全てを知った勇者の罰
1話 プロローグ
ある森の中を少年は一人歩いていた。
少年はかつて勇者と持て囃され人間達の為に戦った。
だが、あろう事か彼らは少年の力を忌避し少年をこの世から葬り去るために幾度の刺客を送ってきた。
そんな彼は今、自分の愛剣と出会った場所まで歩いていた。
「はぁ..はぁ..」
少年の体力はもう限界を迎え心は崩壊の寸前であった。
(後少し...)
だが少年は壊れたかのように歩き続けた。唯々何も無い森の中を一人で彼女との思い出の場所へ行く為に
「もう少しだ、エル」
《そうですね。あと少しです》
腰にいる愛剣は相変わらずの相槌を打つ。だが、その言葉には暖かさがあった。彼女こそが勇者の理解者であり相棒の聖剣エルシェフェードであった。
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果てが無いように続くその道はやっとの事で終わりを告げた。
「やっと着いたな、エル」
《はい、着きましたねユキト》
その場所は静かな丘だった。彼が初めて彼女とあった丘、そこが勇者であった少年の最期に選んだ場所だった。彼は王国から裏切られ人から裏切られ続けた。
(皆俺のせいで死んじまった)
ユキトは彼女達が最期に口にした言葉を思い出した。
騎士は言っていた。
『君はもっと甘える事を覚えた方がいいよ。と言っても、もう遅いね』と
賢者は言っていた。
『君といると弟を思い出すんだ。だから、ごめんね』と
聖女は言っていた。
『忘れないで下さい。貴方は私達の英雄ですよ』と
僕の為に生命を犠牲にしてくれた人もいた。僕の為に泣いてくれる人もいた。
俺は何故皆を信じてあげれなかったんだろう。
「ねぇエル。彼女達は何で俺何かを守ったんだろう」
《.......》
「俺は彼女達に何かしてあげれたかな」
《どうでしょうね》
「ハハハ、相変わらず厳しいな。...なら次が有ったら皆に優しくしなきゃな」
次があるならもっと彼女達と時間を作ろう。そんで、ハーレムでも作ろうかね。
《何か、変な事思いませんでしたか?》
「いや、まったく」
《そうですか》
「そうそう、だからさ。少し...休むわ..」
地面に突き刺さる黒と赤の聖剣にもたれ掛かりながら彼はその短い命を引き取った。