第22話「巨大熊と戦闘」
あの後私達は頂上で昼食のサンドイッチを食べ、山を降りていた。
順調に山を降り、川を過ぎた所まで来た時、木の陰に動くものを見つけた。
またワイルドボアか?それともワイルドウルフか?
どちらにしても軽く対処できるから、危険は全く無いかな。そう思っていた。
しかし、そこに居たのはそのどちらでも無かった。
そこに居たのは熊だった。
熊のモンスターはギルドから聞いていた。キラーベアと言う名前だ。
滅多に出てくるモンスターでは無いけれど、
もし出会ったら絶対に戦ってはいけないと言っていた。
実際にその姿からは今までに感じたことの無い威圧感を感じた。
こいつと戦うとマズいと、私の本能がそう叫んでいる。
私はじっと気配を殺してキラーベアが立ち去るのを待つ。
リーナもさっきから全く動かない。
私と同じようにキラーベアから威圧感を感じ取ったのだろう。
出来る限りこいつとの戦闘は避けたい。早くどこかに行ってくれるよう願った。
しかし、そんな願いは届かず、キラーベアはこちらを見つけると、ゆっくりと近づいてきた。
「……やるしかない!」
私はナイフを、リーナは杖構える。
そして身体強化とバリアの魔法をかける。
心臓の音がバクバクと煩い。顔から汗が噴き出てくる。
「グオオオオオオッ!」
大きな唸り声と共に、キラーベアは凄いスピードでこちらに向かって走ってくる。
巨大な見た目に反してとんでもない俊敏性だ。
「ウィンドカッター!」
私は熊に向かって風の刃を飛ばす。
風の刃はキラーベアの顔に命中するが、まるで効いてないかのように
キラーベアはそれを意に介さず私に向かって突っ込んでくる。
近づいてきて分かったが、このキラーベア、ものすごく大きい。
恐らく5~6メートルはあるんじゃないだろうか?
こんな巨体が猛スピードで突っ込んでくるんだからたまったもんじゃない。
キラーベアは腕を振り上げ、私に向かって殴りかかってくる。
私はとっさにそれを跳んでかわす。
キラーベアの手は木に当たり、バキリとまるでスティック菓子のように木がへし折れる。
その光景にゾッとする。
あんなのに当たったら、バリアがあってもタダじゃすまない。
私は素早くキラーベアに近づき、腹を切り裂く。
しかし、それでもかまわず熊は私に殴りかかってくる。
キラーベアの巨大な図体にはナイフ程度の傷ではダメージにならないようだ。
私はキラーベアの攻撃をギリギリでかわしながら、隙を伺う。
お腹への攻撃が効かないのなら、狙いは1つ。頭だ!
私はキラーベアの攻撃をジャンプでかわすと、そのままナイフを振り被り、
キラーベアにめがけて振り下ろす。
「グアアアアアアアアアアッ!!!」
ナイフはキラーベアの目に突き刺さった。
目からは血が拭きだし、キラーベアは悶え苦しむ。
いける!そう感じた直後、キラーベアは私に向かって殴りかかってくる。
とっさに体を強化するが、吹き飛ばされ、木に叩きつけられてしまう。
「ミサキさん!」
リーナが叫ぶ声が聞こえる。
動こうとするが、体に激痛が走る。この痛みは骨が折れている。私の経験がそう言っていた。
痛みで意識が薄れてくる。
しかしキラーベアは、そんな私の前に迫ってくる。
私は……ここで死ぬのか……?
今までの戦闘では感じられなかった。リアルな「死」の恐怖。
私はここまでだ、だから、リーナは逃げて、生き延びて欲しい。
そう伝えようとするが、もう声も出せない。
そうしている間にキラーベアは腕を振り上げ、私にトドメを差そうとしていた。
しかし
「グアアアアアアアッ!!!」
キラーベアに何本もの矢が突き刺さり、大きな悲鳴と共にキラーベアは地面に倒れた。
何が起こってるのか理解できないまま、私は意識を手放した。