1.神様は前世に戻りたいようです
「あのっ起きてください!」
目を開けると身長150cmもなさそうな小柄な茶髪のツインテール少女が目の前に立っていた。顔はクラスで1番可愛い子にも引けを取らないアイドル並の可愛さである。
「ん……んん!? あのどちら様ですか?」
夢であろう光景に口をポカンと開けながら彼、西表 東馬が目の前の少女を見つめる。今、東馬と少女がいる空間は真っ白で彼が横になっている真っ白なベットがあるだけである。それ以外の家具や雑貨は見当たらない。
「はい! 主のメイドをやらせていただくことになりました。天使のテンです!」
テンと名乗る少女に主やらメイドやら言われて困惑する東馬。
「主って俺の事か? 人違いじゃないですか」
「あなたは今日から私の主です」
確認する東馬が行き着いたこの状況の答えは夢の中ということ。
「ちょっと眠いんですけど。夢のくせに起こすなんてうるさいな……あれ? 俺そういえば……」
「そうです、主は死んだんです!」
その言葉によって東馬は死んだ事を思い出した。
「俺は死んだんだったな……それで、ここはどこなんですか?」
状況を少し理解し目の前の少女はこの状況に自分より詳しく、さらには初対面にタメ口は悪いなと感じ慌てて敬語に直す。
「敬語なんてやめてくださいよー! というか、随分と落ち着いていますね。ここは天界です。俗に言う天国です!」
天国を信じていなかった東馬は、大きく目を見開く。
「えっ!? じゃあ、俺は何をすればいいんだ?」
「主にはこれから地球ではないこの異世界で神様代行をしていただきたいのです」
「はぁっ?!」
東馬は神様代行という想像を越える言葉に、また目を見開いた。
「今この異世界には主を除いて神様はいません」
「神様がいないってどういうことだ?」
「ついこの間、寿命でポックリ逝ってしまいました。それで、主には先代の神様の遺言としては『自由にして構わない』とのことです』
Web小説によくある異世界転生をしたのか……
「自由とは?」
「哲学ですか?! そのままの意味です。何やってもいいってことです! 主はほとんどの魔法は使いこなせます。」
「なるほど、俺は魔法が使えるのか! ということは、俺は前世の死ぬ前に戻れるのか?」
「残念ながら……それには『記憶の時計』という道具が必要になります。覚えている時間と場所に戻れる道具です。それを使えばきっと戻れるはずです」
「マジか! それはどこで手に入れられるんだ?」
「ダンジョンに潜らないといけないんです。いくら主が神様といえども、死ぬときは死にます。そしたら前世にはもう戻れなくなります」
「死ぬんか、神様でも!」
「出来れば主には、普通に天界で過ごしてほしいです。私、言われたことは何でもしますから!」
「今、何でもするって言ったよな」
「えぇっ! まぁ……けどその……そういう事はもう少し、私にも心の準備というものが……」
テンが勝手に妄想し始める。
「そんじゃ、地上に連れてってくれ!」
「ええっ? 仕方ない神様ですね」
思いもよらないお願いにテンは少し呆れながら、東馬を転移魔法で地上に召喚させた。
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