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刺客街路〜剣豪異世界接続〜  作者: 杣
第二幕
19/20

戦__其の参



六つに分かれた鐘捲自斎の遺体。


それを見て勢源の顔は今にも泣き出しそうだ。

一方、どうだろう。

伊藤一刀斎の顔。

師が地獄へ堕ちたというのに、なんともないといった表情を浮かべている。









「次、貴殿らは誰を出される」


偽の武蔵が声を荒げる。


「拙僧が行きましょうぞ!」


そう立ち上がったのは宝蔵院胤栄。


「では、こちらは私が行きましょう」


勢源側は勢源の高弟で東軍流剣術の開祖でもある川崎鑰之助が立ち上がった。

*川崎鑰之助Wikipedia

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%9D%E5%B4%8E%E9%91%B0%E4%B9%8B%E5%8A%A9



2人が真ん中で向き合う。




胤栄は十文字槍の扱いだけを得意とする槍一筋の男。

一方、鑰之助は太刀や小太刀だけでなく槍術、馬術、弓術、薙刀術などにも秀でている。

この差がどう出るか。






胤栄が手に持つのは十文字槍。

鑰之助は名槍・蜻蛉切り。


2人が構える。


「いざっ勝負!」


胤栄だけが叫び、十文字槍を突き出した。


鑰之助はそれを剣尖で払い、間合を詰めた。


胤栄は体勢を崩さずに後退しながら間合を詰められないように対処する。


「流石、大胤栄」


「笑わせるな」


胤栄は頭上で十文字槍を旋回させた。


すると疾風の如き早業で鑰之助の槍をすくい上げた。


名槍・蜻蛉切りは鑰之助の手元から離れ、胤栄の後ろに落ちた。


「観念せい」


「流石だ。だが、初めから槍で勝てるとは思いっておりませんぞ」


鑰之助は太刀の鞘を払った。

業物ではないが良き刀である。

鑰之助は太刀を青眼につける。


胤栄は十文字槍を構え直した。


「だぁぁー!」


鑰之助が獣のような雄叫びをあげて向かってきた。


青眼につけられた太刀は揺れもせずに胤栄に近づく。


瞬く間に間合いを詰められ、十文字槍の切っ先よりも近くに鑰之助がいる。


「ぬぉっ、」


胤栄は必死に後退するが鑰之助は胤栄からくっついて離れない。


「去ねっ!」


胤栄が十文字槍の柄を鑰之助の首に当てて押した。


鑰之助は苦しい顔をしながらも太刀の柄でそれを押し返し、一歩跳んで退いて横に回り、大上段から太刀を振り下ろした。


胤栄も負けてはいない。

十文字槍を横に薙いで太刀を鑰之助の手元から離れさせると、鑰之助の顔めがけて槍を突き出した。



しかし




…………………………びゅん






十文字槍は空を切る。



胤栄の懐には脇差を持った鑰之助の姿があった。


「とうりゃっ!」


鑰之助の脇差は胤栄の胸を斬った。


「ぐあっ!」


「うぉぅんどりゃあ!」


二太刀目は左腕。

肘の下に脇差が食い込んだ。


血油のせいか、それ以上斬れない。


「勝負ありっ!」


3試合目は勢源派の勝利に終わってしまった。









胤栄が義輝に抱えられて傍にどいた。


義輝が手当をしてくれるようだ。











そして、










「うぉぉぉぉ」


柳生雪舟斎宗厳が獣のような雄叫びをあげた。





「伝鬼房!!果たし合え!天下分け目などどうでもええ、宗矩、十兵衛、兵庫助の仇を取ってやる!」


すると宗厳は刀を抜き放ち、伝鬼房が控える方へ駆け出した。



「うぉぉ!」


一気に振り上げた宗厳の刀が伝鬼房の脳天に振り落とされる。


しかし、その刀は伝鬼房の頭上で止まる。


伝鬼房の刀がそれを抑えていた。



「貴様が柳生新陰流などを開かなければ初が死ぬこともなかった。わしがこうなることもなかった。全部貴様のせいじゃぁぁぁぁ!」


伝鬼房の烈火の如き太刀が宗厳の喉もとを狙う。



宗厳はそれを抑え、荒々しく剣を横に薙いだ。



「でおやぁ!」


左上に振り上げた宗厳の二太刀目は伝鬼房の左目を切り裂いた。


「んっ!あがっ!」


左目をから血が流れ落ち、目玉が外れかかっている。


伝鬼房は宗厳の孫・柳生十兵衛と同じ隻眼になってしまった。



「伝鬼房。貴様に不利なことなど分かっているが、わしはお前を殺すためにここにいる。卑怯でもなんでも、斬らせてもらうぞ」


「ヒッ、結構結構」


伝鬼房は左目の血を左袖でぬぐい、右目までもを閉じた。


「天と一つになる、それがお主の天流だということか」


「綺麗事を言うつもりはない。散れ」


伝鬼房は高く跳躍し、宗厳の頭上に向かって刀を振り下ろした。


それをかわした宗厳は伝鬼房の後ろに回った。


「覚悟!」











宗厳の刀が伝鬼房の右腕の肘下を絶っている。



「ぐぁぁぁ」


おびただしい量の鮮血が飛び散り、剣界の地面が地獄のようになる。


「宗矩!お前が悪いんじゃ!お前が悪いんだ、俺の未来を、初を!この恨み、晴らしてくれようぞぉ!」


伝鬼房が、肘より上しかない腕を上げ、宗厳に振り下ろした。


勿論間合いが取れず、空を切る。


すると、偽武蔵が叫んだ。


「狂ったか、伝鬼!宗厳と宗矩もわからんくなるとは……善鬼、典膳!奴を繋いでおけ」


「ちっ、何でわしが奴の命令を……」


善鬼の本音が漏れた。


「苦痛ですが、耐えるしかあるまい、兄者」


典膳が善鬼を諌めた。


善鬼は典膳の兄か……

















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