第50話「ドラゴンとの触れ合い」
あれから、ゆっくりながらも順調に山を登っていった。
モンスターにも何度か襲われたけど、もう雪の上での私の機動能力は把握しているため
最初の時ほど苦戦する事は無かった。
そして
「見てリーナ、あそこだけ雪が積もってない」
目の前の大地には、そこだけぽっかりと雪が取り除かれていた。
「本当だ。あそこだけ雪が無いですね」
「つまり、さっきまであそこには別の何かがあったって事だよね」
「これだけ大きなものとなると……」
「うん。ドラゴンはきっと近くに居る」
私達はドラゴンが近くに居ると言う事実に緊張しつつ、慎重に辺りを見渡した。
「人間がここまで来るのは久しぶりだな」
「!!!」
「ひゃあっ!!!」
日の光が遮られたと思ったら、頭上から大きく低い声が聞こえて来て
私達は跳び上がるほど驚いた。
そして頭上を見ると更に驚いた。
そこは巨大なドラゴンが飛びながら私達を見つめていたのだ。
ギルドでは人を襲う事は無いとは聞いていたが、いざ目の当りにすると物凄い迫力を感じた。
「そう怖がることは無い。私はお前達を取って食ったりはしないからな」
「本当ですか……?」
「ああ、本当だ」
見た目に反して、その声は優しげだった。
ドラゴンはゆっくりと私達の側に降りると、じっと私達を見つめてきた。
「お前達は何の用でここに来た?」
「えっと……ここにドラゴンが居ると聞いて、是非近くで見てみたくて」
「はっはっは。なるほど。度胸のある人間だ。
構わん。好きなだけ見ていくといい。よかったら触ってみても構わんぞ」
「ほ、本当ですか!?」
確かにこのドラゴンは思ったよりも温厚なようだ。
正直言って、ドラゴンの体には興味がある。
「ミサキさん、本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。きっと」
私はそーっと、そーっとドラゴンの体に近づく。
そして優しく、ドラゴンのウロコに触れた。
思ったよりもツルツルした触り心地だ。
「……わ、私も触ってもいいですか?」
「ああ、もちろんいいぞ」
リーナもおずおずとドラゴンに近づき、そのウロコに触れる。
「うひゃひゃひゃ。コラ、くずぐったいぞ」
「ご、ごめんなさい!」
私達は慌てて飛びのいた。
怒らせてしまったのではないかと内心冷や汗ものだった。
だが、ドラゴンは楽しそうに笑っていた。
「何、気にしとらん。むしろこれだけ気さくに接してもらえたのは
本当に久しぶりで嬉しいのだ。
我が名はジークフリート。
良ければ色々と話をしてもらっても構わないか?」
「はい!もちろん!」
私はこうして、ジークと仲良くなり、色々な話をしたのだった。