだ俺。ここで焦って食おうとしたら前みたいになるぞ)


 魔物の皮膚を過信しすぎていた俺は焼いてから少ししか経っていない肉をもう十分冷めただろうと直づかみしてしまい火傷した。魔物の回復力のおかげですぐに完治したが、あのとき得た“熱いものに触るときは例え魔物でも気を付けなければならない”という教訓を無駄にしてはならないのだ。


 一刻も早く食べたかった俺は焼けた肉に雪を乗せて急冷させるとすぐに口に運んだ。


(うまーーーー!!)


 心臓は咬みちぎると旨みとコリコリした食感を感じられてとても美味しかった。肝も独特の癖とクリーミーさが病みつきになりそうだった。


 空腹も手伝って取り出した分はすぐに完食してしまった。これからしばらく俺の食事は熊尽くしだ。

 その熊肉が不味かったら完食するまで地獄の日々を送ることとなっていただろうが、実際にはとても美味しかった。これは残りの冬をグルメに過ごせそうだ。



+ + +



 それから更に数ヶ月が過ぎた。気温が上がりようやく雪も解け外から動物の鳴き声が聞こえてくる。

 他の動物たちと同様にそろそろシールドも起き始める頃だろう。チラッとこんもりとした落ち葉の山を一瞥する。

 そこには落ち葉が僅かに崩れ、顔が露出してしまっているシールドがいる。まだ起きる気配の無いシールドを見ているとふと俺は悪戯を思いつく。


(……大熊の魔石を口元に近づけたら面白いかも)


 俺はそっとシールドに近づくと《アイテムボックス》から魔石を取り出す。そしてシールドの顔の前でフリフリさせた。

 シールドは鼻をヒクヒクさせ少し首を引っ込めたかと思うと目にも止まらぬ速さで首を伸ばし俺の手ごと魔石を食べようとした。緩慢な動きをするシールドをおちょくる気で完全に油断していた俺は意表を突かれそのまま――


(こ、《硬化》!)


 何とか腕を食いちぎられる寸前に魔力で皮膚を強化したお陰で感じる感触は甘噛み程度に抑えられた。


(あっぶな! 死ぬかと思った!)


 俺は持っていた魔石をシールドの口の中で手放すと素早く腕を引き、噛まれた腕をさする。シールドは器用に口の中に転がった魔石を砕き飲み込んでご満悦の表情だ。

 シールドの表情とは対照的に砕かれた魔石と自分の腕を重ねてしまった俺の顔からはサッと血が引く。


(食べ物を持ってシールドの口元に近づけるのはもう止めよう……)


 まだ俺が腕をさすっているとシールドが目をうっすらと開ける。そのまま大きく欠伸をすると立ち上がって「おはよう」とばかりに右の前足を上げた。俺もさっき腕を無くしそうだったことなぞ露とも見せず同じように右前足を上げた。



+ + +



 残っていた保存食で腹ごなしをすると俺たちは日の光を浴びに外に出た。川辺に日当たりのいい絶好の日向ぼっこスペースを見つけることができたので俺とシールドで贅沢にスペースを陣取る。ポカポカと日差しが気持ちいい。俺と違いずっと洞穴にいたシールドは特にそう感じているだろう。蕩けるようにリラックスした表情をしている。


 シールドは起きるときに与えた強力な魔石のせいか思ったより元気だった。冬眠明けは弱ってしまっているかもと懸念していたが、少量とはいえご飯もしっかり食べているし動きも徐々に活発になっている。ご飯をしっかり食べ、日の光に当たっていれば完全復活は時間の問題だろう。


 俺は一足先に日光浴を切り上げると小エビや虫を探すために川に潜る。骨や甲羅を硬くするにはカルシウムが必要だ。魔力で一時的に強化は出来ても元の硬度が高い方がより硬くなる。今シールドは甲羅干しをすることで強い骨や甲羅を無意識に作ろうとしているのだ。筋トレをした後にタンパク質を摂ることが有効なように甲羅干しをしながら甲羅にいいものを食べるのは効率が良さそうだと考えた俺はカルシウムを多く含んでいそうな獲物を狙う。

 流れの緩やかなところや川辺の水草辺りを探したり石を引っ繰り返してみたりするとかなりの量が捕れた。俺は捕れた半分を《アイテムボックス》に入れ、残り半分を一度加熱し、冷ましてからシールドの口の中に放り込んでいく。口元から多少外れたものもシールドは素早く器用に口でキャッチする。誤って二匹同時で顔の左右に同時に投げてしまったときにシールドの頭が二つに見えるほど速く動き両方食べたのには流石にビックリした。


 川から上がり改めて自分の分を焼いていると物欲しそうな視線を感じたのでそっちを見るとよだれを垂らしたシールドが焼けて香ばしい匂いを放つエビなどを見ている。熱心な視線に負けた俺は自分の分の半分をシールドに上げ、一緒に食べた。そして再び日光浴に戻ると今日は日が落ちるまでのんびり過ごした。

誤字とか見つけたら誤字報告機能で教えて下さると助かります。

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