第37話「森の屋敷」
あれから半月、私達はちょくちょく王都に戻りつつジューカ森の探索を続けていた。
結構な距離を探索したけれど、未だに泉らしいところは見当たらない。
相変わらず目に見えるのは木だらけだ。
でも、森の中を歩く事自体は退屈では無いし、ご飯も暖かくて美味しい。
時々モンスターに襲われる事もあったけど、特に苦戦する相手は居ないし
倒したモンスターは全部ギルドが結構な値段で買い取ってくれるので
今の私達にとってはむしろボーナスみたいなものだ。
だから、探索はそこまで苦では無く、まるで散歩のように気楽に続けていた。
そんなある曇りの日の事……
「何だろうあれ……?」
「建物……でしょうか?」
森の中に古い建物を見つけた。
遠くてよくわからないが、かなり大きな建物だ。
一体何の建物だろうか?
もしかして人が住んでるんだろうか?
「ねえ、近くまで見に行ってみようよ」
「そうですね、行ってみましょう」
少し気になったので、その建物の側まで行くことにした。
「大きなお屋敷ですね……」
「そうだね……」
その建物は大きな洋館だった。
しかし建物はボロボロで草が生い茂っていて完全に廃墟になっていた。
これじゃあ人は住んでなさそうだ。
「ねえ、この中に入ってみない?」
屋敷の扉の鍵は壊れていて、開きっぱなしだ。
中には簡単に入れそうだ。
「このお屋敷に入るんですか?」
「うん!面白そう!」
「そ、そうですか……」
リーナは乗り気じゃないけれど、廃墟なんてめったにあるもんじゃない。
私の探求心が、この屋敷を探検したいと言っていた。
そんな事を思っていると、ぽつぽつと雨が降ってきた。
「雨も降って来たし、雨宿りがてら、あの屋敷に入ってみようよ」
「わ、わかりました。そこまで言うのなら……」
リーナはしぶしぶと私に付いてきた。
リーナには悪いとは思いつつも、私はこの屋敷を探索したくてワクワクしていた。
「……暗いな」
「……暗いですね、ライト」
屋敷の中はとても暗く、リーナが魔法の光を灯す事でやっと屋敷の中が見えるぐらいだ。
私達は屋敷を探索する為に、1歩足を踏み入れた。
するとバタン!と言う音と共に、勝手に扉が閉まった。
「ひっ!?」
リーナが驚きと恐怖で悲鳴を上げる。
「扉が勝手に……!?開かないぞ!!」
「ええっ!?」
扉を引っ張るが、まるで鉄の塊かのように動かない。
扉の鍵は壊れてるのに何故……?
「冒険者共が……この屋敷に入って生きて帰れると思うなよ……」
くぐもった声で、しかし怒りと恨みの籠った声で、そんな言葉が聞こえてくる。
そして人の姿をした黒いモヤのようなものが沢山奥から現れた。
「何だあれ……?」
「もしかして……お化け!?」
怪しいので身構えていると、黒いモヤは炎や雷の球を放ってきた。
コイツ、魔法を使ってくるのか!
「バリアーッ!」
リーナは私にバリアを張り、私は魔法をナイフでかき消すと、黒いモヤに向かって切りかかる。
しかし、手応えが全く無い。まるで空気でも切ってるかのようだ。
黒いモヤは切られて分かれたが、すぐに集まるように1つに戻った。
コイツにはナイフが効かないのか!?
「ホーリーショット!」
するとどこからか光の球が飛んできて、黒いモヤをかき消した
「早く!こっちに!」
声のする方を振り向くと、1人の女性が手を差し伸べていた。
彼女が誰だか分からないけれど、この状況を打破するには彼女の力を借りるのが良さそうだ。
私はリーナの手を引いて、彼女の方に付いていった。