第35話「始めての野宿」
暖かい食事を取って満足した所で、私達は再び森を探索し始めた
しかし右を見ても左を見ても木、木、木と似た光景が続く。
今回は道なき道を進んでるため、普通なら迷って遭難してもおかしくない状況だ。
そうならないように、事前に対策は取ってある。
同じ所を通らないように、1度通った道の木には魔力でマーキングをしておいた。
これはダンジョンで特訓をしている際に、迷わないようにと考えた方法だ。
そしてあらかじめ、セントラル王都で魔法のコンパスも買っておいた。
これは東西南北を示す普通のコンパスとは違い、常に特定のギルドの方向を示すコンパスだ。
今私が買ったコンパスは、セントラル王都のギルドの方向を示すコンパスだ。
これがあれば少なくとも街に戻れず遭難する、なんて事態にはならないだろう。
それでも、万が一に迷った時の為に、食料も多めに買い込んである。
流石にこれだけ対策してれば大丈夫だろうと思い、私達はどんどん森の奥に入っていった。
「見つかりませんねぇ……聖なる泉」
「……まあ、流石に1日目で見つかるとは思ってないよ」
あれから1日森の中を探索したが、結局泉らしい所は見つけられなかった。
辺りはもう日が暮れ始め、だいぶ暗くなってきてる。
これ以上の探索は危険だと判断して、今日はここで野宿をする事にした。
明りをつける為に木の枝を集め、魔法のライターで火を付け焚火にする。
防暑防寒エンチャントのおかげで寒くは無いけれど、それでもこの焚火の暖かさは
心がほっとしてくる。
お腹も空いてきたので夕飯のサンドイッチを取り出す。
サンドイッチはまだ出来立てのように暖かい。
やっぱり暖かい食事と言うのは、それだけで疲れが取れる気がする。
防暑防寒エンチャントも、劣化防止エンチャントも、つけておいて本当に良かったと
心から思った。
食事も終えたところで、寝る準備をする。
焚火を消し、寝やすいように地面を払う。
そして寝てる間にモンスターに襲われたらたまらないので、リーナが周囲にバリアを張る。
これはダンジョン内で休憩を取れるようにリーナが身に着けた技術で
リーナが寝てる間でも、しばらくの間はバリアを維持できるようになっていた。
バリアと言うよりは結界に近い技術だ。
準備も出来たので、毛布をかぶり横になる。
すると、木の枝の隙間から満天の星空が目に飛び込んできた。
「見てリーナ、星空が綺麗だよ」
「本当ですね、綺麗……私、星空なんて初めて見ました」
そう言えば私もこの世界に来てから星空を見るのはこれが初めてだった。
モンスターや盗賊の居る世界で夜に外に居ること自体が危険だから
星空を見る機会自体が無かったのだ。
それが、今やこうして心に余裕を持って星空を眺めている。
こんな事ができるぐらい私達は成長したんだな……と、なんだか感慨深くなってくる。
「でも、折角なら、こんな木の枝だらけの森の中じゃなくて
もっと広くて見通しの良い所で星空を見てみたいね。
山の頂上とかさ」
「そうですね、そんな所で見たら、きっとすごく綺麗なんでしょうね……」
私はキャンプで何度も星空を見た事があるけど、まさしく絶景だった。
また、あの景色を見てみたい。
「次に山に登る時に見てみようか」
「はい!」
こうしてジューカ森探索最初の日は終わったのだった。