第36話「キラーベアと再戦」
目が覚めると、そこは森の中だった。
そうだ、昨日はこの世界に来てから初めて野宿したんだった。
とりあえず無事に夜を過ごせたみたいだな。
朝食に未だに暖かいサンドイッチを食べ、また森の中を探索し始めた。
その途中で何度かモンスターに襲われるものの、全て問題なく撃退する。
撃退したモンスターは全て袋に入れていたが、
いくら空間拡大エンチャントをしてると言ってもそろそろ容量に限界が見え始めた。
「そろそろ一旦王都に戻ろうか?」
「そうですね」
一応もっと探索できるように準備はしてあるが、戻れるときに戻っておくのも大事だ。
私は魔法のコンパスを取り出し王都の方向を確認し、その方向に向かって歩き始めた。
しばらく森の中を歩いていると、遠くに何か大きな物が動いてるのが見えた。
今までにジューカ森で戦ったモンスターとは違う、でも、見覚えのある巨体。
私達は思わず息を飲む。
「まさか……あれは!」
「キラーベア……!」
そこに居たのはクレン山で出会った巨大熊、キラーベアだった。
クレン山で出会った時は戦うも敵わず、危うく死にかけた事がある。
それほどヤバいモンスターだ。
まさかこんなにも早く再び出会うことになるとは……
相手もこちらに気が付いたのか、こちらに向かって走ってくる。
「リーナ!」
「はい!バリアーッ!」
私はリーナにバリアをかけてもらうと、ナイフを取り出し、キラーベアに向かって走り出す。
丁度いい、あの頃と比べて私達はずいぶん強くなった。
キラーベアはその成長を試すのにもってこいの相手だ。
それに、冒険を続けるならこのぐらいの相手と戦わなければならない時が何度も来るだろう。
今回はそれを経験するいいチャンスだ。
キラーベアは唸り声と共に勢いよく殴りかかって来る。
私はそれを素早く避け、キラーベアの懐に潜り込み、ナイフを強く握りしめる。
「くらえ!必殺!トリプルスラッシュ!」
私は目にも止まらぬ速さで、両手のナイフで交差するように3回づつ、合わせて6回切り付ける。
「グウウウウッ!!!」
キラーベアは悲鳴を上げて苦しそうにふらつくが、こちらを見つけると再び殴りかかってきた。
6回も切り付けたのに、なんてタフさだ。
「シャインショット!」
しかしその瞬間、リーナがキラーベアに光の球を直撃させる。
激しい閃光と共に、キラーベアの体勢がグラリと崩れる。
今だ!
私はすかさずキラーベアに向かって跳び、頭にナイフを突き刺した。
キラーベアは硬直したかのように動かなくなると、ぐらりとその場に倒れた。
「やった……んですか?」
リーナがおずおずと聞いてくる。
キラーベアを確かめてみるが、間違いなく息絶えていた。
「うん、大丈夫。ちゃんと倒したよ」
「そうですか。やりましたね!」
「うん!」
かつては辛酸をなめさせられた相手だったが、今こうして雪辱を果たす事ができた。
私達は確実に強くなっている。
そう思うと嬉しかった。