第6話「装備の準備」
「やっぱりありませんか?」
「ありませんね、そんな頻繁に来るものじゃないですし」
「そうですか……」
翌日、ミサキ達は何か仕事が無いか支援ギルドに来ていた
しかし案の定募集している仕事は何もなかった。
「どうしよう……モンスター狩りをしようにも、
今の私には武器も、それを買うお金も無いし……」
ミサキが持っていた物の中で武器になりそうなのは、
あのゴブリンに突き刺したナイフ1本だけだ。
そして、そのゴブリンを売って得たお金も、食事や服代、
宿代でほとんど使い切ってしまっていた。
「それなら私がお金を出しましょうか?」
「いや、流石にそこまでしてもらわなくても……」
流石に武器代まで負担してもらうのはリーナに悪い。
リーナだって今はお金が無いのに。
「気にしないでください。私はママから信頼できる人に出会ったら
力になってあげなさいって言われてたので」
どうやらリーナの中ではミサキは残り少ないお金を出してもいいぐらいに信頼できる
人になっていたようだ。
確かにミサキはリーナを助けた。でもその代わりにリーナにはこの世界の事を教えてもらった。
その上に決して安くは無いだろう武器の代金まで出してもらうとなると
流石に罪悪感を感じてしまう。
「それに」
「それに?」
「私だけじゃモンスターを狩る事ができないので……」
「……そうなの?モンスターを倒せる魔法とかは無いの?」
「私は攻撃魔法は覚えてなくて、回復魔法での後方支援しかできないんです。
だからミサキさんが一緒に戦ってくれるなら、凄く嬉しいんです」
リーナが期待を込めてミサキに笑顔を向けてくる。
期待してくれるのは嬉しいけれど、流石に少し悩む。
彼女の言い方からして、モンスターと直接戦うのは自分1人と言うことになる。
ホーンラビットはあのゴブリンよりは強くは無いと言う。
ゴブリンとの戦いは苦しかったが、それでも一応軽傷で済んだ。
それならばホーンラビットでもそこまで重傷にならないかもしれない。
そして、多少の傷なら回復魔法でなんとかなるかもしれない。
とは言え私はそんな狩人の真似事なんてしたことない。
ゴブリンの時は無我夢中だったし、
理屈ではできるとしても、そう簡単に決断できることでは無かった。
……でも、選ばなければならない。
モンスター狩りをするか、今のまま、来るかどうかわからない仕事を待つか。
「……分かった。リーナ、武器を買いに行こう」
しばらく悩み、ミサキは答えを出した。
勇気を出して、今の自分に出来そうなことをやろう、と。
「と言う事は、モンスター狩りしに行くんですか?」
「うん、だからリーナ、私をしっかり治してね」
「は、はい!頑張ります!」
◇◆◇◆◇
あれからミサキ達は武器屋に来ていた。
広いが少し暗い店の中には棚や壁に剣、斧、槍、杖、弓とズラリと武器が並べられていた。
今の所持金は6万ガルあったので、その範囲で買える武器を選ぶことにした。
「ミサキさんはどんな武器を使えるんですか?」
「うーん……武器なんて使った事無いからなぁ……でも、やっぱり剣……かな?」
なんとなく異世界でモンスターと戦うと言ったら剣と言うイメージがあった。
大きな剣でモンスターを倒していくのは、ファンタジー物の王道だ。
「あの、少しいいですか?」
私は退屈そうにしてる大柄な男の店員に声をかけてみる
「……何だ?」
「剣を探してるんですけれど」
「剣はあっちにあるから勝手に選びな」
選んでほしかったけど、この様子じゃ無理そうだ。
仕方ないので自分で剣を選ぶことにした。
剣にもシンプルな剣や、刃が大きく反っている剣、凄く長く細い剣に、
ゴテゴテと柄に派手な装飾が付いた剣と、色々な種類があった。
値段も様々で、高いのだと50万ガルするのもあれば、
安いのだと5000ガルで買えるのもあった。
「こういう時はシンプルで高いのがいいんだと思うけど……」
基本的に値段が高いと言うのは、質がいいか、美術的価値がある物だ。
なので明らかにゴテゴテした派手な剣を避け、近くのシンプルな
58000ガルの剣を持ってみることにした。
「うーん……」
……思ったよりは軽い。振り回す事ぐらいなら十分できそうだ。
でも、なんだかしっくり来ない。
何本か値段の近い剣を取ってみるが、どうにも言い知れない違和感がある。
この違和感の正体が何なのか考えていると、ふとナイフが置いてあるのが見えた。
……もしかして
ミサキは剣を置き、ナイフを取ってみた。
「これだ!」
思った通り、ナイフはミサキの手に馴染んだ。
この世界に来る前から、料理やキャンプやらでナイフの扱いには手慣れてる。
それなら無理に武器に剣を選ぶよりは、使い慣れたナイフを使った方がいいみたいだ。
ミサキは6万ガル近いナイフを何本か手に取って
1番しっくり来たナイフを選び、リーナに買ってもらった。
「ありがとうリーナ。何から何まで……」
「気にしないでください。それよりもモンスター狩り頑張りましょう!」
ここまでやってもらったからには期待を裏切れない。
ミサキ達は覚悟を決めて、モンスター狩りをするために街の外に向かった。