第13話「賞金とギルドカード」
「着いたーっ!」
あれからしばらく歩いた先に、ミチク村はあった。
小さな木製の建物がまばらに並び、いたるところに畑が見える。
道も土を踏み固めた、絵にかいたような田舎町だった。
夕方には着くと踏んでいたけど、盗賊と遭遇して時間を取られてしまったため、
だいぶ日が落ちて、辺りは暗くなってきていた。
まだギルドはやってるかな……?
流石に盗賊の首を持ったまま休みたくは無いので、ギルドがまだ
開いてる事を願った。
◇◆◇◆◇
辺りは暗く、明かりも無いため、ギルドを探すのは難航しそうに思えたが、
ギルドは他の建物より頭一つ高く、また、あの目立つギルドのマークがあったため、
以外にもあっさりとギルドを見つけられた。
そして、幸いにもギルドはまだ開いていた。
「あの、賞金首を倒してきました。それと剣の買い取りをお願いします」
ミサキが盗賊の首と剣を出すと、受付嬢は驚いた顔をする。
「これは……間違いない、賞金首の盗賊ジードだわ。少しお待ちくださいね」
受付嬢は人を呼ぶと、首と武器を持ってギルドの奥に引っ込んだ。
しばらくすると大きな袋を重そうに持って戻って来た。
「お待たせしました。剣の代金7万ガルと、盗賊ジードの懸賞金100万ガルになります」
「100万ガル!?」
100万ガルと言ったらゴブリンの売値の100倍以上もある。
まさかこんな大金が手に入るとは思わなかった。
アンラッキーだと思っていた盗賊の襲撃だけど、結果的には大収穫だ。
受付嬢が金貨の詰まった袋をカウンターに置く。
ジャラッと言う音と、ズシリと言う重量感を感じられた。
「リーナ、100万ガルだって!」
「やりましたね!ミサキさん!」
思わぬ大金を前に喜んでいたミサキ達だったが、ある問題点を見つけてしまった。
「流石にこんな沢山の金貨を持ち歩くわけにはいかないよなぁ……」
袋一杯の金貨だ。流石にこんな量の金貨を持って行くとかさばって仕方がない。
「それならギルドカードをお作りしましょうか?」
「ギルドカード……ですか?」
「はい。ギルドカードを作っておけば、ギルドでお金をお預かりする事ができます。
そして、どこのギルドでも預けた分のお金を引き出す事ができます」
「キャッシュカードみたいなものかな?確かにそれがあったら便利だな
じゃあそのギルドカードを作ってください」
「わかりました。ではお名前をお願いします」
「ミサキ、でお願いします」
「わかりました。少しお待ちください」
受付嬢はまたギルドの奥に引っ込み、しばらくすると金色のカードを持って戻って来た。
「おまたせしました。こちらが貴方のギルドカードになります」
そのカードにはローマ字でMISAKIの文字と数字の0
そしてGの文字に剣が交差するギルドのマークが刻まれていた。
「紛失、盗難などは自己責任になりますので、お気を付けください。
早速お金をお預けしますか?」
「それじゃあ100万ガルお願いします」
「わかりました。それではカードをお貸しください」
ミサキはカードとお金を受付嬢に渡す。
受付嬢はそれを持ってギルドの奥に引っ込んだ。
そしてしばらくすると、先ほどと比べるとだいぶしぼんだ袋とカードを持ってきた。
「100万ガルお預かりいたしました。残りの7万ガルになります」
ミサキはお金とカードを受け取った。カードには0と書いてあった所が
1000000に変わっていた。
どうやらここに預けた金額が刻まれるようだ。
なんだか嬉しくて、ミサキとリーナはそのカードを何度も眺めていた。
◇◆◇◆◇
あの後、ミサキ達は宿に来ていた。
ミチク村の宿はサーショ街の物よりも質素で、山小屋のような素朴さを感じるものだった。
「いらっしゃい。1人1泊1000ガルだよ」
受付のおばちゃんがぶっきらぼうに話しかけてくる。
どうやらここの宿はサーショ街の宿より200ガル安いみたい。
「2人ですけど、2人で1部屋に泊まる事ってできますか?」
「2人で1部屋かい?ウチの部屋はそんな広くないけど、それでもいいなら構わないよ」
「はい。大丈夫です」
ミサキは受付のおばさんにお金を払う。
「あんたたち、名前は?」
「リーナとミサキです」
「リーナとミサキだね、部屋はこの鍵のを使ってちょうだい。
風呂と食堂は左にあるけど、宿泊とは別料金だから注意だよ。
それと、洗濯したいものがあるならここに持ってくれば有料で洗濯するよ」
「わかりました」
ミサキは鍵を受け取ると、食堂に向かった。
「リーナ、今日はいつもより高い物を食べようか」
「いいんですか?」
「うん、今はお金が沢山あるからね。偶には贅沢してもバチは当たらないよ」
ミサキはメニューを見る。
どうやら1番高いのはベアステーキの2600ガルみたい。
ステーキか……偶にはガッツリと肉を食べるのもいいな。
ぐぅぅぅぅぅう
激しい戦闘の後と言うのもあって、痛いほど腹が減っている。
これぐらい食べきれるだろう
私はベアステーキを2人分頼んだ。
ステーキは肉厚で熱々で、凄くいい香りがした。
ナイフで肉を切ると、肉汁が溢れてくる。
それを1切れ口に入れてみる。
……旨い!
とろけるように柔らかく、そしてジューシーな肉の味が口いっぱいに広がる。
このソースも美味しい。多分タマネギだろうか?
ステーキの味をいっそう引き立てている。
「こんな美味しいお肉、食べたの初めてです!」
リーナは感動しながらガツガツと口に肉を詰め込んでいた。
カツサンドと贅沢が続いたけれど、まあ偶にはいいだろう。
「ふぅ……ちょっと食べ過ぎた」
いくら美味しいと言っても、元々結構なボリュームがあったため
リーナは全部食べ切れず、残りをミサキが平らげることになった。
「美味しかったですね、あのお肉」
「そうだね……けふ」
流石に大盛1人分にリーナの残りを平らげたのは重かったのか、少し苦しそうにお腹をさする。
「また食べたいですね」
「その為にはここでも頑張らないとね」
「はい!」
夕食後、ミサキ達は風呂に入り、自分達の部屋に向かった。
確かに部屋の中は狭く、布団が1枚敷いてあるだけと言う質素な物だった。
「今日は疲れたな……」
「そうですね……」
まさか盗賊と戦う事になるとは思ってなかったからもうクタクタだ。
布団はサーショ街のと比べるとごわごわしていたが、
疲れ果てたミサキには関係なく、すぐに眠りに落ちていった。