第44話「救出と違法奴隷」
「貴方はジャンゴ!?どうしてここに……」
突然現れたジャンゴに私は驚いた。
彼がどうしてここに居るんだろうか……?
「それを話す前にその傷を治さないとな。これを飲め」
ジャンゴは私に青色の液体の入った瓶を渡す。
これは見た事がある。傷を癒す魔法薬。ポーションだ。
「ありがとう」
私はポーションを受け取ると、それを飲み干した。
相変わらず苦い、しかし、飲み干すとともに
傷口が熱くなったと思うと、綺麗に傷跡が消えていく。
痛みもすっかりなくなった。相変わらず凄い効力だ。
「それと、この岩をどかすのを手伝ってくれないかな?
中に人が居るんだ。私の大事な仲間も」
「わかった、ちょっと離れてろ。その岩をブッ飛ばす」
ジャンゴは剣に魔力を込め、炎を剣に纏わす。
私が竜巻をナイフに纏わすのと同じ原理だろう。
「ちょっと待って!リーナ、そこから離れて!ジャンゴがこの岩を破壊するから!」
「わ、わかりました!」
「……もういいか?行くぞ!フレイムブレード!」
彼は炎を纏った剣で、岩石に向かって突きを放つ。
剣は岩を貫き、内部から爆発を起こし、岩石をバラバラに吹き飛ばした。
「ミサキさん!大丈夫ですか?」
リーナは私を見つけると心配そうに駆け寄ってきた。
「大丈夫。ジャンゴが助けてくれたから。リーナの方こそ大丈夫?」
「私も大丈夫です。ミサキさんが叫んでくれたから間一髪で回避できました」
「そう。よかった……」
私はホッと胸を撫でおろす。
リーナが無事で本当に良かった。
「あの、ミサキさんを助けてくれてありがとうございます」
「何、騎士として当たり前の事をしただけだ」
「え……ジャンゴが……騎士?」
私は思わず聞き返す。
セントラル王都で出会った騎士はまさしく高貴な感じがした。
しかしジャンゴはどちらかと言うとガサツな感じがして、
どうしても騎士と言うイメージには結びつかない
「ああ、俺は騎士団長シュヴァルツの息子であり、セントラル騎士団の副団長ジャンゴだ」
「えええええええええっ!!!?」
「これで全員か?」
「はい、みんな居ます」
「俺達……助かったんだな」
「ありがとう!この恩は忘れねぇ!」
あの後、洞窟の檻の中に捕まってた人を全員助け出した。
ちなみにあの頑丈な檻はジャンゴがぶった切って開けた。
最初はまさか彼が騎士副団長とは……と思ったが、
その実力はまさしく騎士副団長と言うべきものだった。
「ジャンゴはここに人が囚われてる事を知ってたのか?」
「いや、そういう訳じゃない。
少し前から冒険者の誘拐事件が多発して、その手がかりを探していたんだ。
それでこのジューカ森の中を探していたら、強い魔力がぶつかり合うのを感知して
で、急いで行ってみたらお前達が戦っていた、と言う訳だ」
「なるほど……」
「それよりも、気になるのは、誰が彼らを操っていたか……だ」
「そう言えば、彼らはみんな奴隷だったね」
さっき戦ってた人を思い返すと、みんな首元に大きな頑丈そうな首輪をしていた。
「ああ。奴隷商に聞けば何か情報が掴めるかもしれないが、
十中八九彼らは違法奴隷だろう」
「違法奴隷……?奴隷に違法とかあるのか?」
「ああ、奴隷にしていいのは犯罪者、もしくは借金を返済できない人だけで、
それ以外の人を奴隷にすると、厳しく罰せられるんだ。
それに、いくら奴隷と言ってもどんな命令でも聞かせられるわけじゃない。
どうしても従えないような酷い命令には奴隷であっても逆らう事ができる。
例えば殺人とかな」
どうやら思った以上にこの世界における奴隷の扱いは悪くないらしい。
「でも、あの人達は私達を容赦なく殺しに来ましたよ」
「ああ、だから規定に従った服従魔法では無く、どんな命令も聞くような
強力な服従魔法を使ってるに違いない」
「酷すぎる……」
どんな命令も聞かせられる服従魔法。
まさに私が考えていたような、最悪の奴隷の形だ。
「一体誰がそんな酷い事を……」
「さあ……彼らから情報を聞き出さないことには分からないな。
とりあえず、一旦戻ろう」
「そうだね。行こうリーナ」
「はい」
こんな暗い洞窟の中で話してても仕方が無いので、1度私達はセントラル王都に
戻ることにした。