第二話
一ヶ月後
僕とユージンは商店街を歩いていた。大怪我で入院していたあの日から昨日退院するまで、毎日見舞いに行った。そのうちに僕達の仲は深まっていった気がする。その証拠に、今はお互い呼び捨てで呼んでるんだ。
僕達は武防具屋に来ていた。
「レン、まずは武器と防具を揃えよう。」
「お、おう。」
すごく大きな買い物のような気がして、少し緊張する。
「そんなに緊張すんなよ~、よし、まずは武器!何がいい?」
「これにする。」
僕が手に取ったのは、刀。
「はっ、早っ!お前もうちょっとじっくり考えて選べよ~。」
「いや、これにする、じっくり考えたってよく分からないし。」
「本当にいいんだな?」
「うん、これでいいよ。」
「防具は、この銀の鎧と、銀の小手、これで十分だろう。よしじゃあお会計しに行こう。」
お会計を済ませ、店を出る。
「早速、魔の森に向かおう。」
「お、おう。」
さっきの買い物とは、全く別の恐怖に近い緊張が押し寄せる。
心の準備のために時間が欲しい。でもそうは行かない。
「よし、着いたぞ。」
商店街と魔の森は目と鼻の先だったのだ。
「まずは、受付を済まそう。」
書類に名前を書く。これは無事帰ってきたかどうかを確認するためだ。なので帰った時も受付に寄って報告しなければいけない。
「入るぞ。」
目の前に大きな門がある。その先に木々が連なる。魔の森はすぐ目の前だった。僕達が生きる世界とは全く別のように感じる。僕達の世界が白なら、魔の森は黒。人を寄せつけない雰囲気を持っていた。
「うん。」
生唾を飲む。覚悟を決めろ自分。
門の向こうに足を踏み入れる。
ブアーーァァッ
向かい風が吹く。来るな、と言われているような感覚に襲われる。
ん、なんだ、これ、体が、体が動かない。
だ、だめだ、体が心が脳が、これ以上進んではいけないと言っている。
だめだ、止まるな!動け!動いてくれよ!
ポンポン
誰かが背中を叩く。
「大丈夫。」
ユージンの笑顔は世界一優しかった。今思っていること全てを忘れることができた。
すると、あれ、足が動く。僕は今魔の森の中を進んでいる。
ガサガサ ガサゴソ
斜め右方向の草むらからなにかこすれる音がする。
「レン、来るぞ。」
相づちを打ち、刀に手をかける。自分でもびっくりするぐらい冷静だった。
シュッ
草むらからなにかか飛び出る。
目の前にいるのはジェル状のモンスターだった。
「スライムだ。」
ユージンが言う。
「じゃあ、まずは俺が見本を見せるぞ。」
ユージンが前に出る。そして剣を抜く。
するとスライムがユージンめがけて体当たり。それをひらりとかわし、一閃。
地面に落ち、ボタボタという音をたてる。
「速い、す、すごいよユージン!」
「そんなことより、俺が剣を振った時見てたか?青い残像みたいなものが見えただろ、それは俺が青の魔力を持っているからだ。」
「それで判断するのか。」
「それだけじゃあないけどな、まあ、赤の魔力の場合は赤い残像が、緑の魔力の場合は緑の残像が見えるって訳だ。」
「そうだったのか。」
「ついでに相性についても言っとくか、この世には、赤、青、緑、この三つの魔力が存在する。赤は青に対して相性がよく、青は緑に対して相性がよい、緑は赤に対して相性がよく、こういう関係だな。モンスターも魔力を持っていて、モンスターの魔力はそのまま体の色に表れる。まあ、とりあえずお前が三つのうちのどれか見てやるから、そいつ倒してみろよ。」
「そいつ?」
なにをさして言っているのか分からなかった。辺りを見回す。すると後ろにかわいい目をした青色のスライムが、そいつがいた。
「うわぁ!」
ドスンッ、しりもちをつく。
そのすきを見逃さないスライムは、すかさず体当たり。
ドッ
「いって!!」
スライムの攻撃、以外と痛い。かわいい顔してこんなに強いのか。
「くそぉ。」
刀を抜き、二本の手で構える。
スライムは目の前。
いける!!
「おりゃぁぁぁ!!」
ドチャドチャ
目の前にはスライムの汚い死骸。
「や、やったー!どうだった、ユージン?」
「どうだったもなにも、なんだよお前の色。」
驚いていた。驚きすぎてか、マヌケのような顔をしていた。
「色?」
ユージンは何を言っているのだ?
「お前の剣の残像の色だよ。」
「あ!そうだ、どうだった?色。」
「紫、紫だったよ。」
「えっ?」