第46話「妖精と聖なる泉」
あれから森の中を彷徨って数時間ほどが経ち、もう日が暮れ始めた。
「……ごめん、どうやら道に迷ったらしい」
ジャンゴが申し訳なさそうに謝る。
「知ってた」
「知ってました」
「そ、そうか……」
迷った事はもう私達にはバレバレだったが、改めてそれを聞くとジャンゴは少し落ち込んだ。
とりあえずもう日が暮れ始めたので、火を起こし、夕食を取る事にしていた。
ご飯は昼食と同じサンドイッチに、魔法の水筒に入れたオニオンスープだ。
中身は当然アツアツのままだ。
ジャンゴはスープまでは用意してなかったので、1杯彼に渡す。
「ありがとう、ミサキ」
ジャンゴはお礼を言うと、オニオンスープを一気にグイッと飲み干した。
「とりあえず今日は寝て、明日街に戻ろう」
私達は食事を終え、火を消して、明日の事を決めていた。
「待ってください!聖なる泉はどうなるんですか?」
「私も見たかったけど、ジャンゴの案内がアテにならないからなぁ……」
私はジャンゴを少し呆れた目で見る。
「ぐっ……この近くなのは間違いないんだけどな……」
ジャンゴは往生際悪く、周囲をキョロキョロ見渡していた。
……すると、どこからか小さな光が飛んでくるのが見えた。
「ミサキ、ジャンゴ、これを見て」
私はその光を指さす。
「綺麗ですね、これは何でしょうか?」
「これは間違いない!妖精だ!」
「これが妖精?」
妖精と言えば小さな女の子に羽根が生えたのをイメージしてたけど
実際は小さな光の塊で、遠くから見ると蛍のように見えた。
「妖精が居る……って事は、聖なる泉が近くにあるはずだ!」
ジャンゴはキョロキョロ辺りを見渡す。
そしてある方向で首を振るのをやめ、そこを集中して見ているようだ。
よく見ると、そこは他の所に比べて少し明るく見える。
「あった!あそこに聖なる泉があるぞ!」
そう言うとジャンゴはその方向に向かって駆け出した。
「あ、待って!」
「待ってください!」
私達もジャンゴを追いかけるように、その方に走っていった。
「わぁっ……綺麗……」
「……凄い」
そこには綺麗な泉があり、その上に小さな光が沢山飛んでいた。
明りを消すと、まるで星空の中に居るかのような、幻想的な世界の中に居る気がした。
こんなに綺麗な景色を見られたのなら、長い間森の中を探し回ったかいがあったと言う物だ。
「なっ、俺の案内は間違ってなかっただろ!」
「はいはい。でも、本当に諦めずに頑張ってよかったよ……」
「そうですね……」
私達はその光景を目に焼き付ける為に、ずっとずっとその光景を眺めていた。