表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/51

第11話「次の街と盗賊」

「リーナ、そろそろ次の街に行こうと思う」


あれから半月、ミサキ達は毎日ゴブリンを狩り続けた。

初日こそ中々出てこなかったゴブリンも、ただ運が悪かっただけか

翌日からは普通に出会うようになった。

今となってはゴブリン程度、ミサキ達にとってはもはや取るに足らない相手となった。

ゴブリンはホーンラビットの倍以上の値段で買い取ってもらえる上

ホーンラビットのように逃げ出すと言う事も無い為、

何体も狩って売れるようになった今では金銭的にも問題は無くなった。

安全に生活するのなら今のままでも十分だけど

ミサキはそろそろ新しい世界を見たくなっていた。


「次の街ってどこに行くんですか?」

「それはね……」


ミサキは地図を広げる。昨日のうちに書店で買っておいた物だ。

そこには「ユーロティア大陸地図」と書いてある。

現代の地図に比べて簡素な物ではあったが、とりあえずの地形を知るぐらいなら役に立つ。


「この街の西側のここに村があるから、そこに行こうと思う」


ミサキはここからすぐ西の方に書いてある村を指さす。

そこには「ミチク村」と書いてある。


「なるほど、いつ行きます?」

「明日にはもう出発したいと思う。歩きで行きたいから、しっかり準備しないと」

「馬車は使わないんですか?」

「お金かかるし、この距離なら別にいいかなって」


この世界では週に数回、街を行き来する荷馬車がギルドに来る。

基本的に他の街に行きたい場合は、その荷馬車にお金を支払い乗せてもらうことになる。

しかし地図を見る限り、ここからミチク村はあまり遠い距離では無い。

朝早くから街を出れば歩きでも夕方には村に着けるだろうと想定し、

お金を節約する為にも歩きで行くことにした。


◇◆◇◆◇


翌日、ミサキ達はしっかりと準備を整え、ミチク村へ向けて出発した。


新しい村はどんな場所で、どんな物があるんだろう。

そう思うと、今から期待で胸がいっぱいだ。


最近はずっと山を登っていた為、平坦な道が凄く楽に感じる。

モンスターも今の私達を襲わないホーンラビットしか出てこない為、平和なものだ。


風が気持ちいい。モンスターを狩る目的もない為、今日は本当に

ハイキングやピクニックのような気分だ。


「ねぇリーナ、ミチク村ってどんな所かな?」

「確かあそこは畑ばかりで、何もない村だったような……」

「なるほど。まぁ偶にはそういう所もいいかもね」


そんな話をしつつ、しばらく歩いていると、お腹が空いてきた。


「さて、そろそろお昼にしようか」

「そうですね。お腹が空きました」


私はリュックからサンドイッチを取り出す。

今回はいつもの野菜とベーコンのサンドイッチでは無く、

少し奮発してトンカツのサンドイッチをテイクアウトした。


一口食べるとソースの味が口の中に広がる。

濃厚で、肉厚で、でも決して硬くも油っぽくもない。

……これはヤバい。美味しい。

冷めてても軽くペロリと行けてしまう。


「ん~♪」


リーナも満足そうだ。奮発して高いカツサンドを注文したかいがあったものだ。


昼食を食べ終え、また私達はしばらく歩いた。

風景もだいぶ変わってきて、周りに背の高い木が増え始めていた。

地図が間違ってなければそろそろミチク村が見えてくる頃だろうか。


そんな事を考えていると、道の外れから悪意の様な物を感じ取った。


……何か居る。


リーナも気が付いたようで、素早く杖を構える。


「中々勘が鋭いな」


木の陰から出て来たのは人間の男だった。しかも何人も居る。

ニヤニヤと笑って私達を見つめている。

まるで獲物を見つけたかのような目だ。


……嫌な予感しかしない


「どうしやすか?リーダー」

「何、相手はたかがガキ2人だ、お前らやっちまえ!」

「おおっ!」


他の人より大柄で強面な男の掛け声とともに、男達は剣を構え私達に襲い掛かって来た。


「ミサキさん……」


リーナが震えた声でささやく。

モンスターとは何度か戦ってきたが、悪意の持った人と戦うのは今回が初めてだ。

その怖さはモンスターとは全く違う物だ。


「大丈夫……いつも通りにやれば問題ない」


そう言ってリーナを励ます。

ミサキはリーナの前に立ち、ナイフを構え、戦いに備える。


「へっ、そんなチンケなナイフで俺達を相手にしようってか?笑わせてくれるぜ!」


男達はミサキのナイフを鼻で笑う。

ナイフと剣とではリーチが全然違う。

剣を扱う男達からしてみれば、ナイフなんてお子様のおもちゃみたいな認識なんだろう。

しかしその油断が大間違いだった。


「ウィンドカッター!」


ミサキは鋭い風を作り、男に向かって放つ。


「ぎゃあああああっ!!!」


風は男に命中し、叫び声と共に吹き飛ばされる。


「てめぇよくも!」

「調子に乗んな!」


残りの男達は怒り、ミサキに向かって襲い掛かる。


「バリアー!」


リーナの掛け声と共にミサキの周りに光の膜が現れる。

盗賊達は私に向かって剣を振るが、剣は光の膜に阻まれ止まった。

ミサキはその隙に右腕に意識を集中させ、右腕を強化する。

そして強化した右手で持ったナイフで盗賊達を切り裂く。

これらの魔法はこの半月、ゴブリンと戦い続けて身に着けた魔法だ。


ミサキ達はその容姿とは裏腹に、ゴブリン達ぐらいなら楽に倒せる実力を持っている。

一般人に毛の生えた程度の強さしか持たない男達が油断して敵う相手では無かった。


「たかがガキ2人に何やってる!」


強面の男が怒号を飛ばすと、男達は数にものを言わせミサキ達に襲い掛かってくる。

ミサキは全身に意識を集中する。

体だけでなく感覚も強化され、男達の動きがゆっくり見える。

ミサキは右に、左に襲い掛かる盗賊達を、素早い動きで翻弄し

正確に突き刺し、切り裂き、蹴り飛ばす。


「チッ……ずいぶんとやってくれたな、ガキ」


他の男達が全滅した所で強面の男が舌打ち、イラついた様子で剣を抜く。

ミサキもナイフを強面の男に向け、構えを取る。


男はこちらに飛び込み剣を振る。


……速いっ!


ミサキはとっさにその剣をナイフで受け止める。

バリアで守られてるにもかかわらず、剣を受け止めた腕が衝撃で痺れる。

リーナのバリアでも防ぎきれない攻撃力。そしてさっきのスピード、

この男は、今までの敵とは違う。


「うおおおおおおっ!」


ミサキは盗賊に蹴りを入れる。しかし盗賊は後ろに跳んでその蹴りをかわす。


……息が苦しい。身体強化をフルに使って戦ったせいで、体力はもう限界近い。

長期戦は不利だ。次の1撃で勝負を決める!


「死ねぇっ!」


再び盗賊が飛び出し、ミサキに向かって剣を振る。

ミサキはそれを左腕で防御する。


ザシュッツ!


「ーーっ!!!」


鋭い痛み。盗賊の剣はリーナのバリアを貫通し、ミサキの左腕に食い込んだ。


「ミサキさんっ!」


後ろでリーナの悲痛な叫びが聞こえる。


痛い……凄く痛い……!でも、こんなもの……っ!


痛みに耐えながら、ミサキは残りの力を右腕に集中させる。


「くらえええええっ!!!」


ミサキは渾身の力でナイフを盗賊めがけて投げ付ける。


ドスッ!


ナイフは盗賊の頭に突き刺さり、そのまま後ろに倒れ、動かなくなった。


や、やった……


ミサキはその様子を見終えると、ばったりとその場に倒れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ