第12話「戦利品と賞金首」
顔に何か冷たい水の様な物を感じてミサキは目を覚ました。
そこには涙で顔をぐしゃぐしゃにしたリーナが居た。
「ごめんなざい……私の魔法が未熟なせいで、ミサキさんに怪我を……」
その言葉でミサキはハッと思い出す。
自分は盗賊に襲われて、痛み分けになったんだったと……
ミサキはゆっくり体を起こし、自分の体を見る。
左腕には少し傷跡が残っていたが、痛みは無くなっていた。
リーナが魔法で癒してくれたんだろう。
周囲を見渡すと、そこには盗賊達が倒れていた。何人かは血を流して死んでいる。
……私がやったんだ。
正当防衛とは言え、私は人を殺してしまった。
ミサキはそう思った。しかし、彼女は心をあまり痛めていなかった。
もう既にホーンラビットやゴブリン達を何匹も殺してるからだろうか。
今のミサキには殺人よりも、目の前に居る少女を悲しませたと言う方が罪悪感を感じた。
ミサキはぎゅっとリーナを抱きしめる。
「そんな事無いよ、リーナの魔法が無かったら、私はとっくに死んでいたと思う。
私の方こそごめん。心配かけて」
「うわああああああん!」
ミサキはリーナが泣き止むまで、ずっと抱きしめ続けた。
◇◆◇◆◇
「まさか盗賊に襲われるなんて……」
ひとしきりリーナが泣き終え落ち着いた後、今の状況を落ち着いて整理してみる。
まさか盗賊に襲われるなんて予想外だった。
街の移動は馬車を使うと言うのは、単にそちらの方が楽で早いからと言うだけではない。
ミサキ達みたいに歩きで行く人を狙う盗賊が居るから、と言う理由もあったようだ。
これからはもうちょっと気を付けて行動しよう。
さて、ここに倒れている盗賊たちはどうしようか……
「……とりあえず、貰えるものは貰っておこう」
ミサキ達は盗賊が持っていたお金と武器を回収する。
もはややってる事が盗賊と変わりないが、仕方ない。
先に襲ってきたのはあちらだ。だからこれぐらいやっても許されるだろう。
他の盗賊達のお金と武器を全て回収した後、最後にミサキを苦しめた強面の盗賊を調べようとする。
「この顔……」
「どうしました?」
「……この盗賊の顔、どこかで見た覚えがある。どこだっけ……」
ミサキは自分の記憶を探ってみる。とりあえず見た事があるとは言っても、
1度会ったことがあるとか、そういう事ではない。
それならどこでこの顔を見たんだろうか……?
「思い出した!こいつ、賞金首だ!」
「賞金首!?」
「ああ。ギルドに手配書が張られてあって、そこで見たんだ。
確か名前はジード。賞金額はいくらだったかな……そこまでは覚えてないや」
「通りで恐ろしい人だと思いました……」
「とりあえずギルドに持って行けばお金に換えてくれるらしいから、
こいつの首だけでも持って行こう」
ミサキは剣でジードの首をはね、頭を袋の中に入れる。
「さて、思わぬ邪魔が入ったけど、行こうか。ミチク村に」
「はいっ!」




