第52話「ドラゴンと闇の魔術師」
私はリーナを抱きかかえて、炎のブレスを避けた。
炎のブレスは非常に強力で、それ1つで建物がいくつも吹き飛ばされ、
そこには炎が燃え上がっていた。
「リーナ!ジャンゴ!大丈夫!?」
「私は大丈夫……」
「俺もだ……」
何とかリーナとジャンゴが無事な事を確認する。
「……ほう、よく今の攻撃をかわせたな」
「!?」
ドラゴンの背中の上から声が聞こえてくる。
耳にまとわりつくかのような、嫌な感じの声だ……
一体誰が喋っているのか確認する。
そこに居たのはローブを深く被っているが、黒い肌をしていた人だった。
「お前は……まさか……闇の魔術師ソロモンか!?」
「ククク……ご名答」
アイツが今までいろんな人を操って来た闇の魔術師か。
そして、今はジークをも操っている。
私は怒りが込み上げてくる。
「どうしてこんな事をするんだ!」
すると、ソロモンは見下したかのような態度で反論する。
「何故かって?それは、みんなが俺に従ってくれるのは気分がいいからさ。
まるで王にでもなったかのような気分になれる」
「そんな事の為に……!」
私は更に怒りが込み上げてくるのを感じた。
こいつは絶対に許してはいけない存在だ!
「……俺達に向かって攻撃したのは、その強さを誇示する為か?」
「半分正解で、半分間違いって所だな。
俺はジューカ森のモルモット共や奴隷共を逃がされて、少し頭に来てるんだ。
だから、これはその報復さ」
「だったら、何故こんな人の多い所で襲う!」
ジャンゴも怒り心頭の様だ。
しかしソロモンは、あくまで冷たく言い放つ。
「何、その方がお前達が受けるダメージも大きいだろう?」
「貴様!!!」
「話は終わりだ、やれ」
ソロモンがそう言うと、再びジークは息を大きく吸い込んだ。
「ミサキさん!どうしましょう!?」
「とにかく人気の無い所まで逃げるんだ!」
「ダメだ!間に合わん!」
ジークは再び巨大な炎のブレスを吐いた。
私達はそれを回避しようと足に力を籠める。
が、突如ジークの前に飛び出た人影によって、そのブレスはかき消された。
「大丈夫か?みんな」
「父上!」
「シュヴァルツ騎士団長!」
なんと、シュヴァルツ騎士団長が助けに来てくれたのだ。
これは心強い。
「フッ……騎士団長サマのお出ましか」
「俺が来たからには、これ以上ここで好き勝手はさせんぞ」
「面白い。かかってこい!」
そう言うと、ソロモンは空に浮き、シュヴァルツ騎士団長を挑発する。
「ジャンゴ。ドラゴンの方はそっちに任せる。いいな!」
「はい!」
シュヴァルツはジャンゴに任務を与えると、空を飛び、ソロモンとの戦いに向かっていった。
「さて……恰好付けたはいいが、ドラゴン相手は俺1人じゃ無理だ。
ミサキ、リーナ、力を貸してくれないか?」
ジャンゴは少し不安そうにこちらを見る。
「当たり前でしょ。ジークをこのまま暴れさせるわけにはいかないからね」
「私も同じ意見です!」
「……ありがとう。それじゃあ行くぞ!」
私達は、勝ち目があるかも分からないジークとの戦いに身を投じたのだった。




